真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
どうにか情報を集め、合流。追跡を仕掛けます。
ユヅルは冷静さを欠いている事もあり、それを自覚しているので、敢えて判断を全て煌に任せています。
煌もそれに答えるべく冷静に立ち回り。
そして騎士に邂逅することになります。
アティルト界に実体化する時に、壊れる悪魔がいる。
それは聞いていた。
崩れたビルを上がっている時に、それに襲われたのだ。体が痩せこけている馬のような頭部を持った人型の悪魔で、凄まじい勢いで躍りかかってきた。決して弱くもなく、かなりの激戦になった。
戦いの末に打ち倒したが。最後までうわごとで何かつぶやいていて、聞き取れなかった。
タオが聞き取れたようで、祈りを捧げている。
「一体何だったんだ」
「うん、感謝してた。 敵も自分の事も分からなくなっていたんだって。 元は仏教の護法神の一体だったんだって」
「神様だったのか。 あんな化け物になっちまったのか……」
「敗者の末路よ」
ヨーコがイチロウに言う。
相変わらず冷たいな。ユヅルは先に出ていて、こっちだと手を振ってくる。完全に戦闘主体に頭を切り替えて、ミヤズの事を考えないようにしているらしい。
戦闘ではイチロウも役に立てている。
幻魔鬼武蔵はもう呼び出していない。何度か使って言うことは聞かないは我ばかり強いわで、相性が最悪と判断したようだ。その代わり、ジャックフロストと、新たに作成したジャックランタンを用いている。ジャックランタンはいわゆる鬼火が妖精として認識されたものだが。
イチロウがつれているのは、カボチャの顔をしたかわいらしい妖精だった。どちらかというと、ハロウィンのイメージだろう。しかも知名度が高いからか、かなりの火力を展開することが出来る。
アイトワラスと連携することで、更に火力を上げられるので、イチロウが主力にしていた。
問題は護衛用の悪魔で、狛犬がまだ頑張っている状態だ。早めに何かしらの強い手持ちが必要だろう。
なんとか厳しいビルの坂を抜けて、タオとイチロウに手を貸して降りて貰う。ビルも基底部からへし砕けてひっくり返っているが、地震大国日本の基準で作られたビルがどれほどの破壊があったらこうなるのか。それに元のサイズがサイズだ。砂に覆われていても、かなりの高さがある場合がある。
場所によってはトロールや鬼にはしごになって貰って、二人を下ろさなければならなかった。
ヨーコは平然と札か何かの力で、ふわっと降りている。本当に多芸だ。
ユヅルが、指さす。
「橋があるが、悪魔がほとんど見当たらない。 あの上で襲われたら逃げ場が全くないのにな」
「しかも大量の悪魔が死んだ形跡がある。 十中八九何か強力な悪魔の罠であろう。 ただ、それがしの鼻でも感知できぬ」
「厄介だな……」
ともかく、こうなっては仕方がない。
橋になっているのは、多分元はもっと大きな橋だったのだろう。それが不安定に続いていて。その下は完全に奈落だ。底すら見えない。この辺りが品川埠頭だったとしたら、海底はそう深くはないはず。地殻まで抉られたのだろうか。
アオガミに周囲を見てもらうが、何かしらの敵性勢力は感知できない。
ひょいと姿を見せたのは、脅かすだけの妖怪だった。
そういえば、アマノザコがわーちゃんと呼んでいると言っていたか。わーと呼んだ方がわかりやすいかも知れない。
「私が行こうか?」
「手としてはありだが、相手はとっくにこちらに気づいているとみていいだろう。 だから、罠を承知で進むしかない」
「うーん、意外と煌ちゃんって脳筋気味な思考するよね」
「そうかも知れないな」
相手がナホビノになっている煌を悪魔と認識しているのなら。
恐らくは、皆と離れた瞬間を狙ってくる筈だ。だから、皆の中にわーとマーメイドに混ざってもらう。
こうすることで、多少は融通が利くはずだ。
黙々と橋を行く。
程なくして、不意に背後に、それが出現していた。
凄まじい剣撃。
アオガミともう少し時間をともにしていなかったら、確実に首をはねられていた。振り返りつつ、剣を受け止める。
火花が散り、吹っ飛ばされる。
見る。
