真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
神谷町に到達です。
原作だとこの辺りは既にミマンを探すのが大変極まりなくて、早くも後半の地獄絵図を予感させます。あれヒントなしで全部見つけられた奴いるんかいな……
狐に毎回お金をむしり取られるのはもう仕方がないですね。
東京タワー近くの坂をゆっくりと下りていく。先に見えているのは凄惨な都市の残骸だった。
この辺りは特に破壊が酷いようである。
今まで田町などでも破壊されているビルは見たが、ほとんどは砂に埋もれていたのだろう。
ここは違う。
砂に埋もれておらず、故に東京で18年前に起きたらしい災害のすさまじさを、嫌と言うほど見せつけてきていた。
とにかく苦労しながら降りる。
煌だけなら滑り降りることも可能だが、問題になっていた飛ぶ悪魔がたくさんいて。そして上空で旋回している。
鳥も大型のものになると危険だが、それでも現在は人間を殺傷する猛禽は存在していない。
古くには超大型の猛禽が人間の子供などをさらっていくケースがあったようで。それがいわゆる「ロック鳥」のモデルとなったりもしたようだ。またコンドルの仲間には、過去には現有種を遙かに超える巨大な種が存在しており。
それらもまた、人間を殺傷し得たかもしれない。
とりあえず、戦力分散は危険だ。
ユヅルの手持ちの悪魔にも対空が出来る存在はいる。それにソピアーのところで、煌もそろえてきた。
ツバメさんは平気で砂地を降りてくる。
ガラスの破片などが落ちていないか警戒していたのだが。
ビル街の有様は、今更崩れるものもない、というほどに酷い。
一体何が起きたのか。
骨組みだけしか残っていないビルが多数ある。
中には比較的無事なビルもあるが、少なくとも災害から人々が逃れようとしたりしたような痕跡は残っていなかった。
地下部分の設備は、わりとしっかり残されている。
この辺りは神谷町か。
地下鉄については、入り口を見つけたので降りてみる。
安全を確保できるかと思ったのだ。
地元民ですら迷う複雑怪奇な東京の地下鉄は、まだあるようだったが。やはり地上の破壊の影響を受けている。
砂で埋まってしまっている場所が非常に多い。
何かの破壊を受けた後、サハラ砂漠でも空から降ってきたのではないかと思わされてしまうほどだ。
いずれにしても。地下鉄は見つけられない。
膝を抱えた小柄な弱々しい悪魔が、場所を取らないでほしいと見つめてきたので、心が痛んだ。勿論油断させて襲ってくるかも知れないが。
「ここは拠点には出来ないな……」
「煌、こちらに来てくれ」
言われたまま、ユヅルについて地下鉄の出口から地上に。
見ると、高架の残骸だ。
あれは首都高だろうか。
ただ、高架が所々で途切れてしまっていて。一部は砂で埋もれてしまっている。酷い有様だ。
首都高自体は色々と問題があった場所ではあるが。
それでもあの無惨な姿は、見ていて心が痛む。
ユヅルが案内してくれたのは、比較的安全そうなビルの残骸だ。砂に半ば埋もれているが、地下駐車場の部分が拠点と出来そうである。
一旦ここで休憩が取れそうだ。
「僕たちはここで休憩を取る。 煌も少し休んだらどうだ」
「そうだな。 外に龍穴がある。 其処で少し休んでくる」
「分かった。 悪魔を展開して、かわりばんこに見張りをさせる。 煌も無理をするなよ」
龍穴の中で、プライベートスペースがある事は、既に話してある。
今の時点ではユヅルは連れて行っても良さそうなのだが、怪しい動きを時々しているヨーコは危ないし。ツバメさんは更に論外だろう。
龍穴の側には、信号機の残骸があって、小さな悪魔がぶら下がって遊んでいた。
