真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
高度な文明を古くから築き、あのローマの礎にもなったギリシャ。
その神々は後世まで愛されましたが、それでも古き神々です。いざ戦いになるとその荒々しさが表に出ます。
屑揃いと言われるゼウスの兄姉達も、それは古代の荒々しい価値観の中にいた存在、と言い換えることも出来るわけですね。
フィンが切り結ぶ。相手はヘラクレス。体が高揚する。世界でももっとも名高い英雄である。
フィンなどとは比べものにならない格の存在。
戦うだけで高揚が途切れない。
勿論押されている。
だが、ヘラクレスの背後から、源義経が斬りかかっていた。ヘラクレスは振り向きもせず、ネメアの獅子の毛皮で受け止める。
「なかなかに速いな」
「噂通りの防御力か。 これは奇襲は不可能とみて良さそうだな」
「義経どの。 後ろからの攻撃は、完全に無意味だ。 前に回ってくれ」
「私の攻撃を、正面からいなせると思うな?」
凄まじいパワーでの一撃が飛んでくる。ヘラクレスの戦闘力は、幻魔の中では最高峰である。
その力はアトラスに代わって天を支えた事があるほどであり。
要するにオリンポスの神々と全く遜色がない。
単純な腕力だけでいうと、生半可なオリンポスの神々より上だろう。
分かっている。
フィンでは倒せない。
だから、少なくとも、ヘラクレスを足止めしなければならない。義経はフィンも瞠目する使い手だが。それでも二人がかりでも、ヘラクレスを相手にするのは厳しいのが現実だ。
だが、今は足止めすることに意味がある。
激しく剣を交わす。
二人を同時に相手にしても、ヘラクレスはまるで苦にしていない。魔法をたたき込んでもまったく問題としていない。
パワーが違いすぎる。
一撃が重すぎて、吹っ飛びそうになるのを。かろうじて技量でこらえ続ける。消耗は一秒ごとに跳ね上がっていくが。
此奴が主である夏目煌から距離を取ることだけは防がなければならない。
ヘラクレスはヒドラの毒を鏃に塗った矢を持っていて。これの殺傷力が次元違いなのだ。主である夏目煌はヒドラを倒したことがあるが、毒まで完全に防げるかは分からないし。何よりヘラクレスが引く強弓だ。
食らったら夏目煌でも危ない。
此奴をフリーにしてはいけないのである。
火炎の魔法をたたき込むが、ヘラクレスはふっと息を吹きかけるだけで消し飛ばす。強い。強いなんてものじゃない。
周りもオリンポスの神々とやりあっていて、支援など期待できない。
期待できないと思っていたのだが。
ヘラクレスが飛び退く。
一瞬前までヘラクレスがいた地点。死の塊が、其処にたたきつけられていた。
降り立ったのはアリスだ。
「加勢するよー」
「構わないが、主どのは」
「ゼウスとの戦い、水を差されるの嫌みたい。 だから手伝いに来た」
「そうか、助かる」
義経が多数の残像を作りながら、ヘラクレスに斬りかかる。ヘラクレスは太い腕を恐ろしい速度で動かして、攻撃を全て防ぎきる。
フィンは詠唱開始。
オデットが増幅してくれていて、なおもヘラクレスには一発でかき消された。それでも、やる意味はある。
アリスも隣で詠唱を続ける。
ヘラクレスは無言のまま、義経を吹っ飛ばす。それでも義経は地面を擦りながら跳び退いたが。
あれは長時間戦うのは無理だ。
「長くはもたん!」
義経が再びヘラクレスに躍りかかる。ヘラクレスは受けて立つ。激しい一騎打ちが続く中、アリスが詠唱を完成。
フィンも詠唱を終え、ルーンをくみ上げていた。
義経が飛び退く。
フィンが全力で、火炎の魔法を。アリスがそれと同時に、死の魔法をそれと合成させていた。
真っ黒い炎が、渦を巻きながらヘラクレスに襲いかかる。
ギリシャの神々は不老不死だ。
だが、それでもあくまでそれは設定。許容を超えた死を受ければ、ヘラクレスだって倒される。
