真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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※ルーガルーとエイシェト


それぞれ創世の女神編と復讐の女神編で戦うボスです。ルーガルーはいわゆる狼男のフランス読みですね。狼男というとかっこよさそうなイメージがありますが、要するに魔女狩りでターゲットになった男性が貼られたレッテルだと思った方が良いです。魔女狩りでそう宣告されたら最後、刑で死ぬか拷問で死ぬかしかありませんでした。

エイシェトはカディシュトゥの二番手です。

きれい系の女性悪魔がそろっているカディシュトゥの中では明確なホラー枠で、口から手が出る演出はなかなか素敵ですね。本作でのエイシェトは、原作であまり描写されていなかった辺りを丁寧に補完しています。





救え一人でも多く
序、ついに追いつく


イチロウが提案してきた。

 

役に一番立たないのは多分俺だ。だから、俺が露払いをする。

 

エイシェトとかいう悪魔は、きっと強い。だから、皆は力を温存してほしい、と。

 

煌は少し迷ったが、ヨーコは意外と歓迎的だった。

 

「客観的な分析から、最善手を選べるのはいいことよ。 将来的な実力はともかく、現状では貴方は一番この中で経験が少なくて戦闘にむいている手持ちもいない。 それが一番適切に思うわ」

 

「そう言われるとちょっと悔しいけれど、実際その通りだ。 出来るだけ俺が盾になるよ。 煌、ユヅル、消耗を抑えてくれ。 タオさん、その。 回復のほう、お願いな」

 

「分かったわ。 でも、無理はしないで」

 

「ありがとう」

 

タオは心底心配そうだ。

 

親友を痛めつけられて。それを救うことが出来て。それで吹っ切れたのだろう。

 

その原動力になった皆に心を開いてくれているし、信頼してくれているのも分かる。イチロウは多分タオとはまったく縁がないと感じているのか。学園のアイドル扱いされていたタオと普通に話していても、鼻の下を伸ばしている様子もなかった。

 

ともかく砂漠に埋もれた倉庫街を行く。

 

長い体の犬みたいなのが、たくさん襲いかかってくる。

 

即座に皆で反応。

 

対応にあたる。

 

イチロウが呼び出した狛犬とアイトワラス。それに新たに作り出したのは、荒々しい姿の大男だった。

 

「いけ、幻魔鬼武蔵!」

 

「ヒャッハア! 暴れてやるぜえ!」

 

吠えたける鎧武者。白い母衣をつけている。

 

鬼武蔵。

 

最近名前が知られるようになってきた織田家の武将である森長可のことだ。

 

あの戦国の覇王織田信長にかわいがられた武将であるのだが、バーサーカーなどと呼ばれて後世にもてはやされているのと実態が大きく乖離している。実際のところは信長の権力を笠に着て、勝てる相手とだけ戦っていただけの男である。単なるシリアルキラーであり、猛将でもバーサーカーでもない。指揮官の適切な指示があれば局所戦で戦果を挙げられるケースもあるタイプの人物ではあるが、そういった将の中では三流以下の存在だ。

 

森は信長の庇護下で格下相手や抵抗も出来ない相手だけに勝ち戦を重ねていただけで。いざ超格上の徳川家康と小牧長久手の戦いで相対した時には文字通りひとたまりもなく二度ひねり潰され。一度目は必死に逃げ延びたものの、二度目の戦いであっさり瞬殺され戦死している。

 

その凶暴さが後の時代に愛されているが、戦国時代四大DQNなどと一部で呼ばれることもあるほど、ろくでもない人物だ。

 

実際悪魔としての力量はどうってことがないようである。鬼と実力的には大差ないか、むしろ格下だろう。だが、貴重なイチロウにとっての前衛だ。体が長い犬みたいな悪魔相手に鬼武蔵が防戦し、アイトワラスが的確に援護射撃。煌も古空穂を出して、狙撃を行わせ。

 

しばしして、片付けていた。

 

悪魔の情報を得る。

 

これは。

 

「犬神か……」

 

「犬神?」

 

「犬に虐待の限りを尽くし、それで作り出す邪悪な呪いだ。 あれが犬神なのだとすると、呪いの塊だと判断して良いだろう」

 

「分かったわ。 次からは私が処理します」

 

タオが、傷を受けた鬼武蔵と、消耗したイチロウを回復させる。タオの回復力も無限ではない。かなりタオ自身はタフではあるが。それでも無駄な消耗は避けるべきだ。

 

