真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
台東区での激戦を制した煌くん達。
鍵も手に入り、いよいよ至高天への道、万古の神殿に向かうことになります。
それはアティルト界にアッシャー界の理を持ち込んだ、不思議な場所であり。
様々な古代神格が待ち受ける場所でもあるのです。
序、神殿は其処にある
越水長官が準備を終える。
ギリシャ支部が兵を引いたのを確認してから、日本支部の前線基地も最低限の物資だけを残して、守りもほぼ東京に引き上げた。
更には手持ちを調整した後、ツバメさんと八雲ショウヘイを東京の守りに残して。残り全員で、万古の神殿に向かう。
台東区にはまだ大物の神格がいるし。
東京には迷い込んでくる神魔がいるようだが。それらは、八雲ショウヘイと、天津国津の神々が対応してくれている。
更には東京を具現化させているシャカイナグローリーも安定していて、特にティアマトが支えてくれている事もある。
問題なく稼働しているようだった。
出立前に、越水長官が言う。
あるだけの物資を用意してくれた。
ここから先は、龍穴があるかも分からない。自衛隊が医師などを派遣して少しでも役立てたいと提案したが、越水長官が拒否。
ここから先は人間では行くだけで発狂してしまうような場所。
皆、人間をだいぶ踏み外しているから行けるだけのところ。
皆は東京を守ってほしい。
そう説得して、同行を望む者達を帰らせたのだった。
旧八咫烏の残党の屋敷などから押収した回復の道具なども全て持ち込む。自衛隊が協力したのは、それを運搬する車両だけ。
それも、手動で動かさなければならない。
電子機器を搭載している場合、簡単に悪魔に乗っ取られる。
ましてやこれから向かうのは、人間の精神の世界である。
悪魔の力は更に増すのだ。
それに反比例して、機械の力は落ちていく場所なのである。
ただ、流石に猫車の類ではない。
操縦をユヅルが教わって、二時間ほどで出来るようになった。小型の運搬車量だ。それに数百㎏ほど、物資を積んでいく。
食料や医薬品もある。
それが、自衛隊などが越水長官に出した交換条件……最低の、だったわけだ。
「身につけるようなものは残していきなさい。 この先は全てが終わった後も、形が残るかさえも分からないほど過酷な場所だ。 仮に失敗した後生還したとしても、戦死者の遺品を持ち帰る余裕など恐らくないだろう」
越水長官が半分脅すようなことを言うが。
それで怯む者は誰もいなかった。
それでは、移動開始だ。
小型の車両を運転して、ユヅルがいく。それを真ん中に、陣形を組む。黙々と、事前に調べてある万古の神殿へと向かう。
デメテルも兵を引き上げたようで、既に台東区はからだ。
アリスが辺りを見回しながら話しかけてくる。
「煌お兄ちゃん。 なんだかおまつりが終わった後みたいだね」
「いや、これから本会場に行くところだ」
「あ、そっか! そうなると私のおじさん達が来てるかも」
「おじさん達、か」
前にアリスの記憶を見た。
赤黒の二人の男性。
どう見ても高位の悪魔だった。アリスがいる事で、敵対を避けられれば良いのだけれども。そう簡単にいくかは分からない。
ほとんど抵抗もない。
偵察に出していた天使部隊と天狗部隊も損耗なし。
どうやら、万古の神殿に、既にこの辺りの神魔はあらかた向かうか。既に創世を諦めて、撤収するか。
そのどちらかであるらしい。
それでも何体か野放しにすると害を為しそうな悪魔がいるので、行きがけの駄賃に片付けていく。
ほとんど煌が出なくても、イチロウかミヤズだけで片付く。
ただ、ミヤズはこれからの戦闘に備えて、弾丸を節約するようにと。越水長官に言われていた。
「頼もしい。 これほど日本支部に戦力がそろったのはいつぶりであろうな。 ただ、これでもこれなら勝てると言い切れないのが悲しいところだ」
「それほど強大な存在がいるかもしれないんですね」
「ああ。 そもそも四文字の神が万全の状態であったら、この面子でも勝てるかは分からなかっただろうな」
「……本当に強いんだな。 でも強いだけだったんだな」
イチロウがぼやく。
気持ちは分かる。
それに、平行世界のイチロウのように。その強さに傾倒していない。それだけでよしとしなければならなかった。
