真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
いくつもある問題ですが、こういうときは出来る事から片付けるのが基本です。
現状ではコンタクトをとれている上、場所も分かっている神田明神への到達が優先。
その戦略の元動くことになります。
何度目かの攻撃計画が企図されている。
前衛に炎に強い悪魔を並べて、それで突破しようとしているようだ。
煌は銀座から前線に向かい。そして高台に出て、それを見た。
ビルのように巨大な巨人がいる。
四角い顔。
逞しい体。
全身は燃え上がり、それ以上に炎の温度が高すぎて、青く燃えている巨大な剣を手にしている。
間違いない。あれがスルトだ。
懸かれ。
そう言われて、炎に強そうな悪魔が一斉に、空陸から襲いかかる。炎の壁を展開しているスルトは、それを鼻で笑うと、巨大な剣を一閃。
思わず、顔を煌は庇っていた。
爆音がした。
同時に、全てがまとめてなぎ払われていた。
いや、そんな生やさしいものではない。
集中指向された核爆発のような熱と光が、文字通り炎の悪魔達を襲ったのである。
悪魔など消し飛んでしまった。
続けて張り倒すような衝撃波が飛んできて、同時に凄まじい音で、砂が跳ね上げられていた。
これはとてもではないが、正面攻撃なんてうまくいきっこない。
しかもスルトが陣取っている辺りは、正面攻撃しか手段が存在していない。あれは、まさに鉄壁の要塞。
難攻不落そのものだ。
勿論難攻不落の要塞と称されたものは、いずれもが陥落している。
とはいっても、何度も大軍の攻撃をはねのけた要塞も存在している。
あれがそうだ。
「皆、無事か」
「あ、ああ」
「とても正面から仕掛けられる相手ではないですね」
今日はユヅルとミヤズと来ている。ヨーコは今日は休みを取ると言って、越水長官はそうかとだけ言った。
越水長官も、ヨーコを警戒しているのかも知れない。
今のところ煌を認めてくれてはいる。
だが、それ以上でも以下でもないのが事実だった。
上を見ると、今の衝撃波を防ぎきれず、かなりの数攻撃に参加する予定だった天使達も消し飛んだようだった。
アブディエルが兵を下げさせる。
これでは戦いどころじゃない。
文字通りの一方的な殺戮だ。
ラグナロクでアスガルドの神々を片っ端から焼き尽くし殺し尽くし、凱旋して去って行く神話の中でも最強の戦歴を誇る魔、スルト。
たとえそれが日本での具現化で全力を発揮できていないとしても、あの実力だ。近代兵器でも手も足も出ないだろう。
スルトは座り込むと、来るなら来てみろという風情である。
ハヤタロウが、促した。
「皆どの、こちらに。 それがしが比較的安全な道を発見しておりますゆえ」
「ハヤタロウさん、あの中を良く通り抜けられましたね」
「ミヤズどの、それがしは安全を確保することは得意でしてな。 それに主のところに生きて帰ることだけは出来るのです。 残念ながら、その程度しか取り柄はありませんがな」
「今はそれが大事だ。 国津の神々のいる神田明神近くに龍穴があるという話が書状にあったそうだ。 それを煌が活用できれば、敵が想像も出来ない位置からの奇襲を仕掛けられる可能性が高い」
ユヅルがそう言う。
ともかく、高台から降りる。電車の路線が途切れている。あちこち崩落している中、向かうのは秋葉原だ。
一時期は日本のサブカルの聖地だった場所だが。
今ではそれもすっかり様変わりしてしまった。
もはやサブカルはどこでも摂取できるようになった。
それもあって、聖地など必要なくなった。
それもまた、大きいのだろう。
高架の近くに、悟劫がいた。
ミヤズが会うのは初めてか。礼をする。
悟劫が数珠を持った手で、今消し飛んだ者達に祈りを捧げているようだった。