そしてアティルト界に帰る。
此処はアティルト界の中枢。
其処にアッシャー界が無理矢理持ち込まれている異郷。
ならばヘラクレスも、オリンポスにいる存在としての力を、十全に発揮は出来ないだろう。
攻撃を受け止めるヘラクレス。黒い炎をまともにくらいながら、それでも少しずつ前に進んでくる。
とんでもない化け物だ。
だが、それでも、アリスが更に気合いを入れる。横やりを入れようとしてきた下級の神。あれは確かクラトスだったか。それを、義経が切りつけて、数合で斬り伏せてしまった。
気合い一閃、ついにヘラクレスが、黒い炎を正面から引き裂く。
そして、突貫してくる。
これは、覚悟を決める。
フィンは魔法を解除すると、剣を上段に。そして、最大級のパワーで突っ込んできたヘラクレスの攻撃を、義経とともに受け止める。
二人でも、渾身のヘラクレスの攻撃を受け止めるのは不可能か。とんでもない重さだ。ぐっとうめき声が漏れる。
ヘラクレスが、更に押し込んでくる。
「良い腕だが、此処までのようだな!」
「いや、もらった!」
「!」
ヘラクレスのアキレス腱が。
両方とも、ざくりとえぐれていた。
ヘラクレスの足下で、死の力を収束したアリスが、一閃して切り裂いたのだ。今の瞬間、アリスは空間転移して、ヘラクレスの右斜め後ろに逃れていた。
そしてこの好機を狙っていたのである。
ヘラクレスが態勢を崩す。
膝を突く義経。
軽量級なのに、ヘラクレスと渡り合っていたのだ。むしろ良くやってくれた。フィンは雄叫びを上げて突貫すると、ヘラクレスの喉に一撃をたたき込む。剣を手でつかんでとめに来るヘラクレス。
だが、剣にルーンを通して、魔法を直にたたき込む。
ヘラクレスの顔面に炎が。
ヘラクレスが吹っ飛ばされて、そして。
階段の踊り場から落ちて、虚空へと消えていった。
尻餅をつく。
相打ち覚悟での攻撃だったが、なんとか倒すことが出来た。義経も限界。アリスもぜえぜえと息を乱している。
イズンがこっちへと、叫んでいるのが分かった。
ミヤズが組織した医療部隊と連携して、治癒をしてくれている。義経が肩を貸してくれた。
どうせ階段から落ちてもアティルト界だ。ヘラクレスも、そのうち英雄としての存在に戻るだろう。
フィンは苦笑いすると、主の役に立てたことを、密かに喜んでいた。
ポセイドンとイチロウ先輩が渡り合っている。アポロンとお兄ちゃんが丁々発止の叩きをしている。
そして、ミヤズと巴御前の前には、ハデスが立ち塞がっていた。
とても本来だったら勝てる相手ではないが。
越水長官も側にいる。
ハデスはオリンポス十二神ではとてもまともな神で、ヘスティアと並ぶ良識派とされている。
逸話は知っているが、「冥界の王」という恐ろしいイメージと、ハデスという悪そうな名前と裏腹に。慈悲深く、理性的な神だ。ペルセポネを巡る騒動くらいしか問題を起こしていない、オリンポスの神々では数少ない良識派である。
「医師見習いか。 この戦いに参加しているのはなぜだ」
「世界のためです」
「そうか、よどみなく答えられるのだな。 俺もゼウスの考えには全て賛同しているわけではない。 ただ、方法論としてはありだと考えている。 ならば、戦って勝利をもぎ取るしかあるまい」
「そうですね。 集合意識と真社会性生物への人間の変動。 それ自体は、別に間違った事ではないと私も思います。 どちらも間違っていない方法論の差であるのなら、戦うしかないのかも知れないですね」
越水長官に頷く。
ミヤズは真正面から戦闘できるタイプではない。
ただ、支援魔法は可能な限り掛けた。
越水長官も頷くと、そのままハデスへと躍りかかる。ハデスは大槍を振るって、越水長官を迎え撃つ。
激しい戦闘が開始されるのを横目に、ミヤズはM16を抱えて走る。側面に回り込む。
