真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
原作でミヤズさんがラーを継承する展開はあるんですが、結構ろくでもないイベントの結果そうなるんですよねえ。継承しない場合もろくでもない未来しか見えない結果になりますので救いがないです。
本作ではデビルサマナーになった結果、大量のマガツヒを吸収して滅茶苦茶元気になったミヤズさんが、原作とは違う形でラーを継承することになります。
序、ラーの継承
ギリシャ支部の様子がおかしい。
それは既に連絡が来ていた。
煌はほぼ体力が回復しているが、八雲ショウヘイを迎え入れたことで、かなり内部がごたついている。
旧八咫烏の腐敗したトップは全て粛正が完了したようだが。
それでも何かしらの面倒事が起きてもおかしくない。
今も警察が「カルト団体への家宅捜索」という形で旧八咫烏メンバーの家宅を創作しているのだが。
ユヅルとイチロウが立ち会っているそれでは、ものすごくタチが悪い神魔が出てくる事も多く。
これもあって一般警察では対処が厳しく。
公安の特務と一緒に対応していて、それで手をどうしても取られていた。
ツバメさんは現在入院中で、病室で引き継ぎを受けている。
やはりあの最後のミョルニル具現化、更には投擲が厳しく、右手左手ともに骨折が深刻で、無理をしてももう前線には立てないらしい。
それだけして、シヴァへの勝ち筋を作ってくれたのだ。
或いはツバメさんは、シヴァとの戦いを最後にするつもりだったのかも知れない。最初から。
だからあれだけ覚悟が決まったことが出来た。
ただ、それらはともかく。
まだ八雲ショウヘイを越水長官が全面的に信頼した訳ではなく。
何体かの高位の天狗が側について、監視に当たっているらしい。
これについてはジョカも仕方がないと容認していて。
本人も苛立つが仕方がないと認めていた。
ともかく、日本支部としても今は動けない。
ギリシャ支部は何か妙な動きをしているが、ただヴィシュヌとガルーダを倒したのだとしても、損害は甚大な筈だ。
無傷で勝てるわけもなく、特に雑兵として展開していた下級の神魔などは相当なダメージを受けているはず。
ただ、それを補うために何かしているのだとすると。
こちらとしても、今仕掛けるわけにはいかない。
休んでいると、ミヤズが来る。
「煌先輩。 エジプト支部が今から動くそうです。 私も行ってきます」
「越水長官は知っているのだろうか」
「はい。 なんでもミトラスが見つかったとかで」
「ミトラスか……」
ミトラスはゾロアスター教のミスラ神がローマに持ち込まれた存在で、類例の存在はインドなどにもいる。
つまり非常に古くから存在している神の子孫といえるのだが。
「岩の中から成人で生まれた」とか、「雄牛を屠る姿」とかの姿は知られているのだが、一種のカルトのご本尊であり、はっきりいってどういう存在だったのかよく分かっていないのが現実だ。
太陽神系統の神であり、信仰されていた頃はローマでキリスト教と信者を奪い合っていたらしい事は分かっている。
逆に言うとそれだけだ。
元になったミスラは、弥勒菩薩の元になったともされているあちこちに派生神格が存在する結構古くて立派な神格なのだが。
ミトラスとなると数百年くらいは信仰されていた「らしい」だけで。実際に何をどう信仰していたのかは分からない。
それについて話をすると。
ミヤズが小首をかしげていた。
「それって要するに今は失われてしまった信仰ですね。 太陽神としては小粒に思えます」
「ああ、そうなるな。 ただ太陽神は世界中に存在している。 小規模カルトとしても数百年信仰が続いたのであればなかなかに凄いことだ。 それに、恐らく一神教で悪魔化された存在として姿を見せるのではないのだろうか」
「そうですね。 アドラメレクのように」
「……僕も行こうか」
ミヤズは首を横に振る。
タオが一緒に来てくれるらしく、短時間で片付けるので、問題ないと言うことだった。
今までかなりの数の太陽系神格と接してきて、ラーの権能をもう少しで得られる。それもあって、今回は比較的力が弱い神格を、一気に倒してそれで片をつける。
出来れば主神級の太陽神と接することが出来れば、とミヤズはいうのだが。
