真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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とても可哀想な負け方()をしたベルフェゴールですが、真Ⅱではメシアプロジェクトで最強の強化人間として作られたザインを一蹴していたりとかなりの強豪です。

ちなみに本作での彼の負け方の元ネタは、原作にあるマーメイドとの悪魔会話ですね……





2、楽園を後に

デメテルはベルフェゴールを倒したことを告げると、一瞬だけまさかという顔をした。これは、つぶし合ってくれれば重畳とでも思っていたな。

 

それは理解したが、別に驚かない。

 

ギリシャ神話の神々は人格者にはほど遠い。

 

いわゆるオリンポス十二神で、まともなのはハデスとヘスティアだけ。そういう話すらもある。

 

それは知っていたので、デメテルの態度に、煌は別に何も思わなかった。頭にこなかったかと言えば嘘になるが。

 

それはそれだ。

 

ともかく、デメテルがいくつか話をしてくれる。

 

「バアルは古くは至高天の座についていた存在ですわ」

 

「至高天の座とはなんだ。 前にも小耳に挟んだことがあるが」

 

「それはいずれ知っていくことですのよ」

 

「バアルとは中東にいた雑多な神々の事だ。 それが座に着くというのは、具体的にどういう意味なんだ。 或いはバアルというのはカナンの主神のバアルだけを指すのか」

 

デメテルは、くすくすと笑う。

 

そして、それ以上は自分で知るようにとはぐらかした。

 

その後は、いくつか実用的な情報をくれる。

 

「ベテル本部が総力戦の準備をしているのと同時に、各地の神々も動き出していますわ。 現時点では利害が一致しているから、ですわね」

 

「東京駅の近辺の魔界に混沌の悪魔が集結していると聞いたのだが、その件か」

 

「ええ。 混沌といっても、実際にはダークサイドのものだけではなく、一神教の神によって悪魔呼ばわりされた神もいますわね。 例えば敵で確認されているイシュタルや、チェルノボグなどはそうなりますわ」

 

「すまん、どういう神様なんだ煌」

 

咳払いして、説明をする。

 

イシュタルは古代バビロニア神話の女神で、豊穣神のもっとも古くて野性的な側面を表す神だ。

 

ヨーコを一瞥したが、別に構わないという顔をしていたので、娼館が神殿になっていて。巫女が娼婦を兼ねていたこと。占いを王と巫女長が性行為をすることで行っていたことなどをある程度ぼかしながら説明すると、イチロウはえっという顔をした。

 

「そ、そんな神様がいるのか」

 

「豊穣神系統の神々は輪廻や生死を司ることが多く、その結果きわめて「奔放に」なりやすい。 ギリシャ神話のアフロディーテや北欧神話のフレイヤもこの系統だ。 現在の価値観からすると頭のねじが飛んでいるとしか思えない信仰だが、これはそういう信仰の形なんだ」

 

「そ、そうか」

 

この様子だと日本でも性と密接に結びついた祭りが結構あることは告げない方がいいか。ショックを受けるかも知れない。

 

チェルノボグは、スラブ神話の存在だが。

 

スラブ神話は一神教によって迫害され尽くして、原型がほとんど残っていない。そのため、謎が多い神なのだと話をしておく。

 

迫害と聞いて、イチロウは悲しそうにする。

 

そう思ってくれるのなら、多少は相手も報われるだろう。

 

「強力な布陣に対して、ベテル本部はどうするつもりか。 貴方方はギリシャ支部ということだが、誰を出すつもりなんだ」

 

「うーん、これは話してしまっていいですわね。 こちらからはヘカトンケイレスが出ますわ」

 

「!」

 

ヘカトンケイレス。

 

三世代にわたる骨肉の争いが繰り広げられるギリシャ神話にて、台風の目になる神格である。

 

五十の頭に百の腕を持つ異形の三兄弟で、それぞれに名前がある。個としてはヘカトンケイルといい、ヘカトンケイレスは三人をあわせた複数呼びである。

 

