真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
対ラフム戦です。
F35による空対空ミサイルの直撃という熱い歓迎を受けた上に、狙っているサホリさんを見失ったラフムはテンション爆下がり。悪魔は精神生命体なので、それは致命的です。
其処を見逃す煌くんではありませんでした。
ラフムというのは聞いたことがある。
本人も言っていた通り、バビロニア神話の怪物だ。バビロニア神話では、創造神であるティアマトを、嵐の神マルドゥークが打ち倒し、世界を作り上げたという伝承がある。そのティアマトとマルドゥークの戦いの際に。ティアマトが作り出したあまたの怪物の一体だ。
少なくともティアマトの走狗に過ぎず。
余などと自称するような地位ではないはずだが。
天使達が、一斉に光の力を使って、ラフムを焼く。悲鳴を上げて困惑するラフムに、大上段から手刀の一撃をたたき込む。
力を消耗はしているが。
同時に、大量の悪魔を倒してきて、そのマガツヒを吸収もした。
更に火力が上がっている。
刃は食い込み、一気に半ばまで切り下げ。
ラフムの顔面の半ばまで一気に引き裂き、膨大な黒い血が噴き出していた。いや、汚れた呪いの力か。
仮面の目にあたる部分から、蛇のような触手が伸び、辺りを滅多打ちにしてくる。それだけではなく、仮面の脇からも触手が生えてくる。更に連続して空間転移しつつ、邪魔な天使を狙い撃ちにしてきた。
天使が数体、触手になぎ払われて消し飛んだ。
だが、トロールがその触手の一本をつかむ。
「相手は水の神だ、水の攻撃は控えてくれ。 水の力は、支援に使ってくれ」
「分かりました」
マーメイドの冷静な声。
ラフムが喚き散らしながら、触手を振り回してくるが。それを立て続けに手刀ではじきつつ、煌は前に出る。
跳躍を、マーメイドの水がジャンプ台になって加速してくれる。
アプサラスは水から冷気に切り替えて、周囲を凍結させ、まだ生き残っている雑魚悪魔の介入を防ぐ。
突貫してくる煌を見て、ラフムが呪いの力を放とうとするが。
生き残っていたパワーが上空から、槍でのチャージを掛けていた。
仮面は亀の甲羅のように合わさっている構造で、その間に槍が突き刺さっていた。即座に飛び離れるパワー。
良い仕事をしてくれた。
ラフムがおのれと喚きながら、煌の一撃を、触手を束ねて防ぐ。
凄まじい火花が散るが。
次の瞬間、空間転移して、明確に逃げる。
「不意打ちとは卑劣な! どこの神格か知らないが、余は古代の神格であるぞ! 礼をわきまえよ!」
「所詮貴方はティアマト神が作り出した走狗の一体に過ぎない。 余などと、王のような一人称を使う立場にはいないはずだが」
「少しはものを知っているようだな! だが……むっ? 貴様、ナホビノか!? 半身の気配を感じたことといい、ナホビノに対するあの忌々しいYHVHの弾圧が弱まったのは事実のようだな」
喋っている間に、準備を進めている。
煌も手持ちをここ数日で増やしたのだ。
態勢を立て直そうとしているラフムだが、そうはさせるか。今縄印が襲われているようだが。
あんなところにこんな危険な悪魔を行かせたら、記録的な被害が出る。
それどころか、行く先にいる人間を片っ端から食い殺しかねない。
此奴はここで倒す。
眷属にした悪魔とは、それぞれと意思疎通が出来る。
一気に仕掛ける。
傷口からだらだらと黒い液体状の呪いを垂れ流しながら、ラフムは下品に笑った。高貴さなんて欠片もない。
「ハハハハハ、ナホビノだというならそれもいい! ちょうど腹も減っていたところだ! それに創世の邪魔にもなる! ここで食らってくれるわ!」
「うっせえ不細工仮面!」
背後から襲いかかった後輩鬼が、金棒で頭上から直撃を入れる。
だが、触手で的確に防いでみせるラフム。まあこの様子だと、目とか口とか関係なく、周囲を把握できているのだろう。
だが、それは。
想定済みだ。
がっと、凄まじい勢いでラフムの全身に矢が突き刺さる。
古空穂による一撃だ。古空穂も力が上がってきていて、スナイパーとして活動できるし。何より同時に三本以上の強矢を、ホーミングしながら放てるようになっていた。
そしてこれも陽動。
