真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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原作でのチュートリアル戦闘です。

これ、VVの復讐の女神編で追加される創世編を最初に遊ぶ時、あまりの敵の強さに愕然とするんですよね……

レベル差51とはいえ、ダイモーン相手に主力級の味方が総力戦を強いられるという……

勿論、全うに戦った場合、の話ですが。固有スキルとかを駆使している場合は話が別かと思います。





2、ナホビノ降誕

至近での落雷は、文字通り爆弾でも炸裂したかのような凄まじい音と破壊力を伴うものなのだが。

 

それはあまりにも静かで、空から槍が、「突き刺した」とでもいうような感じだった。

 

慌てた様子で振り向くもう一体が、音もなく首をはねられる。

 

更にもう一体が、胴体を真っ二つにされて転がる。

 

倒された「悪魔」達は、赤い何かになって消えていく。大量の鮮血が飛び散るようなこともない。

 

一体は必死に飛び退いて、かあっと叫ぶ。

 

三体を瞬く間に倒したのは、何かの光の塊だった。

 

それが、人型になる。

 

銀色の全身にフィットしたスーツだろうか。そういうのを身につけた、険しい顔の、青い短髪の精悍な男性だった。全身の筋肉も極めて実用的なレベルで逞しい。

 

「少年。 悪魔から私は人間を守る義務がある。 手を取れ。 今の私には力がほとんど残されていない。 奇襲で他は倒したが、この状況下でこの悪魔を倒せるかすら怪しい。 緊急措置として、そうすることで少年の命を守るしかない」

 

「……」

 

困惑する。

 

だが、悪魔と名乗った最後の一体は、何かつぶやきながら、巨大な炎の塊を作り出している。

 

あのサイズになると、至近で炸裂すればとんでもない破壊力になるはずだ。

 

躊躇している暇はない。

 

手を伸ばす。

 

青髪の男性は、一瞬だけ不審そうな顔をしたが。

 

その瞬間。

 

世界が、切り替わっていた。

 

体中が再構成されていくとでもいうのか。背も一気に伸びる。視界が高くなり、周囲が知覚できる範囲がぐんと広くなった。

 

全身に力が溢れる。

 

とにかく非力な煌だから、無力感にずっと苦しんできたが。

 

炸裂するような力の余波が内側からほとばしり、その凄まじい有様に困惑さえ覚えていた。

 

青髪の男性の声は落ち着いていて、機械的ですらある。

 

ともかく感情は見えない。

 

今は、内側からその声が聞こえた。

 

「この姿を見られると色々とまずいが、そもそもこの魔界で少年が生き延びるにはこうするしかない」

 

「夏目煌です」

 

「わかった煌。 それに合一して分かったが、少年というのも……いやなんでもない。 ともかくやるぞ。 あれは最下級の悪魔で、既に伝承も散逸してしまった異教の神々のなれの果てだ。 デーモンと言われている。 ギリシャ神話の霊を意味するダイモーンから派生した言葉で、一神教で一般的に悪魔を意味する言葉の一つだ」

 

「そんなものがこの世にいるんですか」

 

いるのだと、青髪の男性は言う。

 

いずれにしても、目の前にそれがいるのだ。

 

科学的ではないとか否定しても、その方が非論理的だ。

 

実際に何かしらの現象が起きたら、科学的に検証するのが科学だ。幽霊がいないと現在判断されているのは、明確な客観的観測が出来ないから。もしも幽霊を明確な客観的観測で発見することが出来たなら、いるものとして分析するのが当たり前である。

 

悪魔だって、それは同じだろう。

 

「良くもダチをやりやがったな! 消し飛べや!」

 

火球をたたき込んでくる悪魔。

 

それに対して、青髪の男性に言われるまでもなく、体が動く。

 

右手を手刀にすると、それが光を帯びて伸びた。

 

一閃。

 

横薙ぎの一撃が、火球を両断。

 

吹き飛ばしていた。

 

「なっ……てめえどっかの高位の神か!?」

 

悪魔が更に下がろうとするが、その時には間合いを詰めていた。

 