このヘカトンケイレスの異形を嫌った初代のギリシャ神話の最高神ウラノスが彼らをギリシャ神話の地獄であるタルタロスに追いやった。その暴挙に、大御所政治をしていた大地神ガイアが激怒。

 

ウラノスの子であるクロノスに、権力奪取をたきつけた。

 

結果ウラノスからクロノスが権力を奪った。このクロノスの一族が名高いティターン神族だ。

 

しかしクロノスもヘカトンケイレスを疎んでタルタロスに追いやったため、今度はガイアの差し金や、何より神々の大戦ティタノマキアにて勝利したゼウスがクロノスを追い払うこととなった。

 

ゼウスとクロノスの戦いであるティタノマキアでは、戦力がずっと拮抗していたのだが。ヘカトンケイレスをゼウスが味方につけ(更にはサイクロプス達がゼウス達の武器を作り上げたことで)、拮抗が崩壊。ヘカトンケイレスの凄まじい強さの前に、一気にクロノスらティターン神族は敗北に追いやられることになる。

 

つまりオリンポスの神々と実力的に拮抗していたティターン神族が負けるきっかけになるほどの実力者達だ。

 

「それほどの実力者が出るのか。 本当に危険な戦いになるのだな」

 

「北欧支部、エジプト支部もかなりの強者が出るという話ですわね。 インド支部からもいくらかの部隊が出るとか。 日本支部も、それなりの戦力を出さないと、戦後に立場が危うくなりますわよ」

 

「わかった、越水長官に話しておく」

 

「ナホビノ、貴方は可能性を秘めた稲穂ですわ。 また邪悪な存在が世界を脅かしているのに気づいたら、知らせて差し上げますわね」

 

デメテルが消える。

 

その場に最初からいなかったように。

 

ユヅルが少し考え込んでいた。

 

「どうした」

 

「いや、ギリシャの神々にとってヘカトンケイレスは切り札の筈だ。 それを出す事をわざわざどうして知らせた」

 

「そうだな。 僕もそれは疑念に感じた」

 

それも、公認スパイだと言っているアルテミスが眷属にいるのだ。

 

デメテルほどの神格が、アルテミスの力を感じ取れない訳がない。

 

だとすると、何かあるな。

 

ゼウスと連携して動いているのか、或いは何かしら独自の動きをしているのか。いずれにしても、一旦は楽園に戻るべきだろう。

 

楽園に戻る。

 

タオがぬれタオルを被って横になっていた。

 

看護師達が引き上げ始めている。残りの動かせない生徒は二人。

 

イズンが状況を話してくれるが、生命の危機は恐らくはもうない、ということだった。ただ、二人ともずっと眠っているようだが。

 

「フィアナ騎士団やフィンさんは回復しただろうか。 妖精達も」

 

「ええ、それは大丈夫ですよ。 タオさんがとても献身的に力を使っていましたから」

 

「そうか、良かった」

 

一旦解散とする。

 

皆、東京に戻り。目が覚めた後は、タオも一度東京に戻った。

 

戻る前に東京の状況を聞かせてくれる。

 

縄印での事件は、ガス爆発とそれによる錯乱が原因だとされているらしい。いくら何でも無理があるような気がするが。

 

自衛隊がでて交戦していたという目撃例も出ているだろうに。

 

マスコミが嗅ぎ回っているようだが、まともな証言など得られていないようで、ニュースにはガス爆発の件での死者数について、等と解説しているようだ。

 

まあそんなものか。

 

SNSには化け物を見たという情報が行き交っているようだが。

 

それも化け物とかふざけてるのかと、笑われているらしい。

 

ただ、懸念点も多いとか。

 

「ユヅルくんとイチロウくんが何度か呼ばれて、悪魔退治に出ていたわ。 やはり悪魔が、東京に侵入してきているの。 それに……」

 

「まだ何か問題があるのか」

 

「そうね、話しておいた方が良いと思う」

 

シャカイナグローリーは、あくまで四文字の神による担保で成立していた奇跡。

 

それが失われればどうなるか。

 

人々どころか、四文字の神に都合が悪い存在は消し去られたとしても。東京は東京だ。その東京そのものがなくなるという。

 

