【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:ryure

41 / 173
40話 女盗賊

・・・・

 

「実力行使と交渉ではどちらがよろしいですか?」

「交渉じゃ。姫に何かがあっては元も子もないのじゃぞ!」

「はっ。愚問でございました」

 

 そうだった。姫がどんな状態なのか分からない今、下手なことをして傷つけれたり、命を奪われてしまうなんてことはあってはならない。慎重にならないと……。

 

 でも、さっきから抑えようとしても湧き上がる感情が止まらない。必死になっていないと、今すぐにでも駆け出しそうだ。そして、この剣で敵となりそうな人物たちの命を奪うだろう。キントの野郎も、……あいつは後で、陛下の見ていないところで殺すかもしれないけれど。見かけたら……確実に。

 

 私の倫理観が狂ってしまっているのはとうの昔に理解している。何回か言ってるし。価値観も、考え方だって全然前世の「遠藤桃華」とは違うだろうね。

 

 でも、流石に人をわざわざ殺したいなんて、思ってたわけがない。それは忌むべき事だ、やってはならない最大の禁忌だ。とはいえ、今世の私は殺人を犯したことはある。でも全て全て、命を狙われて攻撃された上での仕返し。

 

 単なる相手の暗器をキャッチ・アンド・リリースした結果、相手が勝手に返り討ちにあって死んだだけ。

 

 分かっては、いる。こんなにも人を殺したいなんて思うのが、異常だってことぐらいは。いくら姫を攫った人間でも、奴に刑が下って、そして私が死刑執行人でもない限り殺せやしないだろう。でも私には力があるから、殺しに行こうと思ったら出来る訳で……。それも容易に……。

 

 今こうして衝動を抑えられるのも、単に姫の安全のほうが優先事項なだけ。だからきっと、姫の安全を確保して、馬車も取り返したら……取り敢えずキントの闇討ちぐらいはしてもいいかなって思ってる。

 

 狂ってるとも分かってる。きっと、何時も戦っている時とは違って、楽しくはないと思いたい。こんなことで喜びを感じるほど……トチ狂ってしまった覚えはないよ……。

 

「……、」

「ゲルダ!」

 

 そうこうしているうちに、いつの間にか私達は室内に来ていた。考え事をしていたせいで、全く周りが見えていなかった……危ないな。気をつけないとな……。

 

 さて。話の流れ的に、この釣り目の女性がゲルダってことでいいのかな? 知り合いのヤンガスが呼んでるぐらいだから間違いないよね?

 

 うん……身のこなしは軽いけど、いざ戦ったら簡単に勝てそうな人だな。なるほど、肉弾戦よりも隠密に特化したまさに盗賊タイプの戦闘スタイル、ね……。揺り椅子を揺らしてるだけだけど、筋肉の付き方を見れば大体分かるね。

 

 私みたいに着込んでいるわけでもないし……この人何気なく露出過多だし。そんな装備で大丈夫かな? これなら止められる間もなく首を……って何を考えているんだ、私は。

 

 ……想定通り、交渉は破綻……というか、ビーナスの涙とかいう宝石を持ってこい、だって? 在り処は剣士像の洞窟? ああ、あそこね……腕試しに一回行ってみたかったんだよね……。

 

 まあ、いいや。持ってきたら考えるって言われたのが結構気に食わないけど……。

 

「貴女自体は単に店で馬と馬車を買っただけ……うん。なら……いいか」

「……やっと殺気を収めたね」

「よく考えればキントの野郎以外誰も悪くない……納得はしないけれど」

 

 にしても、戦闘的には弱いかもしれないけど、精神的にはとっても強い人だ。我ながら隠すつもりもない殺気を振りまいていたのに……慌てる様子もなく、冷や汗もかかず、平常心を保っていたんだから。

 

・・・・

 

「姫様は安全でした。迅速にビーナスの涙を入手、交渉します」

「うむ」

 

 軽い走りこみのような小走りで「剣士像の洞窟」へ向かって進む。陛下は問題なく着いてこられている。

 

 ようやくいつも通りに戻ったトウカに安心しながら、トウカが戻ってしまった故にまた襲い掛かってくる魔物を突き伏せていく。「錬金釜」で作ったホーリーランスの威力たるや凄まじい。鉄の槍の比じゃないや……。

 

 報告だけしたトウカが、颯爽といつもの大剣片手に魔物をバターを切るかのように真っ二つにしていく。跳んで体液を躱し、回転斬りをしながら前へ前へ。何時見てもアクロバティックかつ臨場感抜群だね……。

 

 状況が状況だからか無表情のまま、全部無言でやっているのが怖い。それが普通のはずだけど、トウカの「普通」は満面の笑みで笑い声をあげて戦うもんだから、逆に違和感しかない。何時もみたいに必要以上に細切れにしたりすることもなく、急所を的確に切り裂いて居るって感じだ。

 

 まあ、何時もと同じで、無表情でも冷静じゃないみたいで怪我を気にしてないんだけどね !冷静なときは全部躱せるくせに何でこんなにも違うんだよ……! その代わり、防御を捨てただけあっていつもよりさらに強いけどさ!

 

「ベホイミ!」

「ホイミでがす!」

「……ベホイミ」

 

 しばしゼシカ以外は回復魔法を口ずさみながら戦う羽目になるぐらいだった。それでもアモールの水を自分で使っていたけど、そこに気が回るなら是非とも攻撃を躱して戦って欲しいんだけど……。

 

 そして、見えてきた剣士像の洞窟……の入り口は砂地にあって、その近くにある毒の沼地が実に見た目通り毒々しく……そして陰気な……なんて言えばいいのかな。それなのに太陽は変わらず明るかった。そろそろ日が傾いてきたけど……。

 

 にしても今日はなんて濃い日なんだよ……!




この日の行動まとめ

朝、パルミドに着く
昼前、姫誘拐
正午、キントボコボコ
午後、ゲルダのアジト
夕方、剣士像の洞窟到着

書いていませんが昼ごはんはちゃんと食べてます。

トウカ「捨て身!」
エルト「止めて、回復のMPが!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。