真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
バエルの撃破により、今まで強力なジャミングを受けていた浄増寺のマガツヒ収奪システムの解析が一気に進展。
しかしこれを待つだけでは芸がありません。
一気に煌達は、国津神が潜んでいる神田明神を目指すことになります。
序、神田明神
東京で活動している「占い師」については、追跡のめどがついた。ツバメさんが解析した術式により、占い師が展開していた痕跡消去の魔法が判明。ついでにいえば、バエルによって東京に蜘蛛の巣のように張り巡らされていた魔法のジャミングが全て解除されたからだ。
此処からはツバメさんが、ユヅルとタオを連れて東京で処置を進める。
浄増寺の方で対処をする時には、煌を呼ぶそうだ。
その間に煌は、神田明神を目指してほしいと越水長官に言われた。
イチロウとミヤズ、それにヨーコとともに出向く。
ヨーコは別に文句は言わない。
イチロウは少しずつヨーコとどう接して良いかわかり始めてきたようだし。戦闘のたびに体を張っているイチロウの事をヨーコも認め始めているようだ。
今回は、ハヤタロウだけが貸し出されている。
元々高位の霊獣で、ベテルの秘蔵っ子である悪魔の一体だ。単独行動くらいはお手の物、なのだろう。
「皆どの、この辺りからはハンカチでも噛んだ方が良いかもしれん。 とにかくベテルと混沌勢が常に争っておる。 出来るだけ、隠密作戦を継続するぞ」
「分かった」
「お、おう。 ハンカチだな」
「……」
ミヤズは黙々とタオルを取り出して、テキパキと丸めて噛む。
恐らくだが、患者を押さえつける時に、舌を噛まないように処置するやり方を知っていて。それを応用しているのだろう。
格好悪くても、生き残る事優先だ。
アオガミが言う。
「かなり危険な状態だ。 ハヤタロウからはぐれるな。 最悪の状態を常に想定して動く事を推奨する」
「分かりました。 イチロウもユヅルもかなり頼もしくなっています。 足手まといと考えなくても大丈夫だと思います」
「ああ、そうだな。 特にイチロウは頼りになるようになった。 煌も負けてはいられないな」
ありがとうとアオガミに返すと。
黙々と行く。
秋葉原の辺りは、あちこちがえぐれていて、それが視界を遮る塹壕のようになっている。
無言でその塹壕を通っていくと、不意に数体の女性悪魔に囲まれた。
オデットが具現化する。
まだほとんど戦闘では活用できないが、彼女もヴァルキリーだ。
囲んできたのも、ヴァルキリーだった。
「みそっかすのオデットではないか」
「お久しぶりです。 今、日本支部のこの方の眷属になっています」
「そうかそうか。 話には聞いているぞ。 アザゼルや潜んでいたモロクをそのナホビノが倒したそうだな」
オデットは何もしていない。
暗にそう言っていることがわかるので、煌は無言でじっと相手を見る。そうすると、ヴァルキリー達は露骨に怯んでいた。
ヴァルキリーは死神だ。
恐らくだが、この辺りで有望な死者が出ていないか、探しに来ていたのだろう。戦うつもりなんてさらさらない。
北欧支部はかなりの戦力を有しているというが、それは日本だからだ。
北欧神話は日本では人気が高く、日本で呼び出された神格は大きな力を発揮できる、らしい。
これについてはイズンから聞かされている。
故に、日本が主戦場になっているこの戦いでは、ヴァルキリーには狩り場というわけだ。
あまり良い行動ではない。
「と、ともかく敵ではないのなら行け。 我々も仕事に行く」
「……」
話を勝手に切り上げると、ヴァルキリー達が去る。
うつむいているオデットの肩を、わーが叩いていた。
「仕方がないよ。 オデットちゃん、なりたてでしょ」
「はい。 でも、力になりたいです」
「大丈夫大丈夫。 とりあえず煌ちゃんの眷属のままいれば、嫌でも強くなれるから」
アマノザコが、いつの間にか戻ってきていた。
それで話をしてくれる。
「あっちに坂があって、その先に神田明神があるみたいだよ。 それと……」
「すみません、この子に貴方がとても強いって聞いて……」
