真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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※八雲ショウヘイ

原作におけるニュートラルヒーローです。昔メガテンではニュートラルが真エンドみたいな風潮がありましたが、近年ではそれが一転。ニュートラルが必ずしも真エンドとは限らず、もっとも酷い展開になることも珍しくありません。特に八雲ショウヘイはその過激な言動から、最初此奴がカオスヒーローではないのかと自分は勘違いしていました。カオスヒーローであるユヅルくんが本当に立派な子なので、余計に差が目立ちますね。

実際Vの時点では八雲の人気は散々だったようで、VVでかなりフォローが入りました。様々なイベントが追加され、彼がこうなった理由や、人を助けるシーンなどもあります。

いずれにしても本作では、ベテル日本支部からさえサーチ&デストロイを掛けられている超おたずね者です。まあ、当然ですね……





偽りの奇跡
序、ジョカとの死闘


強い。今までの悪魔なんか、問題にならないくらいに。

 

それだけジョカは圧倒的だった。

 

完全に徒手空拳。それだけなのに、圧倒してくる。煌は魔法も眷属も総動員しているのに、正面から打ち砕いてくるストロングスタイル。

 

拳が繰り出されると、それだけで鬼が消し飛ばされていた。

 

トロールが一瞬食い止めるのがやっと。

 

それも致命傷を受けて、壁際で転がっている。

 

マーメイドが大量の水をたたきつけ、アプサラスがそれを凍らせる。ジョカを一瞬だけ閉じ込めたが、ぬるいと言わんばかりに内側から氷の檻がたたき壊される。

 

手刀は指二本で止められ、それどころか放り投げられた。

 

地面で受け身を取って飛び起きた瞬間には、眼前に抉るような蹴りが迫っている。必死にガードするが、吹っ飛ばされる。

 

まずい。

 

見る間に力が減っていく。

 

本当に今まで相手していた神魔なんて、雑魚も雑魚だったのだ。

 

それが思い知らされる圧倒的な実力だ。

 

ただの徒手空拳である。

 

しかもジョカは創造神の一角。

 

まだまだ魔法だのの搦め手は幾らでも持っているはず。これは恐らくだが、余技に過ぎないだろう。

 

「ナホビノとして目覚めたばかりとしては悪くない。 合一している神もかなりの強者とみた。 だが、時間があまりにも足りておらんな。 今のままでは、わらわでなくとも、いずれ天使どもに殺されていただろう」

 

「ぐっ……」

 

立ち上がる。

 

力を使い果たすと、そのまま死ぬ。

 

恐らくだが、魔界で殺された人たちのように、何も残らない。

 

それがなんとなくだが分かるのだ。

 

アオガミが警告してくる。

 

「煌、撤退を。 勝てる確率は限りなく0に近い」

 

「分かっています。 しかしこれは……」

 

「他人に構っている状態ではない。 生き延びるためには全て利用するくらいでかまわない。 それくらいでないと、この神からは逃れられない」

 

アオガミは淡々と言う。

 

恐ろしく冷静で、それが故に頭も冷える。

 

嘆息して立ち上がる。まだ戦うかと、ジョカが面白がった。

 

「なかなか今時の若者にしては根性があるな。 根性論をはき違えた馬鹿な連中やらはそれはそれで問題だが。 おまえのは根性というより、揺るぎなき信念、精神力に近いのう」

 

「そうか、それはありがとう」

 

「で、勝ち目はないが、死ぬか」

 

「……」

 

すっと印を切る。

 

やってみろと言わんばかりに、ジョカは見ているが。

 

次の瞬間。

 

脅かすだけの妖怪が、ジョカに奇襲を掛けていた。

 

「わっ!」

 

「ほう?」

 

流石にジョカは、今までの悪魔よりも反応が小さい。脅かし方が楽しそうだったから、だろうか。いや、それにしても妙だ。ただ、瞬く間の時間を稼げた。

 

その瞬間に、煌は雷撃をたたき込む。

 

だが、悪あがきだと言わんばかりに、ジョカはそれを素手で払いのけていた。次の瞬間、無事だったマーメイドが、ジョカを水で包む。

 

そして、その水が。

 

凍り付いていた。

 

恐らくアプサラスの影響で、水を凍らせる力を習得したのだ。だが、ジョカは鼻で笑う。すっと手を横に振るだけで、水の玉は砕け散っていた。

 

水風船が破裂するようにして。

 

「笑止笑止。 子供の遊びであるな。 衰えたりとはいえど創造神であるわらわに、このような児戯が通じると思うか」

 

