遊戯王ARC-V DIMENSIONAL WARS 作:白銀蟷螂
深夜。
消灯後の海馬コーポレーション工場内に一人の少年が入り込んだ。
キャンディを咥えた水色の髪の男児、紫雲院素良。
デニス・マックフィールドと同様にスタンダード次元に潜伏しているアカデミアのスパイだ。
今回、素良がこの工場に潜入したのは海馬コーポレーションが次元戦争に関与しているのかを確認するため。
デモを扇動してレオ・コーポレーションの動きを鈍化させることには成功したものの、あまりにも都合よく行き過ぎているのではないかという疑念をアカデミア本部は示した。
その上でスタンダード次元においてレオ・コーポレーションと並ぶ大企業である海馬コーポレーションが次元戦争に向けて動いている可能性があると判断したのだ。
「アカデミアの懸念は正しかったみたいだね」
懐中電灯で照らされた先にあるのはベルトコンベアに並べられた大量のデュエルディスク。
それら全てにアカデミアが使用するのと同じ人間をカード化する機能が搭載されていた。
この工場では次元戦争用のカード化デュエルディスクを大量生産しているのだ。
もはや海馬コーポレーションが裏で次元戦争の準備を進めているのは間違いない。
すぐに本部に連絡しようとして、それが出来ないことに気づいた。
「通信がジャミングされている?」
次の瞬間、工場内がパッと明るくなり、思わず目を細めた素良の視界に入ったのは木刀を振り下ろしてくる男の姿。
アカデミアのデュエル戦士として鍛えられた身体能力により身を翻して攻撃を回避する。
「ほう、剣道五段のワシの攻撃を躱したか。子供ではあるがアカデミアのスパイというのは間違いなさそうだ」
現れたのはスーツを着てネクタイをした角刈りの中年男性だった。
「あの! 僕、ここに間違って迷い込んじゃったんだ」
目を潤ませながらあどけない表情で演技をする素良。
「ふん、下らん芝居はよせ。そんな子供騙しは大人であるワシには通用しない」
「……あっそう。誰? おじさん」
元より騙せる可能性は低かったので動揺はない。
「ワシは海馬コーポレーション幹部、BIG5の一人、大田宗一郎。人呼んで工場の鬼軍曹」
大田が射出した赤い光線状の鞭デュエルアンカーが素良の腕に絡みつく。
「さぁ、デュエルを始めようか」
素良は舌打ちを堪えながらキャンディを噛み砕いた。
こうして見つかった以上、潜入ミッションは失敗。
これはアカデミアからの評価を下げる要因にもなりかねない。
「スタンダードのデュエリストが僕に勝てると思ってるの?」
だが素良は自らが窮地に追いやられたとは微塵にも思っていなかった。
融合次元のデュエル戦士、それも特別任務を任されるエリートである自分がスタンダード次元のデュエリストに敗北する可能性など0だからだ。
両者のデュエルディスクが展開され、カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。
SORA / LP4000
VS
OOTA / LP4000
「「決闘!!」」
先攻をとったのは素良だった。
「僕のターン。ファーニマル・ドッグを召喚」
《ファーニマル・ドッグ》
効果モンスター
星4/地属性/天使族/攻1700/守1000
「ファーニマル・ドッグ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「エッジインプ・シザー」1体または「ファーニマル・ドッグ」以外の「ファーニマル」モンスター1体を手札に加える。
「効果でデッキから《エッジインプ・シザー》を手札に加える。そして魔法カード《融合》を発動! 手札の《ファーニマル・ベア》と《エッジインプ・シザー》を融合」
《融合》
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。
「悪魔の爪よ! 野獣の牙よ! 今神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ! 融合召喚! 現れ出ちゃえ、すべてを切り裂く戦慄のケダモノ《デストーイ・シザー・ベアー》!」
《デストーイ・シザー・ベアー》
融合・効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2200/守1800
「エッジインプ・シザー」+「ファーニマル・ベア」
(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。
そのモンスターを攻撃力1000アップの装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
可愛らしい融合素材モンスターがホラー作品に出てくるような化け物へと変貌して本性を現す。
これこそが融合次元のスパイである素良の二面性を象徴する融合モンスター、デストーイ。
「僕はターンエンド。さぁ、おじさんのターンだよ」
「ワシのターン、ドロー。魔法カード《予想GUY》を発動」
《予想GUY》
通常魔法
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。
「この効果によってデッキから《機械軍曹》を守備表示で特殊召喚」
《機械軍曹》
通常モンスター
星4/炎属性/機械族/攻1600/守1800
「そして《機械軍曹》をリリースして《機械王》をアドバンス召喚!」
《機械王》
効果モンスター
星6/地属性/機械族/攻2200→2300/守2000
フィールド上に表側表示で存在する機械族モンスター1体につき、このカードの攻撃力は100ポイントアップする。
「バトル!《機械王》で《デストーイ・シザー・ベアー》を攻撃! ジェットパンチ!」
SORA LP3900
「ちっ、こんなおっさんが僕の融合モンスターを」
「あまり大人を甘く見ないことだ」
「はん、遊びなんだよ。このデュエルも、次元戦争も所詮はハンティングゲーム!」
デストーイと同じように本性を現した素良が顔を歪めながら嗤う。
「負け犬エクシーズ次元の連中と同じようにおじさんのこともカード化してあげるよ」
「ならばワシが教えてやろう。大人の恐ろしさを。カードを一枚伏せてターンエンド」
「僕のターン、ドロー! 魔法カード《融合》発動。手札の《エッジインプ・ソウ》と《ファーニマル・ペンギン》を融合!」
