遊戯王ARC-V DIMENSIONAL WARS   作:白銀蟷螂

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シンクロ次元 其の伍

 タッグデュエルにおけるタッグパートナーの裏切り。

 味方であるはずの相方によるフレンドリーファイア。

 通常ではあり得ないプレイングだが、現在行われているのはデュエル大会ではなく戦争だ。

 

「私は魔法カード《ツイスター》を発動」

 

 《ツイスター》

 速攻魔法

 500ライフポイントを払って発動できる。

 フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

 

 GRACE LP3500

 

「《ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン》を破壊よ」

 

 故にグレース・タイラーは味方撃ちをしただけに留まらず、オブライエンの場の永続魔法まで破壊する。

 

「これでターンを終了するわ」

 

 本来のタッグデュエルなら敵味方交互にターンが進行するが、パートナーが裏切った以上、事実上連続で敵のターン。

 

「俺のターン。フィールドゾーンにカードが存在する時、このカードは特殊召喚できる。《地縛囚人ストーン・スィーパー》!」

 

 《地縛囚人ストーン・スィーパー》

 効果モンスター

 星5/闇属性/悪魔族/攻1600/守1600

 このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 (1):フィールドゾーンにカードが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 (2):このカードを手札から捨てて発動できる。

 デッキからレベル3以下の悪魔族チューナー1体を手札に加える。

 この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合・SモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 

 グレース・タイラーの場にある《アマゾネスの里》により《地縛囚人ストーン・スィーパー》の特殊召喚条件が満たされる。

 単に自分のモンスターの攻撃力を上げるだけではなく味方をアシストする。

 アカデミア上位のタッグデュエリストに相応しいデュエルタクティクス。

 

「《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を発動! この効果によりフィールドの二体のモンスターを素材にシンクロ召喚、および融合召喚を行う」

 

 《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》

 通常魔法

 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分は融合・SモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 (1):自分フィールドの表側表示の、チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ墓地へ送って発動できる。

 以下のモンスターを1体ずつEXデッキから特殊召喚する。

 ●墓地のそのモンスター2体を素材としてS召喚可能なSモンスター

 ●墓地のそのモンスター2体を素材として融合召喚可能な融合モンスター

 

「俺はレベル5の《地縛囚人ストーン・スィーパー》にレベル3の《地縛囚人ライン・ウォーカー》をチューニング! 地の底から蘇れ。戒め放つ翼持つ巨獣よ。シンクロ召喚! 現れよレベル8《地縛戒隷 ジオグリフォン》!」

 

 《地縛戒隷 ジオグリフォン》

 シンクロ・効果モンスター

 星8/闇属性/悪魔族/攻2500/守1500

 闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 (1):自分・相手ターンに発動できる。

 自分の墓地から「地縛戒隷 ジオグリフォン」以外の「地縛」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 このターン、自分は融合・SモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 (2):このカードが相手によって破壊された場合に発動できる。

 フィールドのカード1枚を破壊する。

 その後、自分のフィールド・墓地の「地縛」モンスターの種類×300ダメージを相手に与える。

 

「そして俺はストーン・スィーパーとライン・ウォーカーを融合。地を這う囚人よ。刑場への道を歩き続ける囚人と一つとなり、戒め与える巨獣となれ。融合召喚! 現れよレベル8《地縛戒隷 ジオクラーケン》!」

 

 《地縛戒隷 ジオクラーケン》

 融合・効果モンスター

 星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守1200

 「地縛」モンスター×2

 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 (1):このカードが特殊召喚した場合に発動できる。

 自分のデッキ・墓地からフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 (2):相手のEXデッキからモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。

 このターンに特殊召喚された相手フィールドのモンスターを全て破壊し、

 破壊したモンスターの数×800ダメージを相手に与える。

 

「《地縛戒隷 ジオクラーケン》の効果によりデッキから《地縛牢》を手札に加える。更に《地縛戒隷 ジオグリフォン》の効果で墓地から《地縛囚人ライン・ウォーカー》を特殊召喚」

 

 《地縛囚人ライン・ウォーカー》

 チューナー・効果モンスター

 星3/闇属性/悪魔族/攻 800/守1100

 