まだ、今日明日の事ではないらしい。

 

少なくとも18年はもった。

 

だが、東京の一部で明らかな異常が見つかり始めているそうだ。

 

人々に影響が出ているかは分からない。

 

ただ、少なくと18年前の事件以降に生まれた世代の人間は、影響は受けないだろうという話も有るそうだ。

 

そういえば、煌も一世代前からやたらと健康診断が厳重になったという話は聞いている。その影響調査のために、徹底的な健康診断をしていたのだとすれば、話の筋は通るには通る。

 

或いはだが、シャカイナグローリーが確実な減衰を始めていて。

 

それが影響しているのだとすれば。

 

あまり、楽観できる状態ではないのかも知れない。

 

「東京を救うために、今いくつかの手段が講じられようとしているけれど、もしも全てが失敗したら、東京はこの砂漠の世界になってしまうわ。 悪魔も平然と地上を闊歩するようになるでしょうね」

 

「……分かった。 具体的な対策が分かったら、教えてほしい。 僕から他の誰かに言うことはしない」

 

「ありがとう。 煌くんはしっかりしているね。 それじゃあ、頼むよ。 私もちょっと限界だから」

 

タオが東京に戻る。

 

入れ替わりに来たのはフィンだ。

 

もうすっかり体も良いようである。

 

「よう煌どの。 ベルフェゴールを倒したそうだな」

 

「アッシャー界に出現したてだった事、それにピンポイントで弱点を突けたことが大きかっただけです」

 

「そうか、だがそれでも立派だ。 君ならば、この先に行く資格があるかもしれないな」

 

「?」

 

いずれ分かると、フィンは苦笑する。

 

そして、もう少しだなと、解呪を続けている患者達を見やった。確かに残り二人。責任を持って、東京に返さなければならない。

 

 

 

魔界は昼も夜もない。

 

龍穴の外で何体かの悪魔を交代で待機させ、何かあったら呼びに来るように指示。煌は、龍穴の中の安全地帯に行くと、ベンチに腰掛けていた。

 

アオガミと分離しても大丈夫な数少ない魔界の土地だ。

 

那須与一が、長大な和弓の手入れをしている。

 

あの狙撃にどれだけ助けられたか分からない。

 

馬も用意してあげられればより良いのかも知れないが。馬の悪魔は、どれも癖が強いのが実情だ。

 

「煌。 私の記憶領域を復元しているが、いくつか分かってきたことがある」

 

ベンチに並んで座っていたアオガミが、アルテミスと遊んでいるわーを見ながら言う。アルテミスは子供みたいな性格なので、わーとは気が合うようだ。

 

わーはアマノザコがいるときは一緒に遊んでいることが多いが。

 

今はアルテミスと一緒にいて。

 

アルテミスも笑顔を崩していなかった。

 

「座というものは、どうも神々がそろって目指しているもののようだ。 私の中にそういう記憶がある。 ただその座というものも、どうも存在が曖昧でな」

 

「至高天という言葉もありましたね」

 

「うむ。 至高天というものについてもよく分からない」

 

「一神教文学には出てくる言葉ですね。 ダンテの神曲などには、神のいる最高位の天という意味で出ては来ます。 しかしそれらはあくまで後付けの言葉に過ぎません。 神々が目指す意味が分からない」

 

しばし二人でああでもないこうでもないと話す。

 

ほどなくして、呼ばれたので、合一して表に。

 

イズンがかなり疲れていたが。また一人、解呪された生徒が運ばれていった。これで残るのは一人か。

 

最後の一人は、見覚えがある。

 

確か三年生で、ユヅルにつぐ秀才として知られていた人物だ。此処に運ばれてきていた時、もっとも傷が重くて。それでタオが何度か惜しみなく力を使って、それで回復させていた。

 

そうでなければ死んでいた可能性も高い。

 

彼が最後か。

 

イズンを回復させると、医師と話す。

 

既に様態は安定しているが、生徒の右手を一瞥。右手は肘から先がなくなっていた。流石にこれはどうにもならない。

 