害そうとした……しかもこんな場所で……である。

 

容赦をする必要はない。

 

すっと印を組む。

 

これも、分からずとも出来ていた。

 

稲妻がほとばしり。

 

悪魔とやらを頭上から直撃する。

 

悪魔が悲鳴を上げて、それで落ちてきた。

 

落ちてきながらも態勢を整えて。それで反撃してこようとするが。踏み込むと同時に、手刀が斜めに切り裂いていた。

 

消えていく悪魔。

 

嘆息すると、内側から声がした。

 

「煌。 私と君は相性が良いようだ。 想定の8割増しで力を引き出すことが出来た」

 

「そもそもあなたは?」

 

「私は君たちが言うところの生体兵器に近い存在だ。 アオガミ型神造魔神という。 バイオテクノロジーで作り上げたものではなく、少し系統が違っているがな」

 

「分かりました。 アオガミさんと呼ばせてほしいです」

 

丁寧な反応だと、機械的に声が帰ってくる。

 

体がそもそも重力を一切苦にしていない。

 

それから、歩こうと思ったが。歩くと言うよりも、飛ぶように進む。生身のままだったら、こんな砂丘を越えることなどできないだろうという砂丘を、文字通りひゅんと音を立てて飛び越えていた。

 

砂が鋭い坂になっていて、人間のままだったらここで何もかも終わりだっただろう。砂地獄の内側みたいな場所に今まではいたのだと思い知らされる。

 

だが、それすらもこの姿になると、全く関係ないようだった。

 

坂を半分浮きながら、超える。

 

そして、その頂点に出て、唖然としていた。

 

黙り込んでしまう。

 

「どうした煌」

 

「見間違うはずがない。 あれは東京タワーだ。 アオガミさん、ここは一体なんなんですか」

 

「……記憶の大半が破損している。 私に分かっていることは、悪魔を排除し、人間を守る使命だけだ。 他にもいくつか分かっていることはある。 だが記憶領域の破損が激しく、思い出すのは困難だ」

 

「そうですか……」

 

辺りにはビルの残骸らしいものもたくさんある。

 

そして、小さな影がたくさんいた。

 

こちらを怖がって距離を取るものもいるが、少なくとも動物のようには見えない。当たり前のように浮いていたり、あるいは人型にも見えた。

 

近くのビルも砂だらけで、半ば埋もれているものも多い。酷く破損しているものも目立つ。

 

比較的状態が良い一つの中に入ってみる。

 

内部は思ったほど酷い荒らされ方はしていない。火災や地震による破壊ではなかったようだ。

 

全身鏡があったので、自分の姿が分かった。

 

青くて長い髪が、腰の先まで伸びている。

 

全身はアオガミ型神造魔神のスーツに近いもので、青い体で覆われていた。目も金色に変わっている。

 

瞳以外の顔はもとのままのようだが、これは一体。

 

右手を何度か握った後手刀にして、光の剣を出してみる。

 

先に悪魔を両断した光の剣は、何の苦労もなく出す事が出来た。

 

「煌、この辺りには多数の悪魔の気配がある。 休憩をするのは危険だろう」

 

「分かっています。 ただ、情報が欲しいんです。 僕は東京にいたはず。 ここもどう見ても東京……そのなれの果てに見える。 見てください」

 

鏡はかなり痛んでいる。

 

他にも色々な物資を見てみるが、ここは恐らくアパレルショップだったのだろう。

 

マネキンなどもあるが、いずれもが意図的に破壊されたものを除くと、なんというか風化していた。

 

だが、机などを調べてみると、内部からは比較的痛んでいない服などが出てくる。

 

この様子からして。数十年くらいが経過したのか。

 

そういう感想が出てくる。

 

いや、服の様子を見る限り、精々十数年かもしれない。

 

しまってさえあれば、特に痛んでいる様子もないのである。

 

「……」

 

何かがこちらを見ている。

 

赤い小さな人型だ。

 

頭の上が半分欠けていて、生物だったら生きていられるとは思えない。物陰から伺っていたそれは、見つめるとひっと声を上げて隠れた。

 