鬼武蔵はタオをニヤニヤ見ていたが、煌がじっと見ると、露骨に怯んでいた。これは、タオもイチロウもかなり侮っているな。

 

扱いづらい悪魔だ。死後伝説になった存在だから幻魔なのだろうが、それも最下等と見ていい。

 

鬼武蔵を戻すイチロウ。

 

一応、警告しておく。

 

「気をつけろイチロウ。 あれはあまり忠実な悪魔じゃないぞ」

 

「ああ、分かってる。 俺の力が足りないんだよな。 もっと強くなって、有無を言わさず従えないと」

 

「それもそうだが、イチロウ、君自身が多少の武器は使えるようにした方が良いな。 身体能力は上がってきている。 武芸を教えてくれる悪魔を手持ちにしたら、習った方が良い」

 

ユヅルがアドバイスする。

 

ともかく、そのまま移動する。臭いをたどっていたハヤタロウが、近いと言った、次の瞬間だった。

 

上から襲いかかってきた悪魔がいる。

 

ハヤタロウよりも更に動きが速い。容赦なく鋭い爪がハヤタロウの体を抉っていた。

 

飛び退いたハヤタロウを庇いながら、煌が前に出る。イチロウも手持ちを展開していた。

 

「いけませんな。 此処から先はマダムの部屋です。 貴方方、あまり不躾な真似はいけませんぞ」

 

そうなんだかキザったらしく言ったのは、着飾った二足歩行の狼だった。

 

狼男か。

 

狼男は、西洋では悪名高い魔女狩りとともに知られた存在だ。魔女狩りの悪夢が吹き荒れる中。悪魔の手先とレッテルを貼られた人間は、女性は魔女、男性は狼男として狩られ。残虐極まりない異端審問に掛けられた挙げ句、拷問で死ぬか、刑死するかの二択を選ばされた。生還する可能性は存在しなかった。その悪夢が狼男になったのだとしたら。決して弱い相手ではないはずだ。

 

イチロウが鬼武蔵をけしかけるが、一瞬で上下両断されて消し飛ばされる。狼男の手には鋭い爪が生えていて、まるで鉈だ。それ以上に鬼武蔵の実力がたいしたことがなかっただけだが。

 

「なんですかこの見かけ倒しは。 それはともかく、私たちを人狼や狼男、と日本では呼ぶらしいですな。 で、す、が。 そちら風に言うと雅ではありませんね。 私めのことはフランス語でルー・ガルーとでも呼んでくだされば結構です」

 

「そうかルー・ガルー。 僕は夏目煌。 この先にいるのがエイシェトか」

 

「おお、それも知っておられるのですな。 ならば余計に通すわけにはいきませんな」

 

指を鳴らすルーガルー。あの長い爪があるのに、器用なことである。

 

周囲に大量のマナナンガルが湧く。また、狼の悪魔もたくさん現れる。此奴の手下だろう。

 

これだけの手下がいるのに、ほとんどの人間を取り逃したのか。

 

それにしては妙だな。

 

イチロウに下がって貰う。此奴は、煌でないと相手は難しい。代わりに、周りの雑魚を、皆と一緒に相手して貰う。

 

「悪いが急いでいる。 押し通らせて貰う」

 

「ふふふ、そうでしょうな。 貴方が噂のナホビノと見た。 私は魔女の女王から指示を受け増援として駆けつけたばかりですが、私が指名されるだけのことはある。 楽しませてくださいね?」

 

一瞬で、互いに間を詰める。

 

手刀を両手で作った煌と、両手に無数の刃がついているルー・ガルーが激しく打ち合う。数秒で、数十合はやりあったか。

 

にやっと笑うと、散る火花の中。ルー・ガルーがいわゆるサマーソルトキックを仕掛けてくる。

 

流石に食肉目だ。

 

柔軟な動きである。

 

顔を足の爪で抉られるところだったが、手刀で受け流す。

 

弾き会う。即座にまた間合いを詰める。麁正連斬を仕掛けるが、全て防ぎきられる。笑ったルー・ガルー。後方では大乱戦になっているが、構う余裕がない。ジャターユ以外の眷属を全て展開。

 

ほとんどの眷属は、後方に加勢させた。

 

「煌、今までで見た中でもかなりの強者だ。 油断するな」

 

「分かっています」

 

アオガミの警告が入る中、渡りあう。

 

煌の手刀を受け止めて、爪が折れることもない。うまく力を受け流しているのだ。まるで剣術の達人とやりあっているかのようである。鬼武蔵みたいな抵抗できない相手をいたぶるだけの輩が瞬殺されたのも納得だ。イチロウも、さっさとあれは合体材料にするべきだろう。