学校でエイシェトの配下の悪魔に捕らえられた時にでも、ちぎられたのかも知れない。出血多量で、此処に運ばれてきた時は息も絶え絶えだったようだ。

 

しかし、それでも持ち直した。

 

魔界のことは忘れて貰う事になるとしても。

 

家族の元には返してやりたかった。家族との仲が良好であれば、だが。

 

イズンがリンゴの力で、解呪を始める。

 

看護師も最低限だけ残って、後は東京に戻る。打ち合わせが終わったので、煌はフィンに誘われて見回りに行く。

 

フィンが姿を見せると、フィアナ騎士団の戦士達は敬礼するし。妖精達も敬意を払う。煌の眷属から離れた雑多な悪魔達も、既にすっかり馴染んでいた。

 

高いところに出る。

 

楽園が一望できる。

 

美しい花園に、緑の沃野。

 

湧いている泉、滝。

 

「東京といったな。 人間の都が復興しても、この緑は決して無駄にならない」

 

「そうなんですね」

 

「ああ。 仮に東京とこの魔界が一つになった時、此処の草花は全てが東京の生命と混じり合い、力強さを与える。 外来種が混ざるようなことにはならず、過酷なコンクリートジャングルでさえ、生きていく生物の力になるだろうな」

 

「それは素晴らしいですね」

 

世間には虫とか気持ち悪いとかいう人間もいるが。

 

この星の生物の七割は虫などの節足動物で、脊椎動物なんて少数派だ。

 

そういう観点からすると、むしろ虫たちの方がこの星の主役だとも言える。

 

植物だってそう。

 

そういう観点では、人間は常に自然に畏敬を持たなければならない。

 

同時に、人間の思想を押しつけず、距離を適度に取らなければならないだろう。

 

もしも東京で様々な生物が、コンクリートジャングルの中でも逞しく生きることが出来るなら。

 

それはとても喜ばしいことだろう。

 

「俺はフィアナ騎士団の戦士数名を連れて、近々東京駅だかの戦場に出向く。 あの後大天使どのが直に来てな。 傭兵としての仕事だ」

 

「わかりました。 残りの滞在時間で、周囲の危険は全て排除しておきましょう」

 

「頼もしい。 では、早速行くか。 何カ所か、うっとうしいチンピラ悪魔がうろついている。 何、俺と君であればあっという間に片付くよ」

 

そのまま、フィンとともに悪魔を蹴散らして回る。

 

多少足を伸ばして、拠点を作って群れているような悪魔も散らして回った。

 

流石にフィンの実力はたかく、現時点の煌よりもやはりまだまだ強い。これは精進が必要だなと、煌は思った。

 

翌日、最後の患者が東京に戻る。

 

それと同時に、煌も一度楽園を後にした。

 

東京に戻ったのは久しぶりだ。

 

排泄も睡眠も食事さえもほとんど必要なくなった今。楽園で手を振って見送ってくれる妖精やフィアナ騎士団の戦士達こそが。

 

煌の故郷の存在とさえ、思えてしまった。

 

 

 

東京に戻ると、アオガミはまた調整に出向く。その間、煌は身体測定をされたが、やはりまた身体能力が上がっている。

 

前に40㎏弱まで上がっていた握力は、左右どっちも80㎏を超えていた。

 

確か人間のギネス記録が200㎏弱だから、それには遠く及ばないにしても。とっくに平均的な男子の握力は上回っている。

 

他の身体能力もどれもこれも上がっていて。

 

特に100m走では11秒が出たので、煌自身も驚かされた。50mで8秒台とかだったのに。

 

食事についても取りはしたが、完全に嗜好品だ。

 

それどころか、魔界で見つけた保存食とか食べてもまったく腹を下す様子すらない。胃の方も丈夫になっている。それどころか、生物としての胃が機能していない可能性すらあり。取り込んだものを全て栄養にしている可能性さえ高い。

 

そういうことなのだろう。

 

そして一人で鏡を見て、分かる。

 

前以上に、瞳が金色に近づいてきている。既に黒は消えかけていて。茶色が強くなっていた。

 