流石に今の状況では難しいだろう。
ちなみにゾロアスター教のミスラや、それの派生神格であるミトラなどは、ここ18年の神々の争いで既に倒されてしまっていて。アティルト界から復活することが出来ないらしい。
困った話である。
そうなると、此処をヨーコとだけで守ることになるな。
無言で座禅を組んで、力の回復を促進する。まあコンスは前見た感じではかなり出来るし、ミヤズが負けるとも思えない。
危険があるとすれば横やりだが。
それも考えて、一応何名か眷属を助けに出しておいた。
フィンがそれを煌と一緒に見送った後、軽く話す。
「太陽神の権能か。 俺には少しばかり手に余る代物だ。 確か今、この国では最高位の太陽神がいないのだったな」
「ええ、そうなりますね」
「あの八咫烏という三本足の鴉が確か下級とは言え太陽神なんだろう。 だとすると、負担が大きいだろう」
「決して下位の神ではないのですが、残念ながら」
ヨーコがふっと笑う。
太陽神は彼女とは真逆の存在だ。
それもあって、色々おかしいのかも知れない。
「以前太陽神は何かしらの理由で失われたらしいわね。 そもそも神造魔神として一体しか存在しなくて、それが破損したのが要因らしいけれど」
「悪魔合体で作り出すにしても難しい。 調べたが、今の僕でも少し手が届かないようだ」
「そんなに強いのか」
「この国だから、という理由もあるかと思います。 何しろ地元の最高神です。 簡単にはいかないでしょう」
さて、眷属達の様子はどうか。
コンスとミヤズは、東京駅近辺に出かけたようだ。
そこではミトラスがいて、東京駅を拠点に出来ないか物色していたようである。ちなみに姿は岩から逞しい上半身が出ているローマ風の戦士、という感じだ。
なるほど、その姿か。
ちなみにミトラスとしては、獅子に蛇が巻き付いているような姿も知られているが。それはそもそも何なのかよく分かっていないのが事実らしい。
そもそも海賊の神だったという話もあるらしく。
荒々しい戦神であるのは、それはそうなのかも知れなかった。
ミトラスは、コンスとミヤズを見て、餌としてしか認識していない。
あれは一神教で貶められた姿だな。
元々同時代に誕生した信仰は仲が悪くなりやすい。
良い例が仏教とヒンドゥー、後はジャイナ教等だろう。
ただ、それでも太陽神だ。煌が貸し出したホルスの前に、凄まじい力の差もあって怯んでいる。
ホルスは既にラーだった頃の力の大半を取り戻している。
あの程度のへっぽこ太陽神の、しかも堕落した姿なんかに負ける要素がない。
それにタオがついている。
既にその光の力は、雑魚悪魔が見ただけですっ飛んで逃げるレベルになっている。これにミヤズが支援魔法を掛け、更には狙撃で徹底的に補助。
最前衛でコンスがかなり荒々しい戦いを見せている。
知性派に見せかけて、ステゴロもかなりこなせるようだ。
ただ、このまま横やりが入ると面倒くさい。
出来るだけ早く倒した方が良いだろう。
「何か見ているのか」
「貴方は」
側に降り立ったのは、翼を持つ白い大蛇だ。
ただ、口調は理性的で、目にも穏やかな光がある。
は虫類の目は無機的だとかいうが、その翼ある蛇の目には、明らかに理性の光があった。
特徴からして、間違いない。
「貴方はケツアルコアトルですね」
「いかにも。 日本支部と連携する事は決めていたのだが、南米の神々を説得するのに時間が掛かってな。 どうやら悪魔に貶められた太陽神を仕留めている途中か。 元は誇り高い大地を照らす存在であったろうに」
「……」
太陽神系の神は最高神となりやすい。
日本の例を出すまでもなく、仏教での最高神格というか仏だが、大日如来などもそうだ。
ラーの権能について話すと、それなら協力してもいいという話をされる。
だとすると、かなり話が早いだろう。
「我々は座など狙わない。 ただ、存在することが出来ていればそれで構わない。 我らはまずはそこから、なのでな」
「そうですね。 それについては、座に着いた時に保証します。 ただし生け贄の儀式は許されませんよ」
「分かっている。 本来生け贄は時代とともに排除されるものだ。 南米の民は、どうしてもその辺りの進歩が遅かった。 0の概念を作り出すほどに、出だしは悪くはなかったのだがな」
ケツアルコアトルは、インカ文明の主神だが。
