【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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タイトル通り日誌形式でお送りします。苦手な方はご注意を。
最初と最後だけいつもどおりの小説形式です。


65話 日誌

 長かった。本っ当に長かった。サザンビークは本当に、本当に遠かった。リーザス村からポルトリンク? ド二からアスカンタ? 

 

 アスカンタからパルミド? いやいやいや。あんなの比べものにならないって。あれは朝のお散歩コースだったんだよ。だって、ベルガラックから一週間も移動にかかったんだよ? 信じられない!

 

 それにさ、沸いて出てくる魔物だって強さが違いすぎるんだし。もちろん、今の方が力も魔法も強いし耐久力もある奴らばっかり。しかもすばしっこいときたら本当に……どうすればいいか分からなくなってハイになっちゃうね!

 

 エルトやゼシカも最後の方はやけになってたし、もともとこんな私だから仕方ない、仕方ない! まだ私の方が早いのだけが救いかな?

 

 それでも私が何回か斬らないと倒れないこともある魔物がたまにいるんだよ? 当て方にもよるけど……この前までそんなことなかったのになあ……。もっともっと鍛錬しないと。

 

 サザンビークの高い高い城門を半ば睨みながら、私の頭の中はわりとお気楽だった。……というより、出来るだけ頭から嫌なことを締め出していただけなんだけども。何時までも忘れている訳にもいかないのは、分かってた。でも私のトラウマには違いなかったんだから……。

 

 因縁は、ようやく決着をつける時が来たのだ。ある意味では、呪われたこの血をかけて。

 

・・・・

 

 旅日誌×日目 記入者エルト 天気快晴、気温高し

 

 ベルガラックからサザンビークに向けて出発する。食料、水共にベルガラックで補給済み。(教科書通りの綺麗な字だ)

 

 休憩を五回を挟み、かなりのペースで道を進んだ。途中、ヤンガスが骨を折るほどの怪我を負う。ククールの回復魔法にて即完治。後遺症なし。

 夕飯時に火打石一つがトウカによって砕かれた。注意する。ご飯の前でひたすら正座されたので許した。許すしかなかった。悪気はなかったようだ。

 朝ご飯は野菜炒めとパン、昼飯はパンと干し肉、夕飯はトウカいわくの「肉じゃが」だが材料不足により単なる肉のスープと化す。そしてパンである。(延々とご飯のメニューについてのレシピが細かい字で書き連ねられているが、作ったのはトウカのようだ)

 

 野宿ではトウカとゼシカが寝ずの番の予定である。聖水節約のための魔法の訓練をしてから就寝した。

 

 

 旅日誌◯日目 記入者ククール 天気晴れ、蒸し暑い

 

 サザンビークに向けての二日目。(細く綺麗な字だ)

 

 休憩八回はぐらい、ペースは昨日よりは遅め。目立った負傷者はなし。ただし俺の喉は枯れた。

 午前、トウカの使っていた盾が粉砕される。魔物に叩きつけて攻撃するからだ、ちっとは考えてくれ……。鱗の盾で代用するも、強度があまりにも足りない。結局何時もどおり盾なしでやるらしいが。午後、エルトの盾が欠けた。鉄製の盾を砕くな。これだからトロデーン組は。

 朝飯はサンドイッチ、昼飯もサンドイッチ、晩飯もサンドイッチだ。俺が当番で悪かったな。トウカがやたら旨い旨いと言っていた。何故かヤンガスに睨まれた。

 魔法の聖水十個消費。聖水一個消費。薬草が多分五つぐらいなくなった。それから……(几帳面な字で消費したアイテムを書き連ねている)

 

 野宿では俺とヤンガスが寝ずの番で、エルトが新しく覚えたトへロスを唱えまくってから寝た。お疲れさん。

 

 

 旅日誌△日目 記入者ゼシカ 天気曇り、気温低め

 

 サザンビークに向けて出発して三日目。(丸みをおびた字だ)

 

 休憩七回、全体的にはペースは遅め。馬車が軽く壊れたから昼は進まなかった。修繕は無事完了して、午後は早めのペースで進んだわ。

 途中、ヤンガスの盾が欠けた。それからククールが胃薬を切らしたみたい。

 朝ご飯はパン、昼ご飯はスープとパン、晩ご飯は魚とパンとスープ。エルトのご飯は美味しいわ。

 魔法の聖水が十二個ククールに飲まれ、朝一番にククールがまんげつ草を二つ食べた。アンタ使いすぎよ。……あと、トウカ。魔物を蹴り砕きながら機嫌が良いけどどうしたのかしら……。(愚痴めいたことが少し書かれている)

 

 野宿ではエルトとトウカが寝ずの番。途中で昼間頑張ったトウカが居眠りしそうだけど起こさないように頼んでおいたわ。

 追記よ。寝ないどころか一晩中静かに鍛錬していたらしい。貴方の体力は何よ。

 

