真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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本作では真VVの要素を入れているので、此処で待っているのはカディシュトゥの頭目であるリリスです。いうまでもなくアダムの最初の妻ですね。男性優位の結婚を拒否してアダムの元を去った存在です。一神教では毒婦とされていますが、現在的な価値観からするとむしろ烈女かも知れません。ちなみにアダムの最初の妻という設定は、結構後の時代に作られたものです。リリス自体は、バビロニア神話に原型となった祖の神がいます。

原作だといい展開の後の不意打ちで顎を外してくれたリリスさんですが、ラフムが既に倒れている事もあって、原作のような不意打ちもできません。

今の時点で勝てる相手ではありませんが。

その結果、展開が色々と変わってくることになります。





2、最初のアダムの妻

悪魔を掃討。タオがすぐに回復に入ってくれるが、非常に厳しい状態だ。ユヅルは手持ちをほとんど失っていて、ハヤタロウを戻すべきだと言うが首を横に振られた。

 

「まだ生存者がいる可能性がある。 この奥の教室に生徒が連れて行かれて、ミヤズもその一人だ。 特にミヤズは、自分を代わりに連れて行けと悪魔達に言って、それで数人を逃がした。 絶対に救う」

 

「同感だ。 しかしこのままでは厳しいぞ」

 

「煌くん、なんとか応急処置はしたよ。 それでもこの気配は……」

 

「勝ち目はないわね」

 

タオに、ヨーコが同意するように言う。

 

ヨーコは余裕綽々だ。極めて要領よく立ち回っていたし、余力は普通にあるのだろうと思う。

 

アプサラスが今の乱戦で致命傷を受けて戻った。

 

後は脅かすだけの妖怪が出られるが、この子は一度だけしか役に立てないし。マーメイドもかなり消耗している。

 

ユヅルは恐らく由緒正しい霊刀だろう日本刀を手にしているが。回復主体のタオと、眷属をほとんど動かせない煌。

 

それでジョカ並みの相手とやりあうのは無理がある。

 

それでも、煌は教室の扉に手を掛ける。

 

そして、内部に躍り込んでいた。

 

内部には、天井近くに浮かんでいる女の悪魔の姿。全裸で、体に蛇を巻き付けて下着代わりにしている。

 

強烈な気配だ。

 

これは、勝ち目はないな。

 

周囲を見る。

 

巨大な魔界への穴が開いている。浄増寺に出来たものとほとんど同じ規模だ。そして、もう生徒はいなかった。

 

「驚いたな。 雑魚ばかりとは言え、まさか突破してきたのか」

 

「僕は夏目煌。 貴方は」

 

「私はカディシュトゥの一人、リリス」

 

「!」

 

リリス。

 

後の時代の解釈になるが、一神教で最初の人間として知られるアダムの最初の妻であったとされる存在だ。

 

その原型はバビロニア神話の存在であるとも言われている。

 

アダムとの結婚の際に、一神教の神から男性優位の結婚を受け入れるように命令されてそれを拒否。

 

アダムの元を離れ、悪魔の元で多数の子を産んだという逸話が残っている。

 

天空神系統の一神教における男性優位の原則をひっくり返すような存在で、それもあって悪女とされているが。

 

今になって考えてみると、男女平等を考える観点からであれば、むしろ珍しいほどの気骨のある烈女であったと考える事も出来るだろう。

 

だから神が毛嫌いしたというわけだ。

 

リリス自体は古くから存在しているが、いずれにしても有名になったのは後の時代であり。

 

アダムの最初の妻であった逸話も然り。

 

そしてカディシュトゥの一人と言うことは。

 

ナアマの仲間というわけだ。

 

「この襲撃は貴方がもくろんだのか」

 

「私だけではないがな。 正確にはラフムが提案してきたので乗った。 私としては、ベテルのものどもがいう「知恵」を確保しておきたいという目的があった。 ベテルのものどもは、「知恵」をこの場所に集めていたようだったからな。 戦力を集中し、一点突破で襲撃するにはそれでよかった」

 

「……」

 

知恵、か。

 

「半身」と同じような意味だとみた。

 

いずれにしても分かっているのは、多数の生徒をこのリリスが連れ去ったと言うことだ。いや、リリスがここにいると言うことは、配下の悪魔が、だろうか。

 

「生徒達を返して貰う」

 

「ふっ、そんなボロボロの状態で良くも吠えるわ。 確かに唐変木のラフムと私の手札をまるごと退けたのは想定外の戦果だが。 それでも私に勝てるとでも思っているのか?」

 