いわゆるスケイルメイルを身につけ、羽根飾りのついた兜を着けたかなりの色男だ。肌が色白で、見事な金髪である。顔立ちは嫌みなほどに整っていて、美しさより冷酷さを感じさせた。
鎧などはかなり古めかしいが、顔はどちらかというと現代的だ。これは或いはだが。アティルト界の悪魔は、人間の思念を受けるのが原因かも知れない。実際、ナアマもそういうことを言っていた。
左手で既に印……恐らくルーンを切っている戦士。
皆は、既に似たような格好の戦士達に囲まれていた。剣を突きつけられている。動くなと言われているようだ。
凄まじい炎が、色男から放たれる。煌は即座に水で壁を作るが、押し込まれる。人間と引き離すつもりだ。
激しくはじかれて、吹っ飛ばされる。水蒸気爆発が引き起こされたのだ。
それを斬り破って、色男の戦士が突っ込んでくる。即座に剣撃をかわす。凄い技量だ。アオガミが舌を巻いた。
「純粋な剣の技で人間の究極に近い腕前だ。 煌、全力で応戦しろ。 魔法など使う余裕はないぞ」
「分かりました!」
数秒で数十合を交わし、更に押し込まれる。
足運びも非常にうまく、即座に右利きと見抜いて、左側に回り込みつつ連続で様々な剣の技を放ってくる。
両刃剣の技も剣道の技同様様々に昔は流派があったという話は聞いているが。現在では競技と化しているそれらと違って、一撃一撃が命を刈り取りに来る実戦剣術だ。
「俺の技をここまで受けるか。 相当な高位の神と見た」
「貴方は何者か。 人間をさらってどうするつもりだ」
「おいおい、それは俺の台詞だ。 魔界に人間を大勢連れ込んだ挙げ句に、雑な扱いで大勢死なせやがって。 あの女悪魔の仲間だとしたら、此処で斬るだけだ」
「あれとは敵対していると言ったら?」
大上段からの一撃を、両手を交差して受け止める。
火花が散る中、またルーンを切って大火力の火炎魔法をたたき込んでくる。ほとんどこれは余技に等しいことが分かるが。それでも無視できる火力じゃない。
眷属を展開する暇もない。
炎を打ち消すと、首を貫くような刺突を打ち込んでくる。
下がりつつ、跳ね上げるが。
ねじるようにして、腕を切り落としに来た。立て続けの技を、一つでも受け損ねたら死ぬ。
青い髪が切り飛ばされる。
まずい。
格闘戦の技量では、相手の方が上だ。
だが。
アオガミが、少しずつ相手の動きを読み始めた。アオガミも、アオガミ型神造魔神というらしいが。
凄まじい戦闘経験を蓄積していると、越水長官に説明を受けた。
それが、やっと体に馴染んできているのだ。
「これは凄い。 短時間で馴染んできているという感じがする。 まさか貴様、神格ではなくナホビノか?」
「どうもそうらしい。 分離して見せようか?」
「……皆、止まれ」
色男の戦士が飛び退く。
仕方がない。危険はあるが、見せるしかないか。
合一を解除。
そうすると、色男は何かしらのルーンを切って、いくつかを確認していた。そして、親指を舐めていた。
あの動作。
なるほど、正体が分かった。
「幻覚の類ではないな。 よし、フィアナ騎士団、剣を納めよ。 どうやら敵ではないようだ」
「今ので確認できた。 貴方はフィン=マックールだな」
「ほう、日本ではほとんど知られていないと聞いていたが。 よく知っていたな」
「知恵の鮭の脂を受けた親指で、あらゆる知恵を得る。 今のは、幻覚の類でないことを確認するために、魔法の知識を閲覧していたと見た」
ふっと笑うと。
色男、フィン=マックールは剣をしまっていた。
危なかった。
凄まじい実力者だ。格闘戦では勝ち目がない。魔法戦でもかなり厳しい。今の時点では、まだ勝てない相手である。
フィン=マックール。ケルトの伝承に登場する、フィアナ騎士団と呼ばれる集団を率いた人物だ。
ケルトは荒々しい伝承が多く、フィアナ騎士団もそれに漏れない。苛烈な内ゲバ、ろくでもない人間関係。
白い肌と金髪が高名だったフィンも、決して慈愛に満ちた名君などではなく。部下の一人であるディルムッドとの確執などで陰湿な行動を取っており、あまりイメージが良くないのも事実だ。
この橋を用いて、面倒な悪魔を狩っていたのだろう。
それに先の奇襲。
十中八九空間転移だ。
