真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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原作ではエンドコンテンツボスであるシヴァとの戦いとなります。

ヒンドゥーの思想は基本的に客観から悟りに至るのではなく、主観から悟りに至るもので、仏教とは方法論が真逆です。

シヴァはその方法論に沿って苦行をして、ルドラの秘法を行うためのマガツヒを蓄えた訳ですね。





2、シヴァとの戦い

すり鉢の中央かと思ったが、強い反応は奥にあった。ホルスとともに、立ち塞がってくる雑多な神魔を蹴散らして飛翔。

 

程なくして、強い反応の近くに降り立っていた。

 

越水長官が、スーツの襟を直しながら、周囲を見る。

 

「予定通り私が話しかけてはみる。 ただほぼ100%戦闘は避けられないだろうな。 それは覚悟してくれ」

 

「分かりました」

 

「流石にシヴァとやり合うのは、恐らく長いライドウの歴史でも14代目以来だと思うっすねえ。 武者震いがとまりませんわ」

 

ツバメさんがそう言う。

 

冗談めかしているが、明らかにそうではない。

 

近くに異空間への入り口がある。

 

そこから感じ取れるマガツヒが、桁外れの量だからだ。

 

扉は簡単には開かないな。だが、ホルスがそのまま、扉をこじ開けてくれる。頷くと、其処は任せる。ホルス以外には出来ないだろう。

 

側に降り立った、巨大な影。

 

えっと、声を上げたのはツバメさんだ。煌も見上げて、流石に息をのんだ。

 

巨大な蠅の悪魔。

 

翼に書かれているのは髑髏の印。

 

間違いない。

 

一神教でも最も知られる悪魔の一角。悪魔王ベルゼバブとはこの存在で間違いないだろう。

 

「来たか日本支部のナホビノ」

 

「貴方は悪魔王ベルゼバブか」

 

「いかにも。 ワシはルシファー様の最後の伝言を受け取っていてな。 ろくでもない輩が創世をしようとしたらぶち殺せ、と言われておる。 ここにいたヴァスキとか言うどうでもいい蛇はワシが殺しておいた。 アレはこの鍵を持つ器ではなかったからな」

 

そういって取り出してみせるのは、不規則に形を変えている情報立方体。

 

間違いない。

 

三つの鍵の一つだ。

 

「ワシが戦う事で貴様を試してやろうと考えていたのだが、シヴァとこれからやり合うつもりだというのだったら、それを試しとするさ。 此処はワシが敵性勢力を防いでおいてやる。 何が来ようと通さんよ」

 

「……そうか。 分かった。 頼めるか」

 

「貸しは高くつくと言いたいところだが、ワシとしては主に任された仕事をこなさなければならんからな。 貸し借りはなしだ。 まあ貴様が敗れるとしても、其処の面子を見る限り、シヴァも無事ではすむまい。 その時はワシがシヴァを殺して、ルドラの秘法をとめるだけよ」

 

そう、からからとベルゼバブは笑った。

 

まあ、それでもいい。

 

シヴァがこれからやろうとしていることは、それほど致命的なのだ。

 

それに、ベルゼバブの凄まじい力。これは恐らくだが、オーディンやゼウスをしのぐかも知れない。

 

だとすれば、シヴァを倒せなかった場合は頼むしかない。

 

利害は一致していると言う訳だ。

 

最悪の状況が、ゼウスが乱入してきて、シヴァもろとも皆を始末に掛かる事だったのだが。

 

今の話を聞く限り、ベルゼバブは嘘を言っていない。

 

アマノザコも、嘘は言っていないと断言していた。

 

よし。

 

行くぞ。

 

皆を促して、空間の裂け目に入る。

 

裂け目に入ると、其処は夜……いや違う。宇宙のような天蓋をもつ空間だった。

 

其処には巨大な蓮があって、座禅を組んでいる存在がいた。四腕の巨大な青い肌の神格である。

 

額には第三の目がある。

 

全ての特徴が、それがシヴァである事を示していた。

 

あの肌の色は、インド神話の天地創造の際に、ヴァスキの毒を飲んだ結果である。

 

座禅を組んでいたシヴァが顔を上げる。

 

それだけで全身が総毛立つほどだった。

 