「いいや、通じないだろうな。 時間を稼げばそれで良かった」

 

「!」

 

ジョカは気づいていただろうか。

 

奥での戦闘が、明らかにジョカと一緒にいた人間不利の方向で進んでいる事に。

 

形勢が逆転したのはついさっきのことだ。それはアオガミから教えて貰っていた。

 

立ち上がる。

 

煌はかなりギリギリだが、ジョカはほぼ消耗していない。

 

しかしながら、くすくすと余裕を込めて笑って見せた。

 

「まあ良い。 下がるとしようか」

 

ドガンと、奥。階段の上にあった扉が吹っ飛んで、そこから飛び出してくるのは。

 

警官姿の男性だ。

 

パワーの記憶にあった。

 

目が黄金に輝いていて、表情も何もない。

 

八雲というのか、あの男性は。

 

空中で体勢を立て直すと、ゆっくり降りてくる。

 

そして、八雲を追い詰めていたのは。

 

吹っ飛んだ扉の奥から出てくる。

 

それはいつもみたいなひょうひょうとした笑顔を浮かべた。ツバメさんだった。

 

 

 

天使をなぎ倒して、奥へ進もうとしていた八雲は、頭を抱えて震え上がっている高校生くらいの子供を見た。

 

手に掛けることはしない。

 

この後の時代を生き残れるかは、人間それぞれ自身が決めることだ。八雲が人間を殺す理由はない。

 

入り口付近はジョカに任せてきた。

 

ホールにある階段を上って、その奥の扉の先には通路がある。

 

元々の国会議事堂はこんな構造ではないが、魔界に落ちた後、ベテル本部が前線基地として改装したのだ。それは既につかんでいた。また、この一直線の通路は、迎撃のための縦深陣地ともなる。兵力さえいれば、かなり長い時間持ちこたえることも可能である。

 

こざかしい話だ。

 

残念ながら、既にベテル本部に往事の力も兵力もない。

 

だから、もはやその戦略は成立しないのだ。

 

この奥に、ベテル日本支部への入り口がある。天使の守りは流石に厚かったが、奇襲したこともあった。

 

厄介な高位大天使の姿はなく。たいしたこともない大天使がいたが斬った。

 

突破は出来そう、だったのだが。

 

「久しぶりだねショウヘイくーん」

 

「!」

 

その声は。

 

あまりにも自然に、唐突に、斜め後ろから聞こえていた。これでも周囲全てに気を張っていたのだが。

 

反射的に軍刀をふるって、一撃を受け止める。

 

重い。はじかれる。

 

着地して、顔を上げる。相変わらず緊張感のない狸みたいな顔。そして、その右手に握られているのは。

 

妖刀と呼ぶのも生やさしい呪いを纏った、人斬り包丁だった。

 

「十九代目……!」

 

「君が二十代目になれたかも知れないのにねえ。 あの事故に関しては、確かにベテルの連中が手際が悪かった。 明確な人災だ。 あたしももうちょっと早かったら、悲劇を食い止められたってのは、言い訳にしかならない。 だけどね、このとてつもなくややこしい状況で、散々っぱら色々引っかき回していい理由にはならないんだわ」

 

「黙れ。 悪魔も神も全て殺す。 それだけが俺の正義だと理解した。 それを防ぐというのであれば、たとえ貴方であっても斬る」

 

「こっちもサーチ&デストロイを指示されてきていてね。 ちょっとばかり、逃がすわけにはいかないんだよねえ。 君、やり過ぎたんだわ」

 

構えを取るが、ほとんどノータイムで切り込んでくる。

 

凄まじい太刀筋だが、これでも最強と謳われた13代目からすれば児戯に等しいと聞いている。

 

数合渡り合うが、かなり分が悪い。

 

十九代目……八咫烏の生き残りである数少ない一線級デビルサマナー。十九代目葛葉ライドウ。

 

それが、平塚ツバメの現在のもう一つの名だ。

 

本来は分家の人間で、十八代目が東京での大異変で八咫烏もろとも消し飛んでしまったのが理由で。生き残りである彼女が、十九代目を継いだらしい。

 

実力不足だと本人は普段から言っていたが。この力量、少なくとも一度見たことがある十八代目より遙か上だ。

 

すっと十九代目の左手に剣が出現する。

 

ギザギザのくぼみが突いているその剣を見て、思わず軍刀を退く。

 

あれはソードブレイカー。

 