「悪魔の戦闘力は見た目とはあまり関係がない。 排除を推奨する」

 

「アオガミさん。 あれに敵意はないようだ。 情報を取得したい」

 

「冷静な判断だ。 分かった。 ただ、絶対に油断をしないように」

 

「分かっています」

 

先に襲ってきた悪魔は、少なくとも人間を殺すなと言われていると言っていた。

 

ただし、このアオガミとの合体形態になってからは、全力で殺すつもりに切り替えてきたように思う。

 

つまり、今は人間と見なされていないということだ。

 

ああいうのがいたら、次は容赦なく殺すつもりで襲ってくるだろう。

 

攻撃はしないから、出てきてほしい。

 

そう呼びかけると、赤い何かはこわごわと出てきた。

 

尻尾も生えている。幼稚園児くらいの背丈だ。なんだかどうしてこんなところで生きていられるのか分からない。

 

「あ、あんたどこかの神かい?」

 

「僕にも正体はよく分からない」

 

「目覚めたばかりなのかな? 見たよ。 さっき混沌勢力の悪魔を何体か、一瞬で倒しただろ。 ただものじゃないよな」

 

「それもよく分からない」

 

いくつか聞きたいと言うと。

 

条件があると言われた。

 

まあ、条件次第ならと頷くと。

 

指さされたのは、今見つけた服だった。

 

「オレ達はミマンっていって、ご主人様に命じられて、ここダアトで珍しいものを集めているんだ。 その代わりにご主人様が、色々と便宜を図ってくれているんだよ。 あんたは人間の知識があるのかい? 今、凄くいい遺物を的確に見つけたみたいだけど」

 

「そうかも知れない」

 

「煌。 このミマンという存在が主人としているのは、恐らく高位の悪魔と見て良いだろう。 接触をするつもりなら、慎重にすることを推奨する」

 

「分かりました」

 

だが、これでは右も左も分からない。

 

ある程度は危険を覚悟の上で、虎穴に入るしかないだろう。

 

周囲の収納箱を漁って、状態がいい服や靴を見つける。煌も知っているメーカーのものがあった。

 

そのうちのいくつかを与えると、ミマンは喜んだ。

 

「おお、ありがたい! これでオレはしばらくはメシにありつけるよ」

 

「その主人とやらの場所に案内してくれないか」

 

「分かった! あんたならきっと主人も悪い風にはしないよ! 金に汚い奴だけど、金がある内は優しいんだ」

 

「悪魔は契約を重んじる。 そういう観点では、このミマンという存在の言葉は正しいだろう」

 

アオガミが付け加えてくれた。

 

頷くと、砂漠を降りてついていく。

 

途中、六メートルはある巨大な蛇がいきなり砂を破って飛び出してきた。

 

ひゃあっとミマンが叫ぶが、即座に踏み込んで左右両断する。

 

ニシキヘビ並のサイズだったが、両断したら、すぐに消えていく。

 

「蛇の神は世界中に逸話がある。 それらの中で、伝承が薄れ獣同然にまで落ちてしまった存在だろう」

 

「た、助かった。 会話が出来る奴はご主人様がオレ達に手を出さないように話をつけてくれているんだけどな。 ああいうのは、どうしてもいて……」

 

「急ごう」

 

「わ、分かった」

 

やり方が分かる。

 

散らばった服などをそのまま手も触れずに浮き上げて、ミマンに渡してやる。ミマンは驚いたように煌を見たが。とにかくちょこちょこと砂を下っていく。

 

いずれにしても、見た目より身体能力は高いようだ。

 

やがて低いところに降りる。

 

舗装道路のなれの果て。

 

左右にはビルの残骸が散らばっている。どれもこれも酷い破壊を受けていて、倒壊していたり、中身の構造が露出しているものも多かった。

 

「アオガミさん。 これらのビルは、どちらかというと風化したというより、原子爆弾のような大量破壊兵器による強力な破壊で砕かれたように見える。 ただ不審なのは、大量破壊兵器によるものにしては爆風などの影響がほぼ見られないことだ。 先に入ったビルの中にあった服や靴などから考えて、この破壊が起きてから十数年から二十年程度と僕は判断するが」

