真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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ついにVVより登場した勢力、カディシュトゥ登場です。

トップバッターはナアマさん。原作だと若干リリス様とお色気系でキャラが被ってしまうので、本作ではポン枠になってもらいました。子供枠のアグラトさんと、怖い枠のエイシェトさんとで、これで役割を分担できますね!

本作のナアマさんは見かけは良くてもオツムがちょっと残念な子という感じです。

それでも悪魔は悪魔。凄まじい殺傷能力を持つことに代わりはありません。





3、女魔

おかしくなったという話のジャターユが、その場で力なく横たわっている。

 

それを踏みつけているのは、半浮遊している女性だった。一対の翼を持ち、まか顔の半分は髑髏をかたどった仮面に覆っている。

 

明らかに人間ではない。

 

そいつが、ジャターユを蹴り飛ばすと振り返っていた。

 

ジャターユは瀕死だ。

 

此奴がやったようだった。

 

高架の先。

 

また別方向に坂が続いている辺り。オバリヨンから天使が殺されたとまさに言われていた地点だ。

 

特徴も一致する。

 

全身を黒系統の服で固めているそれは、確かに黒白だ。肌はいわゆる透けるほどに白く、髪の毛は嫌みなほど豪華なブロンドだし。とにかく何というか、美的センスには優れているらしい。煌にはよく分からないが。

 

「人間3、それに……へえ。 ナホビノね。 既に一人は確認されているらしいけれど、もう一人出たってことは、事態が更に加速したようね」

 

「!」

 

「デビルサマナーに使役されているわけでもなさそう。 で、貴方は自分が為すべき事を理解しているのかしら?」

 

煌が自身を指さすと。

 

女性の悪魔は、妖艶な笑みをにんまりと浮かべた。

 

匂い立つような色気とはこれのことだが。煌としては、困り果てるばかりだ。

 

「すまないが、この姿になって時間があまり経っていないので、分からない事だらけなんだ」

 

「あら、そうだったの」

 

「それよりも、通してほしい。 天使と敵対している事は理解しているが、こちらとしては天使とは一度接触して、魔界から脱出したい」

 

「ふっ、ナホビノになったのに、まだ人間の世界に戻れると思っているの? 既にあなたは悪魔側の存在。 もう人間の世界なんかじゃやっていけないわよ」

 

けらけらと笑う女性悪魔。

 

嘲弄を受けて気分は悪いが、此奴が相当な実力者なのは一目で分かる。ジャターユがかなり強力な悪魔なのは、神話的にも明らかだ。

 

それを一蹴したとなると、かなり厳しい相手だろう。

 

「煌。 話が通じる相手ではない可能性が高い。 先からこの悪魔は、自分が言いたいことだけを言っている」

 

「それは分かっている」

 

女悪魔はこちらの四人を見定めるようにしていたが。

 

やがてふっと笑って、飛び退いていた。

 

「ま、敵対しないなら通してやろうかなと思ったけれど、考えが変わった。 ちょっとマガツヒが必要なのでね。 全部まとめて養分にさせて貰うわ」

 

「マガツヒ?」

 

「人間から出る精神エネルギーの事だ」

 

ユヅルが説明してくれる。いずれにしても、通してくれるつもりはないようだが。

 

さっと散開する。ツバメさんは、要領よく離れて、距離を取っているのが見えた。まああの人は、そうしなくても大丈夫なような気がしてならないが。

 

辺りが真っ暗になる。

 

いや、これは。

 

ヨーコが手札を展開して、守りを固めるのが見えた。

 

魔法とユヅルが言っていたか。

 

それも桁外れの奴だ。

 

強烈な揺れが頭に。

 

精神をかき乱される感じだ。そして、突き飛ばされ、吹っ飛ぶ。砂で受け身を取るが、しかし視界が定まらない。

 

ユヅルは手札を展開しているが、鬼が一瞬で爆ぜ散るのが見えた。

 

どうやら広域制圧が得意なようである。

 

顔を上げる。

 

眷属を展開。

 

だが、アプサラスが展開するやいなや溶けてしまった。まずいな。トロールを出すと、壁になってくれるが、長くは持ちそうにない。

 