喚きながら、矢を払いのけるラフムだが。
本命が、頭上からラフムに襲いかかっていた。
ジャターユ。
忠勇熱い鳥の勇者。
鋭いかぎ爪をふるって、ラフムを一気に地面へとたたきつける。凄まじい悲鳴を上げたラフムがもがくが、トロールも後輩鬼も襲いかかって押さえつける。
ジャターユの具現化はかなり消耗が大きい。
煌は真っ正面から突貫し、麁正の構えに入る。触手を伸ばして、トロールと鬼を吹き飛ばし。
ラフムが無理矢理体を起こそうとするが、ジャターユが爪でつかんでいて離さない。ジャターユにどけと喚き散らして触手で打つが、ジャターユは絶対に離さない。その結果、さっき見せた空間転移も出来ないようだった。
「お、おのれ、地面に余が這いつくばらせられるとは、なんたる屈辱か!」
喚き散らすが、もはや滑稽でしかない。
そのまま、麁正連斬を連続してたたき込む。更に無事な天使達も、一斉に光の力をたたき込む。
それでも触手をふるって抵抗するラフムだが。
飛び退いた煌がクラウチングスタートの態勢を取ると、マーメイドとアプサラスが連携。
水で一気に押し出し。更に氷でその勢いを加速させる。
凄まじい勢いで突撃する煌を見て、ラフムがひっと明確に悲鳴を上げていた。
「ば、馬鹿な! 半身をみつけたと思った! 千年以上アッシャー界に出ず我慢してきた! それなのに、余の大望は報われぬというのか! あれだけの憎悪を放っていたのに、あっさり満たされるとはなんたる惰弱! こうなったら、無理矢理言うことを聞かせてやるだけだ!」
「他人を踏みにじる事を前提にしておいて何が大望だ。 半身が誰かは知らないが、悪魔だったら、せめて甘言と話術で相手を籠絡して見せたらどうだ。 美学も誇りもない輩が、良くも王を自称できるな」
「お、おのれ、おのれえええっ!」
手刀が光る。
今までにないほどアオガミと力の同調が出来ている。
必死に触手をふるって抵抗しようとするラフムだが。その耳元で、脅かすだけの妖怪が。実に楽しそうに脅かした。いや、耳元がどこかよく分からないが。耳元だったのだろう。
「わっ!」
「何っ!?」
ラフムが動きを止める。其処に、必殺の一撃が入る。
煌の一撃は、多分何かの神剣を擬似的に再現したものだ。
光となって、ラフムに突き刺さる。
そして、内側から、ラフムの呪いを焼き尽くしていく。それにラフムに対して、強烈な龍殺しという言葉が浮かぶ。
龍、か。
龍は蛇の系統の神々。
ティアマト神などは露骨だし、このラフムも明らかにその系統の神だ。もしも、龍に必殺の一撃を放てるのなら。
ラフムが情けない泣き言を垂れ流す。
「い、いやだ、こんなところで、消えたく……」
「神話でもそうだったが。 最後まで三下だったな。 滅びろラフム」
「ぴぎゃあああああああああっ!」
ラフムの仮面が砕けていく。中から本体らしい白い体が一瞬だけ逃げだそうとしたが、それも煌は間髪入れずに叩き切った。
光の中に、ラフムが消えていく。
悲鳴と泣き言など、それこそどうでも良かった。此奴は大量虐殺する気満々だったのだ。万死に値する。永久にアティルト界とやらで膝を抱えて泣いていれば良いのだ。
煌も眷属達もかなりやられた。だが、この戦果は大きい。
どうしてか、そういう気がした。
即座にアオガミが言う。
「煌、見事だった。 だが、縄印が危険だ。 すぐに向かうぞ」
「分かりました。 消耗がありますが、それでもやるしかないですね」
「ここは任されよ」
どこに隠れていたのか、悟劫がくる。
本当に戦いには参加してくれなかったな。
だが、仕事はしていたようだ。空間に生じていた巨大な亀裂が、消えて行っている。それだけで充分だ。
敵ではないが、味方でもないようだが。
それでも今は、これ以上の悪魔の侵入を防げればそれでいい。
辺りの死んだ悪魔の力を吸収する。これで少しはマシになるはずだ。
ラフムの情報も得た。
かなりノイズがあるが、何かしらのもっと高位の存在にそそのかされたようである。だとすると、此奴は最初から当て馬だったのだ。
本命は縄印かも知れない。
だが、縄印になぜ。
全寮制の高校という以外には、これといった特徴なんてない。一応スポーツではラクロス部が強いが、せいぜいそれくらいだ。