状況次第では生け贄を必要としなかったりと、生け贄で悪名高い南米の神々の中では極めて穏健な存在だった。
今も話していると、悪辣には思えない。
ほどなく、ミトラスが負けた。
恨み言を述べながら、マガツヒとなって消えていく。
コンスがその力を回収して、戻ろうと指示。
ホルスも油断なく周囲を警戒していて、つけいる隙を与えなかった。
まもなく皆戻ってくる。
ミヤズはまた一段と力を増した。タオは連戦で消耗していると言って、先に東京に戻った。創世の女神になっても、消耗は避けられないらしかった。
なお、ケツアルコアトルを恐れる様子はミヤズにもタオにもなかった。
説明すると、ミヤズはそもそも存在を知っていた。
「聞いたことがあります。 南米のインカ文明などの主神ですね」
「いかにも。 太陽神の力を求めていると聞いた。 私が力になろう」
「良いんですか! ありがとうございます!」
「それと、其方達にもだ。 力を貸そう」
煌に対しても言う。
ケツアルコアトルは、この地の太陽神が失われていることに気付いていた。
神としての八咫烏は所詮「使い」なのだ。神としてそれなりに高位だとしても。
故に、ケツアルコアトルが助力してくれるという。
「其方の力は、まもなくこの地の太陽神に届くのであろう」
「そうですね。 この間調べたところ、そのようです」
「その時は声を掛けてほしい。 私としては、我ら南米の神々が復権できればそれで構わない。 それだけだ」
残念ながら、18年間の戦いで消耗しきって、南米の神々はほとんど戦力を残していないらしい。
それでも敵に回らないだけマシだ。
コンスがケツアルコアトルの力を借りて、更にラーの権能を練り上げていく。辺りに凄まじい光が溢れる。
多数の悪魔が。それを恐れて逃げ散る。中にはそれなりの堕天使もいたようだ。
それだけ、強力で、清浄な太陽光だと言うことである。
これがラー。
エジプトを支配し続けた、太陽の神の力か。
これで恐らくは大丈夫、と言ったのは。
数時間後だった。
「ミヤズ。 これで君は死後ラーになる。 現時点で君はファラオとなった」
「分かりました。 ただ、それでも前線には立ちます。 それも煌先輩が座にて創世を行って初めて意味が出てきます」
「ああ、分かっている。 ろくでもない輩が創世をしたら全て台無しだからね。 私は可能な限り君を支援する。 どこにいても勝利を願っているよ」
コンスはラーの権能を作ることで相当に消耗したようだ。
一度どこかに消える。安全な場所を確保しており、其処で休むのだそうだ。
しばらくは戦闘は出来ないらしい。力を蓄えて、それでその間の指揮はイシスが執るそうである。
イシスはエジプト神話におけるオシリスの妻である。
指揮を執るには問題がない格にある存在だ。
ミヤズはしばらくぼんやりしていたが。
やがて、煌に振り返る。
「煌先輩。 勝ちましょう」
「ああ、任せてほしい。 最善を尽くす」
「勝った後のことは今は考えないでおきたいですが、お兄ちゃんの話だと、今のペースで勉強をすれば確実に医師にはなれるそうです。 名医になれるかはわかりません。 ですが、私みたいな不幸を味わう人が一人でも減るように……私は人としての命を使うつもりです」
立派だ。
一礼するとミヤズも休憩に戻る。
ヨーコがぼやいた。
「むかつくくらいまぶしいわねあの子。 どっちかというと物静かなのに」
「気になったのだが」
「何かしら」
「ミヤズさんを苦手としているのは、昔の自分と似ているからか」
「正解よ。 昔の私も、名前さえろくに与えられずに、両親から神格化ってネグレクト同然の扱いを受けていたのに、それを当たり前だと思って、ずっと良い子でいた。 だけれども私は分かった上で自分でそうなっていた面もあった。 自分で決めて、そう動いていた。 それは事実よ」
そうだろうな。
ヨーコは恐らくだが、本質としては昔と変わっていないのだ。
真面目で、それが一番良いと思ったからそうしていた。
或いはミカエルが現れて、両親がヨーコを神の化身としてあがめ始めた時、言いたいことは幾らでもあったのかもしれない。
だがそれでも、それが世界のためになるのならと思って奉仕を続けたし。
それが報われなかった。
ミヤズはどうなるのだろう。