「おで、壁になる! 急いでくれ」

 

「分かった!」

 

眷属の展開を続ける。古空穂を呼び出すと、そのまま矢を射かけさせる。矢をひょいと回避してみせる女性の悪魔だが。

 

一瞬だけ、押さえつけるような、頭を揺らす攻撃が緩和される。

 

その瞬間に、煌は雷撃をたたき込むが、それは素手ではじかれていた。

 

なるほどな。

 

トロールが片膝を突く中、古空穂が連続して矢を放つ。それを残像を作って回避しながら、ケラケラと笑う女性の悪魔だが。

 

その瞬間、クラウチングスタートの姿勢からダッシュを決めた煌が背後に回り込み。

 

文字通り、一刀両断に手刀をたたき込む。

 

それを見て、明確に顔色を変える女性の悪魔。

 

必死に飛び退いて、距離を取ろうとするが。

 

「わっ!」

 

「きゃあっ! な、何っ! 何!?」

 

脅かすだけの妖怪が、さっと離れる。ナアマは育ちが良いのか、なんだかかわいい悲鳴を上げていた。

 

距離を取りきれなかった女の悪魔に、回し蹴りをたたき込む。吹っ飛んだ女の悪魔は、岩にたたきつけられ、ずり下がってきた。

 

ユヅルが悪魔を展開。

 

天狗礫が、石を女の悪魔にものすごい勢いで投げつける。水平射撃というやつだ。女悪魔はそれを必死に跳躍して回避するが、その上から、水の塊がたたきつけられる。マーメイドによるものだ。

 

必死にそれをよけた女悪魔。

 

この様子からして、攻勢や面制圧には強いが、守りは駄目なタイプだな。明らかに回避が手慣れていなくて、慌てているのが分かる。

 

だが、それだとすると、どうしてガチンコに固執する。

 

「こ、このっ! よってたかって!」

 

「こちらだ」

 

「っ!」

 

速度は出るが、やはり格闘戦慣れはしていないようだな。

 

煌が既に背後に回っているのを見て、露骨に大慌てする女の悪魔。それでも自力が高いのだろう。女悪魔は数度の手刀を必死に回避するが、高速機動はそう出来ないようだ。

 

攻撃には回らせない。

 

あの頭を揺らす奴が、かなり危険な魔法であることはよく分かった。二度とやらせるものか。

 

古空穂と天狗礫による弾幕は続いており、トロールは既に限界とは言え、煌はまだ攻勢を続けてきている。

 

だが、油断はしない。

 

下がろうとする女の悪魔だが。

 

其処に、ユヅルの雷の悪魔が直撃。ぐうっと呻くと、動きが止まる。そして、斬りかかった煌は、反射的に飛び退いていた。

 

砂を吹っ飛ばしてそれが姿を見せる。

 

グラシャラボラスだった。

 

グラシャラボラスは、肩で息をついているナアマと煌の間に割って入る。威圧感が前より大きかった。前はほとんど本気ではなかったのだろう。

 

「遅いわよ……!」

 

「すまないな同志よ。 そして久しぶりだな青いナホビノ」

 

「グラシャラボラスか」

 

「俺はこの方の同志を今はしていてな。 簡単に倒されるわけにはいかないのだよ。 退くぞ同志ナアマ」

 

ナアマと言われた女の悪魔は、頭を振って恨めしそうにこちらを見る。

 

勝手なものだな。

 

話を聞く限り、人を苦しめて力を搾り取ろうとしていた可能性が高い。腕や足くらいへし折るつもりだっただろうし、もっと酷いこともしただろう。

 

何発か、弾幕が擦ったようである。

 

それが酷いことだとは思わない。

 

ナアマがやろうとしたことに比べれば、この程度、である。

 

「そこのナホビノ、名は」

 

「夏目煌」

 

「私は「カディシュトゥ」の一人、ナアマ。 覚えておきなさい。 あんたは私がぶっ潰すわ」

 

「今度人を僕の目の前で傷つけようとしたら、こちらこそ貴方を倒す」

 

まだ何か騒ごうとするナアマを、ひょいと背中に乗せると、グラシャラボラスが跳んで行った。

 