そういって飛んできたのは、背中に蝶の翼を持つ小さな女の子だ。服装からして中華系だろうか。
地霊カハクと名乗られる。
あまり強くない悪魔は、暮らしづらいだろう。
「この子、じもってぃだって!」
「じもってぃとは?」
「ああ、ローカルで使われていた地元民の事です」
「奇妙な呼び方だ。 記憶した」
アオガミが聞き返してきたので、煌が説明をしておく。まあ地元民をじもってぃという人はあまり多くない。
たまたま煌もその呼び方を知っただけである。
ミヤズとイチロウもぽかんとしていたので解説するが、ヨーコはなぜか知っていたようだった。
まあ、それはいい。
ともかく、一旦安全を確保すべく移動。
その間も、数度堕天使を主軸とする悪魔と交戦。どれも決して弱くはなかった。だが、イチロウも既に存分に戦えている。
それどころか、煌の消耗を抑えるために、積極的に露払いをしてくれていた。
これは役割分担を認識して、それで動いてくれていると言うことだ。そのぶん消耗も激しいが、それは煌が支援するしかない。
巨大な崖になっている場所に来る。
崖は砂が積もっているので大変に危険なものだと感じるが。それでも此処なら見つかりづらい。
ハヤタロウも、この辺りは何度か隠密に使ったと証言してくれる。
ヨーコが腕組みして、さっさと何かあるなら言えとカハクに視線を送る。カハクはちょっと怖がったようだが、アマノザコが自然に盾になるような動きをして。ヨーコの視線の間に入った。
「ヨーコ、いじめたらだめだよ、よ!」
「何の話。 さっさと話があるならしなさい」
「ええと……はい。 神田明神に、今私みたいな弱い悪魔が集まっているんです。 そこそこ強い神様がいて、中立でいるので。 私たちみたいなのは、天使にも狩られるし、混沌の悪魔にも踏みにじられるで、居場所がなくて……」
「分かった。 出来るだけ護衛はしよう。 地元民だというのなら、抜け穴か何か知らないか」
カハクが知っていると言う。
大回りにはなるものの、却って安全だという。
アオガミが警告してくる。罠の可能性だ。
勿論警戒は必要だ。
だが、あの坂。
何度か通ったらしいハヤタロウが、毎度あそこで襲撃されたと証言してくれている。確かにあんなに周囲から見える坂、天使からも混沌の悪魔からも、のこのこ歩いていたら狙い撃ちだろう。
神田明神に弱い悪魔が逃げ込んでいるというのならば。
むしろ格好の狩り場になっているはずだ。
「混沌の悪魔達には、オセのような空挺部隊もいた。 あれだけが機動戦力だとは思えない。 安全経路があるなら、試してみる価値はある」
「そう。 止めはしないけれど、罠に掛かったら食い破るだけの自信はある……のでしょうね」
「仮に罠だったとしても、この程度食い破れなければ、この先はどうにもならないだろう」
「分かりました。 少し良いでしょうか」
ミヤズが悪魔を展開。
そして、皆に防衛能力を強化する結界を展開した。
防御を強化する魔法だ。
これで、多少の奇襲は防ぐことが出来る。
「後、多少加速もしておきます。 これで大丈夫だと思います」
「ありがとう。 最悪の場合は、これで対策できる」
「早く行こうよ。 此処でとどまってると、襲われるとまずいよ」
「それがしもアマノザコどのに賛成だ。 急ぐべきであろう」
ハヤタロウに急かされるが、確かにもっともだ。
煌はすぐに移動を開始。皆にはハンカチを噛んで貰う。同時に煌は、何があっても大丈夫なように、何体か眷属を先行させた。
カハクが案内されたのは洞窟だ。
此処から、神田明神の裏手の崖に出るという。そこから上がっていくと、神田明神に出られるのだとか。
なるほど、それは助かる。
ただ、洞窟内部に悪魔の気配だ。カハクが、ひっと声を上げていた。砂の東京の洞窟だ。あまり頑丈ではない。
その中にいたのは、ワームのような悪魔だった。
先発の悪魔達を戻らせる。
一瞬で決める。
「突破するぞ」
「ま、この地形で逃げを選択するよりは正しい判断ね」
突貫。
大技は使えない。マーメイドが水を使って、ワームの周囲の砂を泥濘化。それでワームが一瞬、態勢を崩す。
其処に煌が雷撃をうち込み。更には、洞窟全部を塞ぐような突進をした塗り壁が、ワームに体当たりした。