「我の前に現れたと言うことは、ルドラの秘法を邪魔しに来たようだな。 日本支部のナホビノ……で良さそうだが」

 

「夏目煌だ」

 

「そうか。 我はシヴァ。 破壊と再生を司る神である」

 

越水長官は天津神月読尊であると。

 

更にはツバメさんも、第十九代目葛葉ライドウである事を名乗る。

 

デビルサマナーと聞いて、ふっとシヴァは笑っていた。

 

「我に挑むデビルサマナーは久方だ。 此処百年ほどはいなかったな」

 

「恐らく前回挑んだのは14代目のライドウでは?」

 

「そんな名を名乗っていたように思う。 ふむ、その名を受け継いだ凄腕か。 既に肉体の最盛期を過ぎているようだが、たいした武芸を身につけている。 凄まじい素質を持つそのナホビノと並び立つにふさわしい技量の存在だ。 良いだろう。 それにこの国の最高神の一柱まで来ている。 それならば我も相応の礼儀を尽くさなければなるまい。 其方等に問おうか。 なぜ我がこの世界を破壊することをとめようとする? 納得がいく答えを返してみよ」

 

「そうされては困るからだ」

 

越水長官がまずは話す。

 

煌とも事前に打ち合わせはしてある。まずはヒンドゥーの超我の思想の矛盾と、それによる人類の抹殺はこの先の未来を考えると良くないという話をする。

 

既に地球の資源は枯渇し始めており、人類がいなくなったところで戻らない。

 

その先にある生命が一から始めたところで、恐らくはこの星すら出られずに自滅することになる。

 

破壊の先にある再生を願うのであれば、それは悪手である事は分かるはずだ。

 

生命が誕生する星は、それほど多くはない。勿論宇宙全土という観点で見ればたくさんあるだろうが、それでもやはり奇跡の産物なのだ。ましてや知的生命体にまで成長する生命を持つ星は更に限られるはず。

 

その可能性を、無為に摘むのは好ましいことではない。

 

丁寧に越水長官は話すが。

 

流石に国会の答弁でぐうの音も出ない発言を繰り返す越水長官だ。説得力がとてもあって、煌も聞き入ってしまった。

 

この演説のテクニックは、取り込んでおくと良いかもしれないと思ったほどだ。

 

しばし話を聞いていたが、シヴァはやはりふっと笑う。静かな笑い方なのに、どうしてか背筋が凍るほどの威圧感がある。

 

「この星が命数を使い果たして滅びるなら、それもまた天命。 破壊と再生の先に限度が来たのであれば、それは宿命であろう。 いかなる奇跡の果てだとしてもな」

 

「それならば人為的に今破壊を引き起こすのは余計に悪手であろう。 その限度を今来させるようなものだ」

 

「そうだな。 だが、それはもはや決めたことだ。 人類はこれ以上進歩しない。 我はそう判断した。 故に此処で我が人類を終わらせる。 それは我による最後の……人類に対する慈悲だ」

 

「このままの人類であればそうだろう。 創世により今まで誰もやらなかったこと……人類の強制的な進歩を促せるのであれば? 人類を此処で新種にするのだ」

 

シヴァはそれも面白いというが。

 

だが、それならばと、座禅を解いて立ち上がっていた。

 

周囲に様々な神格が出現する。

 

美しい女性。あれは恐らくは、シヴァの正妻であるパールバティだろう。

 

像の頭を持つ巨漢。

 

あれはパールバティが作り出した神、ガネーシャだ。

 

そして多数の頭を持つ極めて強大な力を持つ青い蛇。

 

恐らくあれこそが、ナーガの頂点に立つ存在。原初にして最強のナーガ。アナンタ。シェーシャとも呼ぶ存在だろう。

 

「創世による変化は今までの歴史で様々に起きた。 それは座に着くナホビノの力によって影響力が大きく変わった。 今の時代であれば、或いは……人類という種をまとめて先に進める事も出来るかも知れぬ。 しかし人間の出力であればそれは無理だろう。 だが、ナホビノの……その中でも特に凄まじい力を持つ貴様であれば、無理ではないはずだ。 だが、それにはその力を我に見せよ。 我が認めたのであれば、ルドラの秘法を止めてやろうぞ」

 

シヴァが戦闘態勢を取る。

 

今までのどの相手とも格が違う相手だ。

 

