遊戯王ARC-V DIMENSIONAL WARS 作:白銀蟷螂
セキュリティの総本部、治安維持局に潜入する褐色肌の男。
彼の名はオースチン・オブライエン。
アカデミアでも五本指に入る歴戦のデュエル戦士だ。
今回、オブライエンに課せられた任務は治安維持局に拘束されているグレース・タイラーの救出。
内部の人間の手引きもなしに捕虜を救出するという難易度が高い任務だが、潜入という分野においてオブライエンは紫雲院素良やデニス・マックフィールド以上のスキルを有している。
監視カメラや治安維持局職員の目を掻い潜りながら施設を探索。
時にはダクト内を匍匐前進で移動しながら監視システムを突破する。
結果的に発見されることなくグレース・タイラーが監禁されている尋問室まで辿り着いた。
そこでオブライエンが目にしたのは手足を縄で縛られた囚人服姿のグレース・タイラーの姿。
すぐに拘束を外して解放する。
「急いでここから脱出するぞ」
「……ええ」
尋問室の監視カメラに姿を晒した以上、警備が駆けつけてくるのは時間の問題。
本来なら捕虜になった兵士は切り捨てるべきだが、タイラー姉妹がタッグデュエリストとして有用な人材であることを考慮した上で、姉であるグロリア・タイラーの懇願もあり、こうしてオブライエンが派遣されることになったのだ。
入口付近ある机にはデュエルディスクとデッキが置いてあった。
デュエルディスクはアカデミア製であり、デッキはグレース・タイラーが使用しているアマゾネス。
つまり捕虜を監禁している部屋に本人の所持品を置いておいたということ。
いくら拘束しているとはいえ、武器となるデュエルディスクとデッキを放置しておくなどあまりにも杜撰な管理だ。
尋問室の外に出るが周囲にセキュリティの姿はなく警報が鳴ることもなかった。
僅かな違和感を覚えながらもオブライエンはグレース・タイラーと共に治安維持局の廊下を走る。
「おやおや、どこへ行こうというのですか」
そこで現れたのは二人の男性。
その内の一人をオブライエンは知っている。
ジャン・ミシェル・ロジェ。
融合次元の出身であり元はアカデミアに所属していた離反者だ。
「裏切り者はカード化する」
「ふむ。そちらも二人いるならタッグデュエルで決着をつけるとしましょう。準備しなさい、セルゲイ」
ロジェの発言にオブライエンの違和感は深まった。
アカデミアに所属していた以上、タイラー姉妹がタッグデュエルのエキスパートであるということは把握しているはず。
ロジェ個人の実力は高く見積もってもアカデミアでは上の下程度だった。
その上でタッグデュエルを挑んできたということは、あのセルゲイという部下の実力によほど自信があるのか。
視線をグレース・タイラーに向けて戦意の有無を確認する。
「私はアカデミアの勇敢なるデュエル戦士よ。捕虜にされた失点はロジェをカード化することで取り戻すわ」
ここが敵の本拠地である以上、もたついていれば増援が駆けつけてきてこちらが不利になるだけ。
それならばタッグデュエルでロジェとセルゲイなる男をカード化した上でこの場から離脱するのが最適手。
歴戦のデュエル戦士として何か嫌なものを感じながらもオブライエンはグレース・タイラーをパートナーにしてデュエルすることを決断。
四者のデュエルディスクが展開され、カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。
OBRIEN / LP4000 & GRACE / LP4000
VS
ROGER / LP4000 & SERGEY / LP4000
「「「「決闘!!」」」」
先攻をとったのはロジェだった。
「私のターン。魔法カード《融合》発動。手札にある二体の《古代の機械兵士》を融合」
《融合》
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。
「いにしえの魂受け継がれし機械仕掛けの兵士たちよ。今、隊列を組み交じり合い、新たな力とともに生まれ変わらん! 融合召喚! 現れろ! レベル8! 機械仕掛けの魔神!《古代の機械魔神》!」
《古代の機械魔神》
融合・効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻1000/守1800
「アンティーク・ギア」モンスター×2
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードは他のカードの効果を受けない。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
相手に1000ダメージを与える。
(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「アンティーク・ギア」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
「《古代の機械魔神》の効果で1000ポイントダメージを与える」
OBRIEN LP3000
「私はこれでターンエンド」
