真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
黒と白で半身が別れ。
逞しい肉体に、右手には鋭い刃。顔は恐ろしい形相と、威厳のあるもので、二つに分かれている。
ギリシャ彫刻のような完璧な肉体に、男性らしさを現す頬の髭。
そんな男性が、腰掛けているのはビルの残骸だ。
見渡す限りの砂の海。周囲には、命というものは存在しなかった。
そんな男性の側に。
鎧姿の女性が、跪いていた。こちらは威厳と凶暴が同居する男性と違い、顔立ちは幼くすらある。
「父上」
「おう、どうした。 何かあったか」
「ヒュドラが倒されました」
「ま、不思議じゃねえだろうさ。 ベテルの支部の近くに嫌がらせでおいたからな。 天使どもが大天使クラスを連れてくれば、今のヒュドラじゃ負けても仕方がないだろうぜ」
それが、と女性は言う。
どうやら現地の神か、それに類する存在に倒されたらしいのだと。
ほう、と男性は答えていた。
「この国の神々はあらかたあの東京受胎でやられちまったと聞いてるんだがな。 温存していた神造魔神もその後の大戦でもう動くのがいねえんだろ? よくもヒュドラを倒せたもんだな」
「使いに出していたニンフの話によると、どうも人間が加勢していたようです」
「デビルサマナーか。 だが日本で活動していたデビルサマナーはあらかた壊滅したって聞いているんだが」
「私もそう聞いていました。 国側に着いていた八咫烏、混沌側のファントムソサエティ、ガイア教団。 いずれも東京受胎とその後の大乱でほとんどの戦力を喪失、特にファントムソサエティは全滅したと聞いています。 それなのに……」
しばし男性は考え込んだ後、座り直して女性に向き直った。
命令を下す。
「アルテミス」
「は、父上」
「ニンフを更に放って情報を集めろ。 おまえ自身はヒュドラをやった奴について調べてこい」
「分かりました」
アルテミスと呼ばれた女性がかき消える。
アルテミス。ギリシャ神話の高位神格である。そして、その父は。
「さて、そろそろあのいけすかねえ天使どもに鉄槌を下す準備をするか。 散々俺の事を貶めてくれた礼を、百倍にしてかえさねえとな。 ナホビノになれれば良いんだが、最悪他にも手段はある。 都合良く俺の半身なんぞ見つかるともおもえねえし、いくつか策を練っておくか」
ギリシャ神話の最高神ゼウスは。
得意とする変身魔術で霧に変わると、そのまま魔界に溶けて消えた。
国会議事堂近く。
悪魔の群れが、蹴散らされていた。
堕天使と呼ばれる、一神教で悪魔扱いされた天使達が。片っ端から蹂躙されている。文字通りの一方的な殺戮。戦闘ですらない。
天使と激しく対立していることで知られる堕天使だが。
襲撃者は、天使ではなかった。
人間と、古い中華の服を着崩した女の悪魔。
たったそれだけである。
人間の男は警官の制服を着て、手には鋭い剣と拳銃。そして、目は黄金に輝き、もはや人ではないことを示すように、地面から浮き上がっていた。
魔法の力も人間などでは歯が立たないはずの暴力も。
全て真正面からねじ伏せられていく。
男は顔色一つ変えず、堕天使の大群をちぎっては投げちぎっては投げ。
そして、最後に残った堕天使アイペロスは、砂の流れ落ちる崖際に追い詰められていた。
獅子の顔を持つアイペロスは、様々な時間軸に通じ、契約した人間を勇敢にする能力を持つとされている。
一神教初期にたくさん作られた人間に害を為さない悪魔の一柱であり。初期の一神教では別に悪魔は絶対悪ではなかったことを示す存在なのだが。
そんなことは一切関係ないと言わんばかりに、人間が迫る。
「ま、待て! 一体何の恨みがある! 私は人間に対して危害など加えていないぞ! むしろ人間に勇気を与えてきたのだ!」
「貴様が悪魔という時点で既に許されざる罪を抱えている。 忌ね」
「き、貴様も悪魔を連れているではないか! そやつは道教系の高位神格であろう!」
「これは目的が一致しているから殺さないでいるだけの存在だ」
徒手空拳で、武装した堕天使達を文字通り十把一絡げに血の海に沈めていた女悪魔は、返り血一つ浴びていない。
それどころか既に抵抗を完全制圧。
血の海を平然と歩いてきていた。
「相変わらずよのう八雲。 それでそやつはどうするのか」
「こうする」
悲鳴も命乞いも無意味。
八雲と呼ばれた人間は、正面から堕天使アイペロスを両断していた。何も別に人間を害していないアイペロスは、嘆きの声を上げながら消滅した。
三次元世界。
いわゆるアッシャー界から追放されたのだ。
彼らの本拠であるアティルト界からまたここに来るには、相当な手間が掛かるだろう。それだけで、八雲は良いのだった。
「それで、堕天使どもを片付けた後は?」
「国会議事堂に居座る天使を始末する」
「あそこには大天使もきておろう。 簡単にはいかぬぞ」
「分かっている。 だが、大天使ごとき殺せなくて、俺の大望はなせぬ」
しなだれかかる女悪魔をすげなく振り払うと、八雲は歩き出す。
昔は、悪魔ともわかりあえると思っていた。
幼い頃最初に見えた悪魔は、とても友好的な存在だった。
色々なことを教えてくれた。
悪さだってしなかった。罪のない悪戯はしたが。それは八雲を楽しませるための行動であり、習性だった。
厳格だけれど誰よりも優しくて、正義感が強い誇りになる父。
病弱だったけれど、八雲の言うことを全て穏やかに聞いてくれた母。
そして、四国から来た名前もない友達。
みんな大好きだった。
大人になってからも、それは変わらない。その考えは、ある時を境に粉々に砕け散った。
変わらない筈だったのに。
悪魔がいるのが悪いのだ。
この世界に、三次元世界の住人ではないものが、物理的な干渉を行い。ましてやルールに影響を与えるなどと言うことがあってはならないのだ。
人間は原初の強さを取り戻さなければならない。
そうしなければ、未来永劫宗教などと言うものにすがり。それを利用する邪悪な連中に好き勝手されるだけだ。
そうなれば人間に未来などない。
この世界の。
それ以上に人間の未来のために。
八雲は心を殺して動かなければならなかった。
幼い頃友だったあの悪魔は、八雲の有様を見て消えた。
従えていた悪魔も、みな八雲の下を離れていった。
それでいい。
今では孤独はまったく苦にならない。
今やるべき事は、ただ悪魔と神を全て殺し尽くすこと。ただ、それだけだった。
(続)
いくつもの勢力が動き始めます。
決定的に四文字の神の勢力が衰えきった。
ナホビノが大手を振って歩いているのはそれが証明だからです。
東京受胎後の混乱など、文字通り冗談にしか思えない程度の混乱が始まります。
空の玉座を狙って、多数の勢力が動き出したのですから。
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