 

「煌はかなり理性的で整理された頭脳を持っているな。 運動神経には問題があるようだが」

 

「その通りです。 どうにもこればかりは」

 

「その体だと仕方がないだろう。 ともかく気をつけろ。 まだ私は力を発揮し切れていない。 発揮し切れたとしても、どうにもできない悪魔は幾らでもいた。 最悪の場合は、即座に逃げを選択することを推奨する」

 

頷く。

 

歩道橋があった。かなり破損しているが、それでも乗っても壊れる事はなさそうだ。

 

その先に、青い光を吹き上げているものがある。

 

だが、アオガミが付け加えた。

 

「これは今だから見ることが出来ている。 本来はここ魔界以外にもあるもので、力が巡っているものだ。 龍穴という」

 

「龍穴……」

 

「そうだ。 ミマンの主人はここに住み着いているようだな。 龍穴は力の根源でもある。 もしも住み着いているのなら、相当に高位の悪魔だと見て良いだろう」

 

「……分かりました」

 

ミマンがひょいと龍穴に飛び込む。

 

煌も覚悟を決めて、それに続いていた。

 

 

 

奥には洞窟のような空間があった。入り口は狭いが、奥には広大な空間が広がっている。

 

それだけじゃない。

 

明らかに様々な場所に通じているのが分かる。

 

無言で辺りを見回すと、上からおい、と声がした。

 

宝……というには、何もかもを雑多に積み上げている。その中には貴金属も多いようだが。

 

それ以外の、ゴミとしかいえないものも多いようだった。

 

「空気が存在しない空間だ。 合一を解除すれば一瞬で死んでしまうだろう」

 

「合一?」

 

「この形態は合一神という。 記憶が少しだけ戻ってきた」

 

「分かりました。 覚えておきます」

 

ともかくゴミ山を見上げると。

 

其処には緑色の体で冠を被った、ミイラみたいな人影がいた。全身にじゃらじゃらと、悪趣味なアクセサリを身につけている。

 

動きはまるでシンバルを叩く猿のおもちゃだ。

 

煌も資料でしか、そういうものがあるという事は知らないが。

 

「ミマンが世話になったな。 それに、面白いもの持ってきたじゃねえか。 買い取るぜ。 マッカに変えてやるよ」

 

「マッカ?」

 

「……おまえどこから来た。 見た感じだと、人間と神が混ざって……はー、なるほどな。 あのいけ好かねえ四文字のカス野郎が死んで、ナホビノの禁が解かれたってのはどうやら本当らしいな。 ケケケ、面白くなってきやがった。 マッカもやるし、おまえは支援すると面白そうだ。 色々サービスしてやるよ」

 

手元に何かが出現する。

 

それは金貨のように見えたが、体にすっと吸収される。

 

マッカだと、ミイラみたいな奴は告げてくる。

 

「魔界の通貨だよ。 致命傷でも何でも、死んでさえいなければマッカ次第で回復してやる。 おまえの様子だと、かなりの高位の神格と合一していやがるし、眷属も作り出せるだろう。 眷属だったら、死んでても蘇生してやるよ」

 

「あなたは? 僕は夏目煌。 彼は記憶を失っているが、アオガミ型神造魔神というそうです」

 

「お、ちゃんと名乗ることが出来て偉いな。 俺様はギュスターヴ。 ちょっとした顔役だよ。 とりあえず、順番に説明しておくか」

 

まず第一に、ここは魔界と呼ばれる場所。ダアトともいうらしい。

 

それも比較的最近に作られたものだそうだ。

 

なんでも十数年ほど前に、東京にてとんでもない規模の大災害が起きて、東京がまとめて消し飛ぶ事件があったとか。

 

だとすると、今まで煌がいた……生活していた東京はなんだったのかと不審だが。

 

ともかく今は話を聞く。

 