「やってみなければ分からない」

 

「そうだな。 だが今の勝率は0に近い。 おまえと合一しているその存在も、同じ結論ではないのか」

 

意外に冷静だな。

 

今は支援のあてもない。少しでも情報を引き出さなければならないだろう。

 

仕掛ける隙を探っているユヅルとタオ。

 

煌はそれを理解しているから、更に呼びかける。

 

「ラフムは半身を探していると言っていた。 知恵とは同じものか」

 

「ラフムはそう言っていたか。 まあそうだろう。 あれは一神教の神が座につく前から存在していた……とはいっても一神教の神が座についたのは、実際にはおまえ達が言うところの15世紀後半だから、だいたいの神魔はその前から存在していたのだがな」

 

「座とはなんだ」

 

「流石に全てを話すつもりはない。 ……む。 エイシェトがしくじったか。 仕方がない子だ」

 

次の瞬間。

 

アイトワラスの火力がリリスにたたき込まれる。

 

それと同時に、タオが光の魔法を全力でたたき込む。ヨーコも爆発の札を打ち込み、ユヅルは懐から取り出した拳銃を非常にしっかりした構えで速射。

 

煌も雷撃をたたき込んでいたが。

 

マーメイドが即座に壁を作らなければ、反撃に飛んできた蛇の尻尾で、煌は串刺しにされていた。

 

脇腹を抉り、床を貫通する蛇の尻尾。

 

一斉攻撃を受けて、平然としているリリス。

 

「ナホビノは脅威だが、まだなりたてで、しかもラフムの愚物を倒してきたのだとすればこの消耗も致し方あるまい。 どうも身内がしくじったようでな。 退かせて貰うとしようか」

 

今まで何もいなかったかのように。

 

リリスが消える。

 

急速に力が抜けていく。だが、タオが回復の力を全力で使ってくれる。

 

どうにか、消えるのは免れることが出来そうだ。

 

ただ、聞こえてくる声が、酷く小さかった。

 

「み、みんな、無事か! とんでもねえ悪魔がいたけど、大丈夫か!?」

 

「イチロウか、外を警戒してくれ。 僕はベテル日本支部に連絡を入れる。 ……さらわれた生徒達は、皆魔界に連れ去られた。 判断を仰ぐ」

 

「ミヤズさんが……すまねえ」

 

「ここに来た時点で既にどうしようもない状態だった。 イチロウは駆け出しなのによく頑張ってくれた。 今は生存者を少しでも救出し、学校を正常化する必要もある。 手が足りない……」

 

横になるように言われて、回復を受ける。

 

アオガミが淡々と言った。

 

「リリス、凄まじい力の悪魔だった。 ジョカと同等と見て良いだろう。 元々のリリスはバビロニア神話の女悪魔で、子供を害する存在だった。 つまり実際には、一神教より古い存在であり、後から一神教に取り込まれた魔だ」

 

「そういう点ではラフムと親和性が高かったんですね」

 

「そうなる。 顔見知りだったのだろう。 ラフムと利害が一致したから、この学校を襲撃したとみていい。 分からない事は多いが、ともかく今は状況の確認をすることを推奨する。 無策での追撃は危険だ」

 

「分かっています」

 

ハヤタロウが来る。

 

まだ校内に数名の生徒が生存しているらしい。マーメイドくらいしか、今は手助けを出せない。イチロウが、俺が行ってくると言って。ハヤタロウに着いていった。イチロウは、リリスに勇敢に一撃を入れていたし。このまま行けば、とても頼りになるはずだ。

 

それでも、目の前でたくさん人が死んだのだ。

 

きっと心は苦しいはず。

 

話をして、色々聞いておかなければならないだろう。

 

身を起こせるくらいにはなった。タオも限界近い。

 

へたり込んでいるタオに、ユヅルが言う。

 

「縄印は放棄するそうだ。 同時に、この魔界への穴を通って、威力偵察だけでもしてほしいと連絡があった」

 

「無謀よ。 死にに行くようなものだわ」

 

「分かっている」

 

ヨーコの冷静な指摘に、ユヅルは唇をかみしめている。

 

煌も同意見だが。

 

ミヤズを始め、さらわれた生徒は一クラス分はいるという。

 

「半身」だか「知恵」だか知らないが、今までの会話の内容を聞く限り、ナホビノとなる媒体ではないかと思うのだが。

 

ともかくだ。

 