「むごい戦いだ。 既に互いの主は存在してないというのに」
「混沌の悪魔達を掃討するという極めて曖昧な戦略的目標で動いているだけあって、各国のベテルの部隊も連携がとれていないようです」
「拙僧は戦いに口を出す気はない。 ただ、これが何かしらの良き結果を生むとはとても思えぬ」
確かに悟劫の言うことも一理ある。
悟劫は煌を見て、また成長したようだなと褒めてくれるが。
そう言われても、あまり実感はない。
ハヤタロウがこちらだと促してくる。
確かに、急ぐべきだろう。
「あ、ちょっと待って!」
「どうしたアマノザコ」
「なんか嫌な臭いがする。 気をつけた方がいいと思う」
「……分かった」
ユヅルが警戒。
悪魔を展開して、備える。
斥候は周囲に出しているし、ミヤズも確実に力をつけている。それでも、此処ではそれが一瞬で消し飛びかねないのだ。
高架から降りて、高架下を行く。
この辺りは砂が一部溶けたらしいガラスが散らばっていて。ミヤズが気をつけてと警告してきた。
マーメイドが、即座に水を使って、砂の上のガラスを選別して流してよけてしまう。
無駄な力、とは思わない。
少し浮いて移動している煌はともかく、ユヅルとミヤズはそうではないのだから。
既にこの辺りは、人間のデビルサマナーは進出していないようだ。
銀座近辺での混沌の悪魔の残党狩りと、反撃のゲリラ攻撃に対応しているらしい。
わーが無言で出現すると、手を握って引っ張ってくる。
煌は即応。
「離れろ!」
散開。
ミヤズを抱きかかえて、さっと飛び退いたのは。
今日悪魔合体で作り上げたばかりの幻魔、巴御前。
言うまでもなく日本でもっとも有名な女傑だ。
逞しい姿格好の女性で、鎧姿がとても板についている。甲斐姫から悪魔合体で強化した結果の姿である。
地面に着弾したのは、剣を背負い、豹のような顔を持つ悪魔だった。
凄い強者だ。
それだけじゃない。かなりの数の悪魔がいる。
周囲を囲んで来た。
「ベテルの別働隊か、 あまりスルト様の炎が届かないところをうろつかれても困るのでな」
「……貴方は。 僕は夏目煌」
「俺は堕天使オセ。 ソロモン王が従えていたとか言う伝承に縛られる存在の一柱だ」
「聞き覚えがある。 相当な腕の持ち主のようだな」
周囲に湧きたった悪魔も相当な使い手のようだ。
剣を抜き、構えるオセ。
完全に囲まれた状態。
しかもハヤタロウも察知できなかった。
理由は分かる。
上空に多数の飛行する悪魔がいる。空挺部隊として活動しているわけだ。風下から来た上に、上空からでは、ハヤタロウも察知できない。
ふと視線に気づく。
これは、あの八雲ショウヘイか。
こちらを見て値踏みしている。なるほど、実力を測っている訳だ。或いはだが、煌達と戦って消耗した混沌の悪魔の空挺部隊を、まとめて蹴散らすつもりかも知れない。
いずれにしてもあちらにもある程度警戒が必要か。
マーメイドがガラスを散らしてくれて助かった。ミヤズとユヅルもこれで存分に戦える。
「ゆくぞ!」
オセが躍りかかってくる。
食肉目のしなやかな動きを生かし、全力での一撃を立て続けに仕掛けてくる。これは、あのルー・ガルーと同等かそれに近い使い手か。手刀ではじきつつ、猛攻に応じる。
飛び離れつつ、オセが詠唱。
そしてそれが終わると、一段と加速していた。
早い。
手数が凄まじく、防戦一方だ。
一瞬で背後を取られて、振り返りざまに剣を受け止める。
残像を多数作りながら、オセが四方八方から仕掛けてくる。更に加速。これは、まずいな。
だが、ミヤズの悪魔の一体。
兎の姿をした悪魔が、魔法を展開すると、明らかにその速度が落ちる。舌打ちしたオセが、邪魔をするなとばかりに剣を投げつけようとするが。煌が仕掛けて、踏みとどまって剣を受け止める。
