真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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創世は終わりました。

此処からは後日談です。

唯一座から帰還することを選んだ、敦田ミヤズさんの話からです。





創世が終わる時
序、帰還


創世が行われてから二ヶ月。

 

ミヤズは見る。

 

東京が、本物へと変わっていく。

 

至高天からの帰路。座からの帰還を選んだ神々や魔とともに、それを見つめた。

 

シャカイナグローリーで作り上げられたかりそめの東京が、本物に移り変わっていくのだ。

 

ミヤズ達を乗せているティアマトが、穏やかな声で言う。

 

「間に合いましたね。 東京受胎と呼ばれる事件と、いびつな形で再生された東京そのものは、もはや仕方がありません。 しかし其処に生きている人々は、これで無事に消えることもない東京で暮らしていけるでしょう」

 

「既に世界は変わり始めていますか、ティアマト」

 

「ええ。 ただ、数ヶ月大事な時期に学校を離れていたことは問題ですね。 医師になるのですから、これからが大変ですよ」

 

「分かっています」

 

そういう現実もある。

 

ただ、ミヤズはそれを恐れてはいない。

 

隣を飛ぶのはホルス。

 

煌先輩の手持ちだったホルスが、アティルト界でまた再生した存在。その背には、コンスが乗っていた。

 

「やり遂げたねミヤズ」

 

「ええ」

 

「君は人として生き、そして最後を迎える事を選ぶのだね。 決めたとおり。 私は、君が人として終わりを迎えた時に、また迎えに来よう」

 

「しばらくは待たせてしまいます。 でも、必ず貴方のところに行きます」

 

笑顔だけかわす。

 

そして、コンスは天高く飛ぶホルスの背に乗って、去って行った。

 

それでいい。

 

接吻とかすると、余計名残惜しくなる。

 

そもそも無骨なアーミールックのままだ。このままだと、少しばかり格好がつかないだろう。

 

ティアマトが降り立つ。

 

既に話は聞かされているが、神魔の存在は世界中で公表された。

 

最初は混乱もあったようだが。

 

創世による影響は確実に生じている。

 

世界中で不公正と不均衡が急速に解消されつつあり。

 

独裁国家が自主的に次々に解体を始めている。

 

邪悪な独裁者一族が、次々と罪を悔い改めて、体制を変革しつつあり。犯罪発生率も凄まじい勢いで下がり始めている。

 

人権や権利を盾に甘い汁を吸い続けていた人権屋達ですら、次々と己の罪を告白し、出頭しているほどだ。

 

世界は短期間でよくなりつつある。

 

勿論まだ完全ではなく、混乱も続いているようだが。

 

それでもこの世界は。

 

変わったのだ。

 

今までの創世で、もっとも激しい結果を伴った創世。

 

今までの創世は、人間の歴史にあわせてただの転機として為されたものばかりだったとティアマトは言う。

 

だが、これは違う。

 

人間は、種がまるごと全て新種に変わりつつある。

 

ティアマトの背から下ろして貰う。

 

もう病弱だったミヤズはいない。ひょいと飛び降りる。

 

そして、手を貸して、二人を下ろす。

 

タオ先輩。

 

正確には、人としてのタオ先輩だ。

 

創世の女神としての記憶は残っていない。快活だった縄印学院の生徒であり、ラクロス部の主将としてのタオ先輩。

 

だけれども、創世の女神がいた影響は大きかったのだろう。

 

人間として再生された時は混乱していたし。

 

今もティアマトの背に乗って、青ざめていたが。

 

ともかく手を貸して下ろす。

 

「ミヤズちゃん、凄い身体能力だね。 こんな高さ、ひょいひょいって。 ラクロス部に入らない?」

 

「いえ、私は医大の受験をするつもりですから」

 

「そっか。 ちょっと運動部は大変だよね」

 

「ええ……」

 

そして、もう一人。

 

創世の女神だった時は、ずっと周囲全てに敵意を向けていた人。

 

ヨーコ先輩。

 

ヨーコ先輩は、第一印象が怖かった。ミヤズの事を苦手だと思っていたようだが。ミヤズも、煌先輩みたいな理性的な人がどうしてこんな露悪的なことばかりいう人と親しく出来ているのかが不思議でならなかった。

 

だが、今はだいぶ印象が違う。

 

顔とかは同じなのに。

 

随分と穏やかそうで、満たされた雰囲気で。

 

運動神経抜群とか、別にそういうこともなかった。

 

今では普通に知的な女性だ。本来はきっとそうだったのだろう。

 

「ありがとうミヤズさん。 こんな高いところから下ろして貰ったのは、ちょっと怖かったわ」

 

