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改造ベムスター─星野リコ─は、GIRLSの入口に座り込み一人夜空を眺めていた。
地元とは違い東京は星空が多く見える場所ではなかったが、落ち込んだ時は星を眺めるのが決まりだった。
シャドウジェネラルでの禁忌と醜態が、傷が癒えた今でも胸を痛め続けている。
スフィンクスからももうこんな危ないことはしないでほしいと、彼女の過去も交えて教わったことで強く強く反省しているのだ。
「ベーム! そんなにため息ばかりついちゃって、火を吐く練習でもしてるの?」
そう言ってゴモラがベムの背中に抱きついてきた。
「……確かに、火を吐いたことないかも」
「あはは……ベムってちょっと天然なところあるね」
ゴモラは分かっていた。シャドウジェネラルの一件でベムが落ち込んでいることに。
──ただし、ベムが改造ベムスターであることを除いて。
「そうだ! あのでっかいシャドウをみんな無事に倒せたお祝いで、祝勝会やろうよ!」
「えっ……。私が参加してもいいの?」
「当たり前じゃん!」
そう言われると、自分のやったことに対して肯定ができたような気がして少し気が晴れた。
ゴモラからの誘いを快諾した時、自分のソウルライザーから通知の音がした。
あるグループのみの特別な通知音で、その理由は誰も知らない。
『以前のことについて祝勝会をします。是非来てくださいっ』
「ベム、どうしたの? 何かメッセージが……」
「え、ええーっとね? 実は……」
どうにかしなければ、ただそのことだけを考えてひとまず返答する。
「他の友達にも誘われちゃって。……その子は私がGIRLSにいることを知らないから、ゴモラと会わせるわけには……」
「ええよええよ! 普通の友達としてみんなでやれば!」
「……ええっ!?」
──この状況に対して、間違った選択をしたと激しく後悔する。
「おいベムスター!」
どうしようかと必死に頭を悩ませていると、レッドキングが声をかける。
「……頑張れよ」
「……? はい」
とにかくそのことで頭がいっぱいのせいで、空返事をして出てしまった。
「じゃあ明日は私達いないからねー」
「あっ!? おいゴモラ!」
レッドキングはゴモラに何か言いたげだったようだが、そのまま見送ってしまう。
「アイツ、分かってんのか?」
そう呟くレッドキングのソウルライザーには、ベムスターからの連絡が表示されていた。
『超獣娘の集会を見つけた。一人で参加をしてくるので後から合流するように』
* * *
バッキーとクロコと、ファミレスで改造ベムスターと祝勝会をすることになった。
しかし、急な話だったがあちらには怪獣娘ではない知人が同席するということで、祝勝会ではなく単なるパーティになったのだった。
「顔が引きつってますよエスさ……今回はエキラさんの方がいいんですか?」
「ごめん緊張して……名前?」
確かに、この集まりはあくまで人間としてのもの。
それなら怪獣娘としての名前を名乗るわけにはいかないから、エキラとして振る舞うべき。
確かにその通りなのだが、自分の中で、何か引っかかりを感じているところ……。
「ごめんなさい。お待たせました」
「星野リコです」
そう言った褐色の子は、確かによく見ればあの時の怪獣娘に似ている気がした。
「おはようさん! ミカヅキです!」
ベムスターの知人は小柄な子で……気のせいかどこかで見たことのある顔だった。
「クロコです」
「ベッキーでーすっ」
「よろしくー!」
「エ……エキラ……です」
名前を言うだけなのにこのどもり様、相手に悪い印象を与えたのは間違いない。
いや、それよりも名前だ。こんな名前、相手はどう思うのだろうか?
