【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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アスカンタ編
28話 加入


 入り口で彼らをただじっと待つ。マルチェロの野郎に対しての怒りが胸の内で膨らんでくるが、それを抑えこんでポーカーフェイスを保ったまま。

 

 すると、向こうの方から舞うように軽やかな動きでこちらに向かってくる人影が見えた。……あんな大剣を背負ってあの動きをする知り合いは彼しかいないな。

 

「……あ、待ってたんだ」

「律儀だね」

「人は見かけによらないものなんでがすよ……あっしにはそれが良く分かりやす」

「あんたたち酷いわよ」

 

 待たせていたくせに口々に好き勝手言われて腹が立つ。だが、それよりも気になることがある。

 

 先頭の、トウカは茶色の髪……? 彼女、違った、彼は銀髪じゃなかったのか。最初に見たときは茶色だった気がするが、あれ以降は何度見返しても銀髪……それか白髪にしか見えなかったから、疲れていたのか、勘違いしたと思っていたんだが、……あれは何だったんだ。

 

 髪の色が変わるのか……。摩訶不思議なレディも素敵だぜ……って、彼は男だ。いい加減しっかりしろ、俺。引きずるな、俺。

 

「ここで話も何だから外に行くか」

 

 俺の後ろについて歩いてくるトウカはやはり少女にしか見えない。てってってっと足音が聞こえる……気がする。……トウカはちょっと力持ちなレディなんだ、そうに違いない。

 

 勝ち気なフェイスにワガママボディなゼシカに比べて控えめな可愛らしい顔付きに筋肉で引き締まった彼女が男勝りだから勘違いしただけに過ぎない……。よし。そうだよな。彼女は自分のことを男だと言っていないしな。

 

「自己紹介でもする? まあ、もう名前も分かったようなもんだけどさ」

「そうだな。聖堂騎士団のククールだ」

「……ボクはトウカ。トロデーン王国の近衛兵。よろしく、ククールさん」

「ククールでいい。よろしくな」

 

 近衛……兵? 兵士? 彼女が? ……いや、志願兵なら女だって兵士になれないわけではないはずだ。それに、あんな力があるならなれるだろう。

 

「僕はエルト。トウカと同じくトロデーン王国の近衛兵だよ。よろしくね」

「ああ、よろしく」

 

 彼女とずっと一緒にいる上、しかも同郷というエルト。完全に彼女を男だと勘違いしている。……だが、一番彼女と距離が近いのには変わりない。

 

 やや警戒しつつもエルトをあからさまに嫌ってはトウカにも嫌われるかもしれない。微妙だ。当たり障りのない対応は一番難しい。

 

「ヤンガスだ」

「ああ、よろしく」

 

 ……にしても、この強面のおっさんは何でこのメンバーに混ざっているんだろうか。ドルマゲスに因縁でもあるんだろうか。

 

・・・・

 

 フィールド、と呼んでいる魔物の出る外に出た。そこで、少し皆より後ろで手持ち無沙汰なククールに説明することにした。作戦とかね。

 

「このパーティは、一応、僕がリーダー何だけど……。作戦は僕が指定する。兵法も知ってるから説明するよ。……トウカだけは指定とか殆どしないんだけどね」

「ボクは大抵、先頭で魔物の群れに突っ込んで、単騎突撃しつつも一網打尽にするんだ」

「……あんたは真似しないでね、見てるの結構怖いから」

 

 多分、この新しい仲間であるククールは見た目以上に面白い人で感情豊かなんだと思う。一見無表情だったり、妙にスカした笑み……っていうのかな、そういう表情でもよくよく目を見れば大体何を考えているか丸わかりなぐらい目が百面相だし。

 

 あとククールはトウカに異常反応する。まぁ、目の前で鉄格子引き裂いたり銅の剣を粘土扱いしてるのを見たらトラウマになるのもおかしくないけど。

 

「作戦は『命令させろ』、『ガンガンいこうぜ』、『バッチリがんばれ』、『じゅもんつかうな』、『テンションためろ』、『命大事に』……とかだね。だいたいそのままの内容。あと、使わないけど『俺に任せろ』、『いろいろやろうぜ』かな。あとトウカ専用に『単騎突撃』」

「…………、だいたい何をすればいいのかは分かったが、トウカは大丈夫なのか?」

「僕、一回だけトウカの代わりに『単騎突撃』したけど大丈夫な訳なかったよ……ただ、トウカ並みの機動力と攻撃力があるなら、まあ大丈夫じゃないかな。……そんな人がそういるわけ無いんだけど」

 

 ああ、残念なことにトウカの力を、分かりやすく目撃したというのにこの人、まだ信じてない。トウカがめちゃくちゃ強いことを信じてない。トウカがこのメンバーの中でのメイン戦力であることを理解していない。ただの剣士だって思ってるでしょ? 甘いよ、マシュマロみたいに考えが。

 

 ……トウカに限っては見た目とかは一切、強さの判断基準にはならないからなぁ。

 

「とりあえず、ククールは後衛で動きを掴みつつ『バッチリがんばれ』ね。ここらへんの敵は弱いから出番は回って来ないかもしれないけど……」

「……そうか。あんたたち強いからな」

「ヤンガスも強いけど、多分想像とは違うよ……」

 

 武器を手にしているヤンガスを見て頷いているククールはやっぱり間違いなく勘違いをしている。

 

 さて。ドニを抜けてその先にあるのはトウカ曰わくアスカンタ城。この辺りには他にパルミドとかあるんだけど近さを取ればそっちがいいみたいだからそこを目指そう。ドルマゲスの情報を得るために。

 

 そうそう。結局マルチェロさんからは、引きつった顔で地図を渡された。それ以外に渡せるものがなかったみたいだ。……財政を圧迫して修道院の孤児たちに迷惑がかかったら、あんまり他人ごとでもなかった僕としては夢見が悪いから受け取った。

 

 トウカが精密なのを出してくれたから……僕が管理している方の「ふくろ」の肥やしになってるんだけど……。ねえ、この裏面にでかでかとモノトリアの紋章入ってるの、怖いんだけど……。

 

 




ククール「トウカは女だそうに違いない」


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