煌は頷くと、眷属を全て展開する。ホルスは、この空間の安定のために外に。フィンは皆に加勢したままだが、呼び戻すわけにも行かない。敵戦力を見る限り、あちらにはこれ以上負担を掛けられないのだ。

 

「来るがいい。 その力、見せてみよ」

 

シヴァの第三の目が光る。

 

塗り壁が前に出たが、即座に蒸発した。

 

シヴァの額の第三の目は、そのまま必殺の光を放つ凶器だ。これによって愛の神カーマを抹殺したこともある。

 

だが、その瞬間、散開。

 

塗り壁は簡単に蘇生はできないな。

 

それは理解した上で、突貫する。

 

他化自在天が上空に出ると、高笑いしながらチャージを仕掛ける。

 

「オラオラ、カーマの縁者のお通りだぞ?」

 

「不快な輩だ。 我の縁者でもあるようだな」

 

「そうだとも! ほら、さっきの撃ってこい!」

 

「言われなくとも」

 

次の瞬間、煌が仕掛ける。だが、煌を見もせず、二本の腕に持った武器だけでシヴァはしのいでみせる。

 

越水長官がパンと手を合わせると、何かの魔法を発動。

 

同時に、シヴァががくんと体を沈み込ませ。それで、他化自在天を狙った一撃が外れた。

 

それでも天蓋の宇宙にぼんと穴が開く。

 

あれはやばすぎる。

 

マーメイドが離れ、アマノザコも暴風を起こすが。

 

シヴァはルドラ……本来は暴風神の系譜で、煌に対してだけではなく、シヴァにも暴風は強化対象になる。

 

パールバティがひらひらと舞いながら、ガネーシャとともに後方に下がる。

 

放っておくとまずいな。

 

義経公が仕掛けるが、ガネーシャが防ぎに来る。

 

突貫したテュールは、アナンタが立ち塞がった。

 

パールバティが魔法を発動。シヴァの精気が滾ったらしく、吠えながら身を起こしてくる。

 

そして、今度こそ、他化自在天を狙った光をたたき込もうとしたが。

 

その瞬間、ツバメさんがシヴァの顔面に飛び膝をたたき込んでいた。

 

「むっ……!」

 

「足癖が悪くて失礼っ!」

 

それでもシヴァはわずかに揺らいだだけ。

 

流石のとんでもない化け物ぶりだ。

 

だが、こっちも切り札を切ることにする。

 

後方にオデットが展開。

 

皆の魔法能力を増幅する。

 

更に、である。

 

アルテミスが転化したこの戦いのための切り札を呼び出す。

 

消耗は凄まじい。

 

だが暴風雨の支援。

 

更には皆の激戦もある。この程度の事で、足踏みなどはしていられないのである。

 

「出でよ、大地神ガイア!」

 

「!」

 

「ようやくお呼びかえ。 私を従えた存在は、随分と久しぶりではあるがな」

 

そう言って現れたのは、妖艶でふくよかな体をした女性の神格だ。肌は若干浅黒く、そして立ち姿だけで凄まじい威圧感がある。

 

ガイア。

 

ギリシャ神話にてずっと大御所政治を続け、ウラノス、クロノス、ゼウスの三代にわたる支配者神格と対立を続けた神。ただし、これはどちらかというとウラノス以降の支配者神格に咎がある。

 

これもまた、大地神と天空神の対立の歴史を示す神話的な足跡であり。

 

ガイアはただ虐げられたヘカトンケイレスの待遇をまともにしろとウラノスらに指示しただけ。

 

それを三者はしなかった。

 

ガイアは大地の神として圧倒的な力を有しており、文字通りガイアという言葉は地球を指すものとして今も名高い。

 

アルテミスに、取り込んだイシュタル、フレイヤの情報をあわせ。更に天使部隊のリーダー格だったソロネの情報もあわせて。やっと造り出した存在。

 

ホルス、テュールに続く、第三の主神級神格だが。

 

これは凄まじい消耗だ。

 

長期戦になると、干からびかねない。

 

「これはなかなかに古き神だ。 これほどの神格を呼び出すとはやるではないか」

 

「ガイア。 パールバティとガネーシャを食い止めてほしい」

 

「良いだろう。 ゆくぞ小娘!」

 