程なく、見えてきた。
下り坂が続いていて、その先に蟻地獄みたいな場所がある。其処に、明らかに空間にひびが入っていた。
気をつけながら、流砂の坂道を行く。
程なくして、流砂の底に。念の為、底はマーメイドに凍らせて貰った。そのままだとつるつるだが、マーメイドは魔法を調整して、歩きやすいように氷の状態を整えてくれる。それくらい、細かい事が既に出来るし、それで消耗することもない。
一度氷の上で、最終チェックをする。
万古の神殿には、数え切れない神魔が入り込んだのが確認されている。
どれだけ準備をしても足りない位なのだ。
「物資確認よし」
「戦力は問題なし。 絶好調だ!」
「検査の結果は見ましたが、皆問題ありません。 越水長官は本当に問題ありませんね」
「問題ない。 私は戦闘タイプではないが、それでも天津神だ。 最悪の場合は、君たちの誰かと契約して、蘇生してもらうさ。 今の君たちはそれが出来るほどだ」
越水長官が、そう太鼓判を押してくれる。
では、行く。
煌が最初に、半浮遊で空間の裂け目に。車は重量級の悪魔達が、抱えて空間の裂け目に運び込んでいた。
なるほど。
やはり既に、此処は平常な世界ではないらしい。
アンコールワットの遺跡跡を、昔見たことがある。
雰囲気はそれに近い。
放棄された宮殿跡。
しかも、その宮殿の中は、物理法則も何もない。
一応下に向けて重力は働いているようだが、それだけだ。床には溝が出来ていて、穴の中には虚空が広がっている。
壁の向こうには、どこまでも美しい空。
そして四角い地面が浮かんでいて、美しい草花が生えているが。何かにつるされている様子もない。
手をかざして見ていると、空間そのものがねじれているようだ。
万古の神殿は、ねじれながら、中央へと向かっているようである。
「これが万古の神殿……」
「皆、煌から離れるな。 鍵はただこの空間への入り口を開けるだけのものではない。 鍵がそろった時点で、この空間への入り口は開かれた。 そして今、皆の精神をこの精神だけの世界に蔓延る悪意から守る役割をしている」
不意にアマノザコが言う。
皆が注目しているが、アマノザコの目は淡く輝いていて普段と同じだとはとても思えない。
不意に元に戻る。
小首をかしげて、何かあったのとこちらを見るアマノザコ。
ますます様子がおかしくなってきているが、それはタオもヨーコも同じ。
タオは、少し前に笑顔を見て、それが最後だった。
完全に今は表情がなくなっている。
一応、まだ会話は出来る。
だが、磯野上タオとしての人格は、既にほとんどなくなってしまっているようだ。
タオとして喋ることは、もう出来なくなる。
つい少し前に聞いた言葉だ。
それが現実になろうとしているのだろう。
「偵察部隊を出して、状態を探りながら行こう。 ここから先は、古代神格が幾らでも出てくるはずだ。 対応を間違えると即時で全滅するぞ」
「了解!」
「皆、どんな情報でもいい。 持ち帰ってきてくれ」
ユヅルが天狗部隊を出し。
煌も天使部隊を。
更には、イチロウもミヤズも、雑多な神魔を出して偵察に向かわせる。
それから、少しずつ進む。
床はある程度しっかりしているが、それも気をつける必要があるだろう。念の為、テュールが補給車両の側についている。
最悪の事態に備えて、ユヅルもいつでも車を脱出できるように備えていた。
天狗部隊の一体が戻ってくる。
鞍馬天狗で、それなりの実力者だが。
肩口から大きく切り裂かれていた。
「総員展開!」
「も、申し訳ありません! この先の通路を塞いでいる悪魔に……!」
「いい。 戻ってくれ」
ユヅルも車を降りる。
ずるりずるりと這いずるようにこちらに来たのは、下半身が蛇になっていて、多腕の神格だった。
多数の手には多数の剣を持っている。
ナーガかと思ったが、それにしてはどうも雰囲気が違う。
名前も知られていないような古代神格かも知れない。
殺気を飛ばしながら、迫ってくる。
だが、煌が前に出るまでもない。
フィンがイチロウと森可成、更には酒呑童子とともに出る。四人がかりで一斉に仕掛け、相手がそれに対応する前に、一気に押し込む。
体を柔軟に動かして、凄まじい速度で命を刈り取りに来るいにしえの魔だが。