雷撃をたたき込むが、左右にすっと流れるように避けつつ。立て続けに変幻自在の剣筋で仕掛けてくるオセ。
これは本当に強いな。
ユヅルが多数の悪魔を展開しつつ、ミヤズはそれを支援。ミヤズの支援が的確で、煌の力がみなぎってくる。
面白いと、オセは口を開けて笑った。
「上で面倒なのが見ているからな。 一旦は退かせて貰うぞ」
「貴方は信念がある武人とみた。 こんな無意味な戦いで消耗することに疑問はないのか」
「あるにはある。 だが四文字の神が創世でよみがえりでもしたら、また暗黒の時代に逆戻りだ。 少なくとも別の存在が創世をやってほしいと思っていてな。 八百万の神として、邪神や鬼であっても祀る。 そういうこの国の信仰に、ちょっとは期待しているところもある。 だが天使どもはだめだ」
さっと降りてきたのは、翼を持つ悪魔達。
交戦中だった悪魔達は、皆それにつかまり、その場を離れていった。オセは飛び退くと、大上段から凄まじい大火力の剣撃をたたき込んでくる。
それを煌も、フルパワーの剣撃で迎え撃つ。
爆発。
衝撃波同士がぶつかり合って、相殺したのだ。そして、それが砂を派手に巻き上げ。辺りを蹂躙する。
その風が収まった時、敵の空挺部隊は既に姿を消していた。
「ユヅル、ミヤズさん、無事か」
「ああ、問題ない。 かなり河童達がやられたが、継戦能力は残している」
「私が手当てします。 マーメイドさん、危ないのでまたガラスをどけてくれますか」
「分かったわ」
マーメイドは即座に動く。
今の戦闘で、敵の副官らしい堕天使を相手にして、必死の時間稼ぎをしていた。かなり強くなっている。
まだ稚拙とは言え冷気の術も使えるようになっているし、水の魔法は更に強化されているようだ。
何より、あのオセの副官を相手に生き残った。
それだけでも充分に凄いと言える。
広く場所を取って、トリアージの場を作る。
負傷している悪魔を、テキパキとミヤズが処置。煌も魔石をいくつか潰すと、眷属の回復と蘇生に努めた。
今まで凄まじい戦闘が行われていたとはとても思えない周囲の静けさ。
そんな中、見下ろしていた奴が降りてくる。
八雲ショウヘイ。
それにジョカだった。
どちらも重力などガン無視である。
ミヤズが悪魔の手当をして、回復を進めているのを一瞥した八雲は。警戒するユヅルには意識も向けず、煌に話しかけてくる。
「やはり腕を上げているな。 その様子では、既に創世についても聞いたのではあるまいか」
「貴方もそれを目指しているのか」
「ああ、そうだ。 俺の目指すのは、人間を誑かす神魔がことごとく存在しない世界。 ただ人間が判断し、決断し。 失敗も人間の責任として、歩む世界だ」
悪魔はアティルト界……人間の思念によって生じる世界の住人だ。
そして創世というのが行われるのは、それが及ぶ範囲まで。
だから、その影響はあくまで地球にしか出ない。
地球人類から信仰というものを消す。
未知の存在への得体の知れない恐怖も、それは悪魔のせいではないとする。
そうして、全てを自己責任とする。
それが望みだと、八雲は言う。
考え方は分からないでもない。
ただ、過激すぎるような気もするが。
「それで貴様はどうするつもりだ。 貴様にも資格があるが」
「!」
「知らない訳はあるまい。 既に越水から聞いているのだろう」
「まずは東京をきちんと元に戻す。 全てはそれからだ」
くだらんと、八雲は言う。
ジョカは、それに対して、珍しくたしなめていた。
「あの四文字の神を行けすかぬと考えるのは分かるがな、八雲。 人の子であれば、幻と友が消えるのを喜ばぬのは道理であろう。 それを忘れるほど、獣に落ちてはおらぬだろう」