「それなら次は私が行かせてもらうわ。ドロー」
タッグデュエルでは両陣営が交互にターンを進行する。
「魔法カード《融合》を発動。手札の《アマゾネスペット虎》と《アマゾネスの斥候》を融合! 牙剥く密林の野獣よ。獲物を狙う戦士の目を得て、新たな猛獣となりて現れよ。融合召喚! 出現せよレベル7《アマゾネスペット虎獅子》!!」
《アマゾネスペット虎獅子》
融合・効果モンスター
星7/地属性/獣族/攻2500/守2400
「アマゾネスペット虎」+「アマゾネス」モンスター
(1):このカードが攻撃するダメージ計算時に発動できる。
このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ500アップする。
(2):自分の「アマゾネス」モンスターが相手モンスターに攻撃したダメージ計算後、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力は800ダウンする。
(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手モンスターはこのカード以外の「アマゾネス」モンスターを攻撃できない。
「ターンエンドよ」
「俺のターン、ドロー。《地縛囚人ライン・ウォーカー》を召喚」
《地縛囚人ライン・ウォーカー》
チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻 800/守1100
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
自分のデッキ・墓地から「地縛牢」か「異界共鳴-シンクロ・フュージョン」1枚を手札に加える。
(2):自分フィールドにレベル6以上の「地縛」モンスターが存在する場合、墓地のこのカードを除外し、EXデッキから特殊召喚された相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
その効果モンスターをデッキに戻す。
その後、相手はその同名モンスター1体を自身のEXデッキから特殊召喚できる。
「効果によりデッキから《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を手札に加える。これでターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー。デッキから《ブレイズ・キャノン》を墓地に送ることで、永続魔法《ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン》を発動」
《ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン》
永続魔法
手札・デッキ・フィールド(表側表示)から「ブレイズ・キャノン」1枚を墓地へ送ってこのカードを発動できる。
(1):「ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
手札から「ヴォルカニック」モンスター1体を特殊召喚する。
(3):1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
デッキから炎族・レベル1モンスター1体を墓地へ送り、対象のモンスターを破壊する。
「《古代の機械魔神》をリリースすることで相手の場に《ヴォルカニック・クイーン》を特殊召喚」
《ヴォルカニック・クイーン》
特殊召喚・効果モンスター
星6/炎属性/炎族/攻2500/守1200
このカードは通常召喚できない。
相手フィールドのモンスター1体をリリースした場合に相手フィールドに特殊召喚できる。
このカードを特殊召喚するターン、自分は通常召喚できない。
(1):1ターンに1度、自分フィールドの他のカード1枚を墓地へ送って発動できる。
相手に1000ダメージを与える。
(2):自分エンドフェイズに発動する。
自分フィールドの他のモンスター1体をリリースするか、自分は1000ダメージを受ける。
「そして《ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン》の効果発動。デッキから《ヴォルカニック・リムファイア》を墓地に送り《ヴォルカニック・クイーン》を破壊。更に《ヴォルカニック・リムファイア》の効果により墓地から《ブレイズ・キャノン》を除外して《ブレイズ・キャノン・マガジン》を表側表示でフィールドに置く」
《ブレイズ・キャノン・マガジン》
永続罠
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのカード名は、魔法&罠ゾーンに存在する限り「ブレイズ・キャノン-トライデント」として扱う。
(2):自分・相手のメインフェイズに発動できる。
手札から「ヴォルカニック」カード1枚を墓地へ送り、自分は1枚ドローする。
(3):自分・相手のメインフェイズに、墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「ヴォルカニック」カード1枚を墓地へ送る。