その首が不意に落ちる。
着地して、刀をしまったのは義経公だ。
それでも、まだ動こうとしたが。
巴御前が、その胸を撃ち抜く。
それで、蛇の魔は消滅していた。
取り込んでみて分かるが、やはり古代インドの、既に消滅した信仰の魔であったようである。
古代インドは、多数の信仰が割拠し。
それらがヒンドゥーに取り込まれていった経緯がある。
だとすると、あれはナーガの先祖と言う訳だ。
消耗は最小限に抑えられた。
次。
今度はにわかに前方が騒がしくなる。
雑多な神魔が、こっちに一斉に仕掛けてくるのが見えた。
アールマティとタオが前に出ると、それぞれが光の力を展開。まとめて面制圧で消し飛ばす。
更にヨーコとアリスが続けて出て、今度は闇と死の力で、残りをまとめて制圧する。
それでも少数が残ったが、それは他化自在天が突貫して、高笑いしながら轢殺してしまった。
まだ入り口近くなのに、熱い歓迎だ。
それも明らかに、好意的な歓迎ではない。
それでも進む。
無言で進んでいると、大量の神魔の死体が折り重なって、マガツヒとなっている空間に出た。
古今東西、あらゆる神魔の死体がある。
これは何かにやられたんじゃない。
恐らくは、それぞれが相争ったのだ。
「ひどい……」
「誰か、生きていますか!」
イチロウが言う。ミヤズが呼びかける。
こんな状態でも、救える存在は救うか。
煌も意識を集中。
そして、倒れているフリをして。ミヤズを襲おうと飛びかかった神魔を。護衛についていたクルースニクと巴御前が切り伏せるのを見る。
ミヤズは、もう一度声を張り上げた。
「不意打ちなんてしても勝てません。 死にたくないのなら、声を上げてください!」
「う、うるせ、え……!」
立ち上がる、血だらけの原型もとどめていない人型。
恐らくは堕天使だ。
ミヤズがきっと見ると、明らかに怯む。
「此処は戦いの場だ! さっさと殺してみんな餌にすれば良いだろ!」
「もう決着はついています」
「巫山戯た人間だ……! 俺たちが人間に劣るとでもいうか! 誰がおまえ等なんかに助けられて、命を長らえるか!」
「助けを求めないというのであればどうぞ勝手に。 私は知りません」
ミヤズに突き放されて、悪魔はみるみる真っ赤になっていく。
ミヤズも相手が人間だったら違う反応をしたのだろうが。
それにしても、これなら放っておいても大丈夫か。
悪魔は捨て台詞を吐くと、飛び去っていく。他には生存者はいない。
大きな音。
どこかでまだまだ殺し合っているのだろう。
少なくとも、組織的に此処に入り込んだ悪魔はいないはずだ。今の時点では、だが。
先に進む。
少しずつ蘇生の魔法を使って、ユヅルが消耗した天狗部隊を回復させている。煌は前に出て、今度は前衛を担当する。
壁に擬態して伏せていた悪魔を一刀両断。
その場で打ち倒していた。
通路には、転々と神魔が死んでいる。
これが、人の精神世界の深奥。アティルト界の日常だというのか。これでは、紛争地帯と代わらないではないか。
結局神魔は人間の映し鏡だ。
この光景が、その事実を嫌と言うほど突きつけてくる。そして放置しておけば。これはいつまでも続くのだ。
広い場所に出た。
もう重力が下にあるというだけで、空間の歪みは極めて顕著だ。イチロウがぼやく。
「なんだかもうだまし絵だっけ? その中にいるみたいだな」
「ああ」
上にあるのは階段だろうが、それがねじれながら空にかかっている。しかも途中で混ざり合っている。
あれは階段としての用は為さないだろう。
前から歩いてきたのは、悟劫だ。
一礼する。
終始誰とも敵対せず、誰にも悪意を持たなかった。
それに、死者は誰であろうと弔っていた。
立派な人だ。戦わないとしても。
「来たか。 今回の創世は賑やかなことになりそうだ」
「やはりあなたは高位の仏ですね」
「そうだな。 今更隠しておいても仕方があるまい。 我が名はアミターバ。 皆の呼び方でいうと、阿弥陀如来として知られる者だ」
そうだったか。
予想はしていたが、やはり如来級の仏か。
悟劫は言う。
「この愚かでいたましい営みを必要なものだとは言わぬ。 人は一万年ずっとこれを続けてきたが、それに今も変わりはない。 さて、君達はどういう創世を望む?」