「効果により《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を手札に加える。バトルだ。《地縛戒隷 ジオグリフォン》で《ヴォルカニック・トルーパー》を攻撃!」

 

 これによりオブライエンの場のモンスターは全ていなくなった。

 

「《地縛戒隷 ジオクラーケン》でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 現在のオブライエンのライフポイントは2800であるため、この攻撃が通ればライフは0になる。

 

「トラップ発動!《ヴォルカニック・エミッション》」

 

 《ヴォルカニック・エミッション》

 通常罠

 (1):以下の効果から1つを選択して発動できる

 (このカード名の以下の効果はそれぞれ1ターンに1度しか選択できない)。

 ●デッキから「ヴォルカニック」モンスター1体を選び、手札に加えるか召喚条件を無視して特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに手札に戻る。

 ●フィールドの炎族モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 自分フィールドのモンスターを対象として発動した場合、この効果で与えるダメージは半分になる。

 

「デッキから《ヴォルカニック・デビル》を特殊召喚!」

 

 《ヴォルカニック・デビル》

 特殊召喚・効果モンスター

 星8/炎属性/炎族/攻3000/守1800

 

 バトルフェイズ中、相手の攻撃表示モンスターは《ヴォルカニック・デビル》を攻撃しなければならない。

 

 SERGEY  LP4000→3800

 

「《ヴォルカニック・デビル》が戦闘でモンスターを破壊した時、相手フィールド上全てのモンスターを破壊し、一体につき500ダメージを与える」

 

 SERGEY  LP3800→2800

 

「だが《地縛戒隷 ジオグリフォン》が相手によって破壊されたことで《ヴォルカニック・デビル》を破壊。更に墓地の地縛モンスター1体につき300ダメージを与える」

 

 OBRIEN LP2800→1600

 

「魔法カード《死者蘇生》発動」

 

 《死者蘇生》

 通常魔法

 (1):自分か相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「《地縛戒隷 ジオクラーケン》を特殊召喚する」

 

 《地縛戒隷 ジオクラーケン》

 融合・効果モンスター

 星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守1200

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー」

 

 この状況、もはや三人を倒して生還するのは不可能。

 生半可な雑兵ならともかくセルゲイという男はおそらくシンクロ次元でも最上位のデュエリストであり、グレース・タイラーは融合次元屈指のタッグデュエリスト。

 ロジェも一流半程度の腕はある男だ。

 

 今のオブライエンにできるのは敵を道連れにすること。

 このターン中に手札全てを使い切ってもいいので、誰か一人のライフを0にする。

 

「魔法カード《ナイト・ショット》発動」

 

 《ナイト・ショット》

 通常魔法

 (1):相手フィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

 セットされたそのカードを破壊する。

 このカードの発動に対して相手は対象のカードを発動できない。

 

「デッキから《ブレイズ・キャノン》を墓地に送って《ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン》を発動。デッキから《ヴォルカニック・リムファイア》を墓地に送り《地縛戒隷 ジオクラーケン》を破壊」

 

 融合召喚とシンクロ召喚を同時に行うセルゲイという男だけは、この場で確実にカード化する。

 それが歴戦のデュエル戦士オブライエンの決断だった。

 

「《ヴォルカニック・リムファイア》の効果により墓地から《ブレイズ・キャノン》を除外して《ブレイズ・キャノン・マガジン》を発動。それを墓地に送り《ヴォルカニック・デビル》を特殊召喚!」

 

 《ヴォルカニック・デビル》

 特殊召喚・効果モンスター

 星8/炎属性/炎族/攻3000/守1800

 

「セ、セルゲイ!」

 

 ここで初めて焦った様子を見せるロジェ。

 だがもう遅い。

 

「《ヴォルカニック・デビル》でプレイヤーにダイレクトアタック! ヴォルカニック・キャノン!!」

 

 SERGEY  LP2800→0

 

 ライフが0になったセルゲイ向けてオブライエンはデュエルディスクから紫色の光線を照射。

 それを浴びたセルゲイの体は崩れた後、一枚のカードとなった。

 

「俺はターンを終了する」

「くそ! 無駄な足掻きを! 私のターン、魔法カード《死者への手向け》発動!」

 

 《死者への手向け》

 通常魔法

 (1):手札を1枚捨て、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを破壊する。

 

