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ゼットン星人とピグモンが険しい顔つきでビデオ通話を行っている。
「ヒッポリト星人の正体が掴めたんですか?」
「えぇ。GIRLSの調査部なだけあって、調査部の目をかいくぐるのは非常に巧妙でしたが、一部の者しか知らないGIRLSと懇意の私立探偵がいるのよ」
「もしかして、ブルーコメットですか?」
ゼットン星人はニヤリという笑みでそれに答えた。
「ヒッポリト星人は最初から調査部にいたわけではないらしいわ。
シャドウがまだシャドウズと呼ばれその存在が秘匿されていた……貴方も私も知らない時期に、シャドウズを殲滅するための特殊な部隊があったそうよ。
いくつかあったそうだけど、彼女はそこの部隊の一員だった。
今はシャドウとして一般に周知されるようになり、その部隊はひっそりと消えて隊員達も普通のGIRLSの職員として働いている。もちろん、過去を隠したまま」
「だからシャドウについてもあれだけ詳しかったわけですか。でも、何でそれが分かったのですか?」
「彼女は誰かと連絡を取り合っている。口ぶりからすると、その者も元隊員。
何を目的としているかまでは……っ!?」
話の途中、ゼットン星人が突然目を見開き驚いた様子でピグモンの後ろを見た。
不審に思ったピグモンが後ろを振り向くと……。
「その話、本当ですか?」
古代超獣スフィンクスがそこにいた。
* * *
突然現れたGIRLSの怪獣娘も、それに捕らわれたバッキーとクロコも、何が起こったのか理解できずにいるベムスターも、おれは目を合わせることができずにいる。
「レッドキング、どうしてここが分かったの……?」
「何言ってるんだお前、お前が知らせてくれたんだろ?」
その言葉に三人とも青ざめた。ベムスターがおれたちのことを知らせたのか?
レッドキングが見せたソウルライザーには、確かにベムスターからの連絡がある。
『超獣娘の集会を見つけた。一人で参加をしてくるので後から合流するように』
「何でゴモラもいるかは分からねーけどな」
「そう……裏切ったんですね」
アギラ達に囲まれているクロコが呟いた。
「ど、どういうことですか……?」
「そうですよね、私達よりもこの人達の方が……ずっと一緒にいましたもんね」
クロコは涙目になりながらもベムスターに言葉を投げかける。
ベムスターは言葉どころか呼吸さえも難しくなっている。
「さっきから話が飲み込めないよ!」
「こいつは私達の仲間なんだよ!
ベムスターは偽の名前で! 本当は宇宙大超獣改造ベムスター!
私達超獣娘に! 発見された超獣娘の情報をずっと横流ししていた!」
レッドキングに頭を押さえつけられていたバッキーが荒らげた。
──場が凍りついた。
「ベム、何でそんなことを……?」
隣りにいたゴモラへの呼びかけにも反応せず、目を瞑り耳を塞いでうずくまってしまった。
「そうだ、本来必要のないことだ。怪獣娘はGIRLSが保護する、超獣娘だって同じだろ」
それでもレッドキングは冷静に話している。
「うるさい! 怪獣娘がみんなあんた達のように平和に過ごせてるわけないじゃん! だから……」
「そうスフィンクスが言ったのか? その上でオレ達は保護している。お前らがやっているのは怪獣娘の否定だ」
その言葉にバッキーは言い返せず、顔を歪ませながら震えることしかできていなかった。
「ベムさん、答えてください。なんであたし達を裏切ったんですか!」
「知らない!」
「あたし達とあいつらと! どっちの味方なんですか!」
「……分からない」
「分からないなんてないですよ! だって貴方も超獣娘で……」
「でも、貴方達よりもゴモラちゃんと一緒にいたほうが……」
「なんですかそれ! なんなんですかそれ!?」
口論が終わりを見せないので、おれとゴモラはそれぞれクロコとベムスターの静止に向かった。
「ごめんなさいエースキラーさん。ここから先は近づかないで」
……こちらはアギラに止められてしまった。
「ベム、ベムが本当はあいつらの仲間って本当なの?」
「うっ、ううう……」
ゴモラの方は混乱しているようで、本人さえ静止の意思が希薄だった。
「じゃあ、何で……今回のことをレッド? に教えてくれて……」
「知らないの! 本当に知らないの!
私はそんなもの送ってない! 裏切るつもりなんてなかったの!
ずっとこのまま黙っていることができれば、どっちの敵にもならなければ……!」
「あたし達の仲間なんですよ貴方は! そんなこと言わないでください!」
「私の気持ちなんて……誰にも分かるわけがないの! 分かるわけがアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ベム!? きゃっ!」
──ベムスターはゴモラを振り落とし、立ち上がったその目は真っ赤に光っていた。
「ねぇなんかヤバそうじゃない?」
「どこかで見たような……ッ!?」
クロコを捕まえていたミクラスとウインダムが隙を突かれてクロコに吹き飛ばされた。
そしてベムスターを睨むその目は、こちらも真っ赤に光っている……。
「裏切リ者……裏切リ者!」
「クロコ……?」
「お前ら! あいつらは暴走している、取り押さえろ!」
「ムカつく……」
「何っ?」
「ムカつくムカつくムカつくムカツク!!!!!」
突然叫びをあげたバッキーはレッドキングが油断した瞬間に頭の角を発射した。
パリーン!
「嘘だろッ!?」
何も無い場所の空間が割れ、異次元への裂け目が生まれたところへレッドキングを放り投げてしまった!
「ウワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
そう叫んだバッキーの目もやはり……。
「みんな、みんなどうしたの……?」
「エースキラーさん離れて! あれは、怪獣娘の暴走!」
アギラに逃げるよう促された。あれが暴走、おれも以前はあんな風だったのか。
「おいエースキラー! 一つ教えろ!」
異次元への裂け目から顔を出したレッドキングがこちらへ叫んだ。
「あのバキシムとベロクロン、超獣娘になってそんなに日が経ってないのか?
そんなことあるわけないよな。シャドウとの戦いで見せた連携は素人ができるもんじゃない」
おれは頷いた。
「先輩、どういうことすか?」
「怪獣娘はソウルライザーを使わず変身した時、そしてソウルライザーを使って変身した時も、変身し初めは暴走してしまう時がある。
だがあの三人はそんなのはとっくに過ぎていてもいいはずだ、なんで今になって暴走するんだ」
──その言葉に背筋が凍る。震えで体が満足に動かせない。
「エースキラーさん?」
「お前、何か知ってるな?」
苦しくて目を瞑りながら、先程まで食べていたスイーツが出てきそうになっても、必死の思いで言葉を引き出す。
「ち、超獣は……戦うための兵器。だ、だから……だから、怪獣娘になっても暴走を抑えられないって。
暴走するのが……超獣にとっては正しいことだから……」
泣きそうだ、いやすでに泣いているのだろう。
元の元を辿っていけば自分が出過ぎた真似をしたからだろう。
ベムスターもバッキーもクロコも、大人しくしていればこんなことにはならなかったはずだ。
「大丈夫? 落ち着いて」
アギラがうずくまるおれの背中をさすった。鋭い爪の付いた手だが、不思議と柔らかさを感じる。
「今はまだ様子を伺っているが、いつぶつかるか分からない。お前ら、超獣娘を取り押さえるぞ!
ゴモラ! いけるか!?」
その言葉に放心していたゴモラも気を取り戻し、頷いた。
アギラとミクラスとウインダムもレッドキングの横に並び構えた。
「……で、お前はどうするんだ?」
おれに聞いているのだろうか。無理だ、とても戦えない。
「おれも……おれも超獣娘だから……戦えない」
情けなかった。あれだけ果敢に突っ込んでいったおれも、どこかへ行ってしまった。
それがいいのかもしれない、今までが愚かだったのだ。
「それでもいいよ」
レッドキングの返答に顔を上げた。全く思いもしない言葉だった。
「お前が戦えないのならそれでもいい。
相手はシャドウじゃないし、怪獣娘が全員戦わないといけない義務もないしな。
でも危険だから下がってろ! いくぞお前ら!」
そう言ってGIRLSは暴走している皆の元へ突っ込んでいった。
自分が情けなく、そしてGIRLSには感謝してもしきれない気持ちで、顔を下に向けながらビルの隙間へ逃げるように隠れた。
「うぉらァ!」「ガァァァァ!!!」
暴走した超獣娘の力は凄まじく、数で勝っているGIRLSと互角に渡り合っていた。
「何故貴方は向かわないのです?」
その様子を影から除いていると、後ろから声がする。
「だ、誰ですか?」
「超獣娘は強い。今もこうして数の不利を覆している。
GIRLSには得に弱っちい怪獣娘が三人いるようですし、ベロクロンの力なら簡単に倒せそう……」
そう言い切る前に後ろから爆発音と衝撃が伝わった。ベロクロンのミサイルだ。
「そしてそれは貴方も例外じゃない。加勢に行けばきっと勝てるでしょう」
「おれには、戦えない理由がある。今はGIRLSを信じるしかない」
そう言うと影は大きなため息をついた。
「私には貴方を戦わせる理由がある。貴方の力をもっと見せてください」
* * *
「くっ、大丈夫かお前ら!?」
ミサイル攻撃で吹き飛ばされたアギラ達はすぐには起き上がれなかった。
「クソッ、ゴモラ!」
ゴモラの方はベムスターと取っ組み合いになっている。
「ウウウウウ……アアアアアア!!!」
「ベム、ごめん。何にも気づかなくて。目を覚ましたら、もう一度やり直そっか」
そう言ったゴモラは巨大な尻尾でベムスターを空へ打ち上げた。
「
ゴモラの角が光るのを見たベムスターは落ちながら腹部を突き出した。
ゴモラの必殺技を吸収しようとしているのだ!
「……と思わせて!」
「グッ!」
ゴモラは必殺技を放たず、そのまま角をベムスターの腹部にある口に咥えさせた。
「
そのまま溜めていたエネルギーをゼロ距離で放出した!
本来エネルギーを吸収するための腹部でさえ、その大量のエネルギーをゼロ距離で受けたベムスターは悲痛な叫び声を上げながら苦悶の表情を浮かべていた。
「ごめん。本当に……」
変身が解けたベムスターをゴモラは両腕で抱えた。
ゴモラ自身も、最大の必殺技を放ったせいか息も絶え絶えだった。
「よしっ!」
「いいや、よくない」
レッドキングがガッツポーズをした瞬間、後ろのビルが突風によって崩れ去り、エースキラーが吹き飛ばされてきた。
「何……だお前は!?」
レッドキングとアギラ達が見上げたそれは、かつてのシャドウ程ではないが巨大な怪獣娘ヒッポリト星人の姿だった。
「このままでは終わらせませんよ」
続く