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──その名を知らない人はいない怪獣娘が、この世には二人いる。
大怪獣ファイトの初代チャンピオン、レッドキング。
そしてそれを何度も降した最強の怪獣娘、
しかし表舞台に出ることがほとんど無いため、バキシムもベロクロンもその姿を見るのは初めてだった。
何より、そのバリアの強さを見た時に、唖然するしかなかった。
「おせぇぞ!」
「ごめんなさい……っ?」
レッドキングの声に反応し後ろに振り返ると、捕まっている怪獣娘との間にもう一人の怪獣娘がいる、とゼットンはようやく気づいた様子だった。
しかし、その顔は眉をひそめている。
「貴方、その目」
そうゼットンが呟くと、エースキラーから剣を奪い取り、思い切り地面へ吹き飛ばした。
「エスちゃん!」
「っ……痛……」
ゼットンはエースキラーから奪った剣でシャドウの手首辺りを滅多切りにし、なんと切り落としてしまった!
落ちてくる姉妹をGIRLS達が慌てて抱えるのを、超獣娘達はただ立ち尽くして見ている。
「エスちゃん、あれがゼットンだって」
「凄すぎます。超獣って、なんなんでしょうか」
その通りだ。
今まで自分達が必死に攻撃を続けながらも、致命的なダメージを与えられなかったシャドウ。
今手首を切断され、悲鳴を上げながら倒れたところを追撃の火球で動けなくされていた。
「キサマはっ……キサマこそが……いや!」
シャドウは目から切り返しの光線を放つが、ゼットンはなんとそれを胸で受け止め吸収してしまった。
「ッ!?」
その光線をゼットンに返されたシャドウは、もはや音もなくそこへ倒れ込んだ。
消滅そこしていないが、もう戦う力は残っていない。
「逃げて」
ゼットンがそう言うのと同時に、火の玉を溜め込み、大きく、大きく、さらに青白く光るほどに火力を高め、シャドウの巨体を丸ごと焼き尽くせるほどに成長させていく。
「やばい! 二人とも入って!」
バッキーに言われるまでもなく、おれとクロコは次元の割れ目に入るが、その後ろにGIRLS達までついてきてしまう。
「何入ってきてんの!」
「お願いしますバキシムさん!」
「まぁ姉妹ちゃんの頼みな……らぁっ!?」
なだれ込む怪獣娘に押されて全員異次元へと入ると、一人だけ割れ目から外の様子を伺う怪獣娘がいた。
「危ないから下がって。……えっと」
「あっごめんなさい。……アギラです」
それにエースキラーと返すと、外の熱気につられてか、自分まで外を覗いてしまった。
「凄い、これがゼットン」
熱で周りの瓦礫やアスファルトが溶け出している。
廃墟になりかけていたこの街は、今から跡形も無くなると確信した。
「前もゼットンさんの本気を見たと思っていたけど、その時より凄い。少し怖いくらいだけど……」
その言葉に頷いていると後ろから肩を掴まれ二人まとめて割れ目から引き離された。
「なーに意気投合してんだお前達」
「とにかくここから離れますよ」
バッキーを先頭にとにかくとにかく真っすぐ走り続けた。
外は大変なことになっているはずだというのに、おれ達はただ走り続けていたせいで手持ち無沙汰な気がして、気になっていたことを聞いてみた。
「アギラ、さん。気になってたんですけど、もしかして以前会いました?」
「えっ? そうか、暴走していたから覚えてないんだね」
「あたし……ミクラスと、そこのウインダムちゃんとの三人で暴走してたあんたのこと引き止めてたんだよ!」
「上手く行ってなかったから私達が何とかしたんだよエスちゃんっ」
そのやり取りにミクラスがバッキーに食って掛かり、ウインダムとクロコが宥める羽目になった。
「じゃあ超獣娘さん達ってGIRLSじゃないんですか!?」
「そうなんだよ〜こんなに助けてくれちゃったんだけどね」
