真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
インド神話の神々との戦闘開始です。
ギリシャ支部も別方向から仕掛けていますが、それでもなおその強力な戦力は油断できるものではありません。
インドは南米と並んでゼロの概念を発見した高度文明発祥の地であり、唯識論をはじめとした優れた思想も生み出した土地である。
近年では振るわない時期もあったが、古くに巨大文明を築いた土地は伊達ではないのである。
ヒンドゥーとイスラムが今は二大勢力となっていて、それが問題ではある。
カースト制度を未だに浸透させているヒンドゥー。
現在は極端に排他的になってしまったイスラム。
仏教が「わかりにくい」という点で、インドから追われてしまったのはあまりにも痛いと言える。
せめて三大勢力で拮抗がとれていれば、人々に生き方が色々とあっただろうに。
ギリシャ支部が戦闘を開始している。斥候によると、向こうにはヴィシュヌとガルーダが向かったようだ。
浅草の辺りは、すり鉢状にえぐれていて、守りやすいというか攻めづらい地形になっている。
北欧支部が陣を敷いていた辺りまで進出した頃には、天地で戦っているギリシャ支部とインド支部が見えてきていた。
「ご注進!」
戻ってきたのは天狗。
ただし鞍馬天狗だ。
ユヅルの手持ちの天狗達も、どんどんカラス天狗から上位の天狗に転化している。この鞍馬天狗も、その一体だった。
「敵に大物神格の姿あり! 恐らくはドゥルガーとカーリーです!」
「分かった。 厄介な相手が出てきたな」
「すまん、俺にも詳しく教えてくれるか。 名前くらいしか分からない」
「ああ、分かった」
ユヅルが進みながら、イチロウに説明する。
聞き役に徹してくれているし、ミヤズにも説明できて丁度良いと判断しているのだろう。
ドゥルガーとカーリーはどちらもシヴァの妻であり、神話によってはシヴァの妻であるパールヴァティの戦闘形態、ともされているが。
実際のところは、どちらもインドに割拠した信仰がヒンドゥーに取り込まれた結果、シヴァの妻でパールバティの化身とされた姿である。
ドゥルガーは神々の怒りから生じたとされ、カーリーはそのドゥルガーのさらなる怒りから生じたとされており。
故にどちらも凄まじい残虐性と戦闘意欲を持っている。
特にカーリーは、インドに数百年実在していた暗殺集団のご本尊となっていた歴史的事実があり。
その残虐性は、世界に数多いる女神の中でも屈指。
元々古い女神は美しく優しい者だけではないのだが。
女神という言葉に夢を見ているような人間に冷や水をぶっかけ、現実を見せつけるような神格達である。
「生き血を全部啜って敵を殺した!? 勝利の興奮で舞を踊って世界を壊しかけた!?」
「ああ、カーリーはそういう神格だ」
「おっかねえ……」
「ああ。 母系社会を戦争がない平和な社会だの考える人間もいるが、そういう幻想を木っ端微塵にする神格だ。 ヒンドゥーに取り込まれる前は普通にどこかしらの民族に主神としてあがめられていた存在で、その民族の鏡とも言える存在だったのだから、それがどういう者達だったのかは言うまでもないだろうな」
現在でのカーリー信仰は多少変化してはいるが。
それでもパワフルでエネルギッシュな神であることに違いはない。
ともかく、戦えばかなり手強いのは確定事項だ。
女性は古くは強く逞しかった。
男系社会と張り合えるくらいに。
それでいいのだ。
双方の良さ強さをそれぞれ取り入れていけば良い。男系信仰の存在ばかりが座に着いていては、明らかに世界は歪んでいく。
双方の良さをそれぞれ取り込んで、座に生かせばいい。
カーリーとドゥルガーも、女神の一つのあり方として、その存在を勉強するためにも。
戦い、倒しておくべきだろう。
今回はツバメさんと越水長官も来ている。
越水長官には、自衛隊が護衛につくと言ったのだが。自衛隊の隊員は、東京や周辺を守ることに専念するように越水長官が説得した。
対人に限定すれば非常に優秀なのだ。