身体測定を終えた後、会議に出る。

 

会議までにはアオガミも戻ってきていた。

 

アオガミの方は、ほとんど調整が必要なかったようだ。それにしても、スーツを着ていると、本当に越水長官とそっくりだった。

 

会議の内容は、やはり魔界の東京駅についての話だった。

 

「現在いくつかの事が新たに分かった。 魔界の東京駅近辺では、国津神が一部生き残っているようだ」

 

「国津神?」

 

「この国の支配者神格である天津神の、前にこの国を支配していた神々だ」

 

イチロウが聞いてきたので、煌が答えておく。

 

頷くと、順番に越水長官が説明してくれる。

 

ぱっとプロジェクターで陣営の図が出る。

 

既に斥候が出ていて、どの辺りにどんな風な戦力がいるかを、分析しているらしい。

 

現時点では、ほとんど東京駅近辺の全域が真っ赤っかである。

 

全て敵だと言うことだ。

 

ヨーコが挙手。

 

流石にヨーコも、越水長官には敬語を使う。

 

「随分と敵の守りは堅いようですけれど、勝ち目はあるのでしょうか」

 

「現在ベテル本部から、相当数の天使が日本に到着したことが確認されている。 更に、北米、欧州から、腕利きのデビルサマナーが数名来るそうだ」

 

「腕利きね……」

 

ヨーコが失笑気味だ。

 

移動中などに聞いたのだが、18年の出来事は世界中に混乱が波及した。東京は元々各国の腕利きのデビルサマナーがしのぎを競っていたらしく、それが故にファントムソサエティという悪徳デビルサマナーの集団も、主力を派遣していたそうだ。

 

それが18年前に一気にみんな消し飛んで、パワーバランスが崩れた。

 

日本にいたファントムソサエティも、悪魔崇拝を公然と行っていたガイア教団も壊滅的なダメージを受け。更に天使達も大きな被害を受けた結果、世界中で名だたるデビルサマナーが戦死して。今ではデビルサマナーの枯渇は日本だけではないらしい。

 

後続の育成もあまりうまくいっていないらしいと、ヨーコは嫌に事情に詳しく、ユヅルもそう聞いていると言っていたっけ。

 

「現在、ギリシャ、インド、北欧が戦力を集めていて、そろい次第総攻撃を始める予定だそうだ。 日本からは、夏目煌くんを表向きは主力として出す。 ただ、それと同時に、いくつか解決しておくことがある」

 

まず第一の問題として。

 

東京に、厄介な悪魔が出現し始めているそうだ。

 

魔界のあちこちにほころびが生じている。

 

それもあって、かなり強力な悪魔が姿を見せている。

 

ユヅルとイチロウ。それに残り少ないデビルサマナー達が対処にあたっているが。とても手が足りないという。

 

それにだ。

 

カディシュトゥの行方も、八雲ショウヘイの動きもつかめていない。

 

少なくともこれらの問題を解決しない限り、日本支部は動けない。

 

そして此処で動かないと。

 

戦後どんな無理難題をふっかけられるか、分からないという事だった。

 

「煌くん。 魔界から戻ったばかりですまないが、早速いくつかの案件をこなしてほしい。 今回は何手かに分かれて貰うつもりだが、君はヨーコくんとバディを組んでほしい」

 

「分かりました」

 

ヨーコは制御できないし、何より信用できないからだな。

 

それは煌もすぐに分かったが、それについてどうこうと此処で言うつもりはない。

 

更にユヅルは単独で。イチロウはタオと組んで、問題解決に動くと言うことだった。

 

ユヅルはかなり力を増している。

 

それに、だ。

 

部屋に入ってきたのは、ミヤズだった。

 

「ミヤズ?」

 

「支援役として動くことになりました。 敦田ミヤズです。 よろしくお願いします」

 

すっと頭を下げるミヤズ。

 

微弱ながらデビルサマナーの素質があるらしいと言う話だったが。この間、エイシェトに殺されそうになった時。

 