表情には表れてないが、やはり内心ではおかしく思っていることだろう。
「エキラちゃんもよろしく!」
その声に頭の中が晴れるような驚きを感じた。
何も思われていないと感じたのは、生まれて初めてだった。
「えっ……名前、変とか思わないんですか? 怪獣っぽいとか」
「エキラちゃん……」
その問いにミカヅキは少し考えた様子だったが
「んー、確かに珍しい名前だなーとは思ったけど。それに、本当に怪獣だったとしても、だから何やねーんって感じじゃん!」
そう言われると、もうそうですかとしか答えられなかった。
「ま、まぁまぁ……そういうのは置いておいて、何か注文しましょうよ」
クロコが微妙な雰囲気を察して仕切り直してくれた。
「私このチョコレートケーキで!」
「私はクリームブリュレっ!」
「あたしはフレンチトーストでお願いします」
「私は……限定パフェ復活! お客様絶対絶命のマスカット地帯パフェで……」
「おれは……えーっと……」
「エキラちゃん、こういう時はみんなが選んだ中からでもいいんじゃない?」
バッキーもといベッキーの言葉に確かにと納得し、待たせている店員に振り向いて
「今注文したのと同じものを」
「申し訳ございません。どれでしょうか?」
「じゃあ全部で」
「いや結局一つに選ばないんかーいっ!」
「おぉ鋭いツッコミっ」
「気になっていたんですが、ミカヅキさんって関西の方なんですか?」
そんなことがありながら、バッキーとクロコとミカヅキの三人は簡単に打ち解けていった。
「ぐっ……ぐっ……」
「あの、大丈夫ですか?」
注文した全てのスイーツを必死に食べているおれに、会話から少しあぶれ気味のリコが心配してくれた。
「ありがとう、結構大食いだから大丈夫。全部甘い方が厳しいですけど……」
「私よく甘い物ばかり食べて口内炎起こすから、気をつけてね」
「まぁ、確かにそれだけ食べてるかも……」
チラリと窓から外を見た時に、GIRLSの広告が目についた。
様々な怪獣娘が写っており、以前シャドウ討伐の時に見た怪獣娘もいたが、改造ベムスターのすがたはなかった。
──改造ベムスターはGIRLSの中ではどう過ごしているのだろうか?
ふと考えた。
「あれ、GIRLS。怪獣娘? ってやつらしいですね」
隣にいるミカヅキに自分達のことが知られないよう、無知を装って話を始めた。
「あぁ、GIRLSっていうのは怪獣の力を持つ人、怪獣娘の保護と指導を目的とした組織らしいよ」
らしいというには喋り方に慣れを感じる。
「へぇ、でもなら何で世間へアピールをしてるんでしょうね」
「……怪獣娘を危険に思う人は今もよくいる。だから、怪獣娘は普通の人間と一緒に暮らせることを証明するために、指導と偏見の払拭を同時にやってる
んだって」
GIRLSは立派なことをしていると思った。
しかし、スフィンクスはそのGIRLSであっても抑えられなかった怪獣娘だったということなのか。
それが超獣娘なのか。
「とても良いことだけど、そんなに簡単に行くのかな」
自分の中にあるものを、そしてこの目で見たゼットンの凄まじさに、思わずそんなことを口にしてしまった。
「できるよ。だってGIRLSはとっても頑張ってるから。
怪獣娘が確認された時から、間違いなく世間の目は変わった。
シャドウが現れてから、シャドウから助けてくれる者としても、そもそもの災いの元だとも色々意見もあったけど
GIRLSはそんなものにもめげずに戦い続けてる」
「じゃあ……怪獣娘同士は、どうなの?」
聞きたかった。超獣娘としてGIRLSにいる改造ベムスターに。
しかしその言葉を聞いた時、目を開きながらも、また閉じて姿勢が小さく丸まってしまった。
「怪獣は人間ほど誰でも一緒じゃない……でも、それでも……」
「同じ使命を持って皆が一致団結している。お前達を除いてな」
おれ達の会話に割って入って来たのは、年も同じくらいの四人の少女達。
その中で一番大きな、黒髪の褐色の女性がそう言った。
どなたですか? そう言おうとするも向かいのリコの顔が引きつり、そちらに意識が行った。
「あっレッド! 何でこんなところに?」
ミカヅキとは知り合いのようだが、自分が言うのもあれだが、日本人の名前には聞こえない。
「お前、声で分からないものか? オレはすぐに分かったよ」
その声にバッキーがテーブルにすかさず乗り出し
ソウルライド!
と声がした瞬間変身したバッキーに黄色い影が思い切りぶつかった!
バッキーはそのまま窓ガラスを突き破り、黄色い影に頭を押さえつけられていた。
「ぐあぁ……レッドキング!」
先程までいた女性は、以前見たレッドキングの変身前の姿だったのだ!
「えっ、何何? えっ!? バキシム!?」
本来ほとんどの人が知らないバキシムの怪獣娘を、ミカヅキは何故か知っている。
「ごめんね、今から身柄を拘束させてもらうから」
その声に振り返ると、残りの三人の少女はアギラ、ミクラス、ウインダムの怪獣娘だった。
「この距離ならミサイルは使えないでしょ!」
「あっ! あわっ……」
変身はしたものの図星をつかれたクロコは、ミクラスを先頭に三人に割れた窓ガラスから外に放り投げられた。
「ゴモラ、そいつのことを見てろよ」
レッドキングはミカヅキにそう投げかける。
そうか、全部そういうことだったのだ。
「じゃあ……君がエースキラーなの?」
返事はしなかった。変身もできなかった。
それでも最早否定もできない状況で、ただ立ち尽くすしかなかった……。
「何……で?」
ファミレスの客もこの事態に静まり帰り、リコのかすれるような声が、よく聞こえる静寂だった。
続く