⦅未完⦆【祝・可愛い賞】ゴミ山の上の極彩&三島由紀夫とコンソメ味の恋をしたら、世界が404エラーになった件   作:夏目陽光

7 / 12
ゴミ達 鸚哥 1

1

「(溢れんばかりの緋色、萌葱色、瑠璃色の羽を、黒死病の如き鴉の群れの中で誇示し、ペリットを吐き捨てて)

昇れ、空の酔いどれめ! その黄金の垢を、この極彩色の祭壇に塗りたくれ。

霧を剥ぎ、暴け! 黒き僕(しもべ)どもの死臭を、我が羽の輝きで焼き殺してやる。

(自らの瑠璃色の羽を一本、残酷に引き抜き、溢れる血を眺めて笑う)

黙れ、食客(ノミ)ども。この燃えるような萌葱(もえぎ)の血も、

砂時計の最後の一粒が落ちる頃には、煤(すす)けた暗闇に呑まれる毒よ。

(一羽の鴉が、足元に酸っぱい木の実を差し出す。インコはそれを一瞥し、冷酷に言葉を続ける)

さらばだ、この『鴉の巣』。シロアリに食い荒らされた、枯れ木の骸(むくろ)よ。

天の冷笑家(かみ)よ、見ておいでか。この悍(おぞ)ましき見世物(ショウ)の主役は――

(不意に、足元の実の芳香が鼻腔を突き、首が勝手な角度で傾ぐ。無意識に実を掴み、夢中で齧り、果汁を撒き散らす。……ハッと我に返り、嘴を拭う)

……チッ、甘美なる毒め! この肉の空洞(うつろ)で鞭を打つ高利貸しを、一瞬でも黙らせたか。

(インコは、冷気を切り裂くように電信柱の頂へと飛び移り、眼下の街を睥睨する)

見よ、下賤なる定住民(にんげん)どもが築きし、この不浄の盛り土を!

青き網の牢獄に閉じ込められし、我らが『生の残滓(のこりかす)』が、

夜明けの露に濡れ、甘美なる腐敗の芳香を放っておる。

存在の重み? 魂の行方? そんな贅言(ぜいげん)は、肥溜めのドブネズミに食わせろ。

我らが求むは、陽光に炙り出された鉄の匂い。

昨日まで跳ねていた心臓が、影を伸ばす速さで、今、砂に還る!

(インコは不意に首を180度回転させ、背後に控える黒き影――鴉の群れを鋭く睨む)

行け、我が黒き爪先(つまさき)ども!

あの青き網を、嫉妬に狂う情婦の指先のごとく引き裂け!

なぜ私はこの羽を毟る? 臆病を隠すためか? 否、思索は死(くさ)りゆくペリットと共に干からびよ!

(鴉たちが一斉に舞い降り、網を食い破る狂乱を眺めながら、極彩色の翼を広げ急降下する)

行かん。すべてが塵に帰る前に。

奪え、奪い尽くせ。この嘴の届く限りの生を、この輝きで蹂躙してやる。

聖なる沈黙など、もはや――

(喉の奥で、美しいさえずりが、濁った捕食者の咆哮へと反転する)

は、ははっ! 踊れ、踊れ、黒き従僕ども。

脂ぎった肉の骨、萎びた果実の皮、それらすべてが今や我らが王国の宝だ。

(一羽の鴉が、網の隙間から手に入れた『銀色のアルミ箔に包まれたパン屑』を運び上げ、インコの足元に捧げる。インコはそれを一瞥し、無造作に嘴で突き崩す)

これだ、この鉄を舐めるような冷たき感触!

昨日まで温かな炉端で語られていた平和など、この一撃で砂に帰してやる。

人間の良識という名の薄汚きカーテンを、我らが嘴でズタズタに切り裂き、

その内側にある『空虚』を、この極彩色の輝きで照らし出してくれよう。

(路地の奥で、窓が開く音。人間の怒鳴り声。鴉たちが一瞬怯むが、インコは緋色の翼を大きく広げ、威嚇するように叫ぶ)

騒ぐな、地を這う無能どもめ!

この朝の光を汚し、汚泥の中より生を毟り取ることこそ、我らが天命。

奪え、奪い尽くせ! 網の底に眠る最後の一片(ひとひら)まで。

聖なる沈黙など、もはや――

(人間が投げつけた空き缶が、電信柱を叩き、金属音が響く。インコは嘲笑を浮かべながら、黒き軍勢を率いて一気に急降下する)

――カ……、カ、ァッ!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。