真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
今回から、原作真VVにて潜入する魔界新宿区の話を扱います。
此処は此処で色々と独特な場所なんですが、特徴的なのは入り口付近が完全に消し飛んでいる事ですね。建物の残骸すらありません。
恐らくは此処が東京受胎の爆心地だったのだと思われます……
序、新宿の惨状
何度か煌は魔界の東京駅付近の前線に出て、それと連携する形でハヤタロウが国津の長である大国主命とやりとりをした。そうしている間にも、魔界の東京駅近辺での戦闘は苛烈さを増す一方。更に、東京の方でも、悪魔の出現が増えていた。
連日皆の口数が少なくなる。
縄印学園は休校になって久しいが、そうでなかったら煌以外全員疲労で倒れていただろう。学業と同時に行えるような事ではない。
今日も、東京に現れた悪魔を倒してきた。
それも六度。
イチロウもミヤズもどんどん戦い慣れしてきていて。ミヤズはアサルトライフルの使い方を今習っている。
しかも習熟がものすごく早いらしい。
悪魔相手には牽制用の火力にしかならないが。ミヤズが求めているのはその牽制火力なので問題ない。
それもあって、自衛官に訓練をつけてもらって、みるみる上達しているようだ。
浄増寺の周囲で暗躍している占い師とやらも正体がつかめない。
既にモンタージュなどを公安が作り、警察と連携して捜査に当たってくれているようなのだが。
それもなかなか難しいようだ。
寮に戻ると、イチロウが無言で自室に消える。
それをユヅルはとがめない。
誰も、だ。
毒舌をずっと口にしていたヨーコでさえ、最近は口数が減り始めた。それに、である。
タオに寮の屋上に呼び出された。
「どうかしたのか」
「皆疲れているから、後で話すつもりだけれど。 見て」
「……」
なるほど、そういうことか。
東京の辺縁が揺らぎ始めている。
18年前に行使されたいびつな奇跡、シャカイナグローリー。それは決して永遠のものではない。
東京のことを幻の都とカディシュトゥだけではなく、他にも何体もの悪魔がいっていた。その理由がこれだ。
「今越水長官が試算を出しているけれど、東京が消えるまで後数ヶ月もかからないという事よ。 急がなければまずいわ」
「それで、具体的にどうすればいい」
「これは個人的に話す事よ。 周りに誰もいないことを確認して」
「……分かった」
アオガミに、辺りを見張って貰う。
それを確認すると、タオは言う。
「創世って、何体もの神魔が口にしていたのを覚えているよね」
「ああ、何のことかと思っていたが」
「あれは世界のルールを、精神世界であるアティルト界から改変するものなの。 世界といってもこの星にしか影響は出ないし、それも人間にしか影響は出ないものなのだけれどもね」
「それを神々は争っているのか」
そう、とタオは言う。
18年前の東京受胎すら、その一環だったのではないか。或いは、神々が絡まない特異な形での一種の創世だったのではないかという説まであるらしい。
煌としては、いずれにしても迷惑な話だとしか思えないが。
ともかく、話を聞いていく。
「たとえいびつであっても、幻であっても、私は東京にいる一千万の人たちが、砂漠に放り出されて悪魔に襲われるのだけは避けたい。 それを防ぐには、創世を行って、誰かがこのいびつな東京を四文字の神がやった以上の強固な奇跡で補強し治し、事象として固定するしかない。 そう考えているわ」
「……実際東京の実際の状態を見ると、それは出来るのかも知れない。 それで、創世というのはどうすれば出来る」
「古くから、神に登る人が存在していた。 インド神話などだと顕著だよね」
「ああ。 いわゆる悟りを開く、だな」
仏教などで見られる「悟りを開く」というのは自己満足のためにやる行為ではない。
あれは精神的な高みに登って人間を超越し、世界のルールを変える側。つまり神の側にたつことを意味する。
仏教ではそれが仏というだけのこと。
古くの神話では、人から神になるような話は、これに限らず珍しい事でもなんでもない。