「惰弱! 惰弱だからこそ、悪魔や神にそそのかされる! 人間は強く、自分で責任を取らねばならん。 そうでなければ、俺のようにひたすら運命に翻弄される事になる! 俺は俺自身が味わった惰弱でどうしようもない時間を、失敗の礎石として、これ以上世界に積ませぬために動いている。 貴様は、惰弱のままでいいのか、夏目煌」
「貴方の過去に何があったかは知らない。 だが、今生きている人々を切り捨てる事は、惰弱とは論じられない」
一瞬だけ火花が散るが。
八雲は鼻を鳴らすと、戻るぞとジョカに言う。
ジョカも肩をすくめると、それに着いていく。
アマノザコが、煌の影から顔を出した。
「おっかなあいつ……結局何がしたいんだろう」
「……少しだけ今の言葉で分かった気がする。 あの八雲という男は、過去に神魔が関わる事で何かがあったんだ。 そして、許せないのは、多分……この世界以上に、自分自身なのだと思う」
「いずれにしてもそれで東京都民を魔界に放り出される訳にもいかない。 シャカイナグローリーの効果が切れても、消し飛ぶのは現在の東京だけだと分かっている。 魔界に人々が放り出されれば記録的な被害が出る。 それは避けなければならない」
ユヅルの言うとおりだ。
ミヤズは一通り手当を終える。
鬼後輩が、煌に頭を下げてきた。
「おかしら、俺もそろそろ強くなりたいです」
「いいのか。 悪魔合体を経ると、元の自分ではなくなるぞ」
「かまいやせん。 トロールだった霜の巨人を見ていると、負けていられねえって思いまして」
「……分かった。 状況を見て、希望を叶えよう」
態勢は整った。
先に進む。
高架先に進むと、散発的な戦闘を繰り返しながら、混沌の悪魔と天使達が陣取り合戦をしているようだ。
先のスルトへの攻撃失敗で、相当な被害を出した天使達は、かなり押されているようである。
飛び回って悪魔を次々撃墜しているのはアブディエルか。
流石に口だけではなく、自身が最前衛で戦って勝機をつかむべく奮闘している。だが、アブディエルだけでどうにかなるとは、とても思えない。
ビルの中に入ると、腰布だけをつけた、小柄な人型の悪魔がいて。きゃっと声を上げた。
何度か姿を見たことがある。
モコイという、オーストラリアで悪霊とされる妖怪だ。夜に活動し、頭がとても大きいとか戦争の要因とかされるが。描写を見る限り別の民を悪魔化した例の一つだろう。
モコイは大事そうに、貴重そうなプラモデルやキャラクターグッズを背中に隠していた。
「に、人間かな。 これらぼくちんのだから、あげられないんだな」
「大丈夫、仕掛けてこないなら何もしない」
「そ、そっか。 ぼくちん弱いから、身を守るだけで精一杯なんだな。 いじめないでほしいんだな」
「それならなおさら此処は危険だ。 早めに離れた方が良いだろう」
ユヅルが提案すると、モコイは少しだけ悔しそうにうつむく。
確かにこれだけの大荷物だ。
簡単にはいかないだろう。
「ひ、一つ取引したいんだけど、いいかな。 ダメダメくんなぼくちんも、一生懸命集めた宝を手放したくはないけど、一つ良いことを知っているんだな。 それを教えるから、安全な場所まで案内してほしいんだな」
「分かった、良いだろう」
「煌先輩」
「このくらいの荷物なら問題はない。 それに、この周囲の状況だ。 少しでも情報を得た方が良い」
ハヤタロウも反対しない。
まあ、そうだろう。
ハヤタロウに道中で聞いたが、何度も道を変えながら、必死に神田明神と往復したと言うことなのだから。
ただ、先にそれが何かは聞く。
モコイは、マガツカだと言った。
「龍穴って便利なものがあったんだけれど、それが悪魔に占拠されて、マガツカになってしまったんだな。 それ以来、安全な住処を追われてしまって……」
「分かった。 好都合だ」