《融合》
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。
「悪魔宿りし鉄の歯よ。牙剥く野獣と一つとなりて新たな力と姿を見せよ。融合召喚! 現れ出ちゃえ! すべてを切り裂く百獣の王!《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》!」
《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》
融合・効果モンスター
星7/闇属性/悪魔族/攻2400/守2000
「エッジインプ・ソウ」+「ファーニマル」モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
「デストーイ・ホイールソウ・ライオ」の効果は1ターンに1度しか使用できず、この効果を発動するターン、このカードは直接攻撃できない。
(1):相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
「まずは墓地に送られた《ファーニマル・ペンギン》の効果でデッキからカードを二枚ドローして手札を一枚捨てる。更に《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》の効果発動!《機械王》を破壊して元々の攻撃力分のダメージを与える」
「ぐっ! ワシの《機械王》が!」
OOTA LP1800
「バトル!《ファーニマル・ドッグ》でプレイヤーにダイレクトアタック!」
OOTA LP100
「《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》は効果を発動したターンは直接攻撃できない。命拾いしたね、おじさん。僕はこれでターンエンド」
「この瞬間、トラップカード《ダブル・フッキング》発動!」
《ダブル・フッキング》
永続罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札を1枚捨て、自分の墓地のモンスターを2体まで対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
対象のモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。
このカードがフィールドから離れた時に対象のモンスターは破壊される。
「手札を一枚捨てることで墓地から《機械王》と《機械軍曹》を特殊召喚!」
《機械王》
効果モンスター
星6/地属性/機械族/攻2200→2400/守2000
フィールド上に表側表示で存在する機械族モンスター1体につき、
このカードの攻撃力は100ポイントアップする。
《機械軍曹》
通常モンスター
星4/炎属性/機械族/攻1600/守1800
「ワシのターン、ドロー。《機械軍曹》と《機械王》二体のモンスターをリリースして《パーフェクト機械王》をアドバンス召喚!!」
《パーフェクト機械王》
効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻2700/守1500
フィールド上に存在するこのカード以外の機械族モンスター1体につき、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
「バトル!《パーフェクト機械王》で《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》を攻撃!」
SORA LP3600
「狩られるだけの獲物! ハンティングゲームの景品ごときが、無駄な抵抗を!」
「ワシはカードを一枚伏せてターンエンド」
「僕のターン、ドロー! 魔法カード《簡易融合》発動!」
《簡易融合》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):1000LPを払って発動できる。
レベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、エンドフェイズに破壊される。
「ライフを1000ポイント払って《デストーイ・チェーン・シープ》を特殊召喚!」
SORA LP2600
《デストーイ・チェーン・シープ》
融合・効果モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻2000/守2000
「エッジインプ・チェーン」+「ファーニマル」モンスター
「デストーイ・チェーン・シープ」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードの攻撃力は800アップする。
「いい加減、格の違いを教えてあげるよ。魔法カード《魔玩具融合》発動!」
《魔玩具融合》
通常魔法
「魔玩具融合」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分のフィールド・墓地から、「デストーイ」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
「フィールドの《デストーイ・チェーン・シープ》と墓地の《デストーイ・シザー・ベアー》《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》を除外」
呼び出されるのは三体のデストーイを束ねる紫雲院素良のエースモンスター。
「悪魔宿りし非情の玩具よ、刃向かう愚民を根こそぎ滅ぼせ! 融合召喚! 現れ出でよ! 全ての玩具の結合魔獣!《デストーイ・マッド・キマイラ》!」
《デストーイ・マッド・キマイラ》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守2000
「デストーイ」モンスター×3
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
「デストーイ・マッド・キマイラ」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。
そのモンスターの攻撃力を半分にして自分フィールドに特殊召喚する。