なにか捨て台詞をナアマが言っていたようだが、急速に遠ざかった事もあって正確には聞こえなかった。

 

強い、のは確かだが。

 

なんだかちょっとポンな空気を感じたのは気のせいだろうか。

 

ともかく、態勢を立て直すのが先だ。

 

頭がクラクラするのは事実。

 

それに、である。

 

呻いているジャターユ。

 

凶暴な鳥の魔に落ちたようだが。ピクシーから引き継いでいる回復の力……魔法を使う。

 

そうすると、多少楽になったようだった。

 

「ラーマ様? いや、違うな……この地の神か」

 

「貴方はこの辺りで無差別に見るもの全てを襲っていたんだ。 誇り高く魔王にさえ挑んだ貴方がどうして」

 

「……アッシャー界に出る時、体の構築がうまくいかなかったのだ。 18年前に起きた異変の後、アティルト界から一斉に神魔が地上に出た。 その時、あまりにもその奔流が凄まじかったから、体や心が壊れてしまった者は多かった。 もっと高位のものでもそれはいる。 もしも……わしのように壊れてしまったものを見たら、楽にしてやってほしい……」

 

煌が頷くと、安心したようにジャターユが消えていく。

 

ナアマにやられたのだろうが、肉弾戦が露骨に苦手だったナアマだ。恐らくは不意打ちで、一方的にやられたと見ていい。

 

気の毒だが、ジャターユも倒されるのは望んでいた。

 

情報を吸収する。

 

まだジャターユの方が煌よりだいぶ強いな。これでは眷属として具現化するのは厳しいか。ともかく、一度龍穴に戻って体勢を立て直す。

 

ジャターユが倒れたことで、この辺りの鳥の悪魔は、統制を失ったようだ。雑魚が少数で散らばって、既に秩序もない。

 

今までやりたい放題をされてきた悪魔が、逆に反撃に出ているようで。

 

空の脅威は、四半減したと見て良かった。

 

龍穴で回復した後、話をする。

 

「ここが神谷町だとすると、あの坂を登った先は恐らくは国会議事堂の近くに出るだろう。 或いはだが、その辺りで何か分かるかも知れない。 アマノザコ、何か知らないか」

 

「国会議事堂? 何それ」

 

「こういう建物だ」

 

ユヅルが描いてみせるが、びっくりするくらい絵心がなくて、煌は思わず二度見してしまった。

 

それを見て、ユヅルが咳払い。

 

そうか、完璧超人にもこんな弱点があったのか。

 

「ほ、他の美術は出来るぞ」

 

「代わりなさい」

 

ヨーコがさらさらと砂に描く。

 

こっちはこっちで個性的な絵だ。下手ではないが、なんというか玄人過ぎてちょっと分からない。

 

煌はあくまで画力は並。

 

だけれども、国会議事堂を正確に描けるかというとちょっと困る。

 

アマノザコが頭の上に?????と浮かべているのを見て、ちょっといたたまれなくなるが。

 

ツバメさんが、代わりに描いてくれた。

 

これはうまい。

 

文句なしのうまさで、確かに国会議事堂だと納得できる絵になっていた。

 

「どうっすか、アマノザコちゃん」

 

「あ、これこれ! 分かる! これね、前に見たけど、天使がいっぱいいた!」

 

「なるほどな。 だとすると、天使は国会議事堂を拠点にしていて、この辺りに斥候を出していたのだろう」

 

「天使がたくさんね。 反吐が出るわ」

 

相変わらずだなヨーコは。

 

だが、今は情報収集が先だと告げると、仕方がないと頷く。

 

後は黙々と移動する。

 

坂を上がっていくが、途中の地形がかなり歪んでいる。今までの地理関係からして、方向は間違っていないはずだが。

 

ただ、上に浮かんでいるミラーボールみたいな光は明らかに太陽ではないし。

 

何よりも、かなり激しく明滅が変わっている。

 

ずっと日中というとそうでもなく。

 

時々真っ暗になるようだ。

 

ひょいと脅かすだけの妖怪が、側に出て、見上げながら教えてくれる。

 