「創世には神と人との融合を果たすナホビノが必要なの。 ナホビノが天井の王座に到達して、世界を創世する。 それが、今までに何度か行われてきた創世というもので。 そのたびに世界は大きく変わってきたんだよ」
「……世界の歴史で、変革は何度も起きているが、それがその創世だと」
「全てではないけれど、いくつかはね」
「そうか」
煌としても考えざるを得ない。
仮に煌がそれをやるとして。
確かに東京を守ろうというのは、煌としては大いにありだ。
ろくでもない場所だと感じることだってしょっちゅうあるが。
それでも一千万都民は一千万都民。
気にくわないからと言って、皆殺しにして良いはずがない。
無言でじっと空を見る。
確かに、あまり時間がないとすると。
越水長官が、焦るのも分かる気がする。
「僕は何度かナホビノと言われた。 創世を行うとして、それはどうすればいい」
「いくつかの段階を経ていく必要があるのだけれど、一つは最大の力を手にすること」
「強くなればいいということか」
「そうだね。 まずはそれが第一条件」
創世とやらの話を聞く限り。
最後にその天井の王座に就いていたのは、間違いなく四文字の神だろう。
これについては、ちょっと確認しないといけないが。
だとすると、天使達が必死に他の神々を排除しようとし。
神経質なまでにナホビノに敵意を向けていたのも分かる。
四文字の神を守るための措置だった、というわけだ。
「後で越水長官のところで、詳しい話をしてもらおう。 明日はツバメさんが東京の方での悪魔退治をしてくれる。 その間に、私とミヤズちゃん、ユヅルくん、イチロウくん、それに煌くんは話を聞く必要があるからね」
「分かった。 僕は体力的に問題がないが、皆は……そろそろ目的がないと、厳しい段階だろう」
「……」
ラクロスの全国大会でエース級だったタオですら厳しそうにしているのだ。
それは皆、どれだけマガツヒを吸収して強くなっていても無理が出てくる。
ともかく、今の話で、いくつか分かったこともある。
タオが全て本当のことを話しているとして。
それらが、今まで聞いたことに合致しているのだ。
それに、これ以上戦闘に付き合うのなら。
越水長官には、相応に腹の内を明かして貰う必要もある。それもまた、事実だった。
翌日。
早朝から、研究所に出向いて、話を聞く。
越水長官は、分厚い結界を部屋に展開して、誰も侵入できないようにしていた。魔法を使えることは知っていたが。
これは、この人が直に戦った方が早いのではあるまいか。
「磯野上くんから、そろそろいいだろうと要請があった。 皆に、創世とナホビノの事を話しておく必要があるだろう」
「そういえばそんな単語を何回か聞きましたね。 悪魔が言っていましたけど」
「そうだろうな。 では、順番に話していこう」
イチロウに対して、越水長官は態度が柔らかい。
イチロウが短期間で成長して、前線で戦えているかも知れなかった。
創世といっても、文字通り世界を作るような力ではないらしい。
現在地球の歴史は46億年。38億年前には、原始的な古細菌が地球に存在していたことが分かっている。
5度の大量絶滅を経て、哺乳類が地球の地上で力を得始めたのが6550万から6600万年前くらいの頃。
恐竜を絶滅させた巨大隕石による環境の激変が要因だ。
その少し前くらいに、齧歯類から分岐した猿の先祖が。
原猿などを経て、やがて類人猿に。
そして馬鹿馬鹿しくも霊長類などと呼ばれている存在が出現したのが、およそ500万年ほど前だ。
その最初の人はアウストラロピテクスとも言われているが、同時代には知能が発達した霊長類が幾らでもいて。その後も多数の霊長類が出現することになる。
それらから、やがてホモサピエンス。
いわゆる人類が出現する。
クロマニヨン人とネアンデルタール人の混血であろうという説が現在有力なようだが。いずれにしても、まだ分かっていない事は多いようだ。
これらの説明を、越水長官がざっとする。
イチロウはどうして生物の授業をしているのだろうと顔に書いていたが。
ここから歴史の授業に変わる。
「人間が高度な都市国家を作り始めたのは、およそ一万年前だ。 現在の9500年前には、既に高度な都市国家の跡が発見されている。 世界四大文明などというが、今発見されているもっとも古い都市国家の跡地はオリエント……中東の一角にある。 それ以前から信仰はあったが、信仰が人間をまとめるために使うツールとして機能し始めたのが、だいたいその頃だ」