「《ヴォルカニック・デビル》を破壊! これでターンエンド。さあ、奴にトドメを刺せ!」

 

 この期に及んで守備モンスターを残す保身に走ったロジェのプレイングに呆れながらもグレース・タイラーは己の役割を果たす。

 

「《アマゾネスペット虎獅子》でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 OBRIEN LP1600→0

 

 リアルソリッドビジョンによりオブライエンの身体が宙を舞い壁に叩きつけられた。

 ロジェとグレース・タイラーがオブライエンを確保するべく駆け出すが、二人にデュエルディスクを取り上げられるより早く自らに向けてカード化光線を照射する。

 

「くそ! この死に損ないが!」

 

 カードになったオブライエンを踏みつけながらロジェが悪態をついた。

 

「オースチン・オブライエンはアカデミアでもカイザー亮と並ぶ伝説のデュエル戦士だったわ。それを一人の犠牲でカード化できたなら悪くない成果でしょう」

 

 デュエリストとしての視点で見ても1:1交換なら十分にアドをとれる結果。

 

「セルゲイは……治安維持局の貴重な戦力だった」

「あなたの戦力の間違いではなくて」

 

 痛い所を突かれたロジェは顔を歪めながら舌打ちを堪える。

 事実としてセルゲイ・ヴォルコフはロジェ個人の意向で動かすことができる最高戦力だ。

 レクス・ゴドウィンに反旗を翻すチャンスが万に一つ訪れたとしても、セルゲイなしでは反抗などできるはずもない。

 

 こうなった以上、ロジェに残された道は評議会の意向に従って融合次元を植民地化。

 シンクロ次元融合領の領主としてアカデミアの王の座に就くことだけだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 後日。

 シティの高層ビルの一室。

 窓際に立ち夜景を眺めるのはシティの王、ジャック・アトラス。

 

 現在、ジャックは評議会の要請を受けて人を待っていた。

 ブルーアイズマウンテンを飲みながら下界を見下ろす。

 デュエルに勝ち続けることにより上り詰めた場所、手に入れたキングの座。

 

 部屋のドアがノックされ銀髪の女性が入室してきた。

 その姿を見てもジャックに驚きはない。

 事前に誰が来るのかは通達されているからだ。

 

「会うのは二度目になるのかしら、キング」

 

 グレース・タイラー。

 融合次元から来たアカデミアの先兵であった女。

 だが現在は治安維持局長官レクス・ゴドウィンの犬になったという。

 

「随分と怖い顔ね。これからはお互いに仲良くした方がいいわ。だって私たちはタッグパートナーになるのだから」

 

 そして次元戦争におけるキングのタッグパートナー。

 それが評議会から伝えられた内容だった。

 

「俺は貴様を信用していない」

「私を監視するように言われているのでしょう」

 

 確かに評議会からはグレース・タイラーが本当にシンクロ次元の側に付いたのが探るように要請されている。

 キングであれば元アカデミアの女を上手く制御することができるだろうとも。

 

「私も同じよ。あなたがコモンズに味方するようなことがないか見張るように言われている」

 

 つまるところ相互監視。

 コモンズ出身のキングと元アカデミアのデュエル戦士を組ませることで両者の動きを制限しながらコントロールする。

 

「ふふ、心配しなくても私がゴドウィン様を裏切るようなことはないわ」

 

 自らが所属していた組織を裏切った人間の言葉に信頼性などあるはずもない。

 

「あなたは容姿も優れているしタッグパートナーとして認めてあげる。少なくともシンジの坊やなんかより、よっぽど男らしくて逞しいわ。もちろんゴドウィン様には劣るけど」

 

 シンジ・ウェーバーはデュエルの最中もこの女との絆を信じていたが、どうやらそんなものは皆無だったようだ。

 

「タッグパートナーになるのだからキングじゃ少し他人行儀ね。ジャックと呼んでいいかしら」

「呼び方などどうでもいい」

 

 不機嫌そうに鼻を鳴らすジャックに対してグレース・タイラーは笑顔。

 

「次元戦争を、ハンティングゲームを楽しみましょう、ジャック」

 

 妖艶な仕草で夜景を背にしながら満面の笑顔を浮かべていた。

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