真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
※アマビエ
九州の妖怪です。真VVで登場して話題になりましたが、その前に鬼太郎五期にも登場してそれなりの出番がありました。
ちなみにけったい極まりない姿は実は原作(残されている絵)に極めて忠実です。
とても面白い妖怪なので、メガテンでもファンが多いようですね。
序、アマビエの話
代々木公園の悪魔を掃討し、後処理専門のデビルサマナー達に引き継いで戻る。ツバメさんが来れば早そうなのだが、あの人は東京に出た大物の邪神とちょうどやりあっているらしくて、こちらには手が回らないそうだ。
戦力的にもあの人でないと対応が難しいレベルだとかで。
煌としては、何も出来ることはなかった。
ともかく、研究所に戻る。被害を最小限に抑えられて良かった。事前に何かが実体化する兆候が出ていたらしく、立ち入り禁止にして警戒網を敷いていたらしい。それで民間人への被害はゼロに抑えられたし。
自衛官も負傷者が十五名出るだけで済んだそうだ。重症者もいないということで、まあ満足すべき結果なのだろう。
ミヤズもかなり奮戦したらしくて、一緒に戦ったフォルネウスがしきりに褒めていた。
煌も今回の岩の塊のような巨神にはかなり手こずって、ギリギリの勝利だったので。背後を守ってくれていたのはありがたい。
一人で出来る事なんて、どれだけ拡大しても限界がある。
ミヤズが戦力になる事は。
非常に大きいと言える。
ともかく、龍穴につながる輪転炉で一旦は回復。それから、会議室に出向く。倒して情報を得た神は、オオヤマツミというらしいが。
荒神のまま回復しておらず、ずっと荒れ狂う心ばかりが伝わってきていた。
会議室には自衛隊のお偉いさんが来ていて、ちょうど越水長官に何か説明していた。東京以外でも、悪魔が出ているらしい。
幸い東京は現在悪魔にとっても中心活動地で、それ故に首都圏以外にそれほどたいした相手はいないようだが。自衛隊も演習の名目で出なければならず、相応に弾薬を使わされているようだ。
敬礼して戻る自衛隊のお偉いさん。ただ、越水長官に不満を持っているのが分かる。
前線で戦っている煌達がまだ子供にあたる年齢なのを見て、あまり良くは思っていないようだ。
確かにそうだろう。
国を守るのは。
本来は大人の仕事だ。
子供が前線に出て命を貼っているのは、末期の証拠である。
「戻ったか。 見事な活躍、ご苦労だった。 ミヤズくんも支援をしっかり果たしたと聞いている」
「いえ、ほとんど何も出来ませんでした」
「ターボばあちゃんの気を引いてくれなければ、自衛官が十人単位で殺されていた。 もう少し自己評価を高めても良いと思う」
「……はい」
煌がフォローすると、少しだけ寂しそうにミヤズがうつむく。
ユヅルはずっとミヤズが心配だったのだろう。
落ち着かない様子で、苛立ってもいるようだった。まあ、気持ちはとても分かるので、何も言わない。
まずは状況について解説される。
現在、東京駅近辺の魔界では、既に小競り合いが開始されているそうだ。
最前衛の軍団としてギリシャ神話の神々が出ているそうなのだが、この暴れぶりが凄まじく。
迎撃に出た悪魔が片っ端から蹴散らされ、橋頭堡の確保に成功した、ということである。
話に聞いたところに寄ると、ヘカトンケイレスが出ていると聞く。
それならば戦果にも納得がいく。
そのまま、いくつかの話を聞かされる。
まず東京にて、どうも妙な力が感知されているという。
現在死人などは出ていないが、明らかな体調不良を訴える人々が出ているとか。しかも、その中心は。
「浄増寺ですか」
「ああ。 結界に問題がないことは確認している。 こちらでも仏教系の護法神を何体か配置しているのだが、彼らには異常が感知できていない。 だとすると、何か西洋系の魔法かもしれない」
「ベテル本部が戦力をあらかた引き上げているのがこうなると厄介ですね」
「そうなるな」
ユヅルが冷静に言うと。
苦々しげに越水長官が言う。
それだけではないという。
「内偵を進めていた新宿方面でも動きがあってな」
「新宿方面。 魔界の、ですか」
「そうだ。 新宿方面で、天津の神々の気配がある。 あまり大物はいないようだが、日本の支配神格だ。 救出し合流できれば力になるだろう。 こちらにも戦力を派遣したいところだ」
