【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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97話 橋

「……」

「……っ」

「関所が、またでがすか……」

 

 この先にあるのはリブルアーチという、橋の上が街になっている所のはず。彫刻が盛んな活気的な場所。そんな人里のすぐそばのところにある関所が、強大な力で無理やり破られたように……っ!

 

 これは、ゼシカ、か。ゼシカしか、状況からみてもやった人はいない。なんで、なんで……!

 

 不幸中の幸いは、関所の脇にあった張り紙にあった内容。ここにいた兵は恐れをなして逃げたらしい。だから誰も死んでいない。そこにある女という言葉からますますゼシカだと疑いようもなくなったのは、……幸いじゃないけれど。

 

 関所を破られたのを見たことがないククールがその無残な切れ端を見つめ、ポカンとしている。絶句、というのにはすぐに立ち直ったけれど。でもやっぱりショック、だろうなぁ。初見で口説くような相手だもの……。

 

 あの指輪、疎んでたとはいえ大切なものだったでしょ? それを渡す相手だよ……? ゼシカ、人柄を考えたら大丈夫だと思うけど、この先で変なことしないでよね……。

 

「……そういえば、トウカはククールと出会ったすぐぐらいに鉄格子を素手で引き裂いてたよね」

「ん? ああそうだったね。これと比べて言ってるの? こんな大きなのは無理だよ」

「……本当に?」

「うん、無理だよ。こんな、半日もかけずになんて特に」

「時間をかければ出来るんでがすね!」

 

 エルトとの現実逃避の会話を聞いて振り返ったヤンガスの目が輝いている。そんなに無邪気に純粋に他意なく褒められたら、すごく照れる。……ヤンガスはもっとエルトに尊敬を集中したらどう?

 

「不可能じゃないけど……三日ぐらいで」

「流石でがす!」

「ククール、回復役なのになんでバイキルト唱えてるの」

「……うるせぇな」

 

 酷いよエルト! ククールのレイピアさばきは最近メキメキ良くなってるっていうのに! バイキルトかけたら敵の喉笛突きまくれるんじゃない?

 

 何時かその剣でジゴスパークできるようになったら見せてね! ……エルトも! 二人ならなんかできる気がする! 特にエルトなんて、地獄からも天からも雷呼べたら最強じゃない?

 

 ヤンガスも……そうだなあ。ビックバンとか出来そうだよね! 話に聞いたことある、強力な技。パワフルなヤンガスなら出来るさいつか!

 

 かくいう私は魔力を使う技、使えないし……せいぜい音速を超えれたらいいなと思ってるから剣気だけでも音速に挑戦してみるね!

 

 もちろんゼシカをみつけたあとに!

 

 必死で気持ちに蓋をして、無理やり私たちは明るくなった。そのまま、無残に破られた関所をくぐり……その先で待ち構えていた魔物を早速カレー肉の三倍ぐらいの大きさに切り刻んだ。

 

 ばしゃばしゃ降り注ぐ魔物の血をひらりひらりと避けながらエルトが薙ぎ払って、ククールがはやぶさ斬りして、ヤンガスの蒼天魔斬が炸裂し、その辺りはあっという間に殺人現場のようだよ! 殺魔現場? まぁ魔物は倒しても罪どころか感謝されるけど!

 

 ……ああ、ゼシカがいないと寂しい。ゼシカのことが心配。そしてなによりゼシカがいないと魔物全体にイオナズンしてくれる存在がいないから、全然魔物が減らない。空虚を嫌でも実感しつつ、私たちは進む。

 

 でもでも、張り切っていくぞ! 張り切るしかないぞ!

 

 さてさて! 道行く私たちの邪魔をするなら……こうやって、ずばっと切り裂いて、肉の三枚下ろしも、お手の物、だよ!

 

・・・・

 

 関所から少し行ったところにあるのはリブルアーチ。そこに着けば、なんともそこは明るい感じで拍子抜け。いやいや、恐慌状態だったら困るけどさ。身構えてたからね。

 

 とりあえず変わったことはないか、ゼシカは来てないかと探す。街中とはいえはぐれるのは勘弁して欲しいので目立つククールに色合いが目立たないトウカを頼んでおいた。

 

 ……うーん、僕にはよく分からないけど、魔法に敏いククールなら何か感じるかな?まぁ、……大人しくしてないトウカに付いて行って既にどこにいるか分からないんだけど。え、早くない? 一瞬目を離した隙に……。

 

 仕方ないのでトウカに置いていかれたヤンガスと一緒に街を回ることにする。

 

 ……とはいえ、なんて言おうかな。今までは見るからに怪しい白塗りメイクの道化師の男、名前はドルマゲスといって、長い杖を手に持っているんですって言えばよかったけど……。長い杖を持っていて、茶髪のツインテールでスカートを履いた、美人? ……難しいなぁ。

 

 途中、結構な勢い……街の中だからあれでも加減してるのは分かる……で猛然と進み、人の良さそうにニコニコしていろんな人に話しかけるトウカの姿が見える。後ろで振り回されたのかなんとなく背中が寂しく見えるククールが必死で追いかけて……。

 

 あれ? ククールってスマートに女の子をリードするような女ったらしって思ってたんだけど、実はデート……僕はそんな経験はないけれど……で荷物持ちになって振り回されているタイプなのかな?

 

 違うな。鉄かぶとと大剣、そして髪の毛がアシンメトリーに短くなったせいで余計旅の剣士にしか見えないトウカが洗練された雰囲気を出して誑しこんでいるようにしか見えないから色男として自信を粉砕されてる、とかそんなとこだろうな。

 

 トラペッタで僕が見た光景を見ているのか……悲しいな。悲しくなってきちゃった。ヤンガスもそう思わない? ……あーー、うん。トウカの方がククールより強いから当たり前って? そうかもね、そうかもしれないけどククールがいなかったら戦線崩壊もいいとこだからそうとも言い切れないさ……。

 

 とりあえず、僕は目立つ屋敷の方へ行くことにした。トウカに街の方の情報収集は任せといても大丈夫だと思うし。

 

 教会の横にある大きな屋敷はなんだか変わったデザインで、住んでる人は変わり者だろうなと僕は思った。ちょっと嫌な予感もした。

 

 嫌な予感が的中しなかった試しはないから、それだけで僕もううんざりだよ……。




トウカ「そこの麗しのお嬢さん、ちょっとお話はよろしいでしょうか?いやいや、怪しいものなんかじゃないさ。ほんの少し、……ボクを助けてくれない?」
ククール「それ俺の役目」

普段の仲間以外へはデフォルト:キザ は養父の影響

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