学業に関しても其処までの進学校ではないし。
別に良家の子息だのが通っている訳でもない。悪魔が狙うとしたら理由はなんだ。霊的云々だろうか。
それとも。
ラフムが半身を見つけたとか言っていたが。その後大混乱していた。それも少しばかり理由が気になる。
ともかく。今は急ぐしかない。
力を吸収して、それで最低限力は回復できた。後は、そのまま全力で縄印に向かう。途中、アオガミが連絡を入れてくれる。
「浄増寺の結界のほころびから現れた極めて強力な悪魔、邪神ラフムの撃破に成功。 結界のほころびも、現在修復を有志が進めてくれている」
「素晴らしい結果だ。 デビルサマナーが今数名、支援に向かう。 後始末は彼らに任せて、そのまま縄印に向かってくれ」
「了解。 全力で向かう。 他の被害は」
「縄印では、今敦田君らが奮戦中だ。 だがまだ生徒が死地に取り残されている。 できる限り助けたい」
早朝に来ていた生徒が主体となると、恐らくは部活関連だろう。煌は別に今日、普段より遅れて出てきたわけではなかったのだから。
心配なのはミヤズだ。
確か看護師になるために勉強をしていて、寮よりも学校の方が勉強をしやすいという理由から、早くから出ているはずだ。
ユヅルよりも早く出ている事も多いらしい。
巻き込まれている可能性もある。
浄増寺から飛び出すと、自衛隊員が敬礼をしているのが見えた。ラフムとの死闘を見ていたのかも知れない。
最初のF35による一撃が、かなりの有効打になった。
それに必死に体を張って雑魚悪魔を彼らが食い止めてくれていたのも事実だ。
煌も移動しながら、敬礼して。それで一気に走りゆく。
速度は時速100㎞は出ている。これ以上速度を上げると、接触事故などを起こす可能性がある。
あちこちに非常線が張られているようだ。
越水長官もあらゆる手管を尽くして、被害が減るようにしてくれている。だったら、煌もやるべき事をやるだけだ。
ユヅルにも連絡を入れる。
「浄増寺は片付いた。 そちらはどうだ」
「流石だな。 今、こちらでは悪魔の掃討中だが、手が足りない。 ミヤズをはじめとして、かなりの数の生徒が悪魔に連れて行かれたようだ。 どこに連れて行かれたか、悪魔を倒しながら……くそっ! 切るぞ!」
通信が切れた。
これは急いだ方が良さそうだな。
やはりミヤズが巻き込まれていた。
移動中に、可能な限り眷属を回復。魔石は使い切ってしまった。できるだけどこかで補給したいが。
縄印が見えてきた。
これは。縄印全土が魔界に落ちたかのようだ。少なくとも、これはもう人が入れないだろう。
浄増寺のほど酷くはないが、明らかに結界が緩んでいる。雑多な悪魔が湧いていて、自衛隊が必死にそれらを倒しているようだ。
着地。
自衛隊と一緒に、イチロウに教えていた老デビルサマナーが戦っていたが。
雑魚を倒すので精一杯のようだ。
「浄増寺は片付けました。 加勢します」
「助かる!」
そのまま、避難しようとする生徒とそれを護衛する自衛官に襲いかかろうとするマナナンガルを一刀両断にする。学校の内部からは銃声がひっきりなしに響いている。煌は即座に、ためらうことなく突貫。
目についた敵対的な悪魔は、即座に斬り伏せる。
眷属も展開。
まだやれそうなのは何体かいるが、この狭い場所ではトロールと鬼は出せないだろう。ジャターユを出すにはもう余力がない。マーメイドとアプサラスに出現してもらい。側に古空穂を配置する。そのまま倒れている生徒や自衛官は、ピクシーやアルラウネなどの雑多な悪魔達に運んで貰った。ピクシーも小さいが、人くらいは運べる。腕を食いちぎられた生徒が呻いている。流石に、回復する余裕はない。
飛びかかってきた悪魔を見る。
それが、札を浴びせられ。
爆散していた。
階段を降りてきたのはヨーコだ。
「あら、ヒーローの参上ね」
「今は一秒が惜しい。 ユヅル達は」
「今ユズルくんと磯野上さんは三階で戦闘中よ。 イチロウくんは一階と二階で、雑魚の掃討に走り回っているわね」
「分かった。 雑魚を掃討しつつ、合流して生存者を救出する」
ヨーコと連携して、辺りの悪魔を片っ端から叩く。
デビルサマナーも何人かいたが、質があからさまに低い。防戦一方のようだ。それらも加勢して、助けていく。
