真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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4、花園に魔の手が迫る

エイシェトは高所で見ていた。

 

連れ込んだ人間はあらかた奪回され、呪いでしばった十名も、順番に回復が進んでいる。極めて面倒な状況だ。

 

このままだと完全に失敗しかねない。

 

そこに現れたのは。

 

カディシュトゥの同志だった。

 

箒にまたがった、幼い姿顔立ちの、いかにも魔女という姿の娘である。ただ、手指などは球体関節になっている。

 

カディシュトゥの一角。

 

アグラトである。

 

全ての魔女の女王であり、悪魔の女王などと言う派手な設定をユダヤ神秘主義で与えられている存在。

 

非常に知恵が回るため、カディシュトゥのリーダーであるリリスからも、最も信頼されている存在だ。

 

「エイシェト姉様、随分と苦労しているようですね」

 

「おまえこそ、東京に仕込んだ例のものは大丈夫なのだろうな」

 

「問題ありませんよ。 確実にマガツヒを回収しています。 ナアマ姉様やエイシェト姉様が陽動で動いてくださったおかげでね」

 

「ふん、陽動などしたつもりはないわ。 おまえが勝手にそれを陽動としただけであろうが」

 

カディシュトゥの構成員四名は、いずれもが「楽園の蛇」ともされるサマエルの妻とされている。

 

そういう意味では、いずれもが同じ存在の妻であるのだが。

 

設定だけである。

 

そもそも「楽園の蛇」はサタンだったりルシファーだったりサマエルだったりで、神学者が好き放題をほざいているのが現実。

 

あのうぶなナアマなんかは、二度もいてこまされた煌というナホビノが気になって仕方がないようだし。

 

エイシェトとアグラトは、犬猿の仲だ。

 

リリスは何を考えているか分からない事もあって、エイシェトはあまり好きではなかった。

 

仲間内でも、それくらい確執と対立があるのである。

 

「それで何をしに来た。 ごっこ遊びに忙しいはずだが?」

 

「鴉が動き始めていましてね。 恐らくは知恵をまとめて始末するつもりでしょう」

 

「!」

 

「フィアナ騎士団とフィン=マックールは油断もなく、それにベテルの大天使が動いている事もある。 近々この辺りで大規模な戦闘が起きる可能性が高い。 そう言っておきましょう」

 

舌打ちするエイシェト。

 

確かにフィン=マックールは手練れの指揮官で、荒脛巾神だけではなく、あの辺りには他にも日本系の神格がいるようだ。

 

此処は腐っても日本であり、日本の神格には大きなアドバンテージがある。

 

それを考えると、かなり正面突破は厳しかったのだが。

 

それは好機だ。

 

あの呪い、今解除されていっているようだが、それでも簡単に解除できるようなものでもない。

 

だとすれば、まだ好機はある。

 

少なくとも、もう少しこの辺りを引っかき回すべきだ。

 

鴉が何を目的に動いているのかはよく分からない。

 

あいつが元々天界のダークサイドであり。

 

汚れ仕事をやる掃除人であるのは周知の事実だ。

 

それにしても動きがおかしい。

 

エイシェトと実は狙いがほとんど同じなのではあるまいか。

 

無言でしばし考え込んでから、アグラトに返す。

 

「分かった。 今の情報を生かすとしよう」

 

「そうなさいませエイシェト姉様。 私は先に東京に戻ります」

 

「そうしろ。 ごっこ遊びでマガツヒを回収できるのであればやすいものだ。 精々油断したところを斬られんようにな」

 

「ふふ、大丈夫。 分霊体を作るのは大の得意でしてよ」

 

アグラトが消える。

 

エイシェトは腕の傷を見つめて、舌打ち。

 

爪を砕き割られた。

 

手なんか抜いていなかった。

 

ナホビノはまだまだ強くなる。それを考えると、極めて状態はまずいと言える。

 

リリスはともかく、ナアマやエイシェトでは、近々単騎ではナホビノとやりあうのは難しくなるだろう。

 

今回大きな隙が出来るとしても、だ。

 

周囲に無数の影が出現する。

 

同志として連れてきている存在達だ。

 

それぞれにリリスが強力な悪魔を同志として配備した。アグラトにはあのルー・ガルーがいる。

 

そして、エイシェトにも。

 

「エイシェト様、それでいかがなさいますか」

 

「今は待ちだ。 あの呪い、簡単に解除はできぬ。 それよりも、あの花園が戦乱に踏みにじられる方が早いと見て良いだろう。 その時、可能な限りひっさらう」

 

「……分かりました」

 

さて、此処からだ。

 

待つことは慣れている。

 

そもそもとして、カディシュトゥなどとはいうが。

 

この組織だって、別に古くからあるものではない。

 

リリスは古代バビロニアに祖がある古い悪魔ではあるが、それ以外の三名は、比較的最近の……千年も歴史がない創作悪魔だ。

 

連携がとれていないのも、力が半端なのも当たり前。

 

一神教の異端の存在でなければ、これほどの力など得られてはいなかっただろう。

 

ともかく、待つしかない。

 

好機を狙って、猛獣のように獰猛に襲う。それ以外に、策はないのだ。

 

エイシェトは醜い自分を憎む心の権化だ。

 

その憎しみは、人間の憎しみの中でも深く重い。

 

だからこそエイシェトは強い。

 

そう自分に言い聞かせる。

 

今のうちに準備をしておく。

 

鴉とは、カディシュトゥも対立している。

 

まさか鴉とかち合う訳にもいかない。

 

ともかく、ずっとそうしてきたように。今は、ただ静かに待つだけだった。

 

 

 

(続)







花園に迫る影は一つではありません。

やられっぱなしで帰るつもりはないエイシェトだけではなく、他にも邪悪が迫っています。

果たしてフィンとフィアナ騎士団と連携して、花園と負傷者を守り切れるのか。

要塞防衛戦が始まろうとしています。





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