剣を破壊することに特化した、かなり変わった剣である。

 

だが、退いた瞬間に間合いを詰められ、凄まじい浴びせ蹴りを食らっていた。重い。生体マグネタイトの量が尋常でなく多い。だからこそ、素の身体能力が下手な悪魔なんか問題にもならないほど高いのだ。

 

必死にガードして跳び下がるが。

 

二十メートルは吹っ飛ばされただろう。

 

十九代目は悪魔を使うが、それ以上に悪魔を武器として具現化させる。そして武芸十八般の凄まじい使い手だ。

 

これが合わさると、とんでもない破壊力を発揮する。

 

八咫烏の残党がベテル日本支部に合流した後、弱体化していたとはいえまだ生き残っていたガイア教団を壊滅させファントムソサエティを全滅させたが。

 

その原動力になったのが、十九代目だ。

 

この実力も納得である。

 

「腕が上がってるっすねえ。 君が二十代目になってくれたら、おねーさんも安心して今頃こたつでミカンを食べてられたのに」

 

「世迷い言を。 この状況で、そのようなことをしていられると本気で思っているのか。 創世の時が近づいているのだぞ」

 

「世界中の神魔が座を争う、か。 言いたいことは分からんでもないのだけれどね、そんな器じゃないんでね。 あたしは人間としてやるべき事をやる。 あんたはそのうち人をたくさん殺す。 その実存主義はサルトルなんかの思想を更に過激化させたものに近い。 そんなもんを現実に持ち込もうとしたら普通に生きているだけの人たちに迷惑なだけだし、実行する過程であんたはさんざっぱらただその日を頑張って生きているだけの人を殺す。 それはこっちとしても見逃せないんだわ」

 

間合いを詰めてくる。

 

流石に分が悪い。

 

軍刀に雷撃を纏わせて、振り抜く。だが、残像を抉っただけだ。

 

天井近くに躍り上がった十九代目が、武器を切り替え、拳銃を乱射してくる。軍刀をふるって、弾丸全部を防ぐ。

 

だが、その隙に、奥に回り込まれた。

 

十九代目を倒さないと、奥へ進むのは無理か。ならば、斬るのみ。昔の師であっても、関係ない。

 

必殺の気合いを込めようとした瞬間、雷撃がたたき込まれる。

 

背後からの一撃だ。

 

むっと呻いて、一瞬だけ見る。

 

あの頭を抱えてふるえていた男性学生をかばうようにして、まだ若造のデビルサマナーがいる。

 

そいつによる一撃だ。

 

次の瞬間、至近。

 

巨大なハンマーを振るった十九代目。完全に目は、殺意だけに染まっていた。

 

全力で防ぐ。

 

だが、完全に吹っ飛ばされて、一気に通路を押し戻され。扉をぶち抜いて、ホールに。空中で体勢を立て直す。

 

既に重力は八雲の敵ではなく、味方だった。

 

ゆっくり着地しつつ、呼吸を整える。ダメージは大きいが、致命傷じゃない。今度は見くびったのは十九代目の方だったようだ。

 

ただ、明らかにまだ相手の方が遙かに強い。そう冷静に八雲は分析していた。

 

最後にあった時、もう若くないよと笑っていた十九代目だが。実力は衰えるどころか、超現役だ。だからこそ惜しい。

 

人間の強さというのは、こういうものであろうに。

 

ホールに着地する。

 

ナホビノとやりあっていたジョカはほとんどダメージを受けていない。対してナホビノは満身創痍だ。

 

だが、これは戦略的撤退を選ぶべきだ。

 

ジョカと合一しても、今の時点では勝ちは五分五分。いや、五分を下回る。その上、相手には未熟とは言えデビルサマナーがまだいる。手負いとは言えナホビノも。

 

十九代目の戦力は想像以上だ。

 

ここで博打に出る理由はない。

 

「退くぞジョカ」

 

「この国にもまだやる者がおるではないか。 其方をこうも圧倒するとはのう。 こちらもこちらで、ナホビノの実力を測るのにかまけていたら、其方の不利に気づくのが遅れたわ」

 

「……」

 

ナホビノが回復の魔法を自身に使いながら、立ち上がる。

 

八雲をじっと見てくる。

 

不思議な目だ。

 

とても強い目の力。ほとんどの人間は、目をそらすだろう。意志の力、だろうか。だとしたら。

 

まあいい。今は、自身の道を行くだけだ。

 

「ナホビノ。 ベテル本部は貴様を生かしてはおかないだろう」

 

