よく来たね、ボクだけが勝つ教室に   作:透明な唐揚げ

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今回も創作だからと好きに書いていますが、おかしいところがあれば指摘をお願いします。


お金儲けする災害少女

皆は“すごいとっくん”をご存知だろうか。

某有名対戦ゲームにおいて、長く苦しい厳選作業を短縮するために用意された、いわば公式の救済措置。どれだけ個体値に「まずまず」や「ダメかも」が混じっていようと、修行僧にそれらしい道具――瓶の蓋のようなものを渡せば、あら不思議。その能力は一律で「きたえた!」へと書き換えられる。

ある意味ではa0厳選、こほんこほん。

積み重ねを、なかったことにする仕組みだ。

あるいは、過程を省略して結果だけを与える装置。

ホワイトルームとは、言ってしまえばそれの現実版だった。

人間という個体を選別し、削ぎ落とし、磨き上げる。

無駄を排し、最短距離で“最適解”へと至らせるための箱庭。

――元から6Vだったボクには、ほとんど意味のない場所だったけれど。

今にして思えば、あれは紛れもなく非人道的で、許されざる施設だったのだろう。

人を人として扱わず、ただ性能だけを見て完成度を競う世界。

……もっとも、

厳選厨だった前世のボクからすれば、何の努力もなく与えられたこのチートじみた転生も、同じくらい性質が悪い。

過程を踏まずに得た結果など、味気ないにもほどがある。

本来なら、理想個体を求めて試行錯誤し、時間を費やし、時には妥協しながら、それでもなお粘り続ける――その過程こそが楽しいはずなのに。

最初から完成されていては、何も始まらない。

何事も、過程こそ楽しむべきだ。

結果ばかりを性急に求めていては、あっけなく終わりが訪れてしまうのだから

 

「なあ、まだやるのか」

 

「くっ、やれるものならやってみるといい。勝てるならな!」

 

ボクが悔しげに涙を浮かべれば呆れた表情で綾小路が嘆息する。

 

「いや分かってるだろこの程度でオレが負けることはない、これ以上やると目立ち過ぎる」

 

「およそ半数以上の部活を道場破りしておいて、“目立ちたくない”は少し無理があるんじゃないかな」

 

「やらないとプライベートポイントを0にすると脅されたんですが」

 

淡々とした返答。感情の起伏がなさすぎて余計シュールだ。

現在、綾小路はボクの指示通り覆面を被っている。

見た目だけなら、どこからどう見ても銀行強盗だ。

実際のところ、やっていることも大差ないのだけれど。

チェス部は部長を含めて壊滅。盤上に突っ伏す者、泡を吹く者、無言で立ち去る者――反応は様々だが、結末は一つ。

他の部活も似たようなもので、途中からは警備員を呼ぼうとする動きすら出てきた。

そのたびに、「彼には顔を見られたくない事情がある」とそれらしく濁してはみたが、

結局やっていることがこれなので、すぐに嘘だと気付かれる。

「プライベートポイントを賭けた試合、これが合法ならたしかに新入生をカモにするのは本来真っ当な初心者狩りだったんだろうな」

 

「もう少しゆっくりやればよかったと、そこはボクも反省しているよ」

 

「そういう問題なのか?」

 

綾小路の携帯がぴったり300万のプライベートポイントを表記しているのを確認し、ボクは一先ず引き上げることにした

 

「どうだい、ボクに従う気にはなったかい?」

 

「なるわけがないんだが」

 

「やれやれこれだからホワイトルーム生は、お金の価値がなんたるかを知らないんだ」

 

三百万。普通の高校生にとっては破格どころではない額だ。

それを、まるで道端の石ころでも見るかのように扱う。

 

「あまり大っぴらにそのことを喋るな」

 

二人、人気の少ない通路を選びながら特別棟を進む。

こちら側から出たほうが追跡は少ない、そんな合理的な判断だろう。

 

「安心しなよ。声の録音も録れてるし、ボクは全然キミを表舞台に引きずり込めるよ?」

ひらひらと端末を揺らしてみせる。

証拠。

逃げ道を塞ぐには十分すぎる材料だ。

 

「……明日から裏声で通すか」

 

「…………」

 

一瞬、理解が遅れた。

次の瞬間、頭の中に光景が浮かぶ。

教室。

皆が静まり返る朝。

無表情のまま――

 

『おはよう堀北』

 

妙に高い声で挨拶する綾小路。

「昨日は喉の調子が悪くてな」

と、裏声のまま淡々と説明する姿。

 

「……っ、ぶふっ」

 

耐えきれず、吹き出した。

 

「なるほど、その手があったか。強行策にしては……くくっ、随分と体を張るじゃないか」

 

肩を震わせながら言うと、当の本人は至って真顔だ。

冗談で言っているのか、本気なのか判別がつかないあたりがまた面白い。

 

「で、いくら払えばやってくれる?」

 

興味本位で尋ねてみる。

 

「2000万」

 

「うい」

 

「一億」

 

「わかった」

 

「八億」

 

「了解」

 

「やめよう」

 

ふいに綾小路がため息混じりに言った。

 