姉妹とゴモラと名乗った怪獣娘の会話に耳を傾けていると、レッドキングから声をかけられた。
「ユニバーラゲスからお前が悪い怪獣娘じゃないのは聞いていた。
今回の件も正直言って助かったよ。この様子だとベムもどこかで匿ってるな?」
その言葉にゴモラが心配そうな表情で反応する。
「どうしてGIRLSに入らないんだ? オレ達は歓迎するぜ」
その誘いに一瞬考えるが……
「怪獣娘の力を使うなら、GIRLSに登録をするのが義務だ。分かるか?」
選択肢は元々無いようなもののようだ。しかし
「おれ達の目的は超獣娘の保護で、多くの超獣娘が変身をしないように指示を受けている……らしいです。
だからGIRLSと敵対するつもりがなくても、この活動が許されるものではないのは分かります。
でも、おれは友達を置いて行けない。それにおれに名前をくれたスフィ……」
「もしかして、スフィンクスさんという方も本当にいるのですか?」
「やべっ」
「はいはいもういいでしょ! そろそろ解散だよっ。ベムは後で送り届けるからっ」
バッキーが突然止まって話を遮った。
「お前らにも言ってるんだからな。なんでスフィンクスの言うことに従ってるんだ」
「正直……詳しくは知らないんです」
「超獣は危険だからその存在そのものを隠したいって聞いたけどね、正直ゼットンを見たらあれ以上とはとてもって感じだよ」
今頃外はどうなっているのだろうか。というか、ここはどこなのだろうか。
「それでも従う理由は?」
「分からないからこそ、黙って従ってるだけ」
その言葉に心から賛同はできなかった。おれと二人とのズレを強く感じる。
「助けてもらった手前気が引けるが、今からお前たちを捕らえることだってできるからな?」
臨戦態勢を取るGIRLSに、バッキーは鼻で笑った。
「今自分達がどこにいるかも知らないで〜」
「お前には分かるのかよ」
「勘だけどねっ。
でも感覚の全てが人より鋭い怪獣娘は、その分人よりもよく当たる勘を持ってるものでしょ。
私は異次元にいながらも外の状態が何となく分かるから、今自分がどこにいるか勘でも外したことは無いよ」
「ほぉ〜。じゃあどこにいるんだ? オレ達は真っすぐ走ってただけだろ?」
「地下のターミナル!」
そう叫んだバッキーは、GIRLS達の足元を傘の骨組みで突くと、足元の次元が割れ本当に駅の地面へ落ちていった。
「周りに何もないから少しずつ降って行ったのが分からなかったんだねっ?
バイバ〜イ!」
返事を聞く前に割れ目を閉じたバッキーは、終わった後でそこに座り込んだ。
「超疲れた……。エスちゃん、本来こんなこと絶対許されないからね。
こんなところスフィンクスに見られたら……」
「どうなると思いますか?」
──なんと噂をすると、ベムスターをおぶったスフィンクスいつの間にかそこにいた。
「スフィンクス!? ……えーっと! この件に関しては……」
バッキーはまずスフィンクスに弁明にしようとした。
「分かっています。エスの独断専行、貴方の責任ではない」
「違います! このチームのリーダーとして、止められないどころか協力までしてしまった私だって……」
そう庇ってくれたバッキーを引き留め、スフィンクスに深く頭を下げた。
そんなおれを、スフィンクスはむしろ安心したような抱きしめた。
「──無事でよかった。こんなこと、二度としないように」
その態度に驚かされ、流されるように頷いた。
「確かにわたくしは、超獣娘に表立った活動、さらに貴方達には危険な真似をさせないように言ってきました。
しかしその理由を詳しく言ってこなかったのはわたくしの落ち度です。貴方達にだけは話すべきでした」
「どうしてあたし達に話してくれなかったんですか?」
そう聞かれるとわずかだが口頭が下がり、音が響きにくい異次元でもとりわけ静かな時間が流れた。
「わたくしの昔話をします」
