よく来たね、ボクだけが勝つ教室に   作:透明な唐揚げ

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粗があると思いますが多少は見逃してください()書きたいものを書いたので良ければ。


ホワイトルーム卒業生代表ですが何か?

春の桜が舞い散る外の景色とは裏腹に、バスの車内は実に騒がしかった。

「あなたが譲りなさいよ。年長者を敬えないの?」

「それこそナンセンスだねえ」

OLが、お婆さんのために席を譲らせようと、優先席に座る金髪の青年と口論している。

はっきり言って時間の無駄だった。

この光景を記憶することも、事態を解決に導くために脳を使うことも。

ボクは窓に映る自分の無表情――恐ろしく精巧なその美貌を眺めながら、思案にふける。

……つくづく、出来すぎだ。

育ててくれた孤児院から売られ、入った先のホワイトルーム。

人を人として扱わない、ただ能力を研ぎ澄ますためだけの箱庭。

だが能力の非凡さゆえに、そこもすぐに追い出された。

皮肉な話だ。

求められた通りに結果を出したら、今度は“規格外”として排除されるのだから。

数多の引き取り手の中から選んだのは、裕福な家庭。

不自由のない環境。退屈と引き換えに、余計な刺激のない場所。

そして進学先に選んだのは、高度育成高等学校。

正直、進路としては大して代わり映えしない。

結局のところ、どこへ行こうと“評価される側”であることに変わりはないのだから。

この世に転生してからというもの、理由の説明もなく与えられたチートスペックの身体。

何もかも与えられたままここまで来ると、逆に怖くもあり、退屈でもある。

そんな十五歳少女。

雪響です、はい。

前世のボクはゲーム廃人でした。

いわゆる厳選厨というやつで、時間の許す限り理想個体を粘り続ける、昼夜逆転の生活を送っていた。

人生の夏休みとも称される大学時代。

友人に誘われた合コンもすべて蹴り、ひたすら家でゲーム三昧。

努力というより、執着。

結果というより、過程そのものに囚われていた。

そして不幸にもマンションの火事に巻き込まれ、そのままお陀仏――というわけだ。

もっとも、その記憶も曖昧だ。

というより、前世の情報は「知識として知っている」に過ぎない。

それでも、神がいるのなら一つだけ願いたい。

やり込んでいたゲームのデータを返してほしい、と。

……まあ、それはそれとして。

そんなボクが、何の努力もなく“6V色違い”みたいな美少女に転生したのは、つい最近のこと――ではなく、かれこれ十五年も前の話になる。

 

 

「ふあ……」

 

小さく欠伸を漏らしながら、バスを降りる。

先ほど見ていた夢を思い出そうと、自らの銀髪を指先で弄びながら歩く。

けれど、掴みかけた記憶は指の間から零れ落ちるように消えていく。

 

視界の端で、立ち止まる影。

どうやら、これから同級生となるらしい少年少女が会話していたようだ。

黒髪の少女は、きつめの視線で少年を一瞥すると、そのまま立ち去っていく。

気にならない、と言えば嘘になる光景だった。

 

「ねえ、キミ。あの子は?」

 

「ん?」

 

振り返った少年の顔に、妙な既視感を覚える。

どこか懐かしいような――

 

「キミ、もしかして綾小路かい?」

 

「…………まさか、響か」

 

「ははっ。五年ぶりだね、最高傑作くん」

 

「何をしに来た。お前はホワイトルームから追放されたはずだが」

 

「それはこっちの台詞だよ。キミこそ、あそこから逃げたのかい? そんな気概があるとは思わなかったけど」

 

「……それをここで話すつもりはない」

 

まさかとは思うが、バスも同じだった可能性があるな。

ボクともあろうものが、なぜ気づかなかったのか。

 

「ふうん、まあいいや。あとで幾らでも時間はとれるし、またね」

 

ボクが手を振ってやるのに対し、綾小路は惜しげもなく去るのを待っているようだった。

 

「何という傲慢、何という失礼」

 

「行かないのか」

 