「問題が増える一方ッスね」
イチロウがぼやく。
確かにその通りである。
しかも、戦力を分けているほどの余裕もないだろう。ベテル本部を黙らせるには、相応の戦果を東京駅方面で挙げ。
更には今問題になっているその新宿方面での天津神達を回収するのも必要になってくる。
まだあると言う。
越水長官が出てきなさいと言うと、魚と鳥があわさったような妙な容姿の悪魔が出現する。
アマビエと名乗ったその悪魔は、自分をアイドルだとかいうので、皆が真顔になるが。越水長官が一旦はミヤズに預けるという。
ミヤズも頷く。
なんでもアマビエは支援が得意で、パンプアップ系統の魔法が使えるのだとか。
ミヤズがそれを熱望していたところに、渡りに船だ。ただミヤズより少しまだ強いので、使いこなすには修練が必須になるそうだが。
多少からだが軽くなってきたとミヤズは言っているが。
ずっと体が弱かったのだ。
ちょっとやそっとで改善するとも思えない。
「ええと、そうなるとまずどう動けば良いんでしょうか」
「うむ、状況を整理しよう。 まず東京駅近辺での戦闘だが、煌くん、タオくん、それにユヅルくん。 君たちでまずは動いて、橋頭堡確保の状況と、交戦の状態を見てきてほしい。 悪魔達の猛反撃が行われているという話も有る。 橋頭堡を確保したという話の後、何も進展の話がない。 ということは、恐らくは大本営発表という奴で、苦戦しているのだろう」
「分かりました。 大物を倒せるのならなんとかします」
「現地にはフィンが来ているようだ。 連携できるようなら連携してほしい」
頷く。
あのフィンと連携して動けるなら、これ以上心強いことはない。
ただ、東京の方も問題がある。
会議室に入ってきたのは、ツバメさんだ。
いつものように緊張感がない表情で、狸そのものである。
ただ今日は着込んでいたどてらがボロボロだったが。
「ツバメくん、邪神パレスを討ち取ったのか」
「どうにか。 しかしあんな大物が出てくるとは、割としゃれにならないっすね。 混沌勢も一枚岩ではなくて、好き勝手にそれぞれが動いているとみて間違いないっすねえ」
今の煌では勝てない相手だ。
そう言われていたが。
この人の苦戦ぶりを見る限り、それは事実なのだろう。
咳払いすると、越水長官は言う。
「イチロウくん、ヨーコくん、ミヤズくんは、ツバメくん……いや、ライドウとともに行動をしてほしい。 休憩を取ってから、浄増寺に向かってくれ」
「ちょっと待つのじゃ」
「どうしたのかね」
不意に発言したのはアマビエだ。
今まで黙っていたが、勇気を振り絞ったようである。
そして、窮状を訴えてくる。
大国主命が、東京駅近辺の戦乱の中に孤立している件をどうにかできないか、というのだ。
それとオオヤマツミを連れていけば、荒神から戻せるかも知れないと。
オオヤマツミは強力な神格だった。
話によると、山の神の総元締めらしいから、強いのは納得である。確かに手を貸してくれれば、大いに心強い。
考え込んだ後、越水長官は言う。
「分かった。 ただし一つずつ順番にやっていくことになる。 今は東京駅近辺での戦闘が激しく、とても即座に支援を出せる状態ではない。 問題を順番に片付けながら、助けられるようなら助ける」
「そ、そうか。 大国主命様は、わらわを藁にもすがる思いで送り出してくれたのじゃがのう……」
「案ずるな。 こちらでも快速の悪魔は何体か手持ちにしている。 伝令と返事を必ず持たせる。 今の時点では、ベテル本部も、混沌の悪魔達も、下手な動きをしなければ国津神と戦う理由がない。 しばらく持ちこたえれば、必ず助けにいこう」
「ありがたい話じゃ! 感謝するぞ!」
ユヅルのハヤタロウに、書状が渡される。
既に用意してあったらしい。
ともかく、これで一旦は解散とする。
煌はすぐにでも出られるが、念の為に回復と調整を済ませておくことにする。ミヤズが声を掛けてきた。
休憩後、ツバメさんと動いてほしいということだったが。
その前に、いくつかやっておきたいそうである。
「いくつか参考にしたいことがあるので、良いでしょうか」
「構わないが、僕でいいのか。 戦闘のことはユヅルに聞けば細かく教えてくれると思うが」
「お兄ちゃんはどうしても甘くなるので」