重い口を開いた瞬間、三人の間の空気が張りつめたのを感じる。
「わたくしがまだGIRLSに所属していた時、怪獣娘の育成に携わっていました。
ある時暴走した怪獣娘の通報を聞き、一番近くにいたわたくしが引き受けることになりました。
超獣として腕に自信はありましたが、その怪獣娘はあまりも強すぎた。
増援が期待できないまま、わたくしはむしろ倒されてしまうところまで行った……。その、時……」
スフィンクスが一息ついた。
「わたくしの中の、何かのスイッチが入ったのです。
わたくしの中の怪獣、いや超獣が暴走を起こし暴走した相手を上回る暴走の様を見せ、相手以上の被害を出し、更には相手を殺してしまうところまで行きました……」
殺す、という言葉におれ達はぽかりと口を開けただ黙っているしかなかった。
「トドメをさしてしまうその瞬間、わたくしが放った拳は空間ごとたたき割り、異次元に入ってしまったことで、相手の怪獣娘は一命を取りとめました。
怪獣娘が暴走をしてしまうというのは当時から知られていたこと、しかし変身に慣れているわたくしも暴走をするのは異常なことでした。
いえ、自分だから分かる。あれは暴走ではなく正しい反応。
超獣からすれば、暴走している姿こそ正しいのです。
その時からわたくしは超獣娘という存在を、自分も含め消し去ることに決めました。
人と怪獣が手を取り合う世界のためには、わたくし達は邪魔な存在なのですから」
もうその話を聞いているおれ達の表情は全く見えない。それだけ暗くなっていた。
* * *
──ついさっきまでシャドウと戦っていた場所の遥か上空から次元を裂きそこを眺めている。
ゼットンの放った火球のせいか、シャドウが暴れていた痕跡すら消えていた。全て熱で溶けてしまのだ。
「これが、怪獣……」
そう言ったのはクロコだった。
「ここまでやれる自信は無いけど、それでも私達の中にもいるんだよね。……超獣が」
スフィンクスの話を聞き、バッキーまでもがいつもの明るさを失っていた。
おれは、自分の過去のことを考えていた。
「おれは、エキラって名前がずっと嫌いだったんだ。
昔授業でね、自分の名前の由来を聞きましょうってものがあって、その時聞いたのが……音が良いからだったんだ」
突然語りだしたおれを、二人はそれでも真剣に聞いてくれた。
「わけ分からないよね。それを授業で答えた時、誰かが言ったんだ……怪獣みたいだって。
もうおれ達には怪獣なんて夢物語の存在だったからさ、それから名前のことずっと馬鹿にされてきて……。
でも……でも……!」
もう一度下の惨劇を見る。
GIRLSが戦っていたということは住民の避難は終わっていたのだろう。しかし、もし遅れている人がいたら?
間違いなく助かっていないだろうし、それを確認する術も考えつかなかった。
ゼットンの行いは正しい、しかし、あまりにも激しすぎる。
「こんなの……馬鹿にできるわけがない! おれは、怖い……。
こんなのが自分の中にいるということが、自分が、どれだけ危ないことをしていたのか…」
震えている肩に、クロコが手をかけた。
「でもGIRLS達は助かったと思っているはずですよ」
そうかもしれない。だが……
「終わったことなんてしょうがない! なんだったら、四人で祝勝会しようよっ!」
バッキーからの提案に目を丸くした。していいのだろうか? いや、それより
「四人? スフィンクスも入れて?」
その問に二人とも口をポカンと開けて見つめ合っていた。
「まぁスフィンクスさんは来ないでしょうねぇ」
「エスちゃん気づいてなかったんだね、スフィンクスがベムをおぶってた理由」
「あたし達が何の協力も無しにここまで活動はできません。当然、協力者がいたんです」
「その子は名前を偽ってGIRLSにいるの。偽の名前はベムスター、超獣ではない怪獣。
でも、本当の名前は……」
影! 超獣娘!? 完