たったの一万年前だ。
発見されている最古の古細菌ですら38億年前。
地球の歴史が46億年前。
そう考えると、人間の歴史なんて、地球に比べれば一瞬でしかない。
人間はもっと前から世界中に伝播していて、南北アメリカなどのネイティブ文化は中東文化圏の影響を受けていない別軸にあたるのだが。
いずれにしても。
人間の歴史など、泡沫に過ぎないと言うことだ。
それから、創世の話に入る。
その頃にアティルト界が出現した。
アティルト界は人間の集合的無意識とも言える思念の世界であり、其処に人々の思念が集まり。
やがて神魔となっていった。
原型となっていたものはもっと古くからあったが、それが明確に形になったのは一万年前程度。
つまり、人間の文明と。
神魔の歴史は丁度一致している、ということだ。
そして、創世が起きたという。
「現在形として残されている最も古い神話はバビロニア神話だ。 そのバビロニア神話では、世界を創造した神であるティアマトを、その子であるマルドゥークが打ち倒すという事件があった。 大地の神であり、母系社会の守護者であり、知恵の神である蛇の系統。 それを、天空の神であり、父系社会の神であり、力と支配の象徴である牛の系統が打ち破った最初の事件だ」
「蛇と牛って言葉は、俺も時々聞きました。 それが……」
「ああ。 とはいっても、世界中にこの類型の話はある。 古くには、母系社会が主流を占め、父系社会がそれから発展した経緯がある。 母系社会では、大地からの恵み、命の循環を重要視した。 蛇が脱皮して、永遠に生きると古くは信じられていてな。 それで蛇がそのシンボルになった。 一方で父系社会では、主に遊牧が主体となって、武力による支配が重要視された。 もっとも古くに、牧畜として最高の価値を持つ財産だったのが牛だ。 故に、牛がシンボルとなった。 もっともこれらのシンボルは、どちらも後の時代には埋もれていくことになるのだがな」
イチロウが、なるほどという顔をしている。
聞き役をしてくれるので、煌としてもこういう情報を復習できて助かる。
そのまま、越水長官は丁寧に説明を続けてくれた。
アティルト界の最初の覇者であり、支配者となったマルドゥークは、天井に玉座を作った。
文字通りアティルト界の支配者としての象徴。
それが座だ。
アティルト界は人間の思念に強く影響を受け、また人間社会にある程度の干渉を出来るまでに成長していた。
だからこそ、そこからは座を奪い合うことになった。
そして、神魔は人間の影響をどうしても強く受ける。
文化的に最大の影響を与えた信仰ツール。
それが、一つずつ、座を奪い取って交代していったという。
最初にマルドゥークが座を作り「創世」を行って以降。
文明の発展とともに、アティルト界に見込まれた強い力を持つ人間とともに歩んだ神が。順番に座に挑んでいったのだと越水長官は言う。
「古くに中東は、オリエントがもっとも古い都市国家を作ったこともあって、文化の中心地だった。 だがそれも時代とともに変遷した。 最初のマルドゥークの次はラーが。 ラーの次はバアルが。 バアルの次はユピテルが。 その次は、蒼天たるテングリが。 そしてテングリの次に王座についたのが、四文字の神だ」
「すみません、知らない名前ばかりっす……」
「一つずつ説明しよう。 ラーはエジプト神話の主神だ。 エジプトはオリエントの次に文化的な覇権を握った土地で、妥当な話だ。 その次に勃興したのがバアルだが、バアルは中東の神全般を指す。 日本で神社で祀っている神々を、「神様」というような感覚でバアルと呼んでいた。 バアルの時代に、人間は鉄と馬を実用化する事に成功した。 そしてエジプトに繰り返し侵攻し、制圧したこともある。 恐らくは、ラーからバアルが座を奪ったのも、このタイミングであろうな」
なるほど。
座は基本的に、文化的な覇権を握った存在が座るものなのか。
それだと、信仰的に連続性がないラーが座に着いたのも分かる。ただ、バアルというのは越水長官が今説明したように、多数存在している神だ。座に着くのは、或いは一柱の神でなくてもいいのではないか。