アマノザコが、不思議そうに言う。
「ねえねえ煌、あれって何?」
「あれは信号機だな」
「なになに、なんなのそれ」
「この辺りは、たくさん人が通っていたんだ。 今いる悪魔なんて問題にならないくらいの数だ。 みんな好き勝手に歩いたら、ぶつかったりして危ないだろう。 だから、止まる事、進むことを指示する必要があった。 あの信号機は、色で止まる、進むを指示していたんだ」
アマノザコはそれを聞くと、面白いと言ってきゃっきゃっと喜んだ。
まあ喜んでくれたのなら何よりだ。
ともかく龍穴で一旦休もうとすると、前に話しかけてきた土蜘蛛が声を掛けてくる。
「おお、塔の龍を倒した神さん!」
「土蜘蛛だったな」
「へい、ケチな妖怪でさ。 神さん、この辺りは初めてで。 何か聞きたいこととかありやすか」
「そうだな」
友好的な悪魔だ。
無碍にする必要もないだろう。
丁寧に話を聞いていく。
看板などが残っていて、この辺りはやはり神谷町で間違いない。それで話を聞いていくと、最近は天使を見る頻度が減っているという。
「噂によると、変な女の悪魔が、天使を片っ端から殺してるって話でさ」
「天使は悪魔に対しては高圧的だと聞く。 返り討ちにあっているということだろうか」
「なんとも。 昔の中華風の服だったって話もあるし、最近のなんだか色っぽい服だったって話もありましてさ」
「分かった、ありがとう。 気をつけておくよ」
土蜘蛛はのしのしと歩いて行く。
いきなり出会い頭に襲ってくる悪魔も多いが、ああいう友好的な悪魔もいるようだ。
龍穴に入ると、ギュスターヴにプライベートスペースについて確認し、そちらに行ってみる。
穴を抜けると、確かに恐ろしいほど静かな場所だった。
こぢんまりとした空間で、水場もある。
眷属を展開して、自由にさせる。ベンチがあったので、煌も休むことにした。ここは分かったが、煌の体内も同じだ。悪魔たちは暴力を振るう事は出来ない。煌にも、煌以外にも。
文庫本を読みたいが、流石にそれはやめておくか。勉強はあまり得意ではない煌だが、読書に一度集中すると、数時間戻ってこられなくなる事がある。それはここでは色々とまずい。
マーメイドが奥の水場に行くと、喉を押さえて歌い始める。
恐らくだが、あまり「良い」声ではないのだろう。美声云々の話ではない。
西洋の人魚が、声で船乗りを誘惑して、海に誘い込む話はいくつもある。声自体に呪いがこもっている可能性が高い。ああして離れて控えめに歌っているのは、害があるのを自覚しているからだと思っていい。
ベンチにアオガミと並んで座る。背丈が頭一つ以上違うが、威圧感はなかった。
「煌、論理的に考えながらも、正義感が強い行動は私としては感心できる。 悪辣なリャナンシーを一刀両断し、パズズからマーメイド達を救った。 まだ信用できない人間も、それでも決して見捨ててはいない。 私はまだ記憶が曖昧だが、それでもある程度人間の記憶はある。 煌は私が見てきた中では、かなり好意的に感じられる人間だ」
「ありがとうアオガミさん。 その言葉を裏切らない存在に僕はなろうとこれからも努力するよ」
向こうで、アマノザコと声で脅かす子供の妖怪が追いかけっこをしている。
アマノザコは立体的に動けるが、声で脅かす子供の妖怪はひょいと空間転移してしまうので、どっちも互いを捕まえられない。ただ、二人とも互いを嫌っていないようで、明るい声で遊び回っている。
楽しそうで何よりだ。子供はああしているのが一番だと思う。
トロールは奥の木陰で座り込んで、うつらうつらとしている。今のうちに休んでおくべきだろう。それでいい。