世界の軍隊でも練度においても指揮においてもかなり優れている。問題は規模が小さいことだが、それでも配備している兵器も最新鋭だ。
予算の少なさに困らされていた時代もあったが、越水長官の時代になってそれも変わっている。
今ではどんどん先端兵器を配備して、少なくとも人間相手には充分に戦える存在になっているのだ。
悪魔との戦闘は不向き。
だったら専門家に任せるようにと、越水長官は説得したようだった。
「あの、越水長官。 月読尊って神様だって事は分かりますが、戦いの方は大丈夫でしょうか」
「もっともな懸念だなミヤズくん。 流石に戦神である煌くんのアオガミ型神造魔神ほどではないが、それなりには戦える。 足などは引っ張らないさ。 インドの神々は手強い。 ましてやシヴァは途方もない相手だ。 だから、出せる戦力は全て出さないと行けないのだ」
「そういうことッス。 あたしは今回で引退したいなーと思っているくらいでね。 流石にシヴァ相手はしんどすぎる」
「ボーナスは確約する」
ツバメさんがへいへいとぼやいた。
まあ確かに、インド支部の方から漂ってくる気配は尋常ではない。
程なく、浅草の雷門が見えてきた。
半ば砂に埋もれている。
多数の羅刹と夜叉、それに雑多な戦神達がいる。ヴァナラも多数陣列を組んでいた。ギリシャ支部との戦闘だけではなく、こちらにも兵を出す余裕がある、ということだ。そして後方には、多腕多頭の女神が二人いる。
髑髏の首飾りをかけている赤い肌をしている恐ろしい形相の女神がカーリー。乳房をはだけているが、勿論色気など皆無だ。
その側にいる、褐色肌の獰猛そうな多腕の女神がドゥルガー。
こちらもカーリーと似たような戦神だ。
距離が縮まっていく。
兵力は向こうが多いが、こちらとしては質が圧倒的に優れている。
それはそれとして、不意に姿を見せた存在がいる。
八雲ショウヘイ。
それにジョカだった。
「!」
「随分と大所帯になったな夏目煌」
「今、貴方と争っている余裕はない。 道を空けてくれないだろうか」
「別に争うつもりはないぞ? わらわとしてもシヴァめがルドラの秘法などというものを発動するのは困るのでな」
一瞬だけ火花が散るが、行くぞと八雲ショウヘイがジョカを促す。
ジョカは頷くと、きびすを返す。
どうやら、別の方からインド支部を攪乱してくれるらしい。
文字通りの袋だたきだが、それでもなおインド支部を簡単に突破できるとは思えないのが恐ろしいところだ。
敵の前衛の羅刹達が、凄まじい雄叫びを上げて威嚇している。
煌は出来るだけ戦力を温存するように。
そう言われているので、最初は手出しをしない。
前に出たのは、ユヅルとイチロウ。
二人が、神魔をそれぞれ展開する。
煌の手持ちの中で、フィンだけが出る。フィンも最前線に加わりたいと言うことだったから、頼む。
風。
生暖かい、血の臭いがする。
カーリーが舌なめずりしている。今から流される大量の血を味わおうというのだろう。
そうはさせるか。
森可成が、槍の石突きで砂を叩く。そして吠えていた。
「懸かれっ!」
「突撃!」
「突撃せよ!」
イチロウとユヅルがそれぞれ最前列で、敵の群れに突貫する。
同時に大量の羅刹と夜叉、ヴァナラが、一斉に襲いかかってくる。
ユヅルの大獄丸がそれらを棍棒で一薙ぎにする。更に、である。
「出でよ蔵王権現!」
「任せよ!」
ユヅルの新たな切り札。
天狗達と一緒に来ていた蔵王権現が、ユヅルが悪魔合体を重ねた結果、手持ちとなってくれたのである。
無茶な設定の神格であり、その設定通りの力を発揮できるわけではないが。
修験道における最強神格であり。
天狗達にとっては文字通り神に等しい。
凄まじい勢いで、大獄丸と蔵王権現が、肩を並べて暴れ始める。
イチロウも、アールマティと一緒に、巨大な影を呼び出していた。
「来いアウズンブラ!」
「!!!!!!!」
凄まじい雄叫びを上げて、巨大な雌牛が姿を見せた。
アウズンブラ。
北欧における原初の裂け目、原初神ユミルが生まれ出た闇の空虚ギンヌンガカプ。そこから生まれ出たユミルは、同じく生まれ出たアウズンブラの乳を飲んで生きたという話がある。