静かに問う瞳に感情というものは一切感じ取れず、ただ虚空を見つめるようなそれで標準をボクに合わせてきた。

その目をやめろ、不快だ。

 

「決めたよ、一先ずのボクの高校生活の目標。キミを奴隷にすることさ」

 

「勘弁してくれ、オレは普通の高校生活を送りたいだけだ」

 

「最高傑作も冗談を言うんだな」

 

「お前こそ冗談はよせ完成品。あそこのカリキュラムを正攻法で、1年かからずにクリアした怪物をオレは他に知らない」

 

まあ最速でクリアした代わりに天才判定されて追い出されたわけだけど。

結局学校に着くまで一緒に歩いた。

 

クラス分けによればボクはAクラス、綾小路はDクラスとのことで、仕方なく彼を野放しにすることとなった。

 

「そういえばあの黒髪の子紹介してよ、ボクも仲良くなりたい」

 

「駄目だ、何をする気か知らないが。そう安々とクラスメイトを危険に晒せない」

 

「クラスメイトなんだ、あの短時間で名前を教えてもらうなんて流石じゃないか」

 

「……」

 

焦りもあったのだろう、迂闊に情報を流したのかはたまた狙って隙を晒したのか。

十中八九後者だろう、ことこの男に限ってクラスメイトの心配などするはずもない。

入学初日ならなおさらで、少しでもボクの油断を誘えれば罠に嵌める気だろう。

常人がボクの心を読めば疑心暗鬼の塊のように見えるかもしれないな。

 

「まあ好きにすればいいさ、普通の高校生活とやらに飽きたらボクのところに来るといいよ」

 

「天地がひっくり返ってもそんなことにはならないから安心しろ」

 

 

雪響という少女がいた。

天才という言葉は彼女のためにあるとさえ言われ、誰もが敬服した。

天災という言葉こそ彼女のためにあるとされ、皆が畏怖した。

 

綾小路清隆は、未だ整理のつかない思考を無理やりまとめながら、Dクラスの教室で静かに頭を悩ませていた。

視線は前方に向けたまま。

だが意識は、まるで別の場所にある。

 

「どうかしたの、体調が優れないように見えるけど」

 

「何でもない、少し考えごとをしていた」

 

簡潔に答える。

それ以上踏み込ませないための、最低限の返答。

 

雪響という少女がいた。

ホワイトルームに、僅か一年だけ籍を置いた少女。

たった一年。

だがその短すぎる期間で、あの場所の“過酷では済まされない”カリキュラムを突破した。

例外。

規格外。

本来想定されていない存在。

天才を作るための施設に、偶然紛れ込んだ“完成された何か”。

――ホンモノの天災。

それが、今。

自らを獲物に据えている可能性がある。

対処法は幾らでも思いついたが、その全てが意味を成さないことを、理屈ではなく直感が告げていた。

 

いっそのことアレを止めることを諦めてしまうのはどうだろうか。

災害のようなものだ、不幸に見舞われたのだと嘆く権利は被災者にある。

 

だがそれは思考の破棄に等しい、敗者の考え方そのものだ。

オレはそれを許すつもりはない。

 

いつの間にか担任の茶柱は話し終えていた。

配られた端末を起動すれば、目を疑いたくなる現実と向き合わされた。

 

『3年間よろしく』

 

一体どうしてこの短時間で学校のセキュリティを抜け、俺の端末にメッセージを送れるのか。

事前にハッキングをしているにしても驚異的な実行能力を有している事実に変わりはない。

いつの間に登録された連絡先にメッセージを返す。

 

『頼むから退学してくれ、俺の平穏な高校生活のために』

 

『一緒ならいいよ?』

 

ため息が漏れる。

何を言っているんだこの化け物は。

 

『何はともあれボクはキミを歓迎するよ。

 

よく来たね、ボクだけが勝つ教室に』

 

 




少しでも良ければ評価等よろしくお願いします。
主人公のスペックはRTA目指してるレベルで高いです。協調性以外は全てA+を超えています、ホワイトルーム攻略とかそれくらいないとまあ無理だよね。
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