「ミヤズ……」
ユヅルが頭を抱えたが。
まあ、確かに分からなくもない。
ミヤズは今、ユヅルのためにも強くなろうとしている。それに、看護師志望の人間が、目の前でたくさん人の死をみたのだ。
今、それを覆せるというのなら。
そうなろうという覚悟を、誰が止めることが出来るだろうか。
アオガミが言う。
「ミヤズは胆力が優れているが、身体能力が伴っていない。 もしも悪魔に集中的に狙われると危険だ。 しかも積極的に相手の気を引く事を考える節もある。 今のところはうまくいっているが、状況が悪いとすぐに命を落とすぞ」
「分かっています。 アオガミさんとしてはアドバイスはありますか」
「現時点では徹底的に守りを固めて、堅実に行くのが正しいだろう。 本人の戦闘スタイルから考えても、それが正解だと判断する」
「分かりました。 その通りだと僕も思います」
アオガミのアドバイスを、そのままミヤズに伝える。
堅実な戦闘。
守りを主体に、とにかく回復と支援だけに集中する。
それ以上は考えない。
もしも決定的な好機がある時だけ、悪魔の気を引くようなことをする。それだけで良いだろう。
そう言われて、ミヤズは頷いていた。
後は休憩に入る皆を見送ってから。
ソピアーのところに顔を出す。
どうも悪魔の力をそれぞれの眷属にもシェアできるようなのだ。相応にマッカを消費するが。
写し身というらしいのだが。
要するに煌の中にある悪魔の情報を用いて、様々に悪魔の力を支援できるということらしい。
マーメイドが氷の力を強化したいと言う。
水と相手を眠らせる歌ぐらいしか使えない。もっと色々出来るようになりたい。そういうのだ。
地面に水同様に潜れること。
それを用いて奇襲を仕掛けられること。
長時間詠唱で、水魔法の破壊力を大幅に引き上げられること。水を氷に切り替えることも出来る。ただ氷の方はまだ未熟だが。
それらを考えると、充分に優秀だ。
直近でもギリメカラやベルフェゴールとの戦いで、決定打を作り出している。ただ、まだ上を目指したいと言う訳か。
悪魔の基礎的な能力も上げられるらしい。
ソピアーが、くすくすと笑った。
「悪魔はとにかく強さに貪欲だ。 一人強くしてやれば、他も皆が我も我もとなるであろうな」
「全体が強化できるのならやすいものだ。 できる限り、全体を強化していきたい」
「それには其方が得た情報が多ければ多いほど有利だ。 元々其方は多数の知識を持っている。 それらを活用する方法などもそれぞれに生かしてやるといいだろうな」
「……なるほど」
勿論、煌自身もそうやって強化していけるらしい。
ともかく、マーメイドの力を更に上昇させる措置を執る。他の悪魔達も。
やはりというか。那須与一が馬がほしいというが。悪魔の馬で、乗りこなしやすいものはあまり多くはないだろう。
ともかく、それもどうにか見繕う。
弱くて力になれないと嘆く眷属は、よろこんで悪魔合体に応じる。そういうのを見ていると、煌としても思うところはある。
しばし強化を続けて、そして戻る。
後は、形だけ、煌も少しだけ休憩を取った。
ユヅルとタオとともに、国会議事堂近くの龍穴に出る。なんでもこの近くから、東京駅付近の魔界につながっているらしい。
既に何人かのデビルサマナーが来ていた。
神父の格好をしている者もいたが。
いずれも癖が強い姿の者ばかり。
若い者は煌達と同年代のようだが、既に老人になっているデビルサマナーも少なくなかった。
各国の精鋭達だろう。
「日本のデビルサマナー達か? 足を引っ張るんじゃねえぞ」
「ふん、おまえさんだって若造だろうが」
いきなり黒人のアメリカ系らしいデビルサマナーと、英国系らしい老人の神父が火花を散らす。
咳払いしたのは、監察役についていたらしいドミニオンだ。
前に交戦した奴と違って、言動はまともである。
「ここから先はベテランのデビルサマナーにとっても死地に近い。 一秒足りとて油断為されるな」
「りょうかーい、ケケケ。 報酬ははずんで貰うからな」
そう抜かしたのは、全身をじゃらじゃらアクセサリで飾ったいかにも軽薄そうな男のサマナーだ。
さっきから、ずっと黙っているのは恐らく日本支部のサマナーだろう。巫女の格好をしているが。
はっきり分かっているのは、此処の全員がツバメさんの足下にも及ばない。
一目で分かる。