アプサラスは泉の周囲に水を注いで、少しでも空間に潤いをもたらそうとしているようだ。スライムだった時は出来なかったことだ。今は出来る事が増えて、それをするのが楽しいようである。実体化に失敗する前は、どんな悪魔だったのだろう。
対空用に作ってきた悪魔もいる。
後で、役に立って貰う事になるだろう。
しばしベンチでくつろいだ後、行くことにする。精神的な疲労の回復が早い。恐らくだけれども、ここは煌にとって理想的な空間を作り出している場所だから、なのだと思う。外に出てから、念のためとユヅルに貰った電子時計を確認したが、一時間も経過していなかった。
それなのに充分リフレッシュできた。
魔界では、力を周囲から吸収できる。
そういう理由もあるのかも知れないが、いずれにしてもアオガミの影響が強いのも確定だろう。
ユヅルの方を見に行く。
問題は起きていないようだ。仮眠を交代で取っていると言うことなので、周囲を軽く調べてくることを告げる。
遠くにはいかない。
煌も何度かの戦闘で死ぬ思いをしたのだ。
一人で何にでも勝てると思うほど、思い上がってはいない。
周囲を見て回ると、鳥の悪魔が旋回している。
ものすごく大きな奴がいた。
「巨大な鳥の悪魔だ」
「ジャターユって奴だよ」
「ジャターユか……」
ジャターユ。インドの神話であるラーマーヤナに登場する神鳥だ。
魔王ラーヴァナからシータ姫を守ろうとして応戦、必死の戦いにもかかわらず瀕死の重傷を受けてしまう。
ラーマーヤナの主役であるラーマ王子に姫がさらわれたことを告げ、息絶えてしまう役周りである。
だが、そういう忠勇なる鳥には見えない。
なんだか、とても獰猛に辺りを睥睨しているようだった。
「ジャターユは本来の神話では忠勇熱い存在だ。 あれはただの巨大な怪鳥にしか見えないな」
「あいつもそうだけど、魔界に来ておかしくなる悪魔って、ある程度の数いるんだって」
「おかしくなる?」
「ここって色々な良くない心が流れ込んでるんだよ。 それで、とても立派な心を持っていたのが、あっという間におかしくなったりするんだって。 前におじいちゃんの亀の悪魔に聞いたんだ。 気をつけないと危ないぞって」
こんな大きかったと、亀の悪魔についてジェスチャーで示してくれるアマノザコ。
それは良いが、ジャターユはまずいな。
魔王ラーヴァナはラーマーヤナに登場する羅刹の王であり、ラーマ王子と羅刹の戦いの物語における最終的な敵である。
ラーマーヤナに登場する羅刹の中では、彼の息子であるメーガナーダ、通称インドラジットの方が実力が明確に上だが。それでもほとんど不死身に近い体を持ち、ジャターユとの戦いでも凄まじい再生力を見せていたはず。
逆に言うと、ジャターユはそんな相手とも、ある程度戦えるほどの力を持っているということだ。
無言で相手の飛行ルートを見極める。
地上を行く悪魔達も、気をつけてその視界に入らないように努めているようだ。首都高の残骸に上がっていた悪魔達も、ジャターユを見て即時に逃げ散っている。幸いと言うべきか、ジャターユは余程気にくわない相手以外は襲わないようで、悠々と飛んでいる。ただ、あれを先に知ることが出来て良かった。
周囲を確認して回る。
比較的新しい人間の痕跡を見つけた。服だ。引き裂かれている。血などはついていないが、見た感じこれは。
この服を着ていた人が。ここで殺されたのだろう。
トンネルから煌が落ちたようにして。
魔界に落ちる人はある程度いるということだ。
日本では毎年かなりの数の人間が行方不明になる。その中で事件性がある行方不明は実際にはごくわずかだという話だが。
この人は、そのわずかの外れくじを引いてしまったのだろう。
煌だって、アオガミさんと合一しなければ、こうなっていた。
走り書きを見つけた。
訳が分からない化け物がたくさんいる。警察署に逃げ込んだのに、其処も化け物だらけだった。