そう、煌は思う。
更に交代が起きる。
ギリシャ文明の勃興である。
現在でも、ギリシャを起源とする言葉や文化はいくらでもある。台風は、ギリシャ神話最強の怪物テューポーンを起源としているし、他にも様々な学術的発見が当時にされた。更にギリシャ神話の神々は、支配ツールとして発展し、ローマ時代に完全にシステムとなった。
それがローマ神話であり。その主神であるユピテルである。
ユピテルが座に着いたというのは、ギリシャ以上の隆盛を誇り、文字通り現在に多大な文明を残したローマの守護神格としては妥当だろう。
だが、ローマの繁栄も永遠ではなかった。
その繁栄を根こそぎ打ち砕いたのが、東からの馬蹄の音。
そう、遊牧騎馬民族である。
「チンギスハンは知っているな」
「えっと、北海道の羊料理……」
「イチロウ、歴史の勉強をもう少ししよう」
「す、すまん……」
思わず口を押さえて視線をそらしたタオと、無言になったミヤズ。ユヅルが、そう言ってくれて、ちゃんと反省できるイチロウは立派だ。
越水長官は、別に構わないと言って、説明をしてくれた。
チンギスハンはいうまでもなく人類史において世界で最大の版図を築いたモンゴルの覇王である。だが、遊牧騎馬民族は、古くから圧倒的な軍事的アドバンテージを持っていた。
馬具としての鞍が完成したのは中華の三世紀末から四世紀はじめくらいであり、西晋の時代。つまり三国志の時代が終わった後くらいだ。
だが、それ以前から、馬を誰よりも巧みに乗りこなし、文字通り人馬一体となって動ける遊牧騎馬民族は、暴力と支配という観点で、もっとも恐れられた存在だった。例えば中華では、前漢を築いた高祖劉邦が、よせば良いのに遊牧騎馬民族に喧嘩を売ったところ、当時の遊牧騎馬民族の英雄である冒頓単于によって徹底的にたたきのめされて屈辱的な退却を選ぶ羽目に陥っている。要するに統一中華圏ですら、うかつに手を出してはいけない相手だったのである。
ローマ帝国は遊牧騎馬民族に直接滅ぼされたわけではなく、内部の腐敗なども原因で瓦解していったのだが。その過程で、フン族をはじめとする遊牧騎馬民族の圧倒的恐怖が影響したのも確かだ。
そしてローマが滅びた後は。
世界の文化のアドバンテージを握ったのは、テングリ。遊牧騎馬民族が、蒼天とも呼ぶ、典型的な天空神だった。
「テングリ……」
「ユヅルも知らないのか」
「いや、ほとんど聞かない名前だと思ってな」
「無理もない。 現在では遊牧騎馬民族は、既に世界中から追いやられて、一部の地域で細々とくらしているだけだ。 そして彼らは、自分たちの信仰を、他人に強制して回ると言うことに興味がなかったのだ。 自分の信仰は自分で守る。 他人の信仰には興味を持たない。 だから、テングリという存在は、遊牧騎馬民族による暴力と支配の象徴でもあると同時に、思想の自由の象徴でもあった。 実際、史上最大の版図を築いたチンギスハンの元には、あらゆる信仰の徒が集まり、ブレインとなっていたのだ。 チンギスハンは後の時代に大量虐殺ばかりが有名になっているが、虐殺は当時のどの国家もやっていたことで、むしろ文化の理解者や保護者としての面も強かったのだ」
この緩やかで寛容な思想こそが、テングリの強さの秘密であり。
ユピテルが座から追われた……というよりも。ユピテルが自ら座を降りた後。世界を席巻したテングリが、ゆうゆうとその後の座に着いたのも、当然であったのだろう。
ほどなくして、最後の存在が現れる。
遊牧騎馬民族の圧倒的アドバンテージが衰えると同時に。ローマ帝国を乗っ取り。中東全域を乗っ取った信仰の主が動き出したのだ。
それこそが四文字の神。
YHVHである。
「実際に一神教が世界の文明をリードし始めたのは、遊牧騎馬民族が世界的に衰退して追いやられてからだ。 欧州と中東で延々と戦争ばかり繰り返していた一神教徒が、大航海時代を始めると、世界中で一気に侵略を開始した。 圧倒的な軍事的テクノロジーと凶暴性で、瞬く間に世界の覇者に成り上がった。 恐らく、四文字の神が座に着いたのはその辺りだったのだろう。 蒼天が座を退いたのか、それとも興味をなくしたのかまでは分かっていないがな」