「煌ちゃん、あのね。 あれ、月と同じような役割してるんだよ」

 

「月?」

 

「うん。 まん丸になると悪魔が凶暴になって、逆になるとおとなしくなるの」

 

「ああ、魔術的な観点の月か」

 

古くから月は魔術と結びついて考えられることが多かった。

 

悪魔や魔法が存在するのだ。

 

月が本当にそういう役割を持っていてもおかしくはないだろう。

 

「そういえば、雑魚とやり合っている時、僕の悪魔も興奮状態に何度かなっていたな」

 

「君は大丈夫か」

 

「うーん、煌ちゃんの中だとあんまりそういうの感じないかな。 眷属になる前は、結構あったけど」

 

「分かった。 さっきも見事な活躍だった。 これからも頼むぞ」

 

頷くと、小さな女の子の姿をした脅かすだけの妖怪は消える。

 

この妖怪、名前が本当に分からないし。

 

名前を教えてほしいと言っても教えてくれないので、脅かすだけの妖怪としか言いようがない。

 

困ったものである。

 

曲がりくねった坂を行く。

 

途中で何度か悪魔と交戦するが、それほど強力なのはいない。洞窟があったが、其処には鬼が住み着いていた。

 

鬼は、こちらを見て、すごんだが。

 

煌の目を見て、しゅんとなる。

 

「な、なんだよおまえ。 どっかの神か? やりづれえな……」

 

「この辺りのこういう建物を探しているんだ。 知らないか。 ツバメさん」

 

「あー、へいへい」

 

ツバメさんが砂にさらさらと描く。

 

しかし本当にうまいな。

 

フリーライターを名乗っているこの人だが、それは大嘘だろうとしても、絵心は確かである。

 

鬼はそれをみて、それなと声を上げていた。

 

「天使どもがいっぱいいる場所だな。 なんだよ、それだったら、あの辺りの山が見えるだろ。 その先をちょっとこう、下りながら行ったところだ。 だけどよ、天使どもが見かけ次第襲ってくるから危ねえぜ」

 

「ありがとう。 助かったよ」

 

「お、俺、役に立てたか?」

 

「とりあえず見てから判断するが、とても参考になった」

 

そういうと、鬼は申し訳なさそうにする。

 

なんでも他の奴の役に立ちたいと思っていたのだけれど、やることなすことうまくいかなくて、困っていたらしい。

 

そもそも地獄でも仕事が出来る方ではなくて、周りからぐずって言われていたんだと悲しそうに言うので、煌も気持ちが分かる。

 

煌もアオガミさんと合一していなければ、出来る事なんてほとんどないのだから。

 

「なあ、あんたどっかの神さんだろ。 眷属になったら、何か助けになれるか」

 

「ああ、心強い」

 

「分かった。眷属になる。 俺が直に案内するよ。 鬼としては俺は弱い方だけど、それくらいは役に立てる」

 

契約書を書いて、それに印を押して貰う。

 

鬼は手形を契約書に押して、それで契約書が真っ赤になってしまった。手がちょっと大きすぎる。

 

少し困惑したが、まあやり方を間違えているだけで、悪い奴ではなさそうである。戦力が増えたのは歓迎だ。

 

移動再開。

 

途中で鬼が言った。

 

「最近物騒なんだ。 堕天使の連中が集まって、なんか悪さ企んでたみたいなんだよ。 あの山の辺りで」

 

「堕天使か……」

 

「そうそう。 その国会議事堂だかを襲うつもりだったらしい。 でもな、なんだかぴたっと静かになって。 それで様子を見に行ったら、一人残らずやられちまってて。 俺もびっくりして逃げてきたんだ」

 

「……」

 

堕天使となると、決して弱い存在ではないはず。

 

あのグラシャラボラスも堕天使になるはずで、あれ以上のがわんさかいた可能性もある。それらを一蹴したとなると、ちょっとしゃれにならない。

 

ユヅルが鬼を出す。

 

そうすると、煌の眷属の鬼は、知っているようだった。

 

「あ、先輩じゃないっすか!」

 

「久しぶりだな。 焦熱地獄で会って以来だな」

 

「へい。 先輩はどうしてこっちに」

 