足を食いちぎられてもう意識が遠い。畜生。やっとまともな会社に入れたのに。それで運を使い切っちまったのかな。
その後は、名前を書こうとした途中で文字が途切れていた。意識朦朧としているところを悪魔に殺されたのか。それとも力尽きてしまったのかは分からない。
ただ、はっきりしているのは。やはり魔界で力尽きると、痕跡は残らないようだ。少なくとも人体は。
衣服などの遺品は回収しておく。
これはギュスターヴには渡さない。戻ることが出来たら、何かしらの形で警察に届けるつもりだ。
行方不明者となっているのなら、せめて遺族には届けたい。
ユヅルと相談しに行く。仮眠から覚めたばかりのユヅルは、見過ごせない話だと言った。一方で、ヨーコは放っておきなさいと言う。
ただ、これには理由がなければ、である。
「魔界に時々人間が落ちているなら、特に土地勘のある人間なら警察署に向かう可能性が高い。 人間に敵対的な悪魔の巣になっている可能性が高く、背後を突かれないためにも其処は叩いておくべきだ」
「僕も同感だな。 魔界を歩いてみて、驚いた事は思ったよりずっと敵対的な悪魔は少ないということだ。 逆に敵対的な悪魔は話が通じない相手も多い。 しかも奴らは人間を襲って成功体験を得ている可能性がある。 もしも何かしらの理由で感づかれたら、どこまでも追ってきて、奇襲を狙ってくる可能性も高い」
「叩かれる前に叩くと言う訳ね。 そういう理由なら賛成だわ」
好戦的だな。
ヨーコは理屈で説明すると、きちんと乗ってくれる。この辺り、会話がそもそも成立しない手合いよりもずっといい。
ただしやはりどこかに危険な考えを持っているとしか思えない。
とりあえず、ツバメさんにも来て貰う。ある程度近くにいた方が、いざという時は対処しやすい。
この人は殺しても死ななさそうだけれども。
それでも、こんなところでは、人間はそれこそあっという間に死ぬのだ。
神谷町近辺にも警察署はある。
其処のビルは比較的無事だったが、だからこそ悪魔の巣窟になったのだろう。打ち合わせてからユヅルが近づくと、さっそくわらわらと悪魔が出てきた。空からも、多数が襲いかかってくる。
「人間だ!」
「俺は腕を貰うぞ!」
「あたしは足!」
「脳みそはわしが貰うからな!」
口々に言いながら、雑多な悪魔が襲いかかってくる。空からも急降下爆撃を仕掛けてくるが。
その空からの攻撃をしてきた鳥や翼を持つ悪魔達が、片っ端からたたき落とされる。
空に向けて多数のつぶてを放っているのは、ユヅルの手持ちの悪魔「天狗礫」である。日本の妖怪で、つぶてがどこからともなく飛んでくる事をこう呼んだ。ちなみに狐の姿をしている。狐の妖怪だとされている事もあるからだ。
天狗礫の速射は凄まじく、人間が抵抗してくるとは思わなかっただろう悪魔がばたばたと落ちてくる。
更に煌も眷属を展開。
新しく作った眷属は、古空穂(ふるうつぼ)。付喪神と呼ばれる器物が長い間使われて意志を持つに至った妖怪の一種で、一説には九尾の狐を撃ち取った弓矢が妖怪化したものとも言われる。
弓矢の権化と言うこともあり、しかも和弓。それも九尾の狐を撃ち取った逸話があるほどのものだ。姿はまんま、弓に手足と目がついているだけのものである。
バツンとものすごい射撃音とともに、串刺しになった鳥の悪魔が消し飛ぶ。更には、空に向けてアプサラスが氷の錐を飛ばし、次々と飛来する鳥の悪魔をたたき落とした。
前衛では煌が暴れ回り、更にはユヅルの鬼と煌のトロールも豪腕を振るう。
人間を簡単に狩れると悪しき成功体験を積んでいただろう様々な姿をした悪魔だが、たいした奴はいない。見る間に打ち砕かれ、叩き潰され。手刀に切り裂かれて、吹き飛ぶ。
