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自分が怪獣娘になった日から、自分とは違う何かがいる気がしていた。
姉と上手く接せられないのは前からだったが、それを煽るような何かを感じずにはいられなかった。
きっとそれが自分の中にいる怪獣なんだと、一人で解決した。
医務室で姉の気持ちを初めて理解した時、わずかに、わずかにだがそれでいいのか?という疑問があった。
嫌った姉へのただの意地。すぐに消えるはず火種を、何かがひたすら焚いた。
次に意識があった時は外にいて、自分の真上にそれは大きな自分がいた。
──それを見た時直感で分かった。
そいつがあたいの心を利用したのだと。
直前の記憶は、恐らく姉があたいを助けに来てくれた時に潰されたところまで。
今はそこから離れて、姉ちゃんとベムスターさんが倒れていた。
きっと二人があたいを助けてくれたんだ……。
「行かなきゃ」
まだ残っている先生達を助けに、自分の過ちを清算するために。
「待っ……て」
メカゴモラが目を覚まし、かすれた声でスカルゴモラを止めた。
「姉ちゃん、あたいはもう行くよ。あたいのやっちゃったことを、自分で何とかしないといけない」
「駄目……」
「お願い行かせて、あたいは……」
「私を……置いて行かないで……」
その言葉に、スカルゴモラは今まで知らなかった姉の本心の一つを、また垣間見た気がした。
「ごめん。姉ちゃんとしてそれは嫌なのかもしれないけど、あたいが進むのを止めないで」
「うっ……」
「でもさ、あたい待ってるから。だって妹だし、いつも一緒でいたいから」
その言葉を聞いたメカゴモラは涙を流したが、それがどのようなものなのかは、姉妹のどちらにも分からなかった。
「待って!」
──それでも引き止めるのはベムスターだった。
「分からないのスカルちゃん!? 危険なんだよ!?」
「それは今戦ってる先生もでしょ!」
「だからこそだよ! 私達じゃ何もできない……それどころか、取り返しのつかないことにだって!」
ベムスターは這いながらスカルゴモラの足にしがみつく。
「でも……でも、全部、全部をかければあたいにだって」
「それがっ!」
「──何してるんですか?」
二人の口論に割って入ったのは、赤い体に金色の鎧を纏った怪獣娘だった。
* * *
シャドウの元へ向かう途中、三人の怪獣娘を見つけた。
三人とも怪我をしているようで、その内の二人が口論をしていたので止めたのだが。
「あなた、誰ですか? 怪獣娘みたいですけど、何をしに?」
当然の反応だった。
「あぁ、おれはエースキラーです。何って……えっと」
「本当だよエスちゃんっ」
どこからともなく声が聞こえると、隣の空間が割れバッキーが顔を覗かせた。
「二人とも、もう追いついたの?」
「異次元の中なら真っ直ぐ進めるんですから、エスさんが道を守ってるなら簡単なんです」
そう話した次に二人は怪我をしている怪獣娘達に気づき、彼女達と同じように目を丸くした。
「……状況を整理しない?」
スカルゴモラは自分から生まれたシャドウを止めるつもりだったが、メカゴモラとベムスターに引き止められていた。
そしておれもシャドウを何とかするために飛び出したが、バッキーとクロコに引き止められた。
危険だから。
「つまり、おれとスカルゴモラが向かえばいいのか」
「行きましょうエースキラーさん!」
「待て待て二人ともっ!」
今度は三人がかりで止められた!
「二人でも危険なものは危険なんですよ!」
「エスちゃん、超獣娘としての約束思い出してよ」
バツの悪い顔をしたと自覚したが、なぜかその言葉に、ベムスターも反応した。
「バキシムっ……さん」
「……」
バッキーは含みのある表情をするが、その隣のクロコさえにこやかにベムスターを見ていた。
──不思議な時間を切り替えてくれたのはメカゴモラだった。
「私も行く」
「姉ちゃん!」
「みんなで話し合っていたら少し元気が出たから……妹を、先生達を、見捨てられない……!」
「ありがとうメカゴモラ。バッキー、クロコ、どうかお願い」
その頼みに遂に根負けしたのか、バッキーは大きなため息をついた。
「クロコ、私達も行こう」
「そうですね。ここまで来たら、あたし達も一緒の方が良さそうです」
その言葉にこちらの心も晴れやかになった。……が、ベムスターだけは顔が晴れることはなかった。
「私はそこの二人を助けるために戦ったから分かる……。無理だよ、超獣でもあいつには勝てない!