「既存の八柱による創世には、どれも問題があった。 その全てを解決し、人類を先に進ませる。 それが僕の願う創世です」
「ふむ、面白い。 では先に進むが良いだろう。 私は座に進むものを見届け、その過程で倒れた存在を救う目的の神格である。 誰の手助けも出来ないが、見守らせて貰うぞ」
悟劫がいなくなる。
あのエインヘリアルにされた人々を救ってもらった事もある。
誰も文句は言わなかった。
更に空間がねじれ始める。ミヤズが、酔いそうだといって、視線を空から外す。天使部隊も、上下左右も何もないので、四苦八苦しながら飛んでいるようである。
良くしたもので、他の神魔も似たようなもののようで。
鳥の悪魔が、真っ逆さまに落ちてきて。そのまま墜落して爆ぜるのを見た。
こう上下が無茶苦茶だと、対応しきれないらしい。
「此処は完全なアティルト界ではない。 かなり特異な空間でな。 アティルト界の中に、アッシャー界の理が持ち込まれている場所、とでもいうべきか」
越水長官が言う。
なんでもこの神殿そのものは、アティルト界のものであれば鍵などなくても入ることが出来るらしい。
だがアッシャー界の法則まで適応されるので、それに対応できず、純粋なアティルト界の存在はこうして四苦八苦する。
逆に人間の方が、まだやれるらしい。
そういう意味では、選別の場としてなり立っていると言う訳だ。
奥へ進む。
果てしない道だが、誰も腹が減ったというような類のことは言わない。大なり小なり、人間から外れ始めているからだ。
煌もまったく食欲はない。
三大欲求そのものが消え失せてしまっている。
ただ、体力は消耗する。
龍脈の類があれば助かるのだが。
階段だ。
警戒しながら、補給車を重量級の悪魔達が抱えて、更に先へ進む。
戻ってきた天使部隊の二代目リーダーであるソロネが報告してきた。
「この先に古代の戦神がいます。 誰も通す気がないようです」
「容姿などに見覚えはあるか」
「いえ。 おそらくは道教系だと思いますが」
「シユウかな?」
最悪の存在を、常に考えておかなければならない。
シユウは中華における武器を発明したとされる存在で、元は少数民族の祭神であったらしい。
黄帝に倒された逸話があるが。
武器を発明したというその逸話から、かなりの強大な神格だ。同じような逸話がある存在としては、ギリシャ神話のティターン神族の一角、イアペトスなどがいる。
シユウはそれからも様々に伝承などに名を残し、中華最強の妖怪四体である「四凶」の一角、饕餮と同一視……正確にはその原型であった可能性も高い。
殷王朝の頃にはこの饕餮をかたどった「饕餮紋」が刻まれた祭器が多く、おそらくシユウとして崇拝されていた可能性が高い。だとすれば、周王朝になる過程でシユウは祭神から邪神に転落したと見て良いだろう。
いずれにしても極めて危険な相手だ。
シユウだとすると、多数の強大や眷属がいるはず。
決戦となるだろう。
「皆、偵察部隊を戻してくれ。 最初のまとまった会戦になる」
「分かった。 シユウとなると、厄介な相手だ。 流石に万古の神殿と言うべきか」
「武器を発明した神様か。 それが邪神とされているっていうのは複雑だな。 人間はずっと戦争ばかりしてきたっていうのに」
「……」
イチロウの言葉は的を得ている。
確かに、年がら年中殺し合っているのが人間なのに。その道具を作り出した存在が邪神とされるのは。シユウとしても不愉快かも知れない。ただ、それがたとえ政治闘争の結果の信仰の変遷だとしても、最後の良心が働いた結果、と言えるかも知れない。
ともかく進む。
まだまだ、とんでもない神格が出てくる可能性が高い。尻込みなどは、してはいられなかった。
※シユウ
中華神話における武器を発明した神様です。悪神とされていますが、どちらかというと少数民族の祭神を道教に取り込んだ感じですね。
このシユウの影響を受けたのが、かの四凶の一角である饕餮。そして饕餮紋が古くの祭器に残されていることを考えると、古くは悪神としてではなく、普通に祀られていた可能性が高いでしょう。
信仰が時代を経る過程でメインストリームから外れてしまった存在。
それがシユウです。
真V、真VVでは、万古の神殿で彼を使って経験値稼ぎした人も多いのではないでしょうか。