「させるか!」

 

忠実なことで知られるガネーシャが壁になって立ち塞がるが、ガイアが凄まじい突進をする。

 

陸上選手のようなフォームで走り込んでいくが、それだけで鉄道が突っ込んでいくかのような迫力だ。

 

義経公が飛び退き、其処にガイアが飛び込む。

 

ガネーシャは必死に剣を盾にして防ごうとするが、文字通り跳ねられて吹っ飛んだ。

 

更に上空に逃れたパールバティを、義経公が一刀両断。

 

だが。

 

シヴァがふんと印を組むと、即座に両者がよみがえる。

 

「ルドラの秘法をとめさせてまで我と戦おうというのだ。 この程度ではあるまいな」

 

「まさか」

 

「そろそろ我も本気で行くぞ!」

 

煌にシヴァが向き直る。

 

好機と突貫した他化自在天を、手一本で受け止めてみせるシヴァ。

 

流石の他化自在天も笑いが止まった。

 

そして、三本の腕で猛攻を仕掛けてくるが。ツバメさんも煌と並んで、猛攻を防ぐ。

 

凄まじい。

 

剣技に関してはずっと上の存在が幾らでもいる。

 

だがシヴァのは、動きが舞踏に似ている。

 

そしてそれが、もりもりこちらの力を削ってくる。幻惑と行動の誘導。同時にその効果があるようだ。

 

「剣舞の一種かこれは」

 

「違うな。 これが我が舞踏。 ターンダヴァだ」

 

「シヴァ神の情熱的な舞か。 そうか、これが……!」

 

「あるじさま!」

 

詠唱を終えたマーメイドが、支援魔法を展開。

 

目一杯オデットが強化するが、それでもミヤズやアマビエのものと比べると倍率が全然低い。

 

立ち回りを工夫しようにも、シヴァと適切に距離もとれない。

 

シヴァの歩法は独特で、間合いが秒ごとに変わる。

 

武術の界隈では制空権などと言うことがあるが、それがまるで生き物のように変わり続けるのだ。

 

背後から天使部隊が一斉に仕掛けるが。シヴァはそちらを見もせずに全部まとめて蒸発させる。

 

だが、そのマガツヒの中を通って、他化自在天が突貫。

 

猛烈な攻撃をしのいでいる煌とツバメさんを支援するようにして、一撃を入れに懸かるが。

 

首だけ回転させたシヴァが、額の目からの一撃で、一瞬で他化自在天を蒸発させていた。

 

まずい。

 

強いなんてものじゃない。

 

しかしその一瞬の隙を突いて、足下に近づいた存在がいた。

 

アリスだ。

 

気付く。

 

マーメイドと詠唱を重ねている。シヴァも気付いたようだが、既に遅い。

 

「凍れ」

 

「っ!」

 

アリスの口から漏れたのは、あまりにも冷徹な命令。

 

マーメイドとともに、太陽の理を否定する、圧倒的な冷気がシヴァを円筒形に足下から襲う。

 

シヴァから離れる。

 

シヴァがそれでも、その理そのものを内側から破壊して、出てくる。

 

しかしその時、越水長官が、上空から魔法の一撃をたたき込んでいた。

 

飛べたんだなあの人。

 

まあ出来てもおかしくないが。

 

先の重力操作と同じだ。それも越水長官が五人くらいいるように見えるが。あれも何かの魔法だろう。分身の術かも知れないが。

 

シヴァが、膝を折る。

 

明らかにさっきの冷気の一撃が効いている。

 

無限再生するパールバティ、ガネーシャ、アナンタも、少しずつ押され始めているが。ガイア神が凄まじい暴れっぷりを見せるせいで、煌もそろそろ体力が持たない。

 

マーメイドが思念を送ってくる。

 

「あるじさま、そろそろ限界です」

 

「ありがとう。 今のだけで充分だ」

 

「後はアリスちゃんに任せます」

 

「分かった」

 

アマノザコが、最後の力を振り絞って、暴風を煌の周りに凝縮。更に、ツバメさんが恐らく切り札らしい巨大な人斬り包丁を繰り出す。

 

シヴァが体を傷つけられつつも、全く動揺せず、全部の腕で斬りかかってくるが。

 

その一撃が、全て外れていた。

 