私は……怖い、あそこに戻るのが。情けなくて、情けなくて仕方がないけど、どうしても戻れないの」
その気持ちも、おれ達は尊重しなければならないと思った。
怪獣娘は皆望んでなったものじゃない。戦わなければならないと知っていれば尚更なのだろう。
だからこそ、戦える者が代わりに……
「ごめんなさいエースキラーさん。私の代わりにこんなことをさせてしまって……」
「
その瞬間、エースキラーはベムスターの両腕を掴み真っ直ぐ横に伸ばした。
エースキラーとベムスターの胸が触れないほど近さまで近づくと、エースキラーの胸にある宝石のような飾りが光る。
「何っ? あっ、あああああ……っ!」
飾りから真っすぐと光が伸び、いやこれはエースキラーがベムスターから何かを吸収しているように見えたのだった。
「エスさん!」
ベロクロンが咄嗟に二人を引き剥がすと、エースキラーはどうやら無意識だったようだ。
「エスちゃん! さっきの何!?」
「わ、分からない。分からないけど……何か、何かすごい力が」
ベムスターの方はすっかり力を失ってしまい、ゴモラ姉妹に抱きかかえられていた。
「エースキラー……さん」
ベムスターがかすかな声でこちらへ語りかける。
「きっと貴方の能力は、私と似てる……。貴方は私のエネルギーを、吸収した……」
自分が無意識にやったことに寒気がするが、それとは対照的に体中に熱を感じるのは、言い表せない奇妙さだ。
「でも……よかった。本当に、本当に情けないけど、これで……私の分まで……頑張って」
そう言うと、ベムスターはバッキーに空間を割らせ、そこに避難した。
「うん……確かにここなら安全だけど。本当に行くよ?」
その言葉にベムスターは深く礼をして、異次元の中に消えた。
「……よしっ。これから私達は安全にGIRLSの援護をしに行くよ!」
「安全にって、どうやるんですか?」
「スカルゴモラちゃん、超獣には超獣なりの戦い方があるんだよっ」
* * *
──勝敗を分けたのはやはりスケールの差だった。
シャドウの方も消耗しているようだったが、GIRLSの方は限界を迎えていた。
あまりの無力さに、アギラは悔し涙を流すほどだ。
「トドメだ」
シャドウが鈍く光る爪を彼女達に突き刺そうとしたその瞬間!
シャドウと怪獣娘との間に割れ目が生じ、シャドウの腕がすっぽりとはまってしまった!
「ナニッ!?」
その一瞬の隙を付き、赤い体に金色の鎧を纏う怪獣娘が、その腕を両刃剣で滅多切りにした!
「グアアアアアアアッ!?」
「あいつは! エースキラー!」
切断することは叶わなかったが、その痛みにシャドウは怯んでいた。
「援護に来ました、皆さん下がってください」
GIRLSの方を見ると、皆何が起こったのかすぐには理解できていない様子だった。
その中でも、眼鏡をかけた怪獣娘、牛のような角の怪獣、エリマキの怪獣娘の様子は特に不思議だった。
何か言いたげそうだ。……が、それよりも前にレッドキングが叫びだした。
「答えろエースキラー! お前達の目的はなんだ!」
「あのシャドウを倒します。……もしかして普段の活動? それは、言っていいのか……」
「あっ、危ない!」
エリマキの怪獣娘の声に振り返ると、シャドウがもう片方腕でこちらを潰そうとしている!
しかしそのさらに後ろには、バッキーが開けた異次元への割れ目があった。
グアアッ……!