ラフムなども使っていたが、ある程度の実力者なら出来て当然なのかも知れない。恐ろしい世界である。
皆のところに行く。
フィン=マックールは神話では人格的に問題がある人物だが、見ている限り其処までの危険人物には思えない。
フィアナ騎士団に囲まれていた皆の中から、タオが進み出た。フィン=マックールに物怖じしていない。
「彼は邪悪な存在ではありません。 もっと早く気づけませんでしたか」
「すまなかったなお嬢さん。 邪悪な魔女とその下僕に19人連れられているのを見つけ、18人しか助けられなかった。 それもあって、残りの一人を心配して探していて、皆気が張っていたのだ。 そんな中、人間を連れてかなり強い神格がいるのを見たら、動くのもやむを得ない。 許してはくれないか」
「……皆は無事ですか」
「今、妖精の集落で手当てをしている。 酷い怪我をしているものも多くてな。 人間の技術は昔と比べものにならないほど進んだと聞いているが、魔法による呪いの傷などもあって、一筋縄ではいかない。 俺はこの皆を案内して戻る。 騎士団の皆は、妖精の集落に先に戻れ」
敬礼すると、一糸乱れぬ動きでヒュンヒュンと跳ねて移動していくフィアナ騎士団。
アーサー王の円卓よりも前の時代の英雄だが。知名度が低くとも、歴戦の度合いは低くないようだ。
ただ、フィアナ騎士団はまだフィン=マックールに従っているのだなとちょっとだけ思った。
色々な確執があっただろうに。
この辺りの悪魔は、明確に少ない。
恐らくは、フィン=マックールとフィアナ騎士団が片付けて回っているのだろう。あちこちに、見せしめのようにして、悪魔の残骸がおかれている。近づくと死ぬぞ。そういう警告なのだろう。死んだら消滅するのに、敢えて魔法で死骸を保存しているようだ。
ビルなどの残骸も少しずつ片付けているようで。今までより歩きやすい。
ただ、悪辣な悪魔は排除しているが、他はそうでもないらしい。
言い争う声が聞こえる。
見ると、小柄な老人と、蜘蛛のような下半身をもった若い男性。どちらも黒人だが。それらが、激しく言い合っていた。
「だから親父殿は頭が古い! 今はあらゆる手を使って、我々の時代を作るべきなのです。 あの忌々しい四文字の神が死んだという情報もある! ならば復権の時でありましょう。 一神教が弱まるのは確実だ。 だったら、今こそ人間達に我らを信仰させ、勢力を伸ばすべきなのです」
「そのようなことをしていては、結局は一神教と同じであろう。 我らはただ空と大地と生き物たちとともにあればいい。 人々が信仰を忘れるというのであれば、それはそれで仕方がないことなのだ」
「話にならぬ! それでは死んで行くのを見ているだけではないか! 私は緩慢な自殺などするつもりはないぞ!」
「自殺ではなく定めであろう。 時代にそって信仰は、常に変わっていった。 おまえも一神教も、他の様々な信仰も、時代に沿って変わっていくのを見ていたであろう。 我らは古き古き神。 それであれば、いずれは新しい存在にその座を譲れば良いだけのことだ」
なんだろうと手をかざして見ていたイチロウが。
若い方の神に見られて首をすくめる。
年老いた小柄な神の方は、煌を見て、近づいてきた。
「騒がしかったかな。 フィンどの、それとどこかの神格とお見受けするが」
「いや、構わない。 妖精の集落に近づかず、此処で麾下の精霊達と静かに暮らしている貴方達に、敵意を向ける理由がない」
「そうか、すまなかったな。 息子が騒がしくて。 わしはオニャンコポン。 貴方は」
「僕は夏目煌です。 よろしく」
相手が年長者で、敬意を払ってくれている。それもあって、自然と煌は態度が柔らかくなった。
ユヅルが咳払いする。
今は急いだ方が良いというのだろう。
人々がさらわれたことを、ユヅルが説明。今は救出された人の確認に向かっていることを話すと、頷いた。
「それはいかんな。 魔界だけあって、安全な場所の方が少ない。 急がれよ。 ほれ、アナンシ、おまえも何か言ってやれ。 何か見ていないか」
「私もそうあちこち行ってはいませんのでね。 ただ、古代中東の辺りの悪魔や、天使がこの辺りを嗅ぎ回っていましたね。 あれはどう考えても、人間を保護する動きではありませんでしたが」