「《ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン》の効果で《ヴォルカニック・トルーパー》を守備表示で特殊召喚」
《ヴォルカニック・トルーパー》
効果モンスター
星3/炎属性/炎族/攻1000/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「ヴォルカニック・トルーパー」以外の「ヴォルカニック」カード1枚を手札に加える。
(2):手札を1枚捨てて発動できる。
相手フィールドに「ボムトークン」(炎族・炎・星1・攻/守1000)1体を特殊召喚する。
このトークンが破壊された時にそのコントローラーは500ダメージを受ける。
「効果により《ヴォルカニック・デビル》手札に加える。そして《ブレイズ・キャノン・マガジン》を墓地に送り《ヴォルカニック・デビル》を特殊召喚!」
《ヴォルカニック・デビル》
特殊召喚・効果モンスター
星8/炎属性/炎族/攻3000/守1800
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドの表側表示の「ブレイズ・キャノン-トライデント」1枚を墓地へ送った場合に特殊召喚できる。
(1):相手バトルフェイズ中、攻撃可能な相手の攻撃表示モンスターはこのカードを攻撃しなければならない。
(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。
相手フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊した数×500ダメージを相手に与える。
「カードを二枚セットしてターンエンド」
各自最初のターンが終了したことで次からは攻撃が可能となる。
「私のターン。やれやれ、《古代の機械魔神》をこうも容易く処理するとは、流石はあのカイザー亮と並ぶと言われた伝説的存在。普通にやっていればセルゲイがいても盤石な布陣とは言えなかったでしょう」
ロジェが含み笑いを浮かべた。
「私はモンスターをセットしてターンを終了」
意味深なことを言っておきながら壁モンスターを出しただけでエンド宣言。
一見すれば有効な手筋を見いだせていないかのようなプレイング。
「私のターン、ドロー」
実際、何も起こることはなくターンはグレース・タイラーへと移る。
「フィールド魔法《アマゾネスの里》を発動」
《アマゾネスの里》
フィールド魔法
(1):フィールドの「アマゾネス」モンスターの攻撃力は200アップする。
(2):1ターンに1度、「アマゾネス」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
自分はその「アマゾネス」モンスターの元々のレベル以下のレベルを持つ「アマゾネス」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
「この効果で《アマゾネスペット虎獅子》の攻撃力を200ポイントアップ」
《アマゾネスペット虎獅子》
融合・効果モンスター
星7/地属性/獣族/攻2500→2700/守2400
「バトルフェイズよ」
現在、ロジェの場には裏守備モンスターが一体、セルゲイの場には攻撃表示の《地縛囚人ライン・ウォーカー》がいる。
選択肢としてはダメージを優先してセルゲイに攻撃するか、ロジェの場の壁を処理するかの二択。
「《アマゾネスペット虎獅子》で《ヴォルカニック・デビル》を攻撃!!」
「……何?」
だがあろうことか、まさかの三択目。
フレンドリーファイアー!!
それは本来であれば起こり得ないことであった。
タッグデュエルのエキスパートであるグレース・タイラーが誤ってタッグパートナーを攻撃するようなプレイングミスをするなどあり得ない。
「《アマゾネスペット虎獅子》の効果発動! このカードが攻撃する時、ダメージ計算時のみ攻撃力を500アップする」
《アマゾネスペット虎獅子》
融合・効果モンスター
星7/地属性/獣族/攻2700→3200/守2400
OBRIEN LP3000→2800
「更にアマゾネスモンスターが相手モンスターに攻撃したダメージ計算後、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を800ポイントダウンするわ」
《ヴォルカニック・トルーパー》
効果モンスター
星3/炎属性/炎族/攻1000→200/守1000
「……そういうことか」
だがプレイングミスではなく意図的であるというなら話は別。
「彼女を責めてはいけませんねぇ。戦争において裏切りは称賛されるべき行為だ」
両腕を広げながらしたり顔で味方撃ちを賛美するロジェ。
「勘違いしないで、ロジェ。私は貴方に従っているわけじゃない」
グレース・タイラーが恍惚の表情を浮かべながら笑顔で宣言する。
「全てはゴドウィン様のために」
タッグデュエルは三対一の変則バトルロイヤルに移行した。