「リリスはどうも連れて行った人間に利用価値があるような口ぶりだった。 生徒が無事である可能性はある。 ただ、エイシェトがしくじったという話をしていた。 エイシェトという存在……ナアマが前にいたことから考えると、ユダヤ神秘主義に登場する女悪魔だが。 エイシェトという悪魔が人間を連れていたのに何かしらのトラブルがあった可能性がある。 そうなると、魔界に無防備な人間がいる可能性は否定できない。 どれも仮定と推論ばかりだが」

 

「エイシェトという存在も知っているんだな。 下手なデビルサマナーより知識がありそうだ」

 

「たいした知識じゃない。 少しなら動ける。 ともかく、急ぐべきだろう」

 

「ああ、分かっている」

 

ハヤタロウが戻ってくる。

 

校内に生存していた生徒は全員救出完了。外にいた自衛隊員に引き渡してきたという話だった。

 

イチロウも戻ってくる。

 

流石に青ざめていた。

 

「魔界に行くんだな」

 

「ああ。 この間より確実に危険な魔界だ。 一度足を踏み入れて、出来れば龍穴を見つけたい。 そうすれば其処を拠点に、探索をする事が出来る。 可能な限り、さらわれた人間を助けなければならない」

 

「分かった。 ミヤズさんは他の生徒を庇って連れて行かれたんだよな。 絶対に助けようぜ!」

 

「無論だ」

 

イチロウが力強く頷く。

 

やれやれという風情のヨーコだが。

 

作戦に反対するつもりはないようだった。

 

 

 

空間の穴を通って、魔界に。

 

其処では、意外な人物がいた。

 

ツバメさん。

 

第十九代目葛葉ライドウだったか。

 

よっと片手を挙げてくるツバメさんは、だが今来たと言う雰囲気だった。

 

「先生、来ていたんですか!」

 

「ターゲットを追ってね。 とにかくすばしっこくて困ったよ。 この穴だね。 あたしが塞いでおくよ」

 

「助かります」

 

龍穴はあっちだと、指さされる。

 

というかこの空間の穴、龍穴が近いから開けられたのだという。

 

なるほど。ともかく、龍穴があるのなら助かる。ギュスターヴ経由で回復できる。マッカは足りるはずだ。

 

前と違って、イチロウは既に自衛能力を手にしている。

 

そして、周囲は。

 

砂漠だ。

 

ここが本来の東京だとすると、どこまでも砂漠なのだろう。

 

丘のようになっていて、見下ろせる先には、高速道路が広がっている。

 

というか、看板がある。

 

其処には天王洲アイルと描かれていた。

 

ここが、天王洲アイル。

 

そうなってくると、この辺りは品川近辺だと言うことか。つまり煌が暮らしている辺りの、真の姿ということだ。

 

これだけ荒れ果ててしまっているとは、言葉もない。あの高速道路は首都高なのだろうが、それにしても半分以上は砂に埋もれている。

 

そして、辺りにはビルの残骸が多数散らばっていた。

 

ユヅルがツバメさんに説明をしている。

 

頷きながら、ツバメさんは手をかざして空間の穴を塞いでいた。

 

「半身に知恵ねえ」

 

「何か思い当たる節はありませんか」

 

「分からないけれど、悪魔がその場で殺さないで連れて行ったのなら、それは利用価値が余程大きいと言うことだよ。 利用価値がない人間なんて、その場で食べるだけだし。 学校で殺された子達は、恐らくは利用価値が悪魔にはなかったんだろうね」

 

「……っ」

 

ユヅルの懸念は分かる。

 

ミヤズは他を庇って連れて行かれたのだ。

 

だが、悪魔がそんな都合が良い話を飲むだろうか。

 

飲んだと言うことは、ミヤズも条件に合致していたということではないのだろうか。

 

ともかく、龍穴で回復する。

 

ギュスターヴがケラケラ笑っているのが、目の前に行かなくても分かった。

 

随分やられたもんだな、と。

 

無言で回復を受ける。

 

とりあえず、眷属は皆復帰できた。

 

かなり消耗しているが、戦闘は可能だろう。順番に、タオ、イチロウ、ミヤズと回復を受けてもらう。

 

ヨーコはいらないと言った。

 

札を主体に戦うため、ほとんど消耗していないらしい。

 

札がつきれば危ないらしいが。

 

制服をちらっと開いてみせるが。

 

其処には山のように札が連なっていた。

 

「継戦能力は問題ないわよ」

 

「助かる」

 