「色々あってな。 それよりおまえ、その堕天使を殺った連中は見たのか」

 

ちらっとだけと、煌の鬼が言う。

 

いや、わかりにくいか。

 

ユヅルのを先輩鬼、煌のを後輩鬼と呼ぼう。後輩鬼は、説明をしてくれた。

 

なんでも二人組で、一人は人間の警官の服を着ていた。もう一人は、女で、昔の中華風の赤い服を着ていたそうである。

 

それは、土蜘蛛の言葉と一致している。

 

ほぼ間違いなく、ナアマと違う、天使を殺しまくっていたもう一人の女性悪魔だろう。

 

ただ、天使だけではなく堕天使も手に掛けるのか。

 

ちょっと立ち位置が分からない。

 

「その警官姿の男性はデビルサマナーなのか」

 

「いや、なんとも。 ただ人間というには気配に無理があったっすねえ」

 

「……デビルサマナーなら、悪魔退治という観点で堕天使を退治して回るのは分かる。 しかしこの状況で無差別に悪魔を倒して回っているのだとすると、色々と妙だな」

 

「そうね。 余程の暇人なのかも知れないわね。 酔狂でもない限り、やっていられないわ。 命の危険もあるでしょうに」

 

ヨーコが皮肉交じりに言う。

 

ともかく、見えてきた。

 

国会議事堂だ。

 

シェルターの機能もあると聞いていたが、ほとんど壊れていない。形は完全に元のままだ。

 

砂にかなり埋もれてしまっているが。それはそれとして建物としての機能は満たしていそうである。

 

ただ、だ。

 

肝心の天使の姿がない。

 

「ユヅル、これは何かあったのではないか」

 

「そうだな。 多数の天使がいたというのなら、それなりの守りを固めている筈だが」

 

「ねえねえ、こっちみて!」

 

アマノザコが手を振ってくる。

 

国会議事堂近く。

 

いくつかの、大きな戦闘跡があった。

 

どれもこれも、人間がやったとは思えない。大型の爆弾でもたたき込まれたか、それとも。

 

強力な悪魔が暴れたのか。

 

生存者を探してみる。

 

ヨーコが出てきなさいと一喝。そうすると、隠れていたらしい、小さな悪魔が出てくる。

 

狐の悪魔だ。二足で歩いているが。

 

ぶるぶると震えていて、明らかに恐怖の視線がこもっていた。

 

「た、助けて! 殺さないで!」

 

「君は?」

 

「ぼ、僕はチロンヌプ! アイヌの狐の神だよ!」

 

アイヌ神話か。

 

アイヌの神々は、動物を神格化したものなどもあり、一種のアミニズムである。原始的な信仰形態だが、その代わり素朴で、自然とともにあることを強く意識している強みがある。

 

狐は日本では神格化されることも妖怪化されることも多い。

 

アイヌでもそれは同じだが。

 

基本的に狡猾な存在として扱われることも多い。日本で最も信仰される稲荷神、ウカノミタマのように豊穣神として扱われることもあるが。

 

そういう意味で、日本では狐の神魔は珍しくはない。

 

「もうなんでも見境なしに、人間と女の悪魔が、片っ端から殺したんだ! 僕のお父さんとお母さんも、困ってこの辺りで天使の監視を受けながら細々と生きていた悪魔も! 酷い、こんなの酷いよ! 僕、人に迷惑なんて掛けてないよ!」

 

「分かった。 とにかく僕の眷属になるんだ。 僕が生きている間は安全だから」

 

こくこくと頷くと、泣いていたチロンヌプは眷属の契約を受け入れる。

 

ちょっと調べると、やはりかなり狡猾な設定を持つ存在のようだが。これはまだ子供だ。隠れていなければ、容赦なく殺された可能性が高いと思うと、少し苛立ちが募る。

 

それに、そんな輩なら。

 

ここにかくまわれている可能性がある人間も、危険な目に遭っている可能性が極めて高い。

 

可能性を重ねて考えなければならないのは色々問題だ。仮説に仮説を重ねていると、どんな天才でもおかしな結論に最終的には行き着いてしまうからだ。

 