 

 旅日誌▽日目 記入者トウカ 天気晴れ 気温高し

 

 サザンビークに向けて出発し、四日目である。(漢字を書く癖が抜けていない変わった筆跡だ)

 

 休憩十回、ペースは早め。

 魔物の数が多いのでまっぷたつ戦法をとる。なお、本日は私が単騎突撃する余裕もない。エルト、私が足を負傷し、即アモールの水で完治す。まだサザン湖が見えないので焦っていた結果である。さらに精進する。

 朝ご飯に干し肉、昼ご飯に干し肉とパン、晩ご飯は肉と魚とパン。ヤンガスはワイルドだ。旨い。

 魔法の聖水が無くなったらしいので手袋から出して渡した。まだまだあるぞ。

 足を怪我した事に懲りたので魔物を蹴り潰すのはしばらくやめておく。(ククールによる「そうしてくれ」という文字が隣に書かれている)

 

 (丁寧に描かれた道端の風景のスケッチが数枚挟まっている)

 

 休憩中に描いたもの。世界は今日も美しく、そして魔物は沸いてくる。今は魔物を如何にして立方体に切り刻むかを模索している。(斬り方についての考察が長い。イラスト付きで細かい)

 

 寝ずの番はククールとゼシカ。トへロス要員のエルトは唱えて早々に寝た模様。それから……(字が途切れている。無理やり日誌を取り上げられて寝かされたようだ)

 

 

 旅日誌□日目 記入者ヤンガス 天気くもり 気温暑い

 

 サザンビークに進み出して五日目。(素朴で少し大きい字だ)

 

 休憩五回。二回トウカの兄貴からアモールの水をいただいた。

 サザン湖をこえた。ペースは遅い。

 朝飯はサンドイッチ、昼飯はパンと魚、夕飯は肉のスープとパン。エルトの兄貴とトウカの兄貴が作られた。(賞賛が少し続く)

 

 見張り番は俺とトウカの兄貴で、トウカの兄貴が壊れた盾の修繕を試みるらしい。ありがとうございやす。

 

 

 旅日誌●日目 記入者エルト 天気晴れ 気温比較的低め

 

 サザンビークに向けて出発し、六日目。

 

 休憩九回。ここに来て疲労がたまったのか全体的に動きが鈍い。回復魔法が追いつかずアモールの水が宙を舞う。単騎突撃したトウカが回復役とは如何なるものか。(ククールによる「悪かったな」という乱れた文字が書き足されている)

 もうじき着くと地図から読み取れる。

 朝ご飯はパンとスープ、昼飯は干し肉とパン、晩飯はパンと肉と魚。(焼き方について詳しい解説がついている)

 トウカが狩りをするようになって助かるが、誰かあの貴族の野生化を止めれないのだろうか。(ゼシカの字で「アンタが止めなさい」と強い筆圧で書き込まれている)

 

 寝ずの番はエルトとククール。トへロスより先にトウカが聖水を撒いたので魔法はなしである。

 

 

 旅日誌▲日目 記入者ククール 天気快晴 気温暑い

 

 サザンビークに向けての七日目。サザンビーク到着。

 

 休憩二回。後少しだからかペースが早いがてめぇら怪我するな。魔法の聖水消費五。

 エルトとヤンガスがとうとう盾を割る。本当に辞めてくれ。割れた盾で魔物を攻撃するあいつらはたくましい。だがこっちの胃を考えろ。(ゼシカによる激しい同意の言葉が付け足されている)

 朝飯はサンドイッチ、昼飯もサンドイッチだ。だから俺にレパートリーを求めるな。相変わらずトウカが旨い旨い言っていたので追加で作った。そしたら午後、やたらと守られた。餌付けしたつもりはないぞ。

 

 今日は少し早いが宿に泊まって明日に備える。

 

・・・・

 

 一週間分の日誌を読みながら寝てしまったエルトの手からその束を取り上げる。穏やかな顔をしたエルトの気持ちも良く分かるほど、それに書かれた文字は温かく優しいみんなの思いが記されていた。仲間がいるってすごく心に響くことだよねと思うよ。

 

「よいしょっと……」

 

 机に突っ伏したエルトとベッドに放り込むと、それを目撃していたククールに笑われてしまう。なんでお姫様だっこかって? 別にエルトが目を覚まさない抱き上げ方だったらなんでも良かったんだけどなぁ……。自分より身長高い奴を簡単に持ち上げている様子がシュールだって? ……褒め言葉かな?

 

 最早交換日記にも似た使い方になっている……というか半分ぐらいご飯記録……日誌を、そっとエルトの鞄の上に置く。そして私も布団に飛び込んで寝ることにする。久しぶりのベッドは少々疲れの溜まった身体に安らかな眠りをくれそうだ。


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