其処を第二拠点として活用できる。
それに、モコイを守りながらマガツカを突破するくらいは特に難しい事でもないと言える。
荷物をまとめて貰う。
ミヤズが、ちょっとだけほしそうな目をした。かなりレアなアニメのグッズなのかも知れない。
昔はアニメが好きというだけで事実上人間扱いされない時代が存在したらしいが、今では普通に誰でもアニメを好きという権利がある。
ミヤズはそういう意味では、多少はましな時代にいると言える。あくまでそれぞれのあり方について、だが。
「これで全部なんだな」
「よし、俺が背負う。 おかしら、俺は前衛に出られないが、此奴をまもる」
「ああ、頼んだぞ」
鬼後輩が、モコイを守り、荷物を背負う。
そして、高架の隙間を行く。
確かに強い気配が感じられる。だが、その先にあったのは、マガツカではなかった。
だまされたのかと思ったが、モコイを見ても、あれだという。
確かにまがまがしい気配だが、なんだこれは。角のようなものが、天にそびえ立っている。自衛能力はないようだが。
「煌、これはどうみても放置していていいものではないな。 巧妙に隠されるようにして配置もされているし、膨大なマガツヒで構成されている」
「ああ、そうだな」
ユヅルの言うとおりだ。
アオガミに意見を求めてみると、少し考えてから言う。
「見たところ、何かしらの儀式の一部だと考えられる。 これ一つでは機能せず、複数が存在して、それぞれで何かしらを増幅しているのだとみて良いだろう」
「気配からして、少なくともベテル側の存在の増幅装置ではないですね」
「同意する。 破壊するべきだ」
「煌先輩!」
ミヤズに言われる。
どうやら見張りだったらしい悪魔が、わらわらと現れる。
それほどの大物はいないが、数が多い。すぐに河童がファランクスを作る。煌は、すぐに指示を出す。
霜の巨人は、全力でこの装置を破壊。
鬼後輩は、モコイと荷物を守れ。
これは龍穴と直結している。破壊することに、大きな意味があるはずだ。破壊すれば、龍穴を使えるようにもなる。
ジャターユをはじめとする悪魔達を展開。前衛に出たアルテミスが、肩を伸ばしてストレッチする。
悪魔達がじりじりと来るが。
この程度の質なら、多少の数が来ても相手にはならない。
「モコイ、其処で隠れていてくれ。 すぐに片付ける」
「相手はあれは……モロク様をやったナホビノか?」
「いずれにしても此処は逃げ場もねえ! やっちまえっ!」
「おう、突撃だ!」
一斉に来る悪魔達。
その突撃の戦闘にいた悪魔を、巴御前が撃ち抜く。那須与一が負けじと、立て続けに強そうな悪魔に強弓から矢を浴びせる。
それでも突貫してきた悪魔達を、河童のファランクスが受け止める。
がっと、ものすごい音がした。
金童子が暴れ狂い、雑魚をまとめて吹っ飛ばす。
ジャターユが、後方にいた指揮官らしい堕天使に襲いかかると、爪でつかんで空につり上げて、放り投げる。
それでも数を生かして悪魔が襲いかかってくる。
乱戦の中、悪魔達に光の一撃がたたき込まれる。
吉祥天による面制圧だ。
更にマーメイドが、相手の足下を水で崩す。
後方に回り込んでいた影みたいな悪魔。サイズを振りかざして、襲いかかってきたそいつの耳元で、わーがおどかす。
一瞬の隙を見逃さず、煌が即座に雷撃で貫くと。
そいつは、笑いながら消えていった。
激しい乱戦が続く中、空から何か来る。天使の部隊だ。それを見て、利あらずとみて、悪魔達が撤退を開始。
丁度その瞬間。
霜の巨人が、巨大な儀式構造物を破壊することに成功していた。
膨大なマガツヒがあふれ出る。
悪魔達を半数ほどの天使が追い。
半数ほどは、煌達を取り囲んできた。だが、その中に、アザゼルを倒した時の戦闘で、煌を見ていた天使がいたようだった。