だとすると、ここからどう動くか、だ。

 

ユヅルがツバメさんに声を掛ける。

 

「先生、手を貸してもらえませんか」

 

「そうしたいのは山々なんだけどね。 この穴を塞いだ後は、例の元弟子を追わないとなんだわ」

 

「それが数十人の子供より大事なんですか!」

 

「こっちは一千万の命に直結しているんだよ。 今のあの子は、それくらいやりかねないんだ」

 

それを聞いて、ユヅルは黙り込む。

 

確かにあの八雲ショウヘイという男の目。

 

金に輝く瞳には、もはや人間性は残されているように見えなかった。

 

ともかく、だ。

 

今はそうなると、この五人で動くしかないだろう。

 

ハヤタロウが具現化される。

 

臭いを嗅いだハヤタロウは、即座に色々と特定したようだ。

 

「ユヅルどの。 ここで戦闘が起き、かなりの数の生徒が逃げ出したようだ。 だが、ここで逃げ出したと言うことは……」

 

「まずいな。 この辺りの悪魔の戦闘力、とても国会議事堂近辺の比ではないぞ」

 

「どうするんだ。 手分けして助けに回るか」

 

「……そうするしかないだろう。 二手に分かれよう」

 

煌はヨーコを引き受ける。

 

これはヨーコは、他の皆とは仲良くやっていけないだろう事確定だからだ。戦力からしても申し分ない。

 

頷くと、ユヅルはイチロウとタオと一緒に組む。

 

まずは、見えている範囲を探す。

 

回復はした。戦えはする。

 

だが、確かに強い気配が山ほどある。

 

ユヅルが焦っているのが分かる。

 

「煌、急ぐべきだ」

 

「分かっている。 すぐに動こう」

 

さっそくハヤタロウが一人見つけたようだ。即座に走り出すハヤタロウを、ユヅル達が追っていく。

 

煌もアオガミの視界を上空に移動させる技術を使う。

 

この辺りは高速道路だけではなく、遊歩道なども入り組んでいる。

 

移動しながら、それらを見て回る。

 

ビル影に、一人隠れていた。頭を抑えて、がくがくと震え上がっている。

 

脅かすだけの妖怪が、袖をつかむ。

 

ひっと声を上げたその生徒は、見覚えがあった。確か隣のクラスで粋がっていた不良生徒だ。

 

まあ、こんなところに連れてこられたら、何も出来ないだろう。

 

「が、ガキ……?」

 

「少しは冷静になったか。 助けに来た」

 

「ひっ!」

 

「落ち着きなさい。 死にたくなかったら、すぐに着いてくるのよ」

 

こくこくと頷くその生徒を、すぐに龍穴に連れて行く。担ぐのは、トロールにやってもらった。

 

走りながら、軽く話を聞く。

 

子分二人と一緒に、早くから来ていた理由は、いじめのやり方を変える相談だったという。

 

樹島サホリの事件はこいつらも知っていて、いじめをしていた此奴はまずいと感じたらしい。

 

それで陰湿なやり口に切り替えようと相談していたところを悪魔に襲われ。

 

子分二人は目の前で食い殺されたとか。

 

はっきりいってどうでもいい。

 

いらついてきたので、黙れと言おうと思ったが。

 

目の前に鳥の悪魔が飛んできて、ひいっと喚いてそのまま気絶した。悪魔は即座に反応した煌が躍りかかり、手刀を浴びせるが。

 

爪でそれを的確に防いでみせる。

 

がっと火花が散るぶつかり合い。

 

そのまま、獲物を奪い損ねたと判断し悪魔は、飛び去っていく。体に雷をまとっている巨大な鳥だった。

 

「放っておきなさい、そんなの」

 

「重度のPTSDを発症したようだ。 もう何も出来ないだろう」

 

「随分と甘いのね」

 

「こんな輩に関わっている事も時間の無駄だ。 さっさと送り返す」

 

ヨーコの言葉に、そう淡々と返す。

 

龍穴を通って、研究所へ。そして、待機していた自衛官と白衣の人たちに、救出した人間を引き渡す。

 

まだまだいるはずだ。

 

すぐに天王洲アイルに戻って、生徒を助けて回る。

 

連絡用に渡されている軍用無線は魔界でも機能する。ユヅルとの通信は、問題なく出来ていた。

 

「こちら生存者二名発見! 即座に戻る!」

 

「了解。 こちらも今一人発見した」

 

「何があったのか分かるか。 皆混乱していて、さっぱりだが」

 