巴御前が、それを支援して、何度か矢を射かけてくれる。ただそれでも、やはり少し不利だろうか。
ハデスは強い。
越水長官はかなり強い神格だが、それでも戦闘タイプではない。
それに対して、ハデスはティタノマキアでもギガノトマキアでも武勲を挙げている武闘派だ。
神としての格はほとんど同じ。
であれば、武闘派であるかそうでないかが勝負を分ける。まさに今、その分水嶺をミヤズは見ている。
後一手、ほしい。
だけれども、ポセイドンと渡り合っているイチロウ先輩も、アポロンとやりあっているお兄ちゃんも、仲魔全部を繰り出してようやくの勝負だ。
ハデスは越水長官と渡り合いながら、巴御前の矢を容易に弾き。ミヤズにも隙を見せていない。
いや、今視界の隅に一人。
よし。
弾丸を装填すると、一撃を入れる。ハデスはふんと唸りながら、狙撃を余裕を持ってはじいてみせる。
アマビエが側で支援魔法を重ねがけしながら、心配そうに言う。
「あの弾丸が通らんのか! 恐ろしい奴じゃ!」
「恐ろしいね。 でも、悪い神様じゃないんだよ」
「そう言ってくれると嬉しいな。 私の心残りはペルセポネに対する恋慕をどうしても抑えられなかったことだ。 それだけがずっと後悔として残っている」
「……」
ハデスは女神ペルセポネをいわゆる略奪婚した。
それがペルセポネの母であるデメテルを嘆かせ、季節が狂うという大きな事件を引き起こしている。またペルセポネもいわゆる日本神話でのヨモツヘグイに近い行動……つまり冥界の食物を口にしたため、以降は冥界を離れられなくなった。
それを後悔しているのであれば。
後悔なんて言葉とは無縁だろうゼウス等に比べると、ずっと人間味がある。
弾丸を再度装填すると、乱戦の中を縫いながら、狙撃地点を探す。ラマシュトゥが、襲いかかってきた下級の神をねじ伏せてくれる。
ありがとうと言いながら、クルースニクにも指示を出し。ハデスに向かって貰う。
そして、狙撃地点に着く。
ハデスは不可解そうにする。
越水長官とクルースニクを同時に相手にし。巴御前とミヤズの狙撃を同時に捌いてなお余裕がある冥界の神は。
次の瞬間、左腕を射貫かれていた。
「……っ!」
深々と突き刺さった矢。
それは高速機動を続けて、誰からも狙われていなかったバトゥによる矢だ。
煌先輩の眷属として、ずっと創世に関する相談だけを受けていたテングリの眷属としてのバトゥ。
まさかこんなタイミングで仕掛けてくれるとは、ミヤズも想定外だった。
同時に、ミヤズも狙撃。
一瞬だけ気がそれたハデスを、一撃は見事に撃ち抜いていた。
肺を貫いた。
勿論人間なら致命傷だが、其処は流石にオリンポスの神だ。踏みとどまると、血を吐きながら、それでもクルースニクを一撃で斬り伏せてみせる。
ごめん。ありがとう。
そうクルースニクに言う。
再生する余裕はないかも知れない。
越水長官が、黒い刃を振るって、ハデスを貫いたのは次の瞬間。更には、巴御前が薙刀で、肩口から腹辺りまで切り下げる。
ハデスが、膝を突いていた。
「……見事」
静かに笑って、ハデスが消えていく。
ミヤズは黙祷して、その敢闘を讃えると。手を叩いて、トリアージ開始を告げていた。
アポロンは強い。これでもアルテミスと連携していないだけマシだろうか。ユヅルは、激しく切り結びながら、そう思う。
ギリシャ神話の神々の中でも、素行があまりよろしくないアポロン。
音楽や詩を愛する神ではあるが、その言動はお世辞にも優等生とは言いがたい。良くも悪くも、ギリシャ神話らしい生々しい性格の神だ。
竪琴を鳴らして、それで音波攻撃を繰り出してくるアポロン。どうしてもそれは防ぎにくい。
蔵王権現と大獄丸と三人がかりで仕掛けているが、どうにも厳しい。天狗達も河童達も、皆周囲での乱戦の最中。
こっちに力を回す余力などない。
「なかなか優れた容姿だな。 寵童にしてかわいがってやろうか」
