金にがめつい冥冥と親和性がある気がして設定しました。
冥冥との恋愛に至るまで、いくら彼女から借金をするのでしょうか?
勢いで書いてますので、何卒ご容赦ください。
「……で、これが君の『貸付票』だ。サインしてくれるかな?」
呪術高専東京校、二年の教室。
入道雲が湧き上がる夏の昼下がり、同期の冥冥は、ひらひらと一枚の紙を俺の目の前に差し出した。
「何これ?」
「何これ、じゃないよ。君がさっきの任務で、私の『烏』を盾に使った分の使用料。あと、術式の解説をしてあげたコンサルタント料、それから……」
彼女は長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳を細め、艶やかな唇をわずかに吊り上げた。
その表情は、彫刻のように整った美貌をより一層際立たせている。
だが、その視線の先にあるのは俺という人間ではなく、俺の財布の厚みだ。
彼女は楽しげに、そして冷徹に、項目を指先でなぞっていく。
その細い指先には、すでに呪力の籠もった黒いオーラが、微かに、しかし確かに漂っていた。
「……合計で、二十万。学生割引適用済みだ」
俺――金元 零(かねもと れい)は、深いため息をついた。
この夏に一般家庭から呪術の世界へ足を踏み入れ、高専に編入してきたばかりの俺にとって、この金額はあまりに重い。
(この女……相変わらず、銭ゲバだな)
前世の知識で、彼女が徹底的な守銭奴であることは知っていた。だが、実際に同期として接してみると、その徹底ぶりは凄まじい。彼女にとって、呪術も、仲間も、そして自分自身さえも、全ては「金」という等価交換の記号に過ぎないのだ。
「悪いが、今持ち合わせがない。……『出世払い』じゃダメか?」
俺は、精一杯の愛想笑いを浮かべながら言った。
「出世払い? 面白い冗談だ。君の術式の有用性は認めるけれど、今はまだ二級術師。そんな『不確実な未来』に、私は投資しない。私はいつだって、今現在の君の価値にしか興味がないんだ」
冥冥は、鼻で笑うように言い放った。
彼女にとって「無償の奉仕」や「絆」などという言葉は、辞書に載っていない死語なのだろう。
「……じゃあ、俺の術式で、『貸し』にしてくれないか?」
俺は、最後の手段に出た。
「君の術式……『負債呪法』かい?」
冥冥の瞳が、一瞬だけ獲物を見つけた猛禽のように鋭く光った。
俺の術式は、相手に攻撃を与える代わりに呪力を「貸し付け」る能力だ。
貸し付けた呪力には利息がつき、一定時間を過ぎれば複利で膨れ上がる。
そして、相手の容量を超えた瞬間、相手は「破産」し、呪力を完全に練り出せなくなる。
「君の『負債呪法』は、私にとって実質的な『利益』にならない。むしろ、君が私に『貸し』を作るなんて、百年早いんじゃないか?」
冥冥は、挑発するようにくすくすと笑った。
「……じゃあ、こうしよう」
俺は、ポケットから千円札を一枚取り出し、机の上に置いた。
「とりあえず、これは手付金だ。残りの十九万九千円分は後日必ず払う……で…どう?」
「話にならないよ…零君。時は金なり、金はすぐに支払うべし…商売の基本だ。それに支払いの残りには利息が付く…君が一番理解しているはずだよ」
やれやれと…両手を広げながら、わざとらしく呆れている冥冥。
零は彼女の守銭奴ぶりにだんだんとムカついてきたが、今日の任務で呪霊の攻撃から自分の身を守ってくれたことや、日頃から呪術界のいろはを教えてもらっているせいで強く言えないのもまた事実だった。
「あぁ、利息も含めて後日きっちり返すさ…冥冥」
半ば諦めの境地にたどり着いた男は、脳内で借金返済のために必要な呪霊討伐の任務を計算していく……
「そうかい、そこまで君が言うなら…残りはツケておこうじゃないか。とはいえ、今日の分の利息くらいは貰いたいものだ」
「いや、冥冥…俺ほんとに手元に現金がなくて…」
この高専に転入してから家具や家電を購入したせいで、零の口座には雀の涙ほどの貯金しか残されていなかった。
呪霊を討伐した任務の報酬が口座に振り込まれるのはまだ先である。
「家族から渡されたクレジットカードがあるだろう?」
悪魔がいた、名を冥冥という。
金元 零の冥冥借金額 残り 十九万九千円也。
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