不意に、強い気配。
飛び退いたところに襲いかかってきたのは、身の丈四メートルはある巨体だった。恐らくはここのボスだろう。人型だが、顔には目が複数縦に並んでいて、口が凄まじい乱ぐいだ。雰囲気からして鬼の一種なのだろうが、ちょっと具体的には分からない。そしてそいつは、流ちょうに喋った。
「どこかの神か。 デビルサマナーがいるって事は、そいつの使役悪魔か?」
「デビルサマナーを知っているんだな」
「ああ、アッシャー界じゃ散々追い回されたんでな。 この魔界は時々人間が落ちてくるし、たいした奴もいないしで、心地がいい。 というわけで、とっととおっ死んでくれや!」
拳を振り下ろしてくる巨大鬼。
ユヅルの鬼とトロールが息を合わせて拳を受け止めるが、数メートルまとめて吹っ飛ばされる。
其処にすっと割り込むと、手刀で斬りかかるが、驚くほど素早く回避し、更にはカウンターで空を抉るような蹴りを入れてくる。
髪を散らされながら跳び下がる。
手元に巨大な金棒を出現させた巨大鬼が、かあっと叫びながら、礫を生じさせて、飛ばしてくる。
それを防いだのは、ヨーコの札だった。
爆発で、一抱えもある礫を粉々にして、巨大鬼の視界を塞ぐ。ちっと舌打ちした巨大鬼の左からユヅルの雷の獣が、右から煌が仕掛ける。
だが、巨大鬼は機敏に動くと、雷の獣を地面にたたきつけ、更には振り返りつつ金棒を振るってくる。
一瞬かがむのが遅れていたら、首を飛ばされていた。
「この金童子、腐っても酒呑童子四天王の一角よ! そこそこの神のようだが、簡単に勝てると思ってくれるなよ!」
「わっ!」
「!?」
完璧なタイミングで、脅かすだけの妖怪が相手の耳元で叫ぶ。それで完全に体勢を崩した金童子という大鬼のアキレス腱を、一刀に抉り通り抜ける。文字通りの鬼の泣き所だ。アキレス腱を切り裂かれて倒れない人型なんていない。
横転した金童子が、畜生と叫びながら、なんとか這って逃げようとするが。
その全身を、巨大な水球が包んでいた。
マーメイドが長時間詠唱して作り上げた水の檻だ。更に煌が最大火力の雷撃を其処にたたき込む。雷撃が余すことなく金童子の全身を蹂躙し、一瞬でローストに焼き上げていた。
巨体が破裂して、そして消えていく。
記憶を取り込む。
此奴が殺したらしい人間は四人。一人は先に見かけた遺品の主だろう。他の三人は、悪魔達にこの辺りでバラバラに食いちぎられてしまったようだ。それを明らかに此奴は楽しみながらやっていた。
無言で被害者達に黙祷する。先に衣服の残骸を回収した人以外は、これでは遺品もないだろう。
警察署の影。こわごわとこちらを覗いていた小柄な悪魔の背後に、いつの間にかヨーコが立っていた。それに気づいて、飛び上がる悪魔。何度か見かけたが、いわゆるおんぶおばけ。オバリヨンという種族だ。赤い肌のおかっぱ髪の、昔の田舎の子供みたいな容姿をしている。
土下座して命乞いをする悪魔から、情報を聞き出すことにする。
どうやら金童子一派は、この辺りの荒くれの集まりで、他の悪魔達も暴力を振るわれたりと迷惑していたらしい。
鳥の悪魔の一部も従えていて、それもあって多くの悪魔が奴隷同然に使われていたので。金童子が倒されて助かったと何度も言われた。
金童子の記憶を見る限り、嘘ではないようだ。オバリヨンも嘘が通じる相手ではないことは、ヨーコの目を見て理解したのかも知れない。
とりあえず質問だ。
「この辺りで天使を見ていないか」
「た、助けてくれるなら……言うよ」
「交渉なんて出来る立場だと思っているのかしら?」
「ヨーコさん。 大丈夫だ。 嘘をつける精神状態じゃない」
軽く煌からたしなめておく。