「似たようなことを前にフレイにも言われたな」
「フレイか。 あれと一緒にされては流石に困るな」
「いや、似ているよ貴方達は」
ハンドガンで連射を浴びせながら、ユヅルは下がる。代わりに大獄丸が上空に躍り上がり。
更には、蔵王権現が周囲に霧を出す。
蔵王権現はあらゆる神を内包するとか言う無茶な設定の神格だが、実際のところは修験道のご本尊だ。
だとすればその得意技は山の力の行使。
山に出る霧は大の得意だし。
それをアポロンが苦手としているのも分かっていた。
アポロンは舌打ちすると、ヘリオスと叫ぶ。
戦車に乗って、ヘリオスが来る。
ギリシャ神話におけるもう一柱の太陽神。ローマ神話ではアポロンの後継であるアポロと同一視された神。
その戦車に乗ると、高笑いしながら、上空から収束音波をたたき込んでくるアポロン。
機動力を確保した上に、あれをばらまかれたら最悪だ。
「山の神がいるとなると面倒だねえ。 だったら、上空から爆撃と行こうか」
「させるか」
無理矢理乱戦の中から鞍馬天狗を一体呼び戻して、ユヅルを担いで飛んで貰う。空中戦は苦手だが、やるしかない。
蔵王権現は飛ぶことが出来るようだ。
大獄丸は近くに落ちていたギリシャの下級神格の死体を、アポロンに投擲する。ぶうんと凄い音がした。
死体をアポロンが高笑いしながら爆破。
だが、その時には。
戦車の至近に蔵王権現が迫り、しかも巨大化していた。いわゆるブロッケン現象の応用だろう。
流石にヘリオスが顔を引きつらせて戦車の軌道を変えようとし、其処をユヅルが連射。狙うのはヘリオスだ。
ヘリオスの額に穴が開き、戦車が横転。
その時、アポロンはユヅルに向けて音波攻撃を放っていた。
これは、よけられないか。
しかし鞍馬天狗が、ユヅルを下に投げ飛ばし。代わりに粉々になる。地面で大獄丸がユヅルを受け止め。
アポロンが着地に失敗して、最大の隙を曝す。
大獄丸。
叫ぶと、アポロンに向けて投擲して貰う。
飛びながらユヅルは、霊剣を抜く。慌ててアポロンは短刀を抜こうとするが、ユヅルが一手速い。
斬り伏せる。
アポロンが後ろで消えていく。だが、ユヅルも無事ではなく、呼吸を整えながら、周囲を見回すので精一杯だった。
ポセイドンは傲慢な大男だった。仮想敵になる神については、イチロウも勉強してきた。
ゼウス等オリンポスの神々には傲慢な者が多く、ポセイドンは特に酷い一人。海の水を纏いながら、次々に水の刃としてたたきつけてくるポセイドンは、明らかにこちらを見下していた。
「頭が高いわ愚民風情が! さっさと死ね!」
「いやだね」
ハンドガンを連射しながら、森可成と連携して攻め上がる。多数懸かってくる下級の神や妖精を、次々に斬り倒す。
アールマティが援護の光を放ってくれる。
アウズンブラが巨体を生かして敵の注意を引いてくれる。
イチロウは影に隠れて進みながら、ポセイドンを狙う。ポセイドンは苛立ちながら、手にしている三つ叉の矛を振るって、激しい水をたたきつけてくる。それぞれが辺りを切り裂くほどの威力だ。
恐ろしい相手。
北欧の神々や、インドの神々も強かった。
だがギリシャの神々はとにかく古い。
それに、何より文化的な厚みがある。
歴史的にはインドの神々よりも更に古い。3500年くらい前から存在していて、700年ほどかけて編纂された。
そういう神々だ。
強くない筈がない。
ただ、それだけ古い神だから、傲慢だし残忍でもある。古い時代の人間が、どういう者達だったか示すように。
古い古い時代の神は。
ただ相手に好意を伝えたいだけの存在だったのを、イチロウも見た。
日本語にしてみれば、ただ二文字の言葉で、相手に親愛の意思を伝える。それだけの事。それが今はとても難しくなった。
社会が複雑化して。
様々な争いが起きるようになった。
最初はいもしなかった王族やらが権力を握り、最初からそれらの権威があったように振るまい。
