遊戯王ARC-V DIMENSIONAL WARS 作:白銀蟷螂
榊遊勝。
人を笑顔にすることを理念とするエンタメデュエルの先駆者。
史実において彼は次元戦争を阻止するべく次元移動装置を用いて融合次元に向かうも、装置が未完成であったが故にエクシーズ次元に転送されてしまう。
だがこの世界線において榊遊勝は融合次元に無事転移することができた。
そうなれば当初の目的通り次元戦争を止めるためアカデミア総帥であるプロフェッサー、赤馬零王の元に向かうのは必然だ。
対話による説得を試みるも赤馬零王は聞く耳を持たず交渉は決裂。
最終的に榊遊勝は不正カード《衝撃の拘束剣》で自らの身体諸共赤馬零王を串刺しにした上で次元移動装置を暴走させ、次元の裂け目にダイブした。
彼がいかなる考えを以てこの捨て身の行動に及んだのかは定かではない。
赤馬零王の計画は非人道的ではあるが、悪魔の復活を阻止するという点は榊遊勝の方針とも一致していたはずだ。
その上で赤馬零王と刺し違える選択をしたのであれば、榊遊勝は息子を信じる道を選んだのかもしれない。
ともあれ四つの次元統一を目論んだ赤馬零王は榊遊勝に道連れにされて次元の狭間へと消え去った。
偉大なるエンタメデュエリストの捨て身の行動によって、アカデミア総帥の野望は潰えたはずだった。
だが、その意思を受け継いだ少女によりアークエリア・プロジェクトは再始動する。
◇
融合次元のデュエル戦士養成機関アカデミアにて、二名のデュエリストが対峙していた。
一人は赤い制服を着た少年、丸藤翔。
アカデミアの中でも下級兵士であるオシリスレッドに所属するデュエル戦士だ。
もう一人は紫色の服にマントをつけた少女セレナ。
これから行われるのは脱走兵である丸藤翔のデュエルによる公開処刑。
周囲にはアカデミアのデュエル戦士が多くおり、彼らの士気を高めると同時に脱走兵がどうなるかを分からせるための公開処刑でもあった。
両者のデュエルディスクが展開され、カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。
SERENA / LP4000
VS
SHO / LP4000
「「決闘!!」」
先攻をとったのは丸藤翔。
「僕のターン! 魔法カード《ビークロイド・コネクション・ゾーン》を発動!」
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドから、「ビークロイド」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは効果では破壊されず、そのモンスターの効果は無効化されない。
「手札の《スチームロイド》《ドリルロイド》《サブマリンロイド》を融合」
三体のモンスターの融合により呼び出されるのは丸藤翔のエースモンスター。
「融合召喚! 出でよ!《スーパービークロイドジャンボドリル》!!」
《スーパービークロイド-ジャンボドリル》
融合・効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻3000/守2000
「スチームロイド」+「ドリルロイド」+「サブマリンロイド」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
「カードを一枚セットしてターンエンド」
伏せたカードは《聖なるバリア -ミラーフォース-》。
攻撃された時、相手の場の攻撃表示モンスターを全て破壊する罠カード。
「私のターン、ドロー。魔法カード《闇の誘惑》を発動」
通常魔法
(1):自分は2枚ドローする。
その後、手札に闇属性モンスターが存在する場合、その内の1体を選んで除外する。
存在しない場合、自分の手札を全て墓地へ送る。
「カードを二枚ドローして、手札の《月光彩雛》を除外する。そして除外された《月光彩雛》の効果発動。このターンお前はバトルフェイズ中に効果を発動できない」
「くっ!」
攻撃反応型罠である《聖なるバリア -ミラーフォース-》が事実上無効化されたことで丸藤翔は焦りを見せる。
「魔法カード《月光融合》!」
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の手札・フィールドから「ムーンライト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
相手フィールドに、EXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合には自分のデッキ・EXデッキの「ムーンライト」モンスターも1体まで融合素材とする事ができる。
「手札の《月光翠鳥》とデッキの《月光紅狐》を融合! 月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん! 融合召喚! 現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣!《月光舞猫姫》!」
《
融合・効果モンスター
星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000
「ムーンライト」モンスター×2
(1):このカードは戦闘では破壊されない。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1にこのカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。
このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘では破壊されず、このカードは全ての相手モンスターに2回ずつ攻撃できる。
(3):このカードの攻撃宣言時に発動する。
相手に100ダメージを与える。
「墓地に送られた《月光紅狐》の効果により《スーパービークロイド-ジャンボドリル》の攻撃力をターン終了時まで0にする」
《スーパービークロイド-ジャンボドリル》
星8/地属性/機械族/攻3000→0/守2000
「更に《月光翠鳥》の効果で墓地から月光紅狐を守備表示で特殊召喚」