「貴殿はアザゼルを倒した。 皆、武器を納めろ。 味方だ」
「今何かしらの悪魔の装置を見つけたので破壊した。 同様のものが他にも存在しているかもしれない」
「なんだと……それは厄介だな」
「こちらでも見つけ次第破壊する。 形状については赤黒い巨大な角のようなものだ。 巧妙に隠されていると判断して良いだろう」
分かったというと、天使達は飛び去る。
組織力に関しては文句のつけようがないな。
そう思って、見送る。
辺りは静けさを取り戻し、龍穴もある。これを中間拠点に、更に進むことが可能になるだろう。
しかもこの辺り、非常に守りやすい。
ただ囲まれると厄介だから、要塞化する必要があるかもしれないが。
鬼後輩は、悪魔が放った魔法や矢をいくらか受けていた。それでも、ちゃんとモコイと荷物を守り切った。
膝を突く鬼後輩。
ミヤズがすぐにアマビエを呼び出す。支援魔法だけではなく、回復も使える。鳥みたいな顔をした魚の悪魔は、珍妙な踊りを見せながら、鬼後輩を回復していく。鬼後輩は、苦笑いしていた。
「アイドルだってんなら、もうちっと色っぽく踊れねえのかよ」
「アイドルならばこそ、わらわはかわいらしく踊るのじゃ」
「そうか、今はそういうもんなんだな」
荷物をモコイに。モコイは、何度も頭を下げて、側にあるビルの中に。念の為に煌も中を確認。
後、一応やっておいた方が良いか。
契約書にサインして貰う。人間には手出しできないようにするものだ。モコイは弱いとはいっても、オーストラリアの伝承ではそれなりに悪事をする存在である。魔界の此処に人が落ちた時、害されると困る。
モコイは喜んでとサインしていた。
「ぼくちんの宝、ちゃんと守ってくれた。 ナホビノさん、命の恩人だね。 だから、これくらいはすぐにサインするよ」
「そうか。 出来れば人と仲良くして行ければいいのだが」
「ぼくちんは人、大好きだよ。 作り出すものがとてもクールで素敵だね」
「ありがとう」
煌も文学に関しては全面的に同意見だ。
先にユヅルが戻って、状況を伝えに行く。煌はその間、ミヤズに回復を任せて。龍穴の周囲を確認。
アオガミのアドバイスに従って、霊的防御を固めていく。
雑魚悪魔程度だったら跳ね返す結界を作れるそうなので、作っておく。また龍穴に変な細工をされても困る。
ほどなくして、越水長官が直に来た。武装した自衛官も連れているが、あまり役には立てないだろう。
頭を下げるハヤタロウ。
「此処でだいたい半分くらいにて。 ただ、これからは道が更に複雑で、連戦は避けられないでしょうな」
「了解した。 東京の方でも調査を進めているが、まだ決定打をつかめない状態だ。 出せる全戦力を投入して、神田明神への道を開こう。 どうせこの様子では、当面スルト攻略の糸口などつかめまい。 その間にこちらは、国津と天津の残存戦力との合流を図る」
そうなると、総員での突破作戦開始か。
結界が完成したので、一度戻る。
ハヤタロウはまた書状を渡されて、単独で神田明神に向かった。
ベテル本部から更に天使を呼び集めているようだが、確かにこれでは当面スルトを突破するどころじゃない。
その間に、するべき事は、しておくべきだった。
神田明神へはようやく半分、ですね。
それにしてもこの辺りに入るとみられるスルトのムービーですが、アレを見てもレベル49は嘘だろオイとしか言えないですよね……。
スルトは世界中の神話を探してもどこにも見つからない、神々に一方的に勝利して、世界を焼き払って去って行くという最強の魔です。戦歴で言うとルシファー閣下なんかより遙かに上です。
日本で出てきたこと、北欧神話がもう信仰する人間もいないということ。それらによって極めて弱体化している。
そういうこと、なのでしょうね。