それを正当化するために、神の力を借りるようになった。そんな話を聞いて、イチロウは呆れた。
だからこそ、創世でたださなければならない。
ギリシャの神々なんて、物語に過ぎない。そうしてしまうべきだ。ただひたすらに走る。
少なくともゼウスと死闘を演じている煌のところに、此奴を行かせるわけにはいかないのだ。
ハンドガンの弾を再度装填。もういちいち手元を見なくても出来る。激しい攻撃を前転で回避して、起き上がりつつ連射連射連射。
特注の弾だ。
うるさそうにするポセイドンが、槍で突きかかった森可成の一撃を三つ叉矛で受け止め、もう一方から躍りかかったアウズンブラを片手で受け止める。
アールマティが気合いとともに放った光を、一喝で消し飛ばす。
そして、イチロウを見る。
来ていることなど読んでいたと言わんばかりに。
巨大な足を踏み下ろしてくる。アウズンブラを押さえ込むようなパワーの持ち主だ。踏まれたらひとたまりもない。
しかし、其処に横から突貫したのは。
「させないホ!」
「!?」
氷の塊となったナホビホだ。煌のフリをした格好など、崩れようとどうでもいいという捨て身の突撃。
更に乱戦を抜けてきた雑多な神魔が、一斉にポセイドンに組み付く。ポセイドンは、それで気を散らし。アウズンブラが押し込む。
「雑魚どもが、散れやぁ!」
三つ叉矛を振り回して、辺りの全てを殺戮しつつ。
踏み込んだポセイドンが、イチロウめがけて三つ叉矛を突き込んでくる。
其処に立ち塞がった森可成が、渾身の一撃で、三つ叉矛を弾きあげる。だが、そのまま切り下ろされて、一瞬で消し飛ぶ。
しかし、それは全て計算のうち。
今の瞬間に、ミヤズの支援魔法で最大加速したイチロウは、ポセイドンの死角に回り込み。
それに釣られてポセイドンが振り向いた瞬間。
アールマティが、全力で水の力を展開。海の神の株を奪うような水操作魔法で、一瞬だけポセイドンの力を拘束する。
だが流石はポセイドンだ。
その拘束を、一瞬ではじき返すと、更に組み付いてきていたアウズンブラを蹴り飛ばしていた。
「ガキが、どこへ行ったあ!」
「此処だよ!」
ポセイドンは気付いただろうか。
アキレス腱を一刀両断された事を。
巨体が揺らぐ。
剣は散々教わった。その一撃で、ポセイドンのアキレス腱を、イチロウは今の隙に両方とも切り裂いたのだ。
倒れ伏すポセイドン。其処に、跳躍したアウズンブラが、ボディプレスを入れる。傷だらけのアウズンブラだが、だからこそ全体重が容赦なくポセイドンに掛かった。
ポセイドンの全身が複雑骨折を起こして潰れるのが見えた。
激しく吐血しながら、ポセイドンが喚く。
「こ、こんな唐変木にこのわしが敗れるだと!」
「確かに俺はヘタレで唐変木だよ。 だが今のあんたは、もっとかっこ悪いぜ。 相手を格下と侮った挙げ句、足下すくわれやがってよ!」
「……返す言葉もないな。 ふっ、まあいい。 人間を変える方法論の戦い。 最後に楽しませて貰ったわ」
最後に負けを認めたか。
イチロウの手持ちはほとんど壊滅。最後の一撃で、アウズンブラも限界。森可成も、出来るだけ急いで復活させないと。
ミヤズが手を振っている。あっちも勝ったか。
問題は煌だ。
タオとヨーコがここに入ってから完全に傍観に転じた。完全に意識が創世の女神となり、もう勝者にしか手を貸すつもりはないのだろう。
イチロウは寂しいとは思ったが。だからこそ、勝たなければならないと、決意を更に強くするのだった。
ついにオリンポス十二神の一角、ポセイドンまで下したイチロウ。
既に過去の情けない姿はありません。
そして皆がオリンポスの神々を打倒した中。
待たれるのは、ゼウスとの決着……となるわけですね。
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