つまり原初神を育てた存在だ。
それ以降北欧神話にはほぼ登場しないが、その巨大さは文字通りビルか何かのようである。
これはユヅルの動物系の妖怪達や、イチロウの手持ちの強くなりたいと望んだ神々。更には、詩の神であるブラギなどが望んでなった姿だ。
アウズンブラの巨体を見て、流石に恐れ知らずのインドの荒神達も困惑する。そこに、三柱の巨神が、突貫していた。
吹っ飛び、蹴散らされる羅刹達。
だが無抵抗なわけもない。
カーリーが吠えると、すぐに陣列を組み直し、雨のような矢を振らせてくる。
前に出たタオが、光の壁を展開して、それを防ぐ。
スクラムを組んだ河童、鵺、金鬼、様々な妖怪達が、前衛で敵の大群と戦い始める。
上空からも多数の神魔が来る。
インドは数多の神魔が割拠する土地だ。
その多彩さを示すかのようである。
待ちきれなくなったらしく、カーリーが飛び出してくる。そして、タオの光の壁に、喚き散らしながら蹴りをたたき込んできた。
タオが明らかに押される。
創世の女神として覚醒したとは言え、力は無限ではない。
だが、カーリーに、フィンが躍りかかる。
とっさに飛び退いたカーリーが、フィンの剣を多数の腕につかまれた剣を振るって、受け止めていた。
「ほう、欧州の騎士か。 インドの地を踏み荒らした蛮族どもが、此処でも我らを蹂躙するか」
「そういえば英国の民がインドには散々迷惑を掛けたようだな。 それに関しては謝罪する。 だが、これは日本での戦いだ。 遺恨については後で恨み言を幾らでも聞こう。 悪いが倒させて貰うぞ!」
「おまえごときに敗れるかあっ!」
敵の海の中に落ちたカーリーとフィンが、凄まじい戦闘を開始。
巻き込まれた羅刹や夜叉が、粉々に砕け散るのが見えた。どう見てもフィンが有利なようには見えない。
其処に、イチロウが突貫。
ミヤズも既に手勢を展開していて、狙撃を開始している。
羅刹と一口に言っても、指揮官級の個体がいる。
基本的にインドの神々には敵対的な羅刹だが、それでも無理に従えられた存在もいる、ということだ。
ミヤズは巴御前に神魔の指揮を任せると、高所に陣取り、そこから狙撃を開始。煌も天使部隊を出して、ミヤズの護衛に当たらせる。
光の壁の維持が難しくなったタオが下がる。
代わりにヨーコが出て、闇の壁を展開する。
話し合えば、どっちも互いに認め合っているのではないのかこの二人。そう思えてくる。
ともかく、じりじりと戦線を進める。
特にアウズンブラの凄まじい暴れぶりは顕著で、近寄るインド神話の神魔は片っ端から踏み潰されていた。
だが。
アウズンブラに、強烈な光の矢がたたき込まれる。
悲鳴を上げたアウズンブラが、蹈鞴を踏んで下がる。
即座に前に出たのは蔵王権現だ。
二の矢をはじき返す。
「情けない者どもだ。 私が出なければならないとはな」
「ああ、インドラっすわアレ」
「……」
ツバメさんがぼやく。
インド神話において、バラモン教の時代の主神だった存在。
ヒンドゥーにおいても神々の王とされているが、所詮は先代王。先代王は散々貶められるものだ。
今も、明らかに苛立ちが見て取れた。
「私が相手をする」
「分かった。 頼む」
「承知!」
前に出たのはテュールである。消耗は避けなければならないが、それでも仕方がない。
これでもギリシャ支部と相当数の神々が戦っているというのだから、しゃれにならない。ベルゼバブが手紙をよこした時は何事かと思ったが、確かに納得だ。ルドラの秘法なんてものを発動される前にインド支部を倒すには、これくらいの戦力を投入しないと不可能だったのだ。
長期戦になれば日本支部だけでも、或いはギリシャ支部だけでも勝てたかも知れない。
だが、それはあくまで長期戦を想定した場合だ。
短期決戦では不可能だっただろう。
テュールがインドラに躍りかかり、地面にて格闘戦を開始する。片腕のテュールだが、絶倫の武勇でインドラと互角以上にやりあっている。
さて、後はドゥルガーだな。
前線はこっちが押し上げている。