こうやって味方になってやった方が口がなめらかになりやすい。それに、これでだましに掛かってくるようなら斬るだけだ。
煌の目を見て、甘い相手ではないと理解したのだろう。オバリヨンはこわごわとしゃべり始める。
「あのへん……人間の道路?だかが途切れている辺りで、前は良く群れになって見張りをしていたよ。 でも最近、あの辺りにいたのがまとめて悪魔に殺されたんだ」
「天使を殺したのはどんな悪魔だった」
「色っぽい人間の大人の女性型で、こんな風にお胸はおっきかったし、足とか網みたいなの履いてて、お尻とかをすっごい出してたよ。 全体的に黒と白で、なんだか最近風の服装だった」
オバリヨンが胸や尻の辺りをなぞってみせる。子供らしい強調の仕方だ。なんだか刺激的な服装をしているようだ。いずれにしてもそうすると、土蜘蛛が言っていた情報と半分一致する。だがそうなると、中華風の服を着た女悪魔も天使と敵対しているのだろうか。可能性はある。そして敵対する可能性を常に考えなければならない。
とりあえず、人間を襲わないことを約束させて、オバリヨンを解放する。手を振って、ありがとうと言ってオバリヨンは去って行った。
天使の味方をするつもりはない。
ユヅルの話を聞く限り、かなり強権的に振る舞っているようであるし。
ただ、それでも魔界に落ちたもう一人の生徒。途中でユヅルに聞いたところに寄ると太宰という名前である可能性が高いようだが。その生徒が天使に保護されているのであれば、ある程度協力がいる。
それにだ。敵対的な悪魔が無数にいる地点では、魔界に落ちた人がどうなるかは見たばかりだ。
自己責任論を無責任に口にするつもりは煌にはない。自己責任は当然考えなければならない分野もあるが、何もかも全てを自己責任とする思想は一種の邪教だ。ましてやこんなところにいきなり放り出されて、それで死んだら自己責任なんていうのは、論外である。
ユヅルの話では、神すら倒すような人間もいるらしいが。少なくとも一般的な範囲の人間では、格闘家だろうが軍人だろうが、ここに落ちたらひとたまりもない。それが殺された場合でも自己責任だとするのはいくら何でも非道すぎる。
そういう意味で、ある程度の秩序は必要だ。
それについては、煌の中で既に考えが固まっていた。天使に味方するつもりもないが、人間に敵対的な悪魔は倒していくべきだろう。
「とりあえず天使がいた辺りを調べよう。 今の時点では、この魔界から脱出すること、生存者を無事に東京に連れ帰ることが最優先だ。 それには僕たち全員も含まれる。 魔界から出る手段を知っているらしい天使に会うのは、そういう意味で必要だろう」
「あまり天使と関わることに賛成は出来ないけれど、確かに魔界から出る情報は必要だわ」
「ま、あたしも賛成っすわ。 とりあえずゆっくりシャワー浴びたいっすからね」
ツバメさんもそんな風に言う。
この人はどう見ても助けられる側の人ではないのだが。まあ、それは今はいいとする。ともかく、何が起きたのかを確認しなければならないし。
それに。
たくさん鳥の悪魔が集まってきている。どれも雑魚ばかりだが、警察署を掌握していた金童子の死を、嗅ぎつけたようだった。
あれを片付けるのが先だ。
どうにかはなる。対空戦を準備すると同時に、一斉にドローンのスウォーム攻撃のように、鳥の悪魔が襲いかかってきていた。爪やくちばしに毒らしいのが見える。恐らくあれがアマノザコの言っていた毒の鳥だろう。
全てたたき落とす。それが、役に立つと煌は信じる。
魔界に落ちた人々の末路を此処で描写しておきます。
真VVでも、アンドラスに殺された人の話があったりと、まあ魔界に落ちたらどう考えてもまず助かりませんね。最初に天使に見つけて貰ったイチロウくんはとても運が良かったと言えます。