「大丈夫ですよヨーコ先輩」

 

「髪もこんなに短かったかしらね。 まずは髪を伸ばしたいわ」

 

そんな風にヨーコ先輩が言う。

 

あの実用しか頭になかったヨーコ先輩が。

 

ちょっと不思議だった。

 

程なくして、恐らくは越水長官が派遣してきた……正確にはその分霊の月読尊、月夜見型神造魔神だが。

 

自衛官が来る。

 

敬礼をされたので、敬礼を返す。自衛官の教官からは、色々教わった。それで得た知識がたくさん味方を助け、強敵を討ち取った。だから、敬意は今も持っている。

 

それぞれ家に案内してくれると言う。

 

まだ多少混乱が続いているそうだ。何しろ、独裁国家があらかた破綻。それどころか、犯罪組織もほとんど自滅したのである。

 

どれだけ邪悪な存在だったとしても、それは一定の影響力を持っていたし、それは混乱も起きる。

 

むしろ二ヶ月程度で混乱が収束しつつあるのだから、上出来も上出来だろう。

 

そのまま首相官邸に。

 

先にタオ先輩とヨーコ先輩は家に送って貰う。

 

タオ先輩はともかく、ヨーコ先輩はほとんど天涯孤独だ。新しく家とかは用意する話もあった。

 

本人が臨むなら保護者となる大人も用意するという話があったのだが。

 

ヨーコ先輩はなんとか地力でやっていくそうだ。

 

縄印でやっていくなら、皆と一緒にやっていける。

 

きっとうまくいくはずだ。

 

首相官邸で、引き継ぎをする。

 

後継の越水長官は、全てを把握すると。そうか、とだけ言った。

 

「座にわずかな時間だけでもいた感想はどうだった」

 

「最初はとても醜い場所でした。 争い上を目指し、その先には何もない。 人間の世界そのものだと感じました」

 

「的を得た言葉だな。 上昇志向の強い人間はいて、権力を必死に争ったりするが、その先には何もない。 勝ち組だ等といっても、権力と財産を保持しても上には上が幾らでもいるし、一番上に立ったところでいつ蹴落とされてもおかしくなくなる。 猜疑心の虜になって、そして果てに待っているのは孤独な最後。 それがそれまでの世界の人間の「勝ち組」の現実だ」

 

「都合良く知的生命体と動物の理屈を使い分けていた弊害ですね。 結局それまでの人間は、畜生と悪い意味で変わらなかった」

 

ミヤズも自分でびっくりするくらい口が悪くなっていた。

 

それはそうだ。

 

あれだけの人間の業を見せつけられ続けたのである。

 

あれだけのものを見た挙げ句、ありのままの人間は未来にはきっと明るい世界を築けるとか頭にお花畑が出来ているような事をいうようなら。

 

全力で助走をつけて殴る。

 

ミヤズは兵士としても既に一流であり、戦士としての覚悟もとっくに決まっている。そしてこれから向かう医療の現場は、戦場と何一つ変わらないくらい厳しい世界なのである。

 

「機能停止していた国連が、活動を再開する兆しを見せている。 この混乱が終わったら、恐らく本当の意味での国際調停機関として動き始めるようになるだろう」

 

「私はあくまで一医師として頑張っていきたい、のですが」

 

「その気持ちは分かるが、君のスペックは既に一医師の器に収まるものじゃない。 実績を積んだら、やがて国連とは言わないが、国際機関で世界の医療をリードしてほしい。 現場に常に立つのも良いが、フローレンス・ナイチンゲールのように、医療そのものを改革する立場に行くことも考えてほしい」

 

「……分かりました」

 

ミヤズも自分が通常の人間から逸脱していることは理解している。

 

それが客観性という奴だ。

 

恐らくは医師になれる人間というレベルからも逸脱しているはずだ。だとすれば、するべき事は。

 

確かに一介の町医者などではないのかも知れない。

 

一度、家に戻る。

 

正確には縄印の寮に。

 

お兄ちゃんは、イチロウ先輩、煌先輩と一緒に座に残った。

 

だけれども、ミヤズの手元には悪魔召喚プログラムも仲魔も残っている。

 

それに、外を見ると。

 

飛んでいくのは、何かの鳥の神様だろう。

 

飛行機と併走して、守っているようだ。

 

神魔の存在が明かされて、急速にその存在が認知されている。

 

神魔がいない世界だったら、大混乱だったのだろうが。この世界には神魔がいて、それを誰もが見て見ぬ振りをしていた。

 

それをちゃんと見るようになった。

 

それだけだ。

 

今日だけはベッドで寝て、それで。

 

医者としての勉強に本腰を入れるとしよう。

 

