ゴシックロリータ・カノンガール   作:サクナ

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第三話

千景はレーザーサイトを黒服の男の頭に近づける。

 

「千景....」

 

「8号機。あなたを回収しに来たのですよ。覚えていないのですか?」

 

「なにも、おぼえていない。」

 

「なら....不良品(粗大ごみ)として片付けるまでです。」

 

そう言って、黒服の男は自衛隊を工場の中に侵入させ、千景にレーザーサイトを浴びせる。

 

黒服の声は少し上ずっている。緊張しているのか怖がっているのかはわからない。

 

「そのゴスロリ姿、悪くありませんね。」

 

「きにいってる。でも、貴方達みんなしぬもんね?」

 

そう、物騒な言葉を言った途端に一番左端から順番に自衛隊が倒れていく。

 

「え?」

 

最後に黒服の男は素っ頓狂にそう言い、レーザーに頭を撃ち抜かれ、その場に倒れた。

 

「お、おい...これって....」

 

「しんじゃった。むこうにもいるよね?」

 

千景はシャッターを指差す。きっと自衛隊の装甲車のことだろう。

一体どうなってるんだよ。なんで人殺してんだよ....

 

俺の眼の前の人の形をした肉が徐々に血溜まりを作っていく。

 

「...すなよ。」

 

俺は思わず語気を強める。

 

「え?」

 

千景はきょとんとする。

 

「なんで殺すんだよ!威嚇だけでも良かったじゃないか!アンドロイド、ロボットの人殺しは確定で廃金属(スクラップ)にされておしまいだぞ!」

 

ちょっと言い過ぎただろうか。千景は俯いてしまう。

 

「....きをつける。ごめんなさい。」

 

「ああ。でも...とりあえずこの死体を何とかしないと...」

 

俺は血溜まりを作るその死体を、工場の裏口に広がるだだっ広い庭に埋める。

こんなことは勿論初めてだし、この一日にあったことの情報量が余りにも多すぎる。

自衛隊は随分と前に尻尾を巻いて逃げたようだ。

 

千景は黙ってこちらを見ているまま、動かない。

 

「千景が殺した奴なんだから、千景が処理しなよ...!!」

 

「わたしにはむり。それとおなかへった。」

 

「はいはい.....って、ええ?!さっき食べたばっかりじゃん!」

 

「レーザーの使用にはエネルギーがひつよう。モーターのくどうにもエネルギーがいる。ここまで歩くだけでかなりつかった。」

 

「そうか...でも、なんで食べるんだ?電力だけじゃ駄目なのか?」

 

俺はスコップで土を掘りつつ、そう聞いてみる。

 

「食べて電力にかえてる。日本のバイオテクノロジーのしゅうたいせい。」

 

「そこから、一歩も動けないのか?」

 

すると、長い沈黙が訪れ、

 

「......いっぽうごいたら、うごけなくなる。」

 

「そうかい」

 

俺は冗談だと思いつつ、遺体を土に埋める。

 

時刻はもう午後4時が迫ろうとしている。季節が春のため、冬よりは日が沈むのが遅いが、今日はどうも早く沈んでいる気がした。

 

俺は遺体をすべて土に埋めた後、俺は千景を抱きかかえ、工場の二階の食卓へ上がる。

 

結構軽い千景を椅子に座らせ、自分は冷蔵庫の中の作り置きを取った。

 

今日のメニューは

・煮豆

・ひきわり納豆

・豆ご飯

・黒豆茶

 

うーん....見事に豆ばっかりである。

もちろん千景に出すとジト目で「また豆...また...」と言ったような不服の声を聞いたような気がしなくもないが、今は聞き流しておこう。

 

千景はもりもりと食べている。

もちろん今日は重労働であったため、自分も腹が減った。

 

俺は千景の前の席に座ってご飯を食べだす。

 

「千景、俺からこれからのルールを言ってもいいか?」

 

「....」

千景は箸を動かしながら、コクリと頷いた。同意ということでいいのだろうか。

そんな事を考えながらも、俺は話を進める。

 

「まず1つ目。勝手に人は殺さないこと。」

そう言うと、ピクリとも千景は動かなくなった。

 

そして、こちらに抗議の視線を向けている。さすが人型戦闘用アンドロイドと言ったところか...眼光が鋭い。

 

「なんで...?」

 

「いや駄目だろ。人殺したら人間は捕まるし、ロボットとかアンドロイドは速攻で分解されて部品取りにもならないぞ!」

 

「ぶ、部品取りはいや...」

 

「だろ?だから人は殺したら駄目」

 

「あとはなにがあるの...?」

不満の表情だ。

さっきから不満を顔に出している千景には呆れるが、人間ではないしまずまずメモリーに情報が書き込まれていないまっさらな状態で何も知らないのは当然だろう。

 

「あとは....一人で外を歩かないこと。」

 

「なんで?」

 

「変な男に勘違いで連れ去られたり、なんたら機関に連れ去られたりしたらやばいだろ?」

 

「かんちがいって....?」

 

あっこれまずいな。セクサロイドって言ったら貞操の危機だナァ...

変な記憶がメモリに入っていつか呼び起こされたら困る。

 

「ら、拉致だよ。拉致。」

 

「ふーん....」

 

「これだけ守ってくれれば、お前は基本自由だし俺がお前を守ってやれる。」

 

「わかった。やくそくする。あとごちそうさま」

 

「ああ。台所に置いといて」

 

「うん」

 

千景は台所に食器を置くと、座っていた椅子にとてとてと近づく。

そして、思いがけないことを言った。

 

「おふろはいりたい」

 

......アンドロイドが風呂に入りたがるか?普通。

俺はとりあえず、風呂の用意をすることにした。

 

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