 

首を刈り取りに来た一撃を蹴り上げ。更に回し蹴りをたたき込む。

 

脇腹に入ったが、上手に受け流して後方に飛ぶルー・ガルー。

 

雷撃を放つが、両手を交差して防ぎきってみせるルー・ガルーには余裕さえ表情に浮かんでいる。続けて火炎、冷気、烈風。立て続けにたたき込むが、全て防ぎきってみせるルー・ガルー。強いて言うなら冷気が効いているか。

 

「芸達者でいらっしゃる。 今まで倒してきた悪魔の力ですな恐らくは」

 

「あまり時間を掛けていられない、行くぞ」

 

「来なさい。 いや、むしろこちらから行きますよ」

 

ルー・ガルーが攻勢に出る。今までと違って、直線的な突破に切り替えてきた。凄まじい、抉りこむような連撃だ。防ぎながら、ずり下がる。乱戦の中にでも押し込まれたら、一瞬でタオやイチロウは首を飛ばされかねない。

 

それを見越して攻めてきている。更に浴びせ蹴りに入ったルー・ガルーだが。次の瞬間、真横から火炎が直撃していた。

 

飛び退いたルー・ガルー。一撃を入れたのは、乱戦でボロボロになったが、それでもアイトワラスに指示を出したイチロウだった。

 

一瞬の隙に反撃に出る。

 

地面に手を突くと、氷柱を生やしルー・ガルーを囲む。ちいっと舌打ちすると、ルー・ガルーは大きく飛んで、飛び退いていた。

 

「此処までのようですな。 時間稼ぎはした。 今は我が主と情報を共有しなければなりません」

 

「魔女の女王というと……ひょっとしてアグラトか」

 

「ふっ、博識でいらっしゃる。 いずれまた、主の元でお会いしましょう」

 

慇懃に礼をすると、ルー・ガルーがかき消える。

 

振り返ると、既に敵の大群は全滅していた。それで退いたわけだ。タオが回復に入る。ハヤタロウが負傷している中、見上げていた。

 

「あの倉庫だ。 血の臭いがする。 皆どの、急いだ方が良いだろう」

 

「分かった。 タオさん、回復を済ませたら突入する。 かなりの危険な悪魔と見ていい。 あまり無理をしないでくれ」

 

「分かったわ。 皆を出来るだけ、戦えるようにしておくね」

 

「……」

 

連携しての戦闘の中でも、ヨーコは上手に立ち回ったようで、傷一つ受けていない。ユヅルですら何カ所か制服を裂かれていたのに。

 

とりあえずの回復は済んだ。

 

倉庫の周りには、かなりの数の悪魔がいる。

 

先のルー・ガルーが連れてきた増援だろう。これを見ると、カディシュトゥは、意外と連携がとれていないのかも知れない。

 

コンテナをいくつか上がって、どうにか倉庫の近くまでたどり着く。

 

物陰から伺う。

 

腹にたくさんの髑髏を詰め込んだ熊のぬいぐるみみたいなのがたくさん浮いている。それだけではない。

 

他にも多数の悪魔がいて、奥を物欲しそうに見つめていた。

 

あれらも蹴散らす方が良いだろう。

 

「ねえね、お兄さん達」

 

声を掛けてきたのは、今度は猫人間という雰囲気の悪魔だ。先と違ってどちらかというと日本的な雰囲気だが。

 

尻尾が二叉に別れている。

 

ということは。

 

「猫又か」

 

「よく知っているにゃあ。 あの倉庫の中、なんだかおっかない悪魔が、泣いている人間の女を連れ込んでたよ。 危ないから逃げた方が良いよ」

 

「……いや、助けに行く。 君も巻き込まれるぞ。 逃げろ」

 

「あら、心配してくれるにゃ? 死んだら骨くらいは拾ってやるにゃあよ」

 

ひょいと跳び下がる猫又。

 

先に打ち合わせをする。

 

外は任せる。内部には少人数で入った方が良い。タオは消耗が激しいから、皆で守る。煌が内部に突入して、人質を救出する。一瞬の勝負になる。人質はタオの側に。皆でタオを守りながら、人質の手当をタオにして貰う。

 

それを決めると、即座に動く。

 

わっと、皆で仕掛ける。

 

トロールと鬼先輩後輩。更に塗り壁が、重戦車となって突入。見張りに着いていた悪魔達を、そのままパワーで吹っ飛ばした。

 