それでも今は急ぐ必要がある。多数の人命に関わるからだ。

 

「煌、国会議事堂の内部には、先のナアマやヒュドラ、パズズを遙かに超える力の気配がある。 出来れば戦闘を避けることを推奨する。 だが、煌は行くつもりだろう」

 

「ああ。 魔界に人がたびたび落ちてきていたのは確かだ。 もしかくまわれている人がいるのであれば、害させる訳にはいかない。 天使のためじゃない」

 

「分かった。 全力で私がサポートしよう。 だが最悪の場合は、自身の生存を最優先することを推奨する」

 

「……できるだけ頑張ってみる」

 

情報を共有。

 

警官の服と聞いて、目を細めたツバメさん。

 

なんだか嫌な予感がするが、ともかく。行くしかない。

 

アマノザコが、ちょっと距離を取った。

 

「やばいやばいよ! すっごいやばい気配! 尋常じゃないよ! あの中、本当に行くつもり?」

 

「ああ」

 

「あたしはちょっとパース! ごめん、生きてたらまた会おう! 警告しておくよ! あんなところ行くの、正気じゃないよ!」

 

「分かっている。 だが、それでもいかなければならない。 行くなら行くと良い。 追わないし、離脱する判断は正しいとも思う」

 

アマノザコが、手を振って離れていく。それを追うつもりはない。むしろ、賢明な判断だと考えた。ユヅルもアマノザコを責めなかった。ヨーコは興味すらないようだった。

 

国会議事堂の近くまで行く。

 

音が聞こえてきている。

 

戦闘音だなこれは。

 

どうやら、内部ではまだ戦闘が行われているようだ。

 

話を聞く限り、攻撃側の勢力はたった二人。人間一人と悪魔一体のようだが。ただ、ユヅルが言うように、神すら倒す人間すらこの世界にはいると聞いている。だとすると、とてもではないが侮れない。

 

入り口付近には、大きな傷があった。

 

これは、切り傷か。

 

人間がこんな傷をつけられるのか。それともつれているという女悪魔によるものか。倒れている、赤い鎧姿の天使。

 

アオガミさんの記憶で見た。

 

中級三位パワーだ。一目で分かる。瀕死である。

 

「に、逃げろ……。 人の子よ、あれは戦ってはいけない相手だ」

 

「眷属になってくれるか、それなら助かる」

 

「……わ、私は何も守れなかったふがいない存在だ。 それでも……いいのなら」

 

「構わない」

 

眷属として取り込む。

 

契約書に急いで同意させた。それで、記憶が流れ込んでくるが。

 

荒れ狂っているのは、確かに警官姿の男性。ただ、なんだ。瞳が黄金に輝いている。これは、鏡で見た今のアオガミと合一した煌と同じ。

 

そしてもう一体の女悪魔だが。

 

確かに赤い……かなり古い中華風の服を着た、色っぽい女性悪魔だ。二人の戦闘力は凄まじく、高位の天使もいるだろう軍勢を、真正面から蹴散らして回っている。この中級三位パワーも、組織的に攻めかかったのだが。まとめて仲間もろとも叩き切られたようだ。助かったのは、単に陣列の一番外側にいたという偶然が原因に過ぎない。そしてとどめを刺されなかったのは、放っておいても死ぬからに他ならない。

 

恐ろしいほどクレバーに動いている相手だ。

 

動きも非常に無駄がなく、戦闘の記憶を再生する限り、これはちょっと勝ち目がないかも知れない。

 

だが、内部で戦闘が続いているのであれば、相手の戦力を分散できる可能性がある。

 

相手が何をもくろんでいるか分からないが、ここを仮に完全破壊でもされたら、東京に戻る術どころかヒントも失われる。

 

扉の脇に張り付く。

 

煌は右側に。左側にはユヅル。

 

ツバメさんには、少し下がっていて貰う。少し考えて、煌の側にヨーコには来て貰った。これは、純粋な支援型として判断したからだ。あくまで、今までの手札を見る限りだが。単純な肉弾戦能力だったら、現時点では煌の方がユヅルより高い。ユヅルの手札を見る限り、総合力でも少し上だが。まだユヅルも切り札を隠している可能性はあるし、今の時点ではこの配置で良いはずだ。