「何……」

 

「びっくりした?」

 

「ああ、だが貴様……」

 

アリスと並んで、わーがシヴァに手を向けている。

 

これは。

 

シヴァの破壊の理に干渉したのか。いや、アリスとともにやったということは、破壊の先にある死か。

 

アリスがほとんどガス欠を起こしている。わーも余裕がない。この瞬間を突くしか勝機はない。

 

突貫。

 

シヴァの腕を、一つたたき落とす。

 

シヴァ様。

 

パールバティが悲痛な声を上げるが、義経公が更に攻め立てる。パールバティは戦闘神格であるカーリーやドゥルガーが前線にいることもあって完全体ではない。

 

ツバメさんが、間髪入れず、シヴァの腕を二本たたき落とす。

 

煌もそれに続いて、最後の腕をたたき落とした。

 

だが、シヴァは即座に腕を再生させはじる。

 

また、額から光を放とうとする。

 

その瞬間、背後から跳び蹴りをたたき込んだ存在がいる。

 

酒呑童子だった。

 

「隙だらけだぜ破壊神のおっさん!」

 

「……っ!」

 

「今だっ!」

 

「舐めるなよ!」

 

上空から重力に拘束され、更には全ての腕を失ったにもかかわらず、シヴァは即時に腕の再生を完了。

 

更には、アリスとわーと酒呑童子も含めて、周りの全員をマガツヒを放出して吹っ飛ばす。

 

凄まじい。

 

これが世界で最も知られる破壊神か。

 

吹っ飛ばされつつも、ツバメさんが剣を杖に地面を削り、ブレーキにして停まる。そして、煌をつかんでとめていた。

 

呼吸を整えているツバメさんが、武器を切り替える。

 

それは巨大なハンマーだった。

 

「飛ばすッスよ……!」

 

「分かりました」

 

あれは、擬似的に再現したミョルニルか。

 

アマノザコが、これが最後と叫んで、追い風を送ってくる。そして、ツバメさんも最後の力を振り絞り、トールがしていたベルトとハンマーを具現化。

 

シヴァがまた額から光を放とうとするが、酒呑童子が組み付く。

 

「また、越水長官が叫んだ」

 

「もうもたない! 決めてくれ!」

 

「行きます!」

 

シヴァが組み付いている酒呑童子をつかむと、その場で四つに引きちぎってしまった。

 

だが、シヴァの手には剣がない。

 

剣までは再生できなかったのだ。

 

そして、酒呑童子が引き裂かれている間に、煌が全力で飛ぶ。

 

マーメイドも残った力で、暴風に雨を乗せる。それに、ツバメさんの疑似ミョルニルの雷撃が乗る。

 

シヴァが、迎え撃とうとしてくるが。

 

さっと左右に散開したアリスとわーが、黒い紐みたいなので、その腕を拘束。だけれども、それも一瞬。引きちぎられる。

 

だが、引きちぎられるまでの瞬間を稼いでくれた。

 

その時には煌は、上空に天叢雲剣を掲げ。

 

シヴァの懐に入りながら、天叢雲剣を振り下ろしていた。

 

抵抗が凄まじい。

 

シヴァが全身を引き裂こうと手を伸ばしてくる。だが、それよりも先に、天叢雲剣が、シヴァの頭を唐竹にたたき割る。

 

そして首、腹、と切り裂いていき。

 

最終的に、シヴァが作り出した宇宙の天蓋を貫通。

 

逃げ遅れたアナンタまで巻き込んで、遙か遠くにまで抜けていた。

 

シヴァの作り出した空間が吹き飛ぶ。

 

同時に、全ての力をほぼ使い尽くした煌は、消滅の寸前で踏みとどまる。荒く呼吸を突きながら、顔を上げる。

 

シヴァが消えていく。

 

「見事。 我に力を示したかナホビノ、いや夏目煌。 ルドラの秘法を防ぎきり、人間の閉じた可能性を無理矢理こじ開けようというその心意気、感じ入った。 我は再び苦行に入り、この世界の破壊と創造を見届けるとしよう」

 

「……」

 

「皆、戦を止めよ。 この戦いから、今よりインドの神格は手を引く! そしてこの新しき世代のナホビノを安全な場所まで送り届けよ! これは他ならぬシヴァの命である!」

 