だが、無尽蔵に湧いてくるヴァナラの事もある。後方から、多数のナーガも出現し始めた。
インド支部も戦力を出し惜しみせず、消耗を図るつもりだろう。
シヴァがルドラの秘法を発動するまで時間を稼げば良い。
そういう考えなのが透けて見える。
仕方がない。
煌はホルスを呼び出す。
「ツバメさん。 乗ってください」
「ホルス! これはまた贅沢な乗騎っすねえ」
「いや、私はこのものだからこそ背を貸しているだけだ。 無礼を働けばたたき落とすぞ」
「おおこわ」
ホルスは更に力を増している。太陽神で、主神経験者だ。確かに認めてくれている煌以外には、塩対応にもなるのも仕方がない。
越水長官も来てくれると言うことだ。
こちらの指揮は、ユヅルがやってくれる。前線は森可成が制御してくれるから、任せっきりで問題ないだろう。
指揮を執っているドゥルガーが不安要素だが、ここにいる戦力であれば勝てると信じる。アールマティが、突破口を開くべく、渾身の光の力で面制圧。立て続けに、タオが多数の同じく面制圧で雑魚を一気に蹴散らした。
「煌先輩」
トランシーバー越しに、ミヤズが通信してくる。
最大級の支援魔法を掛けてくれるそうだ。それを受けてから突貫してほしい。更には、その支援もすると言うことだ。
ありがたく受けさせて貰う。
ドゥルガーがホルスを見て、矢を放つ準備に掛かる。冷静に戦況を見ていたな。暴れるばかりのカーリーとは、そこら辺が違うと言う訳か。
だが、ミヤズが完璧な狙撃を、針の穴を通すようにドゥルガーに当てる。ドゥルガーも流石に即応して、剣で防ぐが。その剣が砕け折れたのをみて、凄まじい憤怒に吹き上がったようだ。
これでいい。
冷静さを失った相手の方が戦いやすい。
更に、テュールが戦っていたインドラが、何を思ったか下がる。いや、分かった。闇の力に呼応して、上空にコンスが現れたのだ。月の光が、辺りに降り注ぐ。それが羅刹を駆逐していく。インドラは不利とみたのだろう。テュールもそれで後退してきた。
フィン以外の眷属が戻った。ホルスが、越水長官に言う。
「日本の月の神! 足を引っ張るでないぞ!」
「エジプトの太陽の王子。 無様な戦いはしないと約束しよう」
「では行きます!」
煌が声を掛けると、ホルスが飛ぶ。
大乱戦の後方は、皆を信じて任せる。
アウズンブラが立ち直ると、凄まじい突進をドゥルガーに仕掛け。ドゥルガーがそれを必死に食い止めているのが見えた。
皆の手持ちも強くなっている。
あの程度の相手だったら勝てると信じる。
更には、恐らくは八雲ショウヘイとジョカもインド神話の神々を引きつけてくれている筈だ。
今は利害が一致している。
それだけで、充分なのだから。
ゼウスは飛んでいく光の鳥を見る。背にナホビノとあと二人くらい乗せているようだが、それはどうでもいい。
ヴィシュヌは弱体化していても強い。
まだ無事なアバタール全てを合流させ、その力でゼウスを必死に防ごうとしてきていた。
ゼウスの方も、オリンポス十二神の内、未だに従っているものを全てだし。サイクロプスやギガス、ニンフに至るまで動員して戦線に投入している。
ヴィシュヌが前に出てくる。
ガルーダもその側にいた。
「ギリシャの雷神。 好機とみて仕掛けてきたか」
「ちげえよ。 おまえ等の大将がくだらねえ事をするからな。 一時的な利害の一致で日本支部と共同戦線張ってるだけだ」
「確かにルドラの秘法はこの世界を無に帰す。 だが、この世界が既に行き詰まっているという意見では私も同じだ。 維持神ヴィシュヌとしても、この世界には既に先が見えぬ。 ただ今だけ支配できればいいなどという考えで私を倒そうというのであれば、それは阻止するまでだ」
「ハ。 まあ確かにありのままの人間が美しいだのの寝言にはそろそろ限界が来ているだろうな。 俺等は万年その寝言に付き合ってきた。 だが、三万年前には別の生物から人間は変わった事実がある。 知的生命体を自称するのだったら、そろそろ人間には種として次の段階に行って貰わねえとな」
あくまでヴィシュヌが言う世界を無に帰すというのは。
人間を破滅させる、ということに過ぎない。