《月光紅狐》
効果モンスター
星4/闇属性/獣戦士族/攻1800/守 600
(1):このカードが効果で墓地へ送られた場合、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。
(2):自分フィールドの「ムーンライト」モンスターを対象とする魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、墓地のこのカードを除外して発動できる。
その発動を無効にし、お互いのプレイヤーは1000LP回復する。
「月光紅狐をリリースして月光舞猫姫の効果発動! このターン、相手モンスターは一度だけ戦闘では破壊されず、舞猫姫は相手フィールド全てのモンスターに二回攻撃できる」
「そ、そんな!」
エースモンスターの攻撃力を0にされ、伏せている《聖なるバリア -ミラーフォース-》も使用不可。
その上で攻撃力2400のモンスターの攻撃を二回受けることの意味を丸藤翔は理解できないわけではない。
「最後にもう一度だけ聞く。アカデミアの崇高な計画アークエリア・プロジェクトに賛同する気はあるか」
その問いかけに丸藤翔はセレナを睨みつけながら毅然とした態度で言い放つ。
「次元戦争なんて間違ってる! 僕は侵略者の手先になんてならない!」
「……そうか。残念だ」
下級兵士の中では才能がある部類だったこともあり、できれば戦場でデュエル戦士として活躍させてやりたかった。
だが本人がそれを拒絶した以上、別の形でアークエリア・プロジェクトに貢献してもらうしかない。
「月光舞猫姫でスーパービークロイド-ジャンボドリルを攻撃!」
SHO LP4000→3900→1500
まずは《月光舞猫姫》の効果による100ダメージが発生した後、戦闘ダメージを受けて丸藤翔のライフポイントが大幅に削られる。
リアルソリッドビジョンの衝撃を受けて彼の体は大きく後退した。
「これでトドメだ! 月光舞猫姫、攻撃!」
SHO LP1500→1400→0
二度目の攻撃によってライフが0になった丸藤翔の体が宙を舞った。
それを見た周囲のデュエル戦士たちの多くが歓声を上げる。
「デュエル戦士であることを拒むならカード化されることでアークエリア・プロジェクトに貢献しろ」
床に転がる丸藤翔に向けてセレナはデュエルディスクから紫色の光線を照射。
それを浴びた丸藤翔の体は崩れた後、一枚のカードとなった。
カード化された人間は次元統一の際のエネルギーとしてアークエリア・プロジェクトの糧となることができる。
それが丸藤翔にとって幸せなことであるとセレナは信じていた。
「見事なデュエルでした、セレナ様」
声をかけてきたのは顔に大きな火傷の痕がある眼帯をした男性バレット。
彼はセレナの側近を務めており、デュエル戦士たちを取り纏める隊長の一人でもある。
「いえ、今の貴方はこう呼ぶべきですね、二代目プロフェッサー」
赤馬零王の意思を受け継いでアークエリア・プロジェクトを先導する現アカデミア総帥。
それがセレナだった。
「これで遊城十代のグループに属していた脱走兵でカード化したのは二人目か。他の者はどうなっている」
一人目の脱走兵は前田隼人という獣族デッキを使用するオシリスレッド兵であり、既にバレットの手によりカード化が済んでいる。
「天上院明日香、三沢大地、丸藤亮、そして遊城十代。いずれの居所も不明であり、捜索範囲を広げてデュエル戦士たちに行方を追わせています」
要するに捜索状況は芳しくないということ。
遊城十代はセレナも認める実力派のデュエリストだが、アークエリア・プロジェクトの崇高な理念を微塵も理解せず反抗的な言動をとることが多かった。
結果として遊城十代の思想は病原菌のように他のデュエル戦士に広まり、多くの脱走兵を生むことになった。
「私は奴が許せない。強いデュエリストでありながら脱走兵となり、他の者たちを悪の道に引きずり込んでいる」
今回カード化した丸藤翔は脱走兵の中でも一段と遊城十代の影響を受けていたように思える。
その兄でありアカデミアにおいて伝説的な存在のデュエリストであった丸藤亮までが、遊城十代の思想に毒されて脱走兵になってしまった。
「そもそもお前が遊城十代に敗北して取り逃がさなければ、このようなことにはならなかったのだがな、クロノス」
セレナが苦言を呈したのは、この場にいるもう一人の隊長。
「も、申し訳ないノーネ、プロフェッサーセレナ」
デュエル戦士たちの教官も務めている男性、クロノス・デ・メディチ。
彼はセレナにぺこぺこと頭を下げながら必死に弁明する。
「あの時は油断してたノーネ。もう二度と負けるようなことはありませンーノ。遊城十代、あのドロップアウトボーイは私が必ずカード化するノーネ!」
教官でありながら一般兵に敗北したクロノスは何とか自分の立場を取り戻そうと必死だった。
「ふん、まあいい。それよりバレット、シンクロ次元とスタンダード次元に同時侵攻する準備を進めておけ」
既にエクシーズ次元は壊滅させており住民たちの多くをカード化している状況。
シンクロ次元とスタンダード次元のデュエリストをカード化すれば次元統一のエネルギーは満たされる。
「お待ちください。先ずは脱走兵の処理とエクシーズ次元の残党狩りを優先するのが先決かと。トロン一家の動向も気になります」
勇み足のセレナに歴戦のデュエル戦士であるバレットが待ったをかける。
拘束していたトロン一家の構成員Ⅲを奪還され、責任者だったエド・フェニックスは消息不明。
後任には総司令補佐だった野呂守が就いたが、この男は盆暗でありエクシーズの残党狩りは難航を極めていた。
新たな総司令としてグロリア・タイラーかナポレオンを配属するべきというのがバレットの考えだ。
「何を臆病な事を言ってるノーネ。プロフェッサーセレナは大規模侵攻をお望みなノーネ! ならば我々デュエル戦士の役割はアークエリア・プロジェクト遂行のため勇猛果敢に戦うことなノーネ!」
点数稼ぎのためクロノスは徹底してセレナの太鼓持ちに回る。
「よく言った、クロノス。脱走兵とエクシーズ次元の残党、シンクロ次元とスタンダード次元のデュエリストも皆まとめてやっつけてやる!」
全ての次元を巻き込んだ次元戦争の幕が上がろうとしていた。