明らかに体の中の何かが開くような感触を覚えたらしい。

 

それで調べてみると、日に日にデビルサマナーの素質が高まっており。ついに先日には、かなり高い水準まで昇華していたそうだ。

 

それに、である。

 

「悪魔を倒してマガツヒを取り込むことで、体の衰弱にブレーキを掛け、更には健康を促進できる可能性も高い」

 

「しかし危険です!」

 

「分かっている。 だから最初は支援からだ。 様子を見ながら、煌くんと組んで貰う。 煌くんは、イチロウくんを短時間で一線級のサマナーに引っ張り上げた実績がある。 頼むぞ。 今は一人でも戦力が必要なんだ」

 

不安そうに煌を見るユヅル。

 

煌としても、確かに戦力が増えてくれるのは歓迎だ。

 

それに、ユヅルに聞かされている。

 

ミヤズの体が弱いのは本当だ。

 

今までに二度、入院中に後二年もたないかもしれないと言われているそうである。そのたびにミヤズは死の淵から戻ってはきた。

 

しかしそれにも限界がある。

 

いずれ限界がくれば、ミヤズは。

 

だったら、確かに悪魔が保有する膨大なマガツヒを吸収して、それで健康を促進する手はある。

 

会議が終わった後、ユヅルとともに、空いた時間を用いて、国会議事堂近辺に出向く。ユヅルも、それは反対しなかった。

 

支援専門といっても、まずは悪魔との戦闘になれてもらう必要がある。

 

頷くと、ミヤズは何体かの悪魔を召喚した。

 

いずれもとても小さくて、戦闘力には欠ける悪魔達だ。ただ、どの悪魔も回復に特化しているようである。

 

「回復と支援は任せてください」

 

「分かった。 ただミヤズさん、いざという時には自分の身を自分で守れないといけない。 だから、自衛のための直衛になる悪魔を一体は従えた方が良いだろう」

 

「分かりました。 でも、まずは実戦になれないと。 それと、魔法の力は見て驚きましたが、現代医療だって負けていません。 看護師としての力が必要になったら、いつでも言ってください」

 

これは、随分とやる気だな。

 

或いは体が弱いだけで、勇敢な性格であるのかも知れない。

 

確かにエイシェトを激昂させて、注意を自分に引きつけて。奇襲を成功させるきっかけを作ったりと。

 

はっきりいって肝は据わっている。

 

イチロウよりもこれは伸びが早いかも知れない。

 

ハンドヘルドコンピュータを重そうに手につけているのがちょっと心配だが。

 

それでも、やるしかないだろう。

 

さっそくわーに出て貰って、神谷町の辺りを歩く。前にかなり掃討したからか、悪魔がすぐによってはこないが。それでも釣れる。

 

ミヤズはかなり筋が良くて、さっと展開している鬼やトロールの間に隠れる。動きは要領が良い。

 

体が弱いという時点で、学校ではハンデになる。

 

そんな中、ミヤズがいじめられたという話は聞いていない。案外堅物の兄貴よりも、かなりしっかりしているのかも知れない。

 

飛びかかってきた大型犬のような悪魔を、目の前で真っ二つに切り下げる。

 

悪魔が消えていくのを見ても、ミヤズは別に恐れてもいなかった。

 

雑魚悪魔はこっちを見ているばかり。

 

あれらを勧誘して手札を増やすのも良いだろう。

 

時間は限られているが、やるべき事はやっておく。そのために、煌はユヅルとともに、ミヤズのブートキャンプを続けた。







※敦田ミヤズの参戦

本作では此処でデビルサマナーとして参戦します。

原作ではエジプト支部周りでシナリオに絡んでくるくらいで、結局終始非戦闘要員でしたが。

かといって、妖精の楽園に放置しておいたのは色々まずかったと思うんですよねえ。

あそこって会話やNPCの状況を見る限り天使がナホビノ候補を殺したりしていたようですし、明確な悪手だったと思います。

本作ではミヤズの素質を越水長官が見抜いたこと、何より猫の手も借りたい状況もあり。

ミヤズは支援要員として参戦することになります。


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