「夏目煌だ」

 

「……俺は八雲ショウヘイ。 全ての神魔を斬る者だ。 この世界から全ての神魔を斬り、人間だけの世界を作る。 そのためであったら、誰であろうと斬る。 昔の師匠であろうと、創世を行えるナホビノであろうとな」

 

十九代目が既に上にいる。

 

だが、ジョカと連携してなら、逃げ切る自信もある。

 

いずれにしても、十九代目と今本格的に交戦するのは悪手。ジョカに頷くと。ジョカが複数の土偶を出現させ。それらを爆裂させていた。

 

辺りが凄まじい煙幕に覆われる。

 

その瞬間、即座に空間転移を繰り返し、八雲はジョカもろとも、キルゾーンから脱出していた。

 

 

 

「無事だったっすか?」

 

階段を降りてくるツバメさん。

 

やっぱり戦えたのか。それも、ジョカと同等かそれ以上とも思えた相手を圧倒するレベルで。

 

困惑しているユヅルが後ろから来る。

 

ヨーコは、冷たい目でツバメさんを見ていた。

 

「どうにか。 ただ、少し回復はしておきたいですが」

 

「今の君なら死んでいないなら大丈夫っしょ。 あたしは忙しいんでちょっとここでバイバイっすね」

 

「……あの男とジョカを追うんですか」

 

「そういうこと。 あの男、あたしの昔の弟子でね。 本来だったら東京を守るデビルサマナーの組織八咫烏、その最大戦力である葛葉ライドウになる筈の男だったんすわ。 順当に行けば分家筋でつなぎの葛葉ライドウにすぎないあたしの跡を継ぐはずだったッスよ。 そうなっていたら、あの男、八雲ショウヘイが、二十代目葛葉ライドウになっていたっすけどねえ……」

 

寂しそうにいうツバメさん。

 

そうか。よく分からないが、この人はその葛葉ライドウとやらだったわけだ。それも十九代目であるらしい。

 

それがどういうものかはよく分からない。

 

ともかく、最初から、煌は監視されていたことは分かった。

 

「ついていってあげてフォローしても良かったっすけどね。 あたしはあの子をサーチ&デストロイの指示が出ていてねえ。 心苦しいけれど、それ優先。 回復した後、合一を解除してこの奥に。 東京に戻れるッスよ」

 

「最初からそれを知っていましたね」

 

「知っていたからこそ、君を見極める必要があった。 もしも君が人間に害を為すような存在だったら、斬らなければならなかった。 君は合格。 今時珍しいくらいの立派な青年。 だから、ユヅルくん。 後は君でフォローしてあげて」

 

「分かりました、先生」

 

そうか、ユヅルもこの人の。

 

最初微妙そうな顔をして。ツバメさんが色々言う度に苦虫をかみつぶしていた理由がよく分かった。

 

確かに知り合い、それもデビルサマナーとしての先生だったら、ああもなるだろう。しかも煌がだいたい内情を話しているのに、自分はそれを明かせなかったのだとしたら。真面目で高潔なユヅルは心苦しかったに違いない。

 

一瞬だけツバメさんがヨーコを見たが、それだけ。

 

その目がとても冷たかったのを、煌は気づいていた。

 

「そうそう、あたしの本名は平塚ツバメで、葛葉ライドウはあくまで仕事の名前なんで、それはよろしく。 また会えたら、その時は状況次第で助けてあげるっすよ」

 

「分かりました。 くれぐれもご無事で」

 

「……」

 

手をひらひらと振ると、ツバメさんは消える。

 

あの悟劫というお坊さんよりも早いかも知れない。

 

なるほど、ああいう人が神をも倒すほどの使い手、というわけだ。ユヅルの言うことも理解できた。

 

「今の僕たちでは束になっても勝てないな」

 

「ああ。 だがあの人でも勝てない神魔がいるんだ。 上を見ると際限がない」

 

「それよりも、ボロボロよ。 さっさと回復してきなさい」

 

ヨーコに釘を刺されたので、近くの龍穴まで行く。

 

蓄えていた魔石などで急場はしのいだが、眷属はほぼ全滅。要領よく生き残った脅かすだけの妖怪と、マーメイド以外は戦闘不能状態だった。

 

煌自身もダメージが大きくて、回復にはかなりマッカを取られた。これは仕方がないと自身に言い聞かせる。

 

ちなみにギュスターヴによると日本円をマッカに変えてもいいらしいが。

 