「なるほどな。 俺も今はフィアナ騎士団に妖精の里を任せて、普段はベテルの傭兵のようなことをしている。 ベテル本部は急激にきな臭くなってきていて、力が足りないのだろう。 天使どもが何度となく助力を頼んできてそれを受けているのだが。 或いはベテル本部自体が、一枚岩ではないのかも知れないな」
ともかく、二人と別れる。
老神と蜘蛛のような神。オニャンコポンとアナンシだったか。
どちらも見送ると、また言い争い始めていた。これでは言い争いに決着はつかないと見て良いだろう。
親子が必ずしも理想的な関係を築けるわけではない。
ヨーコは、むしろ現実的なアナンシの方に興味を見いだしていたようだが。煌はああいう事を神自体が考えられるのは面白いなと感じてもいた。
遊歩道の残骸が見える。
これでもかなり片付けたのだと、フィン=マックールが苦笑いする。周囲を警戒しながら進む。
フィン=マックールが見つけ次第倒してしまうのだが。
それでも少数、人間に敵対的な悪魔が忍び込んでいるようである。
遊歩道を避けて、砂の上を歩きながら話す。
ユヅルは、やはり心配しているようで、ミヤズの事を聞いていた。
ミヤズについては、救出できたようだった。
「ああ、あの気丈なお嬢さんだな。 体は弱いのに、医療の知識があって、すぐに治療の支援に回ってくれていたよ。 何のために勉強をしているのか分からないような人間も多い中、将来のことを考えてきちんと技術を身につけているのは立派だな」
「そう言ってくれると嬉しいが、呪いが相手となると、どうしていいものか……」
「それについては問題が起きていて、それの解決をたのみたい。 守りについては俺とフィアナ騎士団でどうにかしてみせるが、解呪のためにちょっと必要なものがあってな。 それがややこしいことになっている。 出来れば貴殿の力を借り受けたいが」
「僕でどうにかなるのであれば」
坂が続く。
イチロウがこけそうになったが、身体能力が上がっているからか、地力で立て直す。それにしてもものすごい坂だ。見上げてみて、理解できた。何カ所かに見張り台が立てられている。
空を飛ぶ悪魔はともかく、地上を移動する悪魔に対しては、上から一方的に攻撃が出来るというわけだ。
フィアナ騎士団と言っても有名な騎士はそうはいない。ほとんどの騎士は無名な存在だろう。
そういった騎士達は、見張り台につめ、周囲を警戒しているようだ。
いくつもの馬防柵があり、それらには戦闘の跡もあった。馬に乗った悪魔が何度も襲ってきたらしい。
激しい戦いを何度も繰り返して、近隣の厄介な悪魔は駆逐した。それで、ようやく遠出が出来るようになってきたとか。
坂道も意図的に曲がりくねっていて。体力に自信がありそうなタオでさえ、かなりへばっているようである。
まあ、仕方がないことだ。
この坂の構造は、そのまま敵を食い止める防壁になる。この様子だと、妖精の里は近代兵器が出現する前の城塞に近い作りなのだろう。
妖精の兵隊がいる。
いずれもあまり強くはなさそうだ。
フィアナ騎士団の無名の騎士と一緒に、辺りを見回っていて。フィンが来ると、姿勢を正していた。
中には鎧を着たジャックフロストや、煌のところにいるより何周りか大きいピクシーもいた。
皆、妖精の里を守るために、武装して組織的に動いていると言う訳だ。
「妖精みたいな身勝手で移り気な連中を、良く組織化出来たものね」
「俺は優れた騎士団長とは言えなかったが、それでも戦いのノウハウはあるのでね。 妖精達は他の悪魔に脅かされ、ずっと怯えていた。 だから、戦って勝ち取った平和を捨てたくないのさ。 俺はそれを助けている。 フィアナ騎士団は無惨な末路を遂げたが、今度こそ同じ轍は踏まない。 それだけのことさ」
「そう。 ただの感傷に思えるけれど。 いっそ妖精の好きなようにでもさせたらいいのではないのかしらね」
「彼らがそれを望んでいない」
ヨーコが自己責任論に話を持って行こうとしているが。
フィン=マックールはそれは現実的ではないという話で返している。
まあ、それはそうだろう。
フィン=マックールは血で血を洗うケルト神話の騎士だったのだ。どうしてもリアリストになる。