 

ハンドサインを確認。

 

簡単なものだけだが。

 

連携戦をする時には必須だ。これがどうしても分かってきたので、先に決めたのだ。まだ綺麗に連携は出来ていないが、それでもやっておくべき事はやっておく。

 

鬼先輩後輩に、扉を開けさせる。

 

国会議事堂入り口にこんな扉があったか。

 

いや、後付けかも知れない。

 

ともかく開くと、内部から凄まじい死の気配がした。

 

しかも真新しい。

 

踏み込むと、文字通り其処は地獄絵図だ。

 

折り重なるようにして、数百は天使が死んでいる。そして、死んだ悪魔がそうなるように、今消えゆこうとしていた。

 

正面にある階段を、話に聞いていた赤い中華風の衣服を着た女悪魔が降りてくる。額に冠のようなものをつけている事からして、相当な高位の悪魔だろう。これを人間とたった二人でやったのなら。

 

今まで戦った悪魔なんか、子猫以下の存在だろう。

 

「ベテルの援軍か? それにしては人間が多いのう」

 

優雅にモデルっぽく歩きながら階段を降りてくる女悪魔は、側にて呻いていた天使を手ではじく。

 

それだけで瀕死の天使は消し飛んでいた。

 

階段を降りてくるまで、威圧感が凄まじすぎて、身動き一つ出来なかった。

 

ユヅルも声一つあげない。

 

まずい。

 

間近で見ると、とんでもない。

 

アマノザコが逃げるのも納得だ。

 

だが、それでもここにいる人間がどうなったかは確認しないと。

 

悪魔は死んでもアティルト界とやらに戻るだけだというのは分かっている。そこから三次元世界であるアッシャー界に戻るのは大変らしいのだが。それでも死んでも人間と違って取り返しはつく。

 

だが、人間はそうではないのだ。

 

「小僧、名乗れ。 貴様、ナホビノであろう」

 

「……夏目煌。 後ろの二人は、それぞれ敦田ユヅル、尋峯ヨーコだ」

 

「もう一人いたようだが、まあそれはいい。 わらわはジョカ。 人間を作り出しし神の一柱である」

 

「っ!」

 

なるほど、それなら納得だ。

 

ジョカ。

 

中華神話における創造神の一人。配偶神である伏羲とともに、世界を創造した文字通りの最高位神格だ。

 

基本的に両者ともに典型的な蛇の神で、時に絡み合う蛇のように描かれる事がある存在である。

 

「皇帝」という言葉の元になった「三皇五帝」の一角とされており、あの「封神演義」などにも登場する存在だ。

 

これはまずい。

 

今まで見てきた神魔とは文字通り次元違いの存在だ。

 

だが、それでも聞かなければならない。

 

「「僕は」ベテルという組織については聞いているだけだ。 ここで魔界に落ちた人々が保護されたと聞いてきた。 人々はどうした」

 

「ここにいた人間は一人だけだったな。 奥でブルブルふるえておるよ。 他は恐らく、さっさと東京に戻されたのであろう。 わらわ達は神魔は皆殺しにするつもりではあるが、人間に手を掛けるつもりはない。 ただナホビノ。 そなたは少しばかり邪魔よのう。 力を見せて貰おうか?」

 

そう来たか。

 

煌は振り返らず、ユヅルとヨーコに言う。

 

「生存者の確認、安全確保を。 僕がジョカを引きつける」

 

「正気か!? 勝てる相手じゃないぞ!」

 

「なんとかしてみせる。 急いでくれ」

 

「分かった……!」

 

二人が散開する。

 

ジョカを仮に従えている存在だとすると、もう一人の人間の戦闘能力も非常に危険だ。それでもやらなければならない。

 

すっと手刀を作ると、ジョカは鼻で笑い。

 

今までの悪魔とは段違いの速度で、間合いを詰めてきたのだった。







※オランイカン

UMAです。半魚人系のUMAで、先の戦争時に東南アジアで兵士達が目撃したという話があります。

チュパカブラが悪魔として出てきているくらいなので、オランイカンも出してもいいかなと思って登場いただきました。


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