所詮は人間が作り出したアティルト界の生命体だ。宇宙全土を破壊し尽くすとか、この星を滅ぼし尽くすとか、そんなことは不可能だ。
そして今更それをやっても、その次に続く生物のために、この星はもう体力を残していないのだ。
多数の人間は、自分だけ良ければ良いと考えている。
創世を真面目に狙う神もいたが、ほとんどが失敗してミマンとか呼ばれる存在になってしまった。
それは、人間のエゴがこれ以上もないほど肥大した良い証拠。
そしてこの世界が、エゴに飲み込まれようとしている証拠でもある。
だからシヴァは無に帰す事を選ぶ。
そこまでは分かるのだ。
だが、それはそれでまたもったいないという観点ではゼウスも日本支部と意見が同じになる。
問題はその先だが。
シヴァとヴィシュヌには、どうやらその先がない。
ケラウノスを取り出す。
雷霆とも呼ばれる、雷の槍だ。
ヴィシュヌはガルーダにまたがると、戦闘態勢を取る。この状態のヴィシュヌは、ゼウスでなければ相手できないだろう。
「おまえさん達の哲学だと、確か仏教と真逆に究極の主観を求めるのだったな」
「そうだ。 超我の境地と言って、己の内に真実は眠る」
「そんな考えだから、人間を無批判に完成体の生物と考えちまうんじゃねえのか? おまえさん、ラーマの時に人間を散々見てきた筈だが、それでも人間は完全な生物だと感じたか?」
ヴィシュヌが黙り込む。
そう。
仏教は唯識論などの考えから、客観を最重要視する。
それに対してヒンドゥーの思想では主観を最重要視する。
だが、主観なんてものは所詮は主観に過ぎない。
その中に超我の境地だとかで悟りがあるとしても、それは所詮無批判な人間を完成体の生物として考えてしまう思想につながるのだ。
では、人間は完成体の生物か。
答えは否だ。
生物としては不具合だらけ。
いい加減な思考回路に、万年経っても技術しか進歩しない程度の知れたオツム。やっと宗教を脱しようと思ったら、出来もしないことを並べて別の形の宗教を作り出す始末。そもそも悟りを実際に開いた存在など、仏教の歴史にもヒンドゥーの歴史にも実在などしていないだろう。
それをやるには。
破壊ではなく、さらなる上の次元の人間を作り出すしかない。
それは過去の人間を滅ぼすのではなく、新しい人間に皆が変化すべきだ。
それはゼウスとしても考えている事だ。
ローマ時代からずっと考えていた。
だが、具体的にどうするべきかを決めたのは比較的最近ではある。
ナホビノ夏目煌の思想とは、恐らくは相容れないだろうとも考えている。アルテミスから、夏目煌の思想については聞いているからだ。
「ルドラの秘法の破壊の末に、新しい生物が出る。 破壊の末に創造をするのがシヴァだ」
「ああそうだろうな。 だが、破壊の末に出てくる者が前より優れている保証はないぜ? 未完成品だったら、完成品にすればいいんじゃねえのかな。 俺はその点では日本支部のナホビノと意見が合うね」
「そうか。 いずれにしても我らとは意見が合わぬ」
「そのようだ」
即座にぶつかり合う。
凄まじい強さ。ガルーダに騎乗した状態のヴィシュヌは、完全体だったらシヴァにも迫るかも知れない。
だが残念ながら多数のアヴァタールを失っている今のヴィシュヌは、ゼウスには及ばない。
それでも。
久々に、全力を出して暴れられそうな相手だ。
ゼウスは思わず口角がつり上がる。
ケラウノスの火力を上げながら、高笑いする。楽しい。これほどの強者とやり合えるのなら、これ以上の楽しみはない。
そう感じていた。
原作ではなかったカードです。ゼウスVSヴィシュヌ。
ヴィシュヌが完全状態だったら話は違ったのですが、アヴァタールを多数失っている状態ではゼウス相手は厳しい。それにヴィシュヌは元々正面決戦が苦手で、とんちで相手を倒すタイプ。ガルーダの助力があってもなお厳しいのが現実です。
結果は見えているとしても。それでもヴィシュヌにも、譲れぬものはあるのです。
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