乱戦になる中、煌は脅かすだけの妖怪と、マーメイドを連れて、倉庫の内部に。他の眷属悪魔は、皆に加勢させる。

 

アマノザコは乱戦の時から少し距離を取っているようだ。それでいい。安全になったら戻ってくればそれが一番だ。

 

倉庫の中では、煌でも分かるほど血の臭いがしていた。

 

ぐったりしている女子生徒。制服からして二年だ。それにまたがっているのは。確かにほとんど全裸の女だった。豊満な肉体で、局部と胸をほんのわずかだけしか隠していない。だが、何でだろうか。

 

全く色気のようなものは感じられない。ナアマはそれが過剰なくらいだったのに。

 

「おかしなものだな。 おまえが嫌いな顔を少しずつ食ってやっているというのに、どうして恐れて気絶する。 感謝するのが筋だろう。 ほら、起きろ」

 

「やめろ」

 

「良いところだ、黙っていろ。 このエイシェトは、人間に善意で接している。 嫌いなところを食ってやるのがエイシェトの役割だ。 このものは、己の顔を嫌い抜いていた。 だから顔を食ってやる。 知恵としては、体があれば充分であるからな」

 

「人間はそんなことをしたら壊れてしまう。 そのようなこともしらないのだな」

 

顔を上げるエイシェト。

 

鋭い爪が生えた両手。そして、顔には目と口はあるが、目は穴が開いているだけでうつろ。口はまるで髑髏のよう。更には、顔は真っ黒だった。

 

色気が皆無なのも納得した。

 

此奴には、人間味というようなものが決定的に欠落している。煌はすぐに構える。気配は、かなり強い。

 

ゆらりと立ち上がると、エイシェトは喚く。

 

「邪魔をする! どいつもこいつも! 忌々しい北米の鳥も! 英雄崩れのなり損ないも! そして今度はナホビノか! ナホビノぉ、貴様は自分の何が嫌いだ! このエイシェトは人間を愛しているでな! 貴様の嫌いなところを食ってなくしてやろう!」

 

「断る。 嫌いなところも含めて僕だ」

 

「黙れぇえええっ!」

 

飛びかかってくるエイシェト。

 

その口が大きく開くと、その中から手が伸びてくる。これは、驚かされるギミックだ。しかもこの手。

 

触るとまずい。

 

手が砂地になっている地面をえぐり取り、凄まじい黒い瘴気が溢れる。これもまた呪いの力か。

 

同時に、爪をふるってエイシェトが仕掛けてくる。

 

重い。

 

速度は先のルー・ガルーほどではないが、パワーはこっちが数段上か。数合やりあったが、エイシェトは空中を浮遊できる。立体的に仕掛けてきつつ、口からのびた手を、縦横無尽に繰り出してきた。

 

「さあ言え! どこが嫌いだ! それを食ってエイシェトが愛してやる!」

 

「何度も言わせるな。 断る」

 

「しゃああああっ!」

 

蹴りをたたき込んできて、それで吹っ飛ばされる。

 

次の瞬間。

 

人質が、水にどぷんと沈んだ。

 

エイシェトが、何っと喚く。マーメイドが、しっかり距離を取ったことを確認して、水面下に人質を助けこんだのだ。

 

喚きながら、砂に躍りかかろうとするエイシェト。砂中のマーメイドを狙えるのだろう。だが、その時。

 

「わっ!」

 

「なんじゃあっ!」

 

脅かすだけの妖怪が、しっかりエイシェトをびっくりさせていく。

 

ナアマより反応が荒々しいが、隙が出来る事に変わりはない。そのまま、斬りかかり、肩口を切り下げていた。マーメイドも安全圏まで逃れる。外は安全圏であると信じる。

 

反撃開始だ。

 

肩を押さえて跳び下がったエイシェトに、気合いとともに雷撃をたたき込む。エイシェトが口から伸ばした手で、雷撃を握りつぶすが、この技は一発ではなく二段階型だ。頭上から、同時に雷撃をたたき込んでやる。

 

それが本命。

 

直撃した雷撃を受けて、エイシェトが凄まじい悲鳴を上げていた。

 

接近して、斬りかかる。

 

だが、煙を上げながら、エイシェトが両手を振り回して、防いでくる。一撃一撃が、鉈を振るっているかのような圧力だ。

 

しかし、守勢に回った。

 

そのまま、手刀に力を込めて、振り下ろす。

 

爪を鉈のようにふるって防ぎに来るが、その爪が砕ける。手刀が輝いている。ラフムを打ち倒した時と同じ現象だ。

 