死にに行くようなものだなこれは。
それから、引率されて、ぞろぞろと向かう。既に第一波が向かったらしく、この班は第二波だそうだ。
タオにさっきの軽薄男が絡もうとしたが、ユヅルが腕をつかんで止める。にやついていた男が、腕がびくともしないのを悟って、青ざめる。
眼鏡を掛けた青年であるユヅルだが。
既に魔界での戦闘を多数経験して、膨大なマガツヒを取り込んでいる。人間状態だと、今の煌だと手も足も出ないレベルである。多分ボクシング辺りだったら、ヘビー級のチャンプを十秒でマットに沈めるだろう。
めりめりと音を立てるユヅルがつかんだ腕に、男が明らかに恐怖の顔を浮かべた。
「くだらないことをしていないで、戦闘に集中しろ。 この先の気配の危険さに気づくこともできないのか」
「くそっ! てめえ、後ろから刺されても後悔するなよ!」
ユヅルが手を離すと、男は先に行く。
タオが咳払い。
やり過ぎだと、視線で釘を刺している。
煌もその通りだと思うが、問題はこれからだ。
トンネルに入る。そして、其処を抜けると。
雪国ではなく、文字通りの地獄だった。
上空で、凄まじい数の悪魔と天使が戦っている。橋頭堡は確保したかも知れない。逆に言うと、それしか出来ていないと言うことだ。
墜ちてきたパワーが、地面に激突。
ひっと、さっきの軽薄そうな男が悲鳴を上げる。
タオが回復の力を即座に使い始める。上空から強襲してくる数体の悪魔。即応したユヅルと煌が、それぞれ悪魔を出す。
天狗礫と火車、それに那須与一。那須与一には、悩んだ末にケルピーを用意した。妖精の一種で、馬の妖精なのだが。
人間を背中に乗せると水に飛び込んで水死させ、肉をむさぼり食うという恐ろしい妖馬である。
ただし乗りこなせれば最高の名馬として活躍する。
この手の水怪としての馬の伝承は他にもあるが、これが適任と煌は判断した。
文字通り馬を獲た那須与一は、機動しながら立て続けに空から来る悪魔に矢を浴びせる。更に展開した悪魔達が対空攻撃をたたき込むが、一体が抜けてきた。
星に顔が着いたような悪魔だ。しかも、呪いの魔法を発動すべく、既に詠唱を終えていた。
放たせたら、まとめて殺される。
だが、その時煌は既に跳躍し。
星の悪魔の顔面を、手刀で貫き。雷撃を体内にそのままたたき込んでいた。
着地と同時に、悪魔が爆散する。
「周囲警戒!」
ユヅルが叫ぶ。
何人かのデビルサマナーは完全に腰が引けてしまっている。ヨーコはこの実態を知っていたのだろう。
これでは、第一陣は恐らく。
ユヅルはハヤタロウを出すと、即座に行けと指示。ハヤタロウも頷くと、大国主命を目指して駆けていった。
倒れているパワーが呻く。
「此処の悪魔はあまりにも強い。 死ぬぞ。 すぐに逃げた方が良い……」
「人を守ろうと考えられるのだな。 貴方は立派な天使だ。 天使が皆そうであれば良いのだが。 眷属になってくれ。 僕が貴方を助けよう」
「……」
パワーがその提案を受け入れる。煌はパワーを受け入れると、その情報も取り込んでいた。
さて。
上空の戦闘はともかく、指揮官を潰さないとまずいな。
煌は周囲を確認。
明らかにそれらしいのがいる。
かなり距離はあるが、強烈な気配。恐らくは、ベルフェゴールと同等か、それ以上とみていい相手だ。
「貴方方の中で、力不足を今の一瞬で感じた方は、即座に撤退を! 此処は最前線で、まだ強い悪魔が幾らでもいる! 本当に死ぬぞ!」
「ひ、ひいっ!」
さっきのチャラ男が逃げ出す。
他にも数人、無言で逃げていった。ドミニオンが呆れたが、それでも死ぬよりはマシだろう。
残ったのはさっき言い合っていた黒人のアメリカ系サマナーと、老神父。それに寡黙な巫女だけだった。
※ベテル本部が投入したデビルサマナー
18年前の東京受胎以降、激しいサマナー同士の戦いが続いた結果、人材が激減。今では出がらしみたいな人材しかいません。東京駅近辺の魔界に連れてこられた連中は、一応その中では本当にエリートです。この有様で、ですが。
良く淘汰圧を掛けると凄い人材が育つみたいな思想がありますが、それが大嘘なのは氷河期世代というものを知っていればよく分かると思います。
この世界ではデビルサマナー達は凄まじい淘汰にさらされた結果、ツバメさんみたいな例外以外はほとんど運が良いだけの奴しか残らなかったのです。