「その時に恐らく世界でもっとも力が強かった上に、自分のルールを周りに押しつけていやがった四文字の神……おまえ達風にいうと一神教の神YHVHが恐らく死んだ。 ただし、それをやった奴らも大きな損害を受けてな。 それ以降、一神教の手下ども……ベテルっていったな。 それと悪魔が、終末の続きのぐだぐだの戦いを、ここで飽きもせずにやっているって訳だ。 ま、この辺りはそれでも平和な方だがな。 東京駅だとかがある辺りは完全に混沌勢……YHVHをぶっ殺した連中の根拠地だし、入ったらまあ生きては帰れねえだろうな」

 

「……」

 

「とりあえず、おまえは放置しておくと面白そうだ。 いい遺物があったらどんどん持ってきてくれ。 マッカがあれば、出来ることは多い。 俺様が回復してやるし、俺様のコレクションも譲ってやる。 例えば、サービスだ。 ほれ」

 

何か丸いモノが手元に来た。

 

魔石というらしい。

 

「そいつは力の結晶体で、おまえ達みたいなのが食えばそれだけで傷を回復することが出来る。 そんな便利なものだからな。 魔界には自然発生するから探せば落ちているものではあるが、便利だから見つけ次第誰かが拾っちまう。 それで悪魔どももマッカと同じように取引に使っているわけよ。 もっておいて損はないぜ。 それの上位版の宝玉とかも、持ってくるもの次第では譲ってやるよ」

 

「どういうものがほしいんですか」

 

「俺様は人間の文明が好きでな。 おまえさん、半分は人間だろ? 人間の知識は当然あるはずだ。 おまえさんから見てもゴミでも、とにかく文明の品だったら、なんでもウェルカムだ。 この世界はもう先がない可能性があるんでな。 俺様としては、少しでもその遺産を収集しておきたいわけ。 普段はミマンどもにやらせているんだが、あいつらサボるんだよな」

 

肩をすくめるギュスターヴ。

 

それと、と指を鳴らしてくれる。

 

すっと感覚が広くなる。

 

「安全な場所も用意してやるよ。 おまえくらいの神格だったら、好みにカスタマイズできるはずだ。 この空間は俺様の庭も同じでな。 あんまり内部でやんちゃしなければ、笑って許してやるよ」

 

「至れり尽くせりですね」

 

「そりゃそうだ。 合一神の貴重さは、俺様はよく知っているからな。 あの臆病で残虐なYHVHが徹底的に生じないように芽を摘んだが、今やそれもなくなった。 こっちとしては、これから世界が怒濤のように動くのが手に取るように分かるし、しかもそれを特等席で見物できる。 これ以上の娯楽はねえよ。 散々退屈な時間を、嫌になるほど過ごしてきた身としてはな」

 

あまりにも見返りが大きすぎるな。

 

更に、という。

 

「眷属を増やすことが出来たら、俺様の知り合いにもアクセスできるようにしてやる。 最近YHVHの野郎から切り離された存在だが、まあおまえさんには悪くはしないだろうよ」

 

「分かりました。 ありがとうございます。 まだ合一神の禁だとかナホビノだとか分からない事だらけですが、時々話を聞きに来ても良いですか」

 

「いいぞいいぞ。 俺様としてもおまえみたいな奴に教えるのは大歓迎だ。 ただし、まだおまえさんは力のほとんどを発揮できていねえ。 くれぐれも無駄死にはするんじゃねえぞ。 つまんねえからな」

 

一礼すると、その場を離れる。

 

どうやったのかさえ分からないが、いつの間にか龍穴を出ていた。

 

アオガミが、いくつかアドバイスしてくれる。

 

「サービスとやらで、消耗は回復してくれたようだ。 友好的な存在ではあったが、悪魔であったのかは私にも分からない」

 

「そうですね。 まるで俯瞰しているかのような発言でした」

 

「龍穴に対する干渉能力からしても、慎重な対応を推奨する。 敵に回した場合は、極めて危険な相手だ」

 

「分かっています」

 

アオガミは機械的だが、極めて論理的で、話していてとても相性が良い。

 

それから、無言で歩き出す。

 

ここが大破壊を受けた東京のなれの果てで、魔界。

 

人間の世界でないというなら、今までの怪奇現象の数々にも納得がいく。

 