「なんでタイマンでオークションが成立し始めてるんだ」

 

「いいじゃないか。市場原理ってやつだよ」

 

「需要と供給が成立してない」

 

「ボクには需要がある」

 

「オレにはない」

 

「そうかい」

 

八億くらいなら現実的に用意できそうだっただけに、少しばかり惜しい。

まあ、金で動くような男なら、ここまで面白くはないのだけれど。

気付けば公園のベンチに2人座り、しかし綾小路は未だに覆面を被っていた

 

「暑くないの?」

 

「お前と一緒にいたらバレるだろ、むしろ素顔が割れる」

 

そりゃそうか。

あれだけ派手に暴れた直後だ。

今さら素顔を晒せば、面倒ごとにしかならないだろう。

 

「ボクが去るまでそのままでいるつもりかい?」

 

「まあな」

 

「徹底してるね」

 

肩をすくめる。

こういう無駄のなさは、嫌いじゃない。

 

「ところでこの学校の仕組みについてはどこまで気付いたかな?」

 

「直球で聞いてくるんだな、もう少しまわりくどい質問をしてくると思っていた」

 

「キミには必要ないだろう?ボクは過程は楽しむタイプだけどただの無駄は嫌いなんだ」

 

「……そうだな、」

 

そうして綾小路からの推論は語られた。

まとめられた情報は正確で概ねボクが考えていたものと等しかった。

 

「ところで綾小路、来月からもらえるポイントが減るとするなら今が稼ぎ時だとは思わないかい?」

 

 

二日目の部活動紹介。

新入生の大半が体育館に集まるこの時間は、学校内でもっとも注目が集まるタイミングの一つだ。

だからこそ――ボクはその“舞台”を、10万プライベートポイントで買い取った。

壇上では、生徒会長である堀北学が簡潔に場をまとめる。

ざわついていた空気が、一瞬で静まり返った。

さすがだね。ああいう“空気を支配する力”は、少し羨ましい。

そして、その静寂を引き継ぐように、ボクは軽やかにステージへと歩み出た。

ちなみに綾小路は「目立つ」と言って同行を拒否した。

まあ、彼の性格なら当然といえる。

――けれど、別に一人でも問題はない。

 

「はいはい、注目。皆さんはじめまして。1年Aクラスの雪響です」

 

軽く手を振りながら、場の視線を一身に受ける。

初対面のはずなのに、興味と警戒が半々といったところか。

悪くない反応だ。

 

「今日は、これから新生活を始める皆さんに“ちょっといい話”を持ってきました」

 

一拍置く。

こういうのは、焦らした方が食いつきがいい。

 

「――題して、“仮想通貨で儲けよう計画”」

 

ざわめきが広がる。

だが、予想通りだ。全員が初めから飛びつくわけではない。

むしろ、それでいい。

最初から理解している“古参”より、

あとから知ろうとする“新規”の方が、ずっと扱いやすいのだから。

スクリーンに映像を映す。

言葉を重ねながら、身ぶり手ぶりで視線を誘導する。

目を逸らす暇なんて与えない。

 

「難しく考えなくて大丈夫。仮想通貨がわからない人は……そうだね、“株みたいなもの”だと思ってくれて構わないよ」

 

「これを“ビットプライベートポイント”とでも呼びましょうか」

 

あえてそれっぽい名前をつける。

というかパク…リスペクトだね。

そもそもプライベートポイントがデータ資産なのにビットをつけるあたりわりと適当だった。

 

「今なら“初回セール”ということで、通常よりも安く手に入ります。将来的に価値が上がれば――もちろん、差額はそのまま利益になる」

 

スクリーンにQRコードを表示する。

事前に用意しておいたサイトへ誘導するためのものだ。

数人がスマホを取り出すのが見えた。

いいね、反応が早い。

この学校の制度は実に優秀だ。

プライベートポイントには税がかからない。

だからこそ、こういう“疑似的な経済遊び”が成立しやすい。

 

「損をするか得をするかどうかは、皆さん次第、自己責任です。けれどチャンスは、いつだって早い者勝ちですよ?」

 

軽く笑ってみせる。

さて、どれだけ釣れるかな。

 

 

「雪響か」

 

壇上でプレゼンテーションを行う少女を、静かに見据える。

今や体育館全体の視線は、完全に彼女一人へと集約されていた。

話術、間の取り方、視線の配り方。

どれを取っても、新入生の域を明らかに逸脱している。

堀北学は彼女にこの舞台を売った瞬間から関心を隠せずにいた。

 

「いいだろう」

 

彼は単なる興味や好奇心ではなく、目の前の少女が持つ“価値”を見極めていた。




仮想通貨うんぬんは大分黒いことをしています。説明は描写上かなりカットしているだけで情報開示自体は問題ないです。しかし、オリ主は事後承諾で学校や生徒会に事業の監視をしてもらう交渉をします。
やはりグロいレベルの黒。高育じゃなきゃ許されない。
ちなみに綾小路のプライベートポイントを0にすることが脅しとして成立するのはポイントの譲渡ではなく消失だからですね。墓穴を掘るようなことをオリ主はしません。
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