「分からないが、巨大な鳥の悪魔が徘徊している。 くれぐれも気をつけてくれ」

 

三人目を助ける。

 

三人目は、鳥の顔を持った翼を持つ人型に囲まれていた。

 

そして知恵を返せと恫喝されていた。

 

頭を抱えて震え上がるばかりの女子生徒に、業を煮やした鳥頭が襲いかかろうとした瞬間を背後から奇襲。

 

まとめて斬り伏せていた。

 

倒して分かった。堕天使アンドラス。

 

これもソロモン王72柱の一角だ。

 

ソロモン王72柱は基本的に悪辣な悪魔ばかりではないのだが、アンドラスは不和と闘争を煽るという設定で、その中では悪辣な方である。もっとも、召喚した人間を気に入れば、普通に力を貸してくれるようだが。

 

数体いたということは分霊だろう。

 

ただ、よく分からない。

 

知恵というのは妙だ。

 

あいつらはどう見ても知性を持っていた。それならば、知恵というのはどうも説明がつかないが。やはりナホビノに関連しているのか。仮説でしかないのがもどかしい。

 

半分気絶している女子生徒を、即座に龍穴まで運ぶ。

 

どうせ記憶は消すのだから、龍穴に運ぶまでは最悪気絶していて貰った方が都合が良い。

 

トロールも運ぶ際の力加減が分かってきたようで、死なないように上手に抱えてくれている。

 

煌としても、指示をしなくていいのは助かる。

 

龍穴から戻ってきたユヅルが、まだ数人いるようだと話してくれる。同時に、何人かは逃げる過程で殺されてしまったようだ、とも。

 

魔界でちりぢりに逃げたのだ。

 

それもまた、仕方がない話だ。

 

だが、今は一人でも助けられる人間を助ける。

 

手分けして、情報を元に、この辺りにいる生徒を助けて回る。

 

悪魔に襲われている生徒を助けて、悪魔を斬る。

 

要領よく隠れている生徒もいたが。礼を言ってくる生徒はほとんどいなかった。

 

助けたら礼を言われるなんてのは夢物語であるのは知っているが。

 

まあ、これがだいたいは普通だ。

 

黙々と生徒を救出して回る過程で、服だけになっている生徒を見つける。やはり魔界で殺されるとこうなるのか。

 

服だけを回収しておく。

 

辺りには凄まじい血が飛び散った跡があり。後ろから、体中が刃になったような悪魔が飛びかかってきた。

 

その全身に、少し離れた地点で狙撃手をしてくれていた古空穂が放った矢が突き刺さり。更にはアプサラスの放った氷の錐が突き刺さる。

 

マーメイドの水は制御精度がどんどん上がっていて、まるで水の大蛇のようにその悪魔を締め上げた。

 

手刀を作って近づく煌を見て、刃だらけの悪魔は悲鳴を上げた。

 

「な、なんだよ! てめえも保存食代わりに人間を連れているんだろ! 数百年ぶりの肉の味なんだぞ! それくらい許してくれよ!」

 

「黙れ」

 

此奴がこの生徒を殺したのは確定だ。

 

そのまま真っ二つに切り下げる。

 

消えていく悪魔はどうでもいい。次の救助に向かう。

 

ユヅルから連絡が来る。

 

かなり強い悪魔とやりあっているという。苦戦中だそうだ。

 

分かった。

 

今発見している生徒を助けてから、向かう。

 

そう言うと、それで構わないと帰ってきた。今のイチロウがいるなら、簡単には負けないはずだ。

 

すぐに気絶して転がっていた生徒を見つける。

 

確か野球部だかのエースの筈だ。

 

完全に泡を吹いて転がっている。

 

まあ、平和な日本で生まれ育った人間だ。鍛えていようが、たかが知れている。トロールに担いで貰って、龍穴に。

 

一クラスぶん位はさらわれたという話だ。

 

まだまだ多数の生徒がいるはずである。

 

龍穴経由で生存者を送り、遺品も預けると。

 

すぐにユヅル達の支援に向かう。

 

助けられる生徒は、一人でも救う。それが出来るからやる。ただ、それだけの話だ。







品川方面の魔界に突入。

原作だと突入すぐに生徒を数人助けるんですが、安全な場所に送ったのは恐らく龍穴経由なのでしょうが……

だったら妖精達のところにいた人もさっさとそうして東京に戻すべきだったでしょうね。

本作ではその辺りの内容も補完しています。


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