シヴァが消えつつも放った命令に、さっとインドの神魔がひれ伏す。

 

煌に肩を貸してくれたのはマーメイドだ。

 

マーメイドもほぼ力を使い果たしているのに。体が透けるほど消耗しているアマノザコも、必死にもう片方の肩を貸してくれた。

 

「回復をお願いします……! このままではあるじさまが!」

 

「私がやりましょう」

 

同じく消えつつあるパールバティが、回復の魔法を使ってくれる。

 

この表情。

 

或いはパールバティは、今回のルドラの秘法を使うという判断、あまり良く思っていなかったのかも知れない。

 

とりあえず消滅の危機は逃れる。

 

それほどまでに、パールバティの回復魔法は強烈だった。

 

それはシヴァが近衛に残すわけである。

 

パールバティが消える。

 

生き残っていたテュールやホルス、ガイアも戻す。眷属はほとんどやられてしまった。着地した越水長官も、冷や汗を掻いている。

 

ツバメさんもへたり込んでいて、一言も言わない。

 

ミョルニルはトールでさえ投げるのに総力を使うのだ。ツバメさんは優れたサマナーだが、それでも無理が懸かりすぎたのだ。

 

「ふむ、これは認めても良さそうだな」

 

「……」

 

ベルゼバブが、投げてよこしたのは鍵だ。

 

三つの鍵の一つだろう。

 

ベルゼバブが、送っていってやるという。皆と合流しても、ゼウスが此処で襲ってきたら恐ろしく面倒なことになる。

 

「随分と良くしてくれるもんですねえ」

 

「ワシもバアルから貶められた身だからな。 一神教の、四文字の神の理が復活しないのであればそれでかまわん。 少なくともおまえさん達の中に、そういう思想の連中はいないと判断した。 だったら、手くらいは貸すさ。 ただし、眷属になれというなら、ワシを負かしてからだがな」

 

「それはまたいつか別の機会にしてくれ」

 

今ベルゼバブと戦っても勝ち目はゼロだ。

 

ともかく、今はシヴァと戦って勝てたと言うことだけで満足しなければならないだろう。

 

日本支部の前線基地に戻る。

 

途中で皆と合流。

 

その途中で、ミヤズが治療を施してくれたが。ミヤズも無事には見えなかった。皆の仲魔もほとんどやられてしまっている。

 

ミヤズのアマビエもやられていた。

 

ミヤズにくっついて動いていて、支援魔法専門で動いているアマビエがだ。

 

どれほどの激戦だったのかは、見なくても分かる。

 

途方もないマガツヒが辺りに溢れていて、それを吸収して多少は回復できたが。それもあくまで多少だ。

 

煌の場合は、多分回復までこれから二日はかかるだろう。

 

上客ということでギュスターヴはかなり回復を割引してくれるようになったけれども。それでも恐らく都心に家が建つくらいのお金は取られる。越水長官が、ある程度のお金は担保してくれる筈だが。

 

ともかく、前線基地に着くと、コンスが出迎えてくれた。

 

ギリシャ支部もとっくに引き上げて、自陣に戻っているらしい。

 

それと。

 

ギリシャ支部は、ヴィシュヌとガルーダを仕留めたらしい、ということだった。

 

「弱体化したとは言え、ガルーダに騎乗したヴィシュヌの戦力は相当なものだった筈だ。 それをあっさり下すとは、ゼウスは侮れないぞ」

 

「分かりました。 気をつけて当たります。 その前に、まずは回復を済ませないといけませんが」

 

コンスはその間の守りを任せろと言ってくれる。

 

くせ者という話だったが。

 

少なくともミヤズが無事な内は、ミヤズが悲しむようなことはしないだろう。そういう誠実さも併せ持っている存在であるのは、煌にも分かる。

 

越水長官が、解散を指示して。

 

それで煌も即座に龍穴での回復に入る。

 

問題はギリシャ支部だ。

 

しばらくは、まだまだまったく気が抜けない。







ルドラの秘法を中止したため弱体化していてもなおこの強さ。

本来だったら更に上であった、とだけ言っておきます。

ともかくシヴァは世界の破壊とその先の創世を諦めてくれました。

ただ、同じような状況が続けば、またいずれ動き出すでしょうね。



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