自己責任論で全てが解決したら、もっと世の中は平和になる。
そうならないということは、誰かがある程度指揮をしなければならないということなのだから。
坂を越えると、今度はまた坂だ。こちらも見通しがつきづらくなっていて、非常に攻めにくい。
とにかく、滑り落ちないように移動する。
途中で何カ所か、見張り台が作られていて。
一つにはトロールがいて、うまそうに何かの果物を口にしていた。
それよりも、だ。
「おい、煌!」
「ああ、緑だ」
「驚いたわ。 此処にも緑があるんだね」
「砂漠だけではないさ流石にな。 ただ、ここまで緑化するのに、十年以上かかったが」
坂を下りると、広がっているのは、一面の美しい緑の沃野だった。
いくつか柵や、それにビルの残骸が意図的に残されている。視界を遮り、進軍を防ぐ目的だろう。
あちこちで、妖精が話をしている。
戦闘向きではない妖精なのだろうが、それなりに仕事のようなものをしているようだ。フィン=マックールを見ると、敬礼する。
この辺りも、徹底的に組織化されているというわけだ。
何かの橋だったらしい場所の下を通る。
滝だ。
水も流れている。
滝の辺りに、巨大な遮光器土偶のような姿。あれが荒脛巾神だろうか。恐らくは、滝を作り出しているのはあの神だ。
荒脛巾神は謎が多いようだが、蛇の系統の神であるのは間違いないらしい。ということは、大地の豊穣を司るはず。水を生み出し、大地を生み出す力もあるのかもしれない。
これは、美しい。
人が穢してはいけない光景だ。
「お兄ちゃん!」
「ミヤズ!」
草原の中に、服はボロボロだが、無事なミヤズが立っていた。
ユヅルが走り寄る。
タオが良かったと、涙を拭う。イチロウはもっと大げさに泣いていた。
ヨーコはただ静かにそれを見ているだけ。
煌も、それは同じだった。
感情が、あまり湧いてこない。
良いことであったのは、確かなのに。
龍穴を見つける。これを拠点に出来るはずだ。
一旦合一を解除、ミヤズはえっという顔をしたが。すぐに事態をユヅルが説明。煌は急いだ方が良いと判断したので、即座にユヅルとミヤズに提案する。
「僕が一旦東京に戻り、無事だった人員のリストを届ける。 ミヤズさん、誰が無事で、誰が動かせないのか分かるか」
「はい、分かります。 症状も把握しています。 メモか何かありますか」
「私が持っているわ」
ヨーコが手帳を取り出す。実務一辺倒で飾り気も何もない。それを見て、イチロウがうわという顔をしていた。
女子力とかそういうのを期待したのだろうが。
ヨーコに聞く聖マリナ女学院とやらの実態を聞く限り、女子力なんてものは幻想に過ぎないのではないかと煌は思う。
テキパキとミヤズが説明。
それを完璧にヨーコは一発で書き取る。メモを見せて、間違いないかも確認。流石の手際である。
西洋風のメイドの姿をした妖精が来る。
フィン=マックールが、シルキーだと紹介してくれた。日本で言う座敷童に近い性質を持つ妖精の一種だ。戦闘向きではないようだが、ミヤズを助手にして看病をしてくれているという。
とりあえず、まずは東京に戻って進捗の説明からだ。最悪医療班をこちらに連れてくることになる。
途中の強力な布陣を見る限り、生半可な悪魔では此処には入ってこられないだろう。ただフィン=マックールに問題が起きていると聞いていたし、それを対処しなければならなくなる可能性も高い。
東京に戻ると、即座に待機していた白衣の支援チームに状況を説明。越水長官がすぐに来て、医師とベテランの看護師を手配してくれた。魔界に入って大丈夫なのか心配になったが、そういう専門の医師は昔からいるし。デビルサマナーとして開花できなかった人物が、看護師として支援要員として働いているらしい。それならばまあ大丈夫か。
ともかく、一つずつ片付けるしかない。
まだ、事は収束などしていないのだから。
※妖精の楽園
原作でも美しい場所ですよね。ただ此処にけが人を放置したのはいただけないですね。
どうせ龍穴経由で東京に返せるんでしょうから、そうするべきです。
本作ではその合理に基づいて動くことで、結果として損害が減り、様々な影響が後に出ることになります。