煌は別にそれほど豊富な資金を持っているわけではない。今の時点では、それは控えた方が良さそうだ。

 

ともかく回復を済ませた後、国会議事堂に。

 

何体かの天使は眷属として助けたが、ほとんど全滅だ。天使達の記憶によると、あまり有名ではない大天使が指揮を執っていたらしいが、あっという間にあの八雲ショウヘイに斬り伏せられてしまったらしい。

 

あの実力なら納得だ。

 

周囲を確認してから、合一を解除する。天使達は既におらず、残骸もなく。辺りはただ静まりかえっていた。傷ついて、劣化して。元とは形状も変わった国会議事堂の内部があるだけだった。

 

階段を歩いて上がり、奥の通路へ。ここも激しく傷ついている。柱の陰で、ぶるぶるふるえていた帽子の生徒。

 

声を掛ける。

 

「君は太宰か?」

 

「ひっ! ……あれ、おまえ、確か縄印の」

 

「僕を知っているのか」

 

「あ、ああ。 生半可な女より綺麗な顔だけど、目力が凄くて、なんかちょっと近寄りがたいって噂で。 俺は太宰イチロウ。 よろしくな……」

 

手を貸して立たせる。

 

太宰はかなり背が高くて、人間状態だと頭一つ上かも知れない。だが、なんとも卑屈で、目に自信がないのが一目で分かった。

 

ともかく無事に保護できたのは何よりだ。それに、こんなところで、生きていただけで偉い。死んでしまった人もいるのだ。不幸中の幸いだったと言えるだろう。

 

それに、ジョカが言っていた通り、激しく苛烈でも人間にあの二人は手を掛けなかった訳だ。

 

「な、なあ、ここは一体何なんだよ。 メシとトイレ以外はほとんど何も許してもらえなくて、あの天使だかいう奴らもおっかなくてよ。 それでいきなり戦いが始まって、それで……」

 

「まだ安全圏じゃない。 後で説明する」

 

「学級委員長……分かった。 そ、そうだよな……」

 

太宰はどうも至近での戦闘を見て失禁してしまっていたようだ。煌はヨーコからその様子を隠すと、付き添ってトイレに。それで、ユヅルから熱を使える悪魔を一体借りて、それで服を乾かして貰った。

 

情けねえよと涙を流す太宰。

 

あんな状態では仕方がないと言うと。煌は、意外と無事で、ちゃんと動いているトイレの外で待つ。

 

ここは恐らくだが、他にも保護された人々が使っていたのだろう。丁寧に掃除もされていた。

 

太宰は声を殺して泣いているようだった。

 

男が泣くのは恥だ。そういう言葉もあるが。

 

ストレス社会で壊れる人間だらけになっている今の時代。煌はそういうマッチョイズムに属するような言葉には、賛成できなかった。







※平塚ツバメ

この話で解説されたとおり、第十九代目葛葉ライドウこそ彼女です。ちなみにこの世界は「最強のライドウ」がいた、大正が二十年まで続いた世界線ではありませんが、それでも第十四代目は非常に強かったとこの世界でも認識されています。故に遠く及ばないと言われているわけですね。なお、ツバメさんの現在の年齢は32歳です。東京受胎の発生時14歳でした。

元々ツバメさんは東京に在住しない「名門」の遠縁にあたるデビルサマナーだったのですが、それが故に東京受胎による八咫烏壊滅の難を逃れました。この時代の八咫烏は腐敗していて、東京受胎に巻き込まれて文字通り消滅した十八代目の葛葉ライドウもたいした使い手ではなかったこともあって、むしろ越水さんは大喜びで「内輪での評判だけが足りていなかった」ツバメさんを抜擢。その後の凄まじいツバメさんの活躍で、日本のファントムソサエティの残存戦力を文字通り全滅させ、ガイア教団も壊滅に追い込んでいます。

ツバメさんは悪魔や術も駆使しますが、それ以上に合体剣の技術を独自に応用した悪魔を武器に変えて戦うデビルサマナーです。元々の生体マグネタイトが桁外れに多い上に、武芸十八般をおさめているので非常に強い。ただ、武器化した悪魔から武芸の力を受けているのも強さの秘密です。

ちなみに八雲が闇落ちする前第二十代目葛葉ライドウ候補だったのは本当です。年齢もあって長期的に強さを維持するのは難しいと考えていたツバメさんにとって、八雲は未来をつなぐ希望だったのですが。

愚かしい連中によって、その希望は絶たれてしまったのです。



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