羅刹を相手に腰が引けてしまっているそこそこの年齢のデビルサマナー。
才能の世界だというのは分かる。
羅刹はかなり強い悪魔だろう。
だが、それでも必死に後ろにいる生徒を守っている。見捨てるわけにはいかない。
突進して、羅刹を斬り伏せに掛かるが。
その瞬間、倒れていた生徒に、ヨーコが札をたたきつけていた。生徒が凄まじい悲鳴を上げると、醜悪ななんだかよく分からない悪魔に変じていく。爆散。
擬態していたのか。
爆発から、デビルサマナーを守りつつ、羅刹の一撃を防ぐ。羅刹が次の瞬間、マーメイドの放った水で呼吸を塞がれ。
更にはアプサラスの放った氷の錐と、古空穂の矢を受けて、倒れていた。
「はあ、はあっ! 助かった!」
「生存者がまだたくさんいます。 ここから先は任せて下がってください。 前線は僕が押し上げます」
「凄まじいなナホビノは。 俺もそれなりの年月、各地で悪魔と戦ってきたのにな」
口惜しそうに、ベテランのデビルサマナーが下がっていく。
悪魔。
だが、手を振っている様子は、敵対的ではない。
雪だるまみたいな姿をした特徴的な愛くるしい悪魔だ。
「ヒーホー! こっちだホ! イチロウくんが待ってるホ!」
「イチロウの手持ちか」
「そうだホ! イチロウくんが苦戦しているホ!」
「……分かった」
今のこともある。
眷属達に目配せして、油断しないように指示。とてとてと走る悪魔、名乗るところに寄ると妖精ジャックフロストについていく。
随分愛くるしい悪魔だな。
本来は人間を凍らせてしまう恐ろしい妖精の筈だが。
ヨーコは煌の眷属達に勝るとも劣らない反応速度で、仕掛けてくる悪魔を片っ端から爆散させていく。前は手を抜いていたな。以前と違って、かなり積極的な戦闘をしていて、戦闘スタイルも攻撃的だ。
辺りには血がべったりついていたり、人間の残骸が散らばっていたりで、見るも無惨な地獄絵図だ。
人間の亡骸が残されているのは、ここが魔界になりきっていないからだろうか。
少なくとも死んだ人間が、即時で消えてしまうこともないようだった。
ジャックフロストが、いたホと叫ぶ。
イチロウが、必死に巨大な悪魔と戦っている。通路を塞ぐほど大きく、手にはぐったりした女子生徒をわしづかみにしていた。
即座に走り、巨大な悪魔に向かう。
イチロウを余裕であしらっていた悪魔は、思わぬ増援に驚き。顔面にもろに煌の蹴りを食らって尻餅をついていた。
意識がない女子生徒を、さっと床から飛び出したマーメイドが受け止める。魔界と同じように、床に潜行して進めるようである。奇襲も防げてなかなか便利な能力だ。そのままマーメイドは後方に。
イチロウがアイトワラスに指示を出す。
「今だ、たたき込め!」
気後れしていない。
またアイトワラスも火力が上がっている。
火災が心配になるくらいの火力が巨大な悪魔にたたき込まれ。青白く燃える……つまりそれだけ高温だという事だ……炎に包まれて、悪魔は消えていった。
「イチロウ、状況を」
「突入した時にはもうどうしようもなくて……今は悪魔の掃討をしながら、生存者を助けてる。 十人くらい助けたけど、殺された生徒はもう……」
「分かった。 もう後方には雑魚しかいないはずだ。 前線は僕が押し上げる。 君は悪魔を展開して、雑魚の掃討と、隠れている生存者の救出を。 上にはまだ強い奴がいる」
「おう! 頼む!」
イチロウはやはり、魔界で守ることの大変さを知って一皮むけたな。
煌は力の残量を考えながら進む。悪魔がまだまだいるが、見かけ次第即座に切り倒す。ヨーコも余裕でついてきているが、札を利用して速度を上げているようだ。一種の魔法なのだろう。
角を曲がったところで、羅刹が斬りかかってくる。かなり手傷を受けているが、それでも今までで一番手強い個体だ。
手刀で即座に受け止めて、数合渡り合う。
凄まじい気迫とともに、打ち込んでくるが。
それをいなしながら、周囲を警戒。
古空穂の背後から飛びかかってきた悪魔が、噛みついて砕き折る。消えていく古空穂。マーメイドとアプサラス、ヨーコに背後を守って貰うが、かなりの数の悪魔が集まってきていた。
「半身を探す好機なんだよ! 邪魔するんじゃねえ!」
「ここにはどうも半身が集められていたみたいだからな! 先に連れて行った奴らに独占させてたまるかよ!」