明日から縄印も学校として再開するらしい。

 

ミヤズも、明日にいきなり遅刻するつもりはなかった。

 

 

 

縄印での久々の授業を終えて、帰路。

 

八雲ショウヘイとジョカに会った。

 

少しだけ緊張したが、時間は取らせないと言われる。まあ、向こうももう戦う気はないだろう。

 

近くの喫茶店に入る。

 

昔のコーヒーの値段を聞いて驚く。そんな時代もあったんだと思いながら、軽く話をしてから。

 

座で何があったかの説明をする。

 

全てを聞くと、八雲ショウヘイはそうかとだけミヤズに言った。

 

「やはり俺が創世に噛まなかったのは正解だったようだな。 俺の中にはまだ怒りがくすぶっている。 これは簡単に消えるものではない。 俺が噛んでいたら、創世に確実に悪影響が出ただろう」

 

「わーちゃん、いや貴方からしたらナミちゃんでしたね。 言づてを預かっています」

 

「……何だ」

 

「これから、煌先輩の頼みで、煌先輩の眷属があちこちの世界をまともにするために出かけます。 わーちゃんは残るそうですが、八雲さんにはこれを伝えてほしいと言うことでした」

 

煌先輩は。フィンさんやマーメイドさん。それにザコちゃんなどの信頼できる仲魔に頼んだのだ。

 

この世界から近縁にある平行世界は、どれも創世の影響が伝播して救われる。

 

地力で皆が頑張っている世界にも助けは必要はない。

 

だがどうしても詰んでしまっている世界が観測できる範囲にいくつもある。

 

それらを救ってきてほしい、と。

 

創世の仕組みと、更にはおそらくは助けになるだろう悪魔王ルシファーへのアクセス。知恵のコピーの譲渡。

 

それらを行い。

 

煌先輩を慕う皆は、いざ鎌倉といわんばかりに、勇み立ってどうしても詰んでしまっている世界を救うために平行世界に飛び出していった。

 

力を取り戻しつつあった伊弉冉尊の欠片であるわーちゃんは、座に残った。

 

これは煌先輩とともにある神魔が足りなくなると、創世に影響が出るから、らしい。

 

だが、八雲ショウヘイが心配だったのだろう。

 

戻るミヤズに、言づてを頼んできたのだ。

 

「怒りを忘れろとは言わない。 でも、二度とミスを繰り返さないように。 だそうです」

 

「……そうだな」

 

八雲ショウヘイは、うつむいていた。

 

側でジョカが、穏やかな視線を向けている。

 

道教神話では、決して慈母とはいえないこの神格だが。本来は穏やかな地母であったのかも知れない。

 

そう思うと、これから創世の影響はまだまだ出るだろうし。

 

本来の姿に戻っていく神格もまた多いのだろう。

 

「済まなかったな。 俺は第二十代目葛葉ライドウとして、任務に戻る」

 

「行ってきてください。 もしも手が足りないのなら、貸しますよ」

 

「それは頼もしいことだ。 貴様の実力は、既に俺と大差ない。 いや、俺より上かも知れないな」

 

「ご謙遜を」

 

一礼だけして、喫茶店を出る。

 

あの人は、これからずっと贖罪の人生を送るのだろう。

 

後継者は出来るだろうか。

 

ツバメさんはもう戦える体じゃない。

 

デビルサマナーも、一線に立てる人材は、18年の戦いでほとんど尽きてしまった。その現実は変わらないのだ。

 

家に戻ると、医学書を徹底的に読む。

 

やはり頭のスペックが根本的に変わっている。もうドイツ語はほとんど読めるし、英語もしかり。

 

専門書もすらすらと読み解き、理解していくことが可能だ。

 

書物だけではなく、最新の論文も見ていく。

 

こういった論文には、どうしても政治的な要素や、思想的な要素が出てくるものなのだけれども。

 

やはり創世以降、露骨に質が上がっているようだ。

 

どの論文も興味深い。

 

集中力が上がっていることもある。短時間で無駄なく勉強を終えることが出来る。

 

ぽんと出現したのはアリス。

 

煌先輩から譲り受けた悪魔だ。

 

アリスはミヤズが好きなアニメに興味津々で、一緒に見ることも多い。勉強をしっかり終えたので、気分転換にアリスとアニメでも見る。

 

勿論昔と同じように興味深いけれど。

 

少し見方が変わったかな、とも思う。

 

「わー、綺麗な服! ミヤズ、作れる?」

 

「うーん、ちょっと時間が掛かるよ」

 

「作って作って! おじさん達、お洋服買ってはくれるけど、縫い針なんて持てもしなかったんだよ!」

 