「そ、そんなことが……」
「創世については、元々あまり日本支部では興味は持っていなかった。 だが、東京を救うためであれば当然やるべきであろうと考えている。 一千万都民の命は何にも代えがたいものだ。 砂漠に落ちた東京を、真なる奇跡で真実に上書きする。 今の時代の人間は、巨大な信仰を史上最大の人口でプールしている。 その程度の奇跡であれば、達成が可能だろう」
「……」
イチロウが黙り込む。
創世の目的は、あくまで一千万都民のため。
そう越水長官が言い切ったこと。
だが、創世の背後で、世界規模の大量虐殺がずっと行われ続けてきたこと。
それに、だ。
「そ、その、越水長官」
「なんでも聞いてくれイチロウくん」
「は、はい。 その、東京を救うほかに、どんなことが出来るんですか。 その……俺みたいに意志薄弱な人間……自分でろくに決められない人間も、生きていけるようになるんですか」
越水長官が眉にしわを寄せる。
気持ちは分からないでもない。
一神教が世界中に広がったのは、文字通りバカを支配するのにもっとも都合が良いからだ。
「絶対の神」の正義と、それ以外は全て悪。
その思想は、つまり神の代弁者を名乗る存在の言うことを全部盲信して、後は全て思考停止してしまえば良いというものだ。
それがどれだけ楽なことなのかは、世界中で一神教徒達が自分たちでそのまま示していると言える。
つまり一神教は、バカを支配するのにもっとも適した「ツール」なのだ。
だから権力者達に好まれた。
「変われと言われても、俺は頑張ってきましたけれど、簡単に変われるとは……思えません。 弱くて苦しんでいる奴に、弱いのが悪い変われないのが悪いっていうのは、俺には出来ません……」
「そうだな。 だが、そのままでは駄目だ。 支配されるままでいいのか。 餌を投げ与えてくれる存在に、ただ這いつくばって慈悲をありがたがるだけでいいのか。 それでは豚と同じではないか。 ならば、弱い人間が弱くならないようにする創世を考えてみてはどうだろうか」
越水長官がそんなことを言う。
確かに、それは考え方としてはありだ。
そして、越水長官は、この場にヨーコを敢えて呼ばなかった。それには理由があるなと、煌は感づいていた。
「創世で、世界のルールまでを変えることは出来ない。 実際この星は創世とは関係なく、星としての変遷を遂げ続けてきた。 ただ、人間としての種に変革をもたらすことは可能だろう。 君が自身を弱いと思うのは分かった。 弱い人間がいることを把握しているのも理解している。 それならば、それを解決する方法を考えよう。 それがもっとも現実的だ」
越水長官の言葉は、イチロウに届いただろうか。
煌には、どうにもそれが不安でならなかった。
※座の交代の話
原作では至高天の座についていたのは、マルドゥーク→ラー→バアル→YHVHという説明がされています。これについては、色々不可解ですね。
まず中東文化系の神格が座につくのであれば、ラー(エジプト系)が座についていたのはおかしいです。エジプト文化は中東系とは別系統だから、ですね。
続いて最も世界的に影響力のある信仰の神が座に着いていたのだとすると、バアル→YHVHはおかしい。というのも、一神教全部あわせても、影響力が最強になったのは大航海時代くらいです。ついでにいうとバアルはあくまで中東文化圏の神々を意味する言葉で、特定のバアルが世界的な文化をリードしていた時代はあったにしてもそう長くはありません。
その結果考えたのが、実はこうだったのではないか、というこの説です。
オリエントでの文明の芽生え→エジプト文明の勃興→ヒッタイト、ヒクソスが代表する中東系牧畜文化圏の台頭と鉄器、馬の軍事利用→ローマ帝国の出現→遊牧騎馬民族の世界的進出→一神教の台頭。
この流れが、力ある神が座に着くのであれば、正しいと考えました。
この結果、バアルの次にローマ神話の主神ユピテルが。ローマ瓦解の後の遊牧民の時代の遊牧民の「蒼天」テングリが、本作では座に着いています。
ちなみに、これですらまだ隠されている事実があります。
先をお楽しみにしてくだされば嬉しいです。