報われるのだろうか。
いや、違う。
フィンが言う。
「俺の主がいる。 創世の後も見守る。 ミヤズは報われるさ」
「そうね……」
「それに後輩に無駄な苦労をさせないのが先輩の仕事だろう? おまえさんも、過去の妄執から足抜けをしたんだ。 後は自分と同じ目に遭わないように、ミヤズを自分なりに守ってやったらどうだ」
「はー、面倒くさいわねあんた。 まああんたの人生を考えると、自分の失敗談でもあるのだろうけれど」
ヨーコの毒まみれの答えにも、フィンはその通りだよと笑って答える度量を今は有していた。
ともかく、これでミヤズの要件は終わったと見て良い。
後は、ギリシャ支部との問題を片付けて。
ゼウスが持っている最後の鍵を入手したら。
至高天とやらに、向かうだけだ。
越水長官が来る。イチロウとユヅルもいた。
休憩に行っていたミヤズとタオも戻ってきたので、戦力がそろう。
どうやら、旧八咫烏の残党は、あらかた片付いたらしい。秘匿拠点なども全て探索を終え、それらに封じられていた忌々しい邪神なども、全て始末し終えたそうだ。
一番厄介だったのがこの国最強の邪神アマツミカボシの存在だった。
旧八咫烏が抑えていた邸宅の地下に封印されていて、しかも封印が解けかけていたという。
当然戦闘になった。
越水長官と、イチロウとユヅル。それに味方として加わってくれたばかりの八雲ショウヘイとジョカが総力で当たり、打ち倒したらしい。
かなりの強大な神格だったが、ユヅルもイチロウも互角以上に戦えたそうだ。
ただ、アマツミカボシはアティルト界に追い返すだけで精一杯。
また具現化した時は、倒さなければならない、という話だが。
「これで後は東京は天津の神々、国津の神々、それに八雲ショウヘイとジョカに任せてしまって良いだろう。 八雲ショウヘイは基本的に人間に対して危害を加える様子もないし、人間に害を為す神魔以外は斬らないとも約束してくれた。 ジョカと合一すれば、ツバメくん以上の戦力ではあるが、どうも合一をする気はないようだな」
「ともかく、これで背後の憂いはなくなりましたね」
「うむ。 だが、こちらも面倒なことになっている」
伝令として出ていた雑多な神魔から報告が来ているという。
ゼウスが魔人、黙示録の獣と、黙示録の笛吹きを従えた様子だという。
それぞれ便宜的にマザーハーロット、トランペッターと呼んでいるそうだが。その実力は文字通り激甚。
しかもゼウスは油断もしていない。
正面から戦うとなると、インド支部との戦闘以上に厳しいことになる可能性がある、ということだった。
「ゼウスか。 俺でも知ってる凄い神様だよな。 でも、万魔会談で見たゼウスは、皆を助けてくれそうな神様には見えなかったな」
「そうだな。 その一面がユピテルとして座に着いていたという話もある。 出来る限り情報を得たいところだが」
「ご注進!」
不意に連絡が入る。
西に新たな勢力が出現したという。
西、か。
伝令の天狗は、慌てた様子だった。
「あの威圧感、覚えがあります! 鎌倉時代にも日本に攻め寄せた、世界最強の民族のものです!」
「……テングリか」
「恐らく!」
ここに来て動き出したか。
遊牧騎馬民の神、テングリ。
ユピテルが座から降りた後、世界を圧倒的な力で席巻して、その主導権を握った「蒼天」。
まだ戦力的にはどういう存在か分からない。
勿論遊牧騎馬民は現在戦では通用しない。だが少なくとも、ローマの神格や、一神教の神格にとっては恐怖の対象でしかないだろう。
遊牧騎馬民を退けた民族は、世界でもあまり多くはない。
だが、煌は好機とみた。
「これで座に着いていた経験者がまたそろいました。 情報を得ることが出来れば、創世の際に生かせると思います」
「君は前向きだな」
「どのみち戦わなければならなかったでしょうから。 後は分かっている範囲だとマルドゥークですね……」
「分かった。 いずれにしても、此処からまた三すくみだなこれは」
越水長官がぼやく。
インド支部が脱落した後、遊牧騎馬民の神が動き出した。
混沌は、更に加速しつつあるとみて良かった。
というわけでテングリの勢力が出現します。
もっとも神話的なテングリはほぼ信仰する存在ももはやほとんどいないので、出現するのは限定的な形で、かなり特殊な状況で、になります。