「そうだね」

 

まあ、ベリアルとネビロスに、そんなことは期待できないだろう。

 

ミヤズとしても、手先を鍛えるのは必須だ。

 

医療と言ってもいろいろあるが、ミヤズは手術も出来るようになりたいと考えている。だとしたら、針と糸くらい今のうちから徹底的に鍛えておかないと駄目だろう。

 

生地をかうお金ならある。

 

創世の立役者と言うことで、生活費を国がたっぷり出してくれているのだ。ちくちくと服を縫っていく。

 

設計図なんて必要ない。

 

アリスの体のサイズも分かるし、服のデザインはさっきアニメで見て立体的に把握した。これも医師の勉強の一環。

 

そう考えながら、服を仕上げる。

 

やがて、アリスに着せてあげると、きゃっきゃっと喜んでくれた。

 

「わ、かわいい! おじさん達に見せてきていい?」

 

「行ってらっしゃい。 もしも破いたりしても、すぐに直してあげるからね」

 

「わかった! ミヤズ大好き!」

 

アリスが飛び出していった。これからアティルト界に行って、ベリアルとネビロスに見せてくるのだろう。

 

あの子も恐ろしい死の権化としての側面もあるけれど。

 

ベリアルとネビロスが言うような過去があるのだったら。きっとあの天真爛漫な姿も側面の一つの筈だ。

 

ミヤズは伸びをすると、休憩を取ることにする。

 

医師になるのは難しくない。

 

冷静に客観的な分析をするが、今の段階ならどの医大にも入れる。その後は、望まれるなら。

 

もっとたくさんの人を救う道に行くのもありかも知れない。

 

それはそれとして、医師として現場で人も救いたい。

 

だがそれらを達成するには。

 

まずは医師として、しっかり独り立ちするところからだ。

 

天は見た。

 

次は足下を見なければならない。

 

ミヤズは黙々と勉強をする。

 

集中力も素の頭脳も、前とは比較にならないほど上がっている。アールマティは座に残してきた。

 

だがクルースニクやアマビエはそのまま一緒に帰ってきた。

 

少し疲れたので、アマビエに回復の魔法を使って貰う。

 

気分転換に、スマホで動画を見る。

 

西欧では、おっかなびっくり神魔との交流が始まっているようである。神魔の方は当然一神教に対していい印象を抱いていない。

 

科学者達も、どんどん神魔の研究を始めているようだ。

 

回復魔法の力が使われて、疲労が一発で回復する様子が動画で流れている。

 

外科治療などでも、凄い効果を発揮している。

 

ただし病気に対しては回復魔法は対処が苦手だ。

 

今後はそれぞれ得意な分野を担当しあって、治療をしていかなければならないだろう。

 

別の動画を見る。

 

ある一神教のカルト団体が解散を宣言していた。

 

今までどうかしていた。

 

そうテロと他の信仰の人間を殺戮することを教義に抱え、数え切れない悪を重ねてきたリーダー格が出頭していた。

 

幹部達もあらかたそれにならい。

 

組織は根底から瓦解していた。

 

また、各地で意味不明なほどの蓄財をして、この世の春を謳歌していた連中も。次々と馬鹿げた蓄財を手放しているようだ。

 

どうせ一人で持っていても使いこなせない。

 

それなら皆で分配した方が良い。

 

そういう考えであるらしい。

 

各地の学校では、自然とスクールカーストが解消され。いじめは見る間に減少していっているらしい。

 

それでも悪事をする者はいる。

 

だが全体としては、改善に向かっているのだ。

 

警察や軍などの腐敗も次々に解消され。

 

また。各地で起きていた紛争も、急速に解消に向かっているようだった。

 

座での創世がうまく機能し始めている。

 

感情で気にくわない、と考えた事が。全ての邪悪の始まりになっている。それらが全て、客観で上書きされた。

 

どれだけ馬鹿馬鹿しい理由で、他人を傷つけていたのか。

 

それをどんなバカでも理解できるようになった。

 

人間の大半は残念ながらバカだ。

 

それが急速に、改善されつつある。

 

世界は良くなる。それは煌先輩が主導した創世のおかげだ。あの人はもう帰ってこないだろう。お兄ちゃんやイチロウ先輩と同じように。

 

だけれども、この世界そのものが今や座に残った人達の願いで満ち。それがかなえられつつある。

 

後はミヤズ達、この世界に戻った存在の仕事だ。







高度な客観性が全人類に担保されるようになった世界。

その良さが急速に拡大しつつあります。

それは明らかな進歩。

人間賛歌をどれだけ歌おうと全く変われなかった人類が、やっと変わる時が来たのです。



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