「ラフムもそんなことを言っていたな」
「……ラフムの野郎が来ないと思ったら、倒したのか!?」
囲んで猛攻を仕掛けてきていた悪魔達が、一瞬怯む。
その瞬間、稲妻のような速度で、雑多な悪魔がなぎ払われていた。
好機。
怯んだ羅刹に手刀をたたき込んで、胸から頭に切り上げる。
悲鳴を上げながら羅刹が消えていく。
続けて、他の悪魔も、壁を作っていたマーメイドとアプサラスが攻勢に転じ。更にはヨーコがおぞましいまでの強い呪いの力……どちらかというとナアマがやった広域攻撃に近いそれで、消し飛ばしていた。
呼吸を整えて、振り返る。
其処には今までいたかのように、犬の悪魔が座っていた。
威厳のある大きな犬だ。
大型犬よりも更に二回りは大きい白い犬で、明確に雑魚悪魔とは違う気迫と理性を兼ね備えていた。
「それがしは霊獣ハヤタロウ。 ユヅルどのと連携して今悪魔の掃討をしている。 貴殿と話すのは初めてであったな」
「僕は夏目煌。 そうか、魔界でユヅルが展開しなかっただけで、僕を見てはいたんだな」
「うむ。 ユヅル殿とタオ殿が苦戦中だ。 お二方には助太刀願いたい」
「分かった。 疲弊が気になるが、どうにかする」
シュンと音を立ててハヤタロウが消える。辺りの雑魚の掃討に戻ったのだろう。かなりの強力な悪魔だ。
あれがベテル日本支部から支給されたのだとすれば、納得も出来る。確かに切り札として温存されるわけである。
先までに倒した悪魔の亡骸から回収した魔石を使う。残りのまともに戦える眷属はマーメイドとアプサラスだけか。脅かすだけの妖怪も無事だが、あの子は一瞬の隙を作る以外の事は出来ない。
これ以上の展開は厳しい。
大きな技や魔法を使える数も限度がある。
それでも進む。
階段の影に隠れている女子生徒を発見。即座にマーメイドに連れて行かせる。悲鳴を上げて喚いていたが、パニックになるのも当然だ。
側に食い散らかされた死体が散らばっていた。
それを目の前で見ていたのだろうから。
ここに攻めてきた悪魔達は、人間を連れ去るのが目的だったようだが。
それはそれとして、食欲を抑えられなかったり、暴力衝動を抑えられなかった者もいたのだろう。
それとも、連れ去る人間の条件が合わなかったのか。
半身とか言っていたな。
ラフムの言葉の口ぶりからして、ひょっとして。
アオガミが警告してくる。
「強い気配がある。 雑念は捨てろ。 そもそもこの力、ジョカに匹敵するかも知れない。 ユヅル達と連携して戦うことよりも、できるだけ犠牲者を減らすことに注力することを推奨する」
「分かりました。 ともかく、まずはたどり着くところからですね」
「そんなボロボロでも進むのね。 これだけ悪魔を掃討すれば、やることはやったと思うけれど」
「まだ奥にはユヅルとタオさんがいる。 逃げ遅れた生徒もだ。 放置するわけにはいかない」
ヨーコはそう、とだけ言う。
見捨てるべきだ、というような事は言わなかった。
階段を駆け上がりつつ、飛び降りるように襲いかかってきたコウモリのような悪魔を一刀両断する。
力の総量が減ってきているのが分かる。
ゼロになれば死だ。
ともかく急ぐ。アプサラスが、そろそろ限界だと訴えてきているが。もう少しだけ我慢して貰う。
マーメイドが戻ってきた。
「あるじさま。 イチロウさんがとても頑張って生存者を助けて回っていたわ」
「分かった。 このまま奥に行く。 無理をしない程度に支援をしてくれ」
「分かりました」
最上階だ。
強い気配……ラフムなんかとは比較にもならないものは奥にある。
その前で、ユヅルとタオが悪魔に囲まれている。煌は其処へ、手刀をふるって突入していた。
原作と違って、イチロウくんはこの時点で、何かを守ることの大変さも、何より実戦も経験しています。
それが故に、原作のような失態を犯さず、決して強くないとはいえ戦うことが出来ました。
この結果、原作よりも生徒を二十名以上多く助けることに成功しています。
ちょっとしたバタフライエフェクトも、こういった形で様々な影響を作り出すのです。
感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。