だが、だとしたら。

 

今までの生活はなんだ。

 

煌も東京で生まれ暮らした人間だ。両親だっている。

 

その全てが嘘だったとでもいうのか。

 

ともかく、少しでも情報を得なければならない。無言で、煌は東京のなれの果てだという街の残骸に、歩き出していた。

 

 

 

手をかざして、高所から様子を見ていたが。

 

あれはどう見てもナホビノだ。

 

やっぱり合一神の禁忌が解かれたな。これで二人目だ。偶然としては片付けられない。一人目は極めて危険な奴だが。今度のはまず見極めなければならない。

 

ふうと嘆息すると、ベテル本部に連絡を入れる。

 

本来の任務はある人物のサーチ&デストロイだったのだが。これはちょっとばかり、先に連絡を入れておいた方が良いだろう。

 

「……こちら19代目」

 

「何かあったか」

 

「長官を。 できるだけ急ぎで」

 

「分かった。 すぐに取り次ぐ」

 

周囲は式神に警戒させる。

 

まったく、面倒が増える。

 

正直個人としてはナホビノが出現したところで、どうとも思わない。この有様の世界だったら、まっとうなナホビノがさっさと四文字の神の代わりになってほしいとさえ考えている。

 

ただベテル本部の連中がナホビノの禁が破られたこと、その力の行使者を見つけると極めて厄介だ。

 

実際問題、既に出ているそいつは。

 

今、追わなければならないのだから。

 

極めて危険な奴で、敵と見なすや人間だろうが非好戦的な悪魔だろうがとにかく容赦がないのである。

 

既に無関係の人間などにも被害が出ている。

 

それもあって、手間が増えるのだけは勘弁してほしかった。

 

ほどなく長官が出た。

 

「私だ」

 

「越水長官。 どうもちょっとまずい事態ですねこれは」

 

「分かった。 ちょっと待ってくれ」

 

最高ランクの無線防護に切り替えた。

 

悪魔は電子戦に関しては無類の強さを誇り、生半可な電子防御なんか紙のように貫通される。

 

それは味方側も同じ事。

 

そこで、防御を最大限まで掛けた上で。

 

暗号で会話するのだ。

 

「ナホビノ発見。 迷い込んだ人間が、合一したものと推測される」

 

「了解。 分析を開始。 問題があるようなら排除せよ」

 

「ターゲットとの優先度は」

 

「ターゲットは恐らくベテル支部に直に来る。 大天使が麾下の部隊を集めて迎撃の準備を整えている。 こちらとしては、いざ仕掛けてきたらさっさと部下を待避させるだけだ。 君は新しいナホビノを観察、危険人物と認識したら排除せよ」

 

通信を切る。

 

了解、とぼやくと。ぼっさぼさの髪をかき回す。

 

おしゃれの欠片もない服装で、ぱんぱんと砂をはたいて立ち上がった。

 

よく見ると狸みたいで愛嬌があると言われる顔らしいのだが。

 

あんまり興味がない。

 

そもそも、19代目になってしまったのも、色々あったせいであって。本来だったら、ずっと分家で暮らす事になっていただろうし。

 

「さて、あの少年。 悪い子じゃないか、お姉さんが見てやるとしますかね」

 

「もう一人活動しているのはどうしますか」

 

「……あれは放置で」

 

あれは面倒くさい。

 

実は知っている相手なのだが。いずれにしても、あまり戦いはしたくないのだ。

 

伸びをすると、動き出す。

 

とりあえず、まずは自然に接触するか。それからだと、「19代目」は思った。






※アオガミ

アオガミ型神造魔「神」。原作では「人」ですが本作では「神」にしています。

分霊を利用した量産型の「ある神格」ですが、原作では主人公を「少年」と呼ぶのに対して、本作では名前で呼んでいます。これは合一した時の描写からも分かるように、煌くんの体の秘密に気づいたからですね。

煌くんも相手が明確に年上で目上の存在なので、素直に敬語で話しています。

原作ではとても親身に話を聞いてくれることもあって、理想的なパートナーですね。本作でも的確なサポートで助けてくれる存在です。
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