ギリギリと食い込んでいく手刀。

 

エイシェトが慌てて両手でのガードに切り替えるが、それでも追い込んでいく。数秒の競り合いの結果、エイシェトは蹴りをたたき込んでくるが、それは予想済み。

 

体をひねって回避しつつ、力を掛けて、エイシェトの爪を割り折っていた。

 

悲鳴を上げるエイシェト。

 

爪に痛覚があるのだろうか。爪から血が……いやマガツヒか。それが、だらだらと流れていた。

 

「うぉのれ、無事ではすまさんぞ! まだ魔界にいる人間どもは、これ以上一人も渡さん! あれらは貴重な資源だ! これからの世界を変えるためのだ!」

 

「人を材料扱いしている時点で貴方とは相容れない。 貴方の仲間であるらしいナアマは大量虐殺する気満々であったし、リリスもまた魔界に多数の人を落として平然としていた。 貴方は人間を粘土か何か扱いか。 貴方達と根本から相容れないことはよく分かった。 斬る」

 

「ふん、そうはいくものかよ! 悪いが退かせて貰う!」

 

跳び下がると、エイシェトが霧のようなものに包まれて消えた。あれは何だ。悪魔のようではあったが。

 

ともかく、皆への加勢だ。

 

後方では、まだ戦闘が続いている。タオはまだ助けた人質の回復に掛かりっきりのようだ。それはそうだ。顔を食い荒らしたとエイシェトは言っていたのだ。無事であるとはとても思えなかった。

 

消耗しているが、幸い近くに龍穴がある。

 

今戦闘している悪魔を蹴散らしたら、其処で一旦回復して、ベテル日本支部に連絡を入れるべきだろう。

 

とにかくこれでは後を追いようがない。エイシェトから多数の人質を奪った存在が何者かを調べ上げて、追うための調査が必要になる。

 

かなり皆追い込まれていた。連戦もあるし、何より敵が多いからだ。悪魔達は、明らかに食肉を見る目で襲いかかってきている。その中には下位のものであるが邪神や堕天使も混じっているようで、手強いのはもはや仕方がなかった。

 

小一時間ほど激戦を続け、どうにか仕掛けてきた悪魔を全て片付ける。

 

タオが、真っ青になっていた。

 

倒れている生徒の周りに、大量の血が流れている。ユヅルが、顔は見ない方が良いと言っていた。

 

「ほとんど顔全てをえぐり取られていた。 もうこれは、何かしらの形で整形でもするしかないだろう」

 

「命は取り留めたよ……」

 

「早く運びなさい。 貴方の癒やしの力にも限度があるはずよ」

 

「板、用意した! 体の下に入れるぞ!」

 

イチロウが、板を持ってくる。だいぶ手際が良くなっている。板を静かに持ち上げ、揺らさないように煌とイチロウで息を合わせて龍穴に運び。そのまま東京へ転移する。

 

向こうでは医療班が待機していて、すぐに運んで行ってくれた。うわごとをつぶやいている生徒。顔がなくなってしまったのだ。あの女子生徒は、今後どうやって生きていけば良いのだろう。

 

顔を嫌っていたから食って救ってやった。

 

エイシェトの言い分には、強い怒りを感じた。

 

一神教の神は極めて自己中心的で傲慢な存在だが、それに対する反存在もまた大して変わらないのではないのか。

 

越水長官が来たので、ユヅルに任せる。ユヅルが、何が起きたのか、丁寧に説明。まずは龍脈で回復した後、少し休憩を入れる。

 

ヨーコはトイレにさっさと行く。まるで心を乱している様子がない。イチロウがぼやいていた。

 

「前はユヅルが怖かったんだけどな。 今はヨーコさんのが倍こええわ」

 

「そうだな……」

 

煌も、嫌な予感が消えない。ヨーコは何か隠している。それが決して良いことではない可能性も高い。

 

今はだが、戦力が少しでも必要だ。

 

越水長官が、ベッドと食事を用意してくれた。少し休んでから、即座にまた魔界に連れ去られた人たちを助けに向かうことになる。

 

今まではヒントがあったが。

 

次はそうではない。

 

ユヅルは憔悴している。連戦もあるが、ミヤズの生存確率が更に下がったからだろう。今は、それに対して、声を掛けられなかった。







※森長可

最近特に名が知られてきていますね。戦国時代四大DQN(若干古めの言葉。 最近だと輩が近いのですかな?)とも言われる戦国武将です。

幻魔としては最低ランク。

ちなみにこれで出番は終わりです。



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