(3):このカードの攻撃力は、元々の持ち主が相手となる自分フィールドのモンスターの数×300アップする。
「ならばトラップカード発動!《ゲットライド!》」
《ゲットライド!》
通常罠
自分の墓地のユニオンモンスター1体を選択し、自分フィールド上の装備可能なモンスターに装備する。
「ワシは墓地の《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を《パーフェクト機械王》に装備する! その効果で攻撃力、守備力を500ポイントアップ!」
《パーフェクト機械王》
星8/地属性/機械族/攻2700→3200/守1500→2000
「何だって! そんなカードいつの間に」
「あったんだよ。ワシが《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を墓地に送るタイミングが一度だけな」
「……《ダブル・フッキング》を発動した時か!」
《ダブル・フッキング》の手札コストとして捨てられたカードが《強化支援メカ・ヘビーウェポン》。
それを《ゲットライド!》によって装備するコンボ戦術。
このままでは返しのターンで《デストーイ・マッド・キマイラ》を戦闘破壊されるが、現在の素良には手札がないため打てる手がない。
「くっ! 僕は《ファーニマル・ドッグ》を守備表示にしてターンを終了する」
「ワシのターン、ドロー! 来たか、ワシはこの時を待っていたのだ。まずは《強化支援メカ・ヘビーウェポン》の効果発動。装備されているこのカードを特殊召喚する」
《強化支援メカ・ヘビーウェポン》
ユニオン・効果モンスター
星3/闇属性/機械族/攻 500/守 500
(1):1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分フィールドの機械族モンスター1体を対象とし、このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。
装備モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。
●装備されているこのカードを特殊召喚する。
(2):装備モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。
「そして魔法カード《機械複製術》を発動」
《機械複製術》
通常魔法
(1):自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの同名モンスターを2体までデッキから特殊召喚する。
「デッキから新たに《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を二体特殊召喚する」
《強化支援メカ・ヘビーウェポン》
ユニオン・効果モンスター
星3/闇属性/機械族/攻 500/守 500
《強化支援メカ・ヘビーウェポン》
ユニオン・効果モンスター
星3/闇属性/機械族/攻 500/守 500
「《パーフェクト機械王》はフィールド上に存在するこのカード以外の機械族の数だけ攻撃力を500ポイントアップすることができる」
《パーフェクト機械王》
星8/地属性/機械族/攻2700→4200/守1500
「だけどマッド・キマイラが破壊されても僕のライフは残る」
「さて、それはどうかな。永続魔法《機械仕掛の夜-クロック・ワーク・ナイト-》を発動!」
《機械仕掛の夜-クロック・ワーク・ナイト-》
永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドの表側表示モンスターは機械族になる。
(2):自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500アップし、相手フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。
(3):墓地のこのカードを除外し、手札を1枚捨てて発動できる。
デッキから機械族・地属性モンスター1体を手札に加える。
「フィールド上、全てのモンスターの種族を機械族に変更する! この環境ではワシのモンスターの攻撃力、守備力が500アップするが、お前のモンスターは逆に500ポイントダウンする」
《デストーイ・マッド・キマイラ》
星8/闇属性/悪魔族→機械族/攻2800→2300/守2000→1500
《ファーニマル・ドッグ》
星4/地属性/天使族→機械族/攻1700→1200/守1000→500
「機械族モンスターが増えたことにより《パーフェクト機械王》の攻撃力が更にアップ!」
《パーフェクト機械王》
星8/地属性/機械族/攻4200→5700/守1500→2000
「あ、あり得ない。スタンダード次元のデュエリスト、それもこんなおっさんに僕が」
「勝負あったな。消えろ!《デストーイ・マッド・キマイラ》!《パーフェクト機械王》で攻撃!!」
完全なる機械の王のミサイル攻撃によって、全ての玩具の結合魔獣は木端微塵に砕け散った。
「ゲームオーバーだ、小僧」
SORA LP0
リアルソリッドビジョンの衝撃によって吹っ飛ばされた素良は工場の床を転がった。
「警備員、奴を捕縛しろ。まずはデュエルディスクを奪い取れ」
駆け付けてきた三人の警備員が倒れた素良を押さえつけ腕に装着されたアカデミア製のデュエルディスクを取り外す。
これにより素良は強制送還装置によるアカデミアへの帰還が出来なくなった。
「待て、勝負はまだ終わってない。僕が負けるはずないんだ」
アカデミアのデュエル戦士の中でもエリートであるが故に素良は敗北を認めることができない。
「もう一度、僕とデュエルしろ!」
「小僧、どうやら貴様は本当の戦争というものを分かっていないようだな」
「何だと!」
エクシーズ次元を蹂躙して功績を上げた素良にとって、それは侮辱でしかない発言。
「貴様は負けて捕虜になった。もう一度など、ありはしないのだよ」
「……畜生」
紫雲院素良の敗因、それは大人をナメたこと。
大人というのは子供よりも長く生きている年長者であり、お菓子のように甘い相手ではなく、決して軽視していい存在ではなかったのだ。
これにより海馬コーポレーションはアカデミアのスパイを一人確保した。