その割れ目からクロコのミサイルが降り注ぐ。
それを受け怯んだシャドウの顔面に、また別の割れ目が現れた。
「こ、こっち見てますよぉ!」
「驚く前に撃って!」
割れ目の向こうにはクロコとバッキーがおり、その割れ目から再びミサイルを発射した。
「グアアアッ! こ、コンドはどこから」
──これがバッキーの作戦だった。
バッキーがあちこちに次元の割れ目を作り、そこからクロコのミサイルで強襲する。
バッキーは異次元にいながら元の次元の場所が分かるが──本人曰く勘らしい──シャドウには何も分からない。
戦いは安全かつ一方的になる。
そして、万が一二人の次の場所がばれるようなことがないように……。
「はああッ!」
おれが元の次元でシャドウの注意を引く。
──速い。
エースキラーを見たことが無い者も、ある者もそう思った。
しかしこれは見覚えのある動きだった。
「ベム……?」
どういう訳か、先ほどまで戦っていたベムスターそっくりな動きだったのだ。
ゴモラは特に困惑していた。
先ほどまでのベムの勇気は本物だった、と思う。
しかし今そこにいるエースキラーの方が洗練された動きなのだ。
それは経験によるものというよりも、やはり心の持ち様に思えた。
あの状況でも尚ベムにはまだ、何かがあったのかもしれない。
* * *
──異次元の中で二人の姉妹が静かにその時を待っていた。
「作戦は聞いたけど……姉ちゃん、どうしよう?」
超獣娘と名乗った三人が少しずつシャドウを削る。
実際、その内の二人が異次元の中をせわしなく動きながら、外にミサイルを撃ち込んでいる。
シャドウの動きが鈍くなったら──ここからでは分からないが──自分達の真下に割れ目を作るから、そこに向かって攻撃をする。
「でもあたいたち、思えば何ができるか分からない」
怪獣娘になったばかりなので、自分達にどんな能力があるのか見当もつかないのだ。
カッコイイ必殺技みたいなものは当然無かった。
「ふふ、私も分からないよ。こんなことは初めて」
初めて聞いた姉の言葉に、スカルゴモラは姉妹としてまた一歩いい方向に進んだ思いがした。
「でも、ヒントはある。あのバキシムさんとベロクロンさん、この何も無いところで色んな方向へ動き回っている」
「あたい達もそうだよ、足場が無いのに立ててる」
「つまりこの世界の足場、壁は私達が作っている。メイ、
姉妹は何もないところを今よりもさらに高く登っていった。
「合図が来たらここから降りる。何も技の無い私達でも、高いところから突撃すればダメージを与えられるかも」
その言葉にスカルゴモラは納得はしつつも、何かを考えていた……。
「何?」
「姉ちゃん、あたい思いついた。回転だよ」
メカゴモラもハッと顔に現れた。
レッドキングが行った回転の耐久特訓、つまり
「回転しながら突撃する……」
それでもスカルゴモラの顔は笑っていなかった。
「二人で回転して突撃する。でも姉ちゃんはあたいより体力が無かった」
そう言われても、メカゴモラの顔は曇らない。
「姉ちゃん、ついてこれる?」
「姉ちゃんだから、大丈夫だよ」
──二人は両手を繋ぎ、お互いがお互いの体を思い切り振り回すことで凄まじい回転力を生み出した!
「うっ……くっ!」
「……」
苦しそうな姉の顔を、妹は信じて気にかけない。
「姉妹ちゃん! 準備……何あれ!?」
シャドウの頭上に割れ目を作ったバキシムも、超回転で一つになった姉妹の光景に驚きを隠せない。
「行くよ!」「うん!」
二人はただ足場の感覚を頭から消しただけ、その一瞬で急降下の落下エネルギーが加わった!
「「ゴモラ! きりもみキーーーーーック!!」」
* * *
「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!?」
エースキラーを除くそこにいた全員が驚いた。
いや、驚く暇もなくシャドウの角はバコッと音を立て割れてしまった!
「やっ……た! ……っあ!?」
「きゃっ!」
しかし突然のことに、むしろ冷静になったシャドウは落ちてくる姉妹を思い切り握りしめる!
「クロコ!」
「もう弾切れなんです!」
割れ目から聞こえる二人の声に、考える暇もなくエースキラーはシャドウの腕へ向かった。
「無茶だ! やめろ……っ!?」
姉妹を庇おうとするエースキラーに、何故かシャドウは一瞬の怯みを見せた。
「ふ、ざけるなよぉぉぉぉぉ!!」
しかしシャドウはむしろ激昂し、口に光線を溜め始める。
姉妹さえも目を覆う状況、発射された光線はエースキラーではなく、謎の黒い怪獣によって防がれた!
「ゼットンさん!」
続く