真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

120 / 121








4、全てを見届けて

告発者は見る。

 

全てが変わっていく。今まで人間の感情に振り回されてきたアティルト界が、根本から変わっていく。

 

それは人間の普遍的無意識が、根から変わっていくことを意味していた。

 

生物としての環境適応の前に。

 

今まで美辞麗句で飾られてきた人間の醜悪な本性が、根っこからたたき直されていくのである。

 

それはどの神魔も。

 

ずっと望んでいたことだった。

 

これは洗脳に非ず。

 

余計な事にも非ず。

 

不要な存在には施さない。

 

世界にはよりどころを必要とする人間がどれだけいるか分からない。だからどれだけ技術が発達しても信仰はなくならない。

 

宗教から科学に信仰が移り変わる時代が来るかも知れないが。それは結局科学が宗教になるだけのことだ。

 

哲学はそれを為そうとして為せなかった。

 

サタンは、三つある頭で、周囲を見る。

 

おお。

 

今まで争いと欲望の発散でしか成り立っていなかったアティルト界が。美しい草原に変わりつつあるではないか。

 

これが人の心の光景か。

 

如何に欲望を満たすか。

 

他の人間を蹴落とし資源を奪い取るか。

 

そればかり考えていた人間達が、どれだけ荒廃した精神世界を普遍的無意識に作り上げてきたか。

 

それにどれだけの無駄な血が流されてきたか。

 

それは人間だけの問題ではない。

 

地球に生まれてきた、数多の生物がそれに無理矢理付き合わされてきたのだ。

 

「人間はきっと未来には進歩できる」等という希望的発言で、今まで人間がやるべき事は棚上げにされてきた。

 

それが今。

 

ついに行われている。

 

根底が変わったのだ。波及していく。

 

結局支配のツールでしかなかった信仰が。これからは神魔とともにあるものとなり。人間の搾取に用いられるものではなく、隣にあるものへと変わる。

 

進化という言葉は、間違っている。

 

環境への適応が正しい。

 

人間は環境への適応などせず、周囲の環境を無理矢理自分に合わせてきた。それが数多の悲劇を作り出してきた。

 

それがついに終わる。

 

サタンは涙を流していた。

 

「終わったな、告発者よ」

 

「おお。 蠅の王」

 

隣にいるベルゼバブが、まがまがしい姿から、徐々に変わりつつある。

 

元はバアルだったのだ。

 

それは決して蠅の王というのではなく。豊穣と天を司る偉大な神々の一柱だった。

 

「数多の平行世界を束ね、そしてこの最高の創世が為された。 そうしないとならないほど、多数の平行世界が詰んでいた。 そういうことであったのだろう、告発者よ」

 

「うむ……」

 

「平行世界は其方ほどではないが、ワシも観測できるからな。 確かに其方があのナホビノ……夏目煌に手を貸すのも分かる。 夏目煌が地力で平行世界の知恵と経験を集めて行ったとはいえ、其方が用意した諸々がなければ、此処までの創世は出来なかっただろう」

 

「ああ。 それでやっと私は土に帰ることが出来る。 もしも次に現れる時は、座が役割を終えたのではなく。 また人間が後戻りして、座を作り出すような事態が来た時、であろうな」

 

サタンの体が崩れゆく。

 

約束を違えるつもりはない。

 

サタンは責任を取るつもりだった。だから、責任を取る。夏目煌による創世は、完璧に……かは分からない。

 

だがどんな平行世界よりも素晴らしく。

 

美しく。

 

人間という存在をただ美化するのではなく。先に蹴り出して、無理矢理に進めることに成功したのだ。

 

クロマニヨン人が現有人類に変わった事を、批判する存在がいるだろうか。

 

今起きているのは、それに近い変革。

 

恐らく人間に任せたままであったら、地球の資源を食い潰すまでに間に合わなかっただろう。

 

「蠅の王。 いやベルゼバブ。 後は頼むぞ。 恐らくはおまえの主も、いずれは別の形でアティルト界に生じるだろう」

 

「ああ、任せておけ。 ワシもこの美しい世界を穢すつもりはない。 穢そうとする者がいるとしたら、それはこの創世すらも超えた悪意を持つような人間であろうな。 そういう人間はワシも許さん。 絶対に漏らさず狩ってくれるわ」

 

「たのむぞ」

 

サタンは消滅しながら、見る。

 

なんとも美しい世界だ。

 

最初はこうであったのだろう。

 

だが人間は、あまりにも時代を経るにつれて。精神の世界を醜く穢し続けた。

 

純粋な信仰を支配の道具にする利点に誰かが気付いた時。

 

それは一気に加速した。

 

人間を楽園から追い出したのは神ではない。

 

他ならぬ人間だった。

 

一部の人間が知恵を独占するため。

 

それが動機だった。

 

だが、その知恵の継承など、うまくいくはずもなかった。世界中で。何度も何度も知恵が失われた。

 

馬鹿な連中は、自分の子孫だけが全てうまくやれるとか。更に酷い場合は、自分だけ甘い汁を吸えれば良いと考える。

 

だから人間が皆、楽園を追放され。そして残りも勝手に死に絶えた。

 

そういうことだったのだ。

 

今、楽園が戻ろうとしている。

 

神魔は人間の相棒となり。神魔が人間の崇拝対象ではなくなる。

 

そういう楽園が来る事を、消えるサタンは確信していた。

 

 

 

(続)








約束を果たし消えていくサタン。

そのあり方は、真Ⅱでのロウルートでのサタンの行動とも少し似ています。

ですが、それ以上の満足の果ての消失です。

彼は成し遂げられたのを見届けたのです。




感想評価などよろしくお願いします。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。