ぐしゃっといい音がして。
ワームが潰れる。
そのまま、塗り壁を先頭に押す。更に数体のワームがいたようだが、片っ端から排除しつつ進む。
後方からも来る。
この洞窟、ワームの巣穴になっているようだ。イチロウが、走ってと叫ぶ。ミヤズも、必死に走っているが。
途中から巴御前がミヤズを担いで、俊敏にかけ始めた。
後衛が次々にワームに蹴散らされる。だが、洞窟の出口を塞いだワームを、煌が一刀両断。
外の安全、確保。
ある程度開けていて、そして何だ。
とても清浄な気配がある。此処だけ、まるで別の……深山のような。東京の人混みとも違う。
とにかく静かで、穢しては行けない場所に思えた。
ミヤズを抱えた巴御前が飛び出してくる。
さっと展開して、ワームを迎撃。
洞窟から出てしまえばこっちのものだ。周囲を囲んで、一斉に攻撃をたたき込む。霜の巨人が、棍棒でワームを叩き潰す。
ワーム達は、流石に形勢不利を悟ったのか、洞窟に戻っていく。
だが、既に煌は、充分に力をためていた。
吉祥天を呼び出す。
そして光の力を収束させて、そのまま洞窟にたたき込んでいた。それをマーメイドが、詠唱してからの水の魔法で補助。
一気にたたき込まれた光の奔流が、洞窟にいたワームをまとめて消し飛ばしていた。
ワームが全滅したのが分かる。
悪魔としてはなんだかよく分からない。
いや、マガツヒを吸収して分かった。
モンゴリアンデスワームか。
ゴビ砂漠に住むと言われる存在で、人を襲うワームのような姿をしていると言われている。
つまりUMAだ。
なるほど、砂漠の中に出て、人を襲うワームだ。確かにああいう姿で出てきてもおかしくはないだろう。ただ伝承に出てくるモンゴリアンデスワームは1.5m程度のサイズで、あんな巨大怪物ではないのだが。
カハクが、ごめんなさいと必死に謝っている。
「こ、この間までは、こんなことはなかったの! それなのに……」
「もういい。 それで、此処は」
「此処は、国津の神々が作ってくれた楽園……だと思う。 私みたいな弱い悪魔のために、聖域を作ってくれているって聞いたから」
カハクは嘘をついてはいないようだ。
集まってきた悪魔も、あまり強そうなのはいない。
アマノザコが話をしていて、それでえっという顔になった。
「ごめん……あたいまたちょっと行くわ」
「何か問題があったのか」
「う、うん。 ごめんね。 用事が終わったら、また来るから。 ちょっと逃げないとまずい」
「何かに追われているなら力になるが」
アマノザコはそれを聞いて、少しだけ心が動いたようだが。
首をぶんぶん振ると、大丈夫大丈夫と繰り返して、飛び去っていった。
座り込んだイチロウに、ミヤズが手当てをしている。
また、怪我をしていた。
魔法で治る範囲だ。それが救いだが。
何度も頭を下げたカハクが、雑多な悪魔達に合流していく。或いは、あのモンゴリアンデスワーム達は。
この聖域を狙って、洞窟にたまたま行き当たったのかも知れない。
だとすると、後で掃除が必要だろう。
さて、崖か。
見ると、それほど登るのは難しくなさそうだ。
ミヤズは最初から巴御前が抱える。イチロウには、森可成が登り方のこつを教えていた。先にハヤタロウが行って、これは盲点だったとぼやいている。視界が悪くて、此処を見下ろせなかったらしい。
煌もハヤタロウに続く。
わずかに浮いて進むのだったら、別に難しくはない。
そのまま少しずつ上がって、ついてくる皆を守りつつ、聖域の空まで清浄な様子に驚かされる。
この辺りは、混沌の悪魔は、少なくとも空からは侵入できないようだ。
天使も、この辺りを支配する余裕はないのだろう。
アオガミが話をしてくれる。
「煌。 アマノザコの件で話がある」
「何か分かりましたか」
「アマノザコは都合が悪くなると煌の側を離れていた。 だが、偶然といいつつ戻ってくる。 それで気になって先の会話に耳をこらしていた。 天狗という単語が出た瞬間、アマノザコはえっと声を漏らしていた」
「天狗……」
そういえば。
日本の妖怪で、この東京の魔界で組織的に動いているのは天狗くらいだ。
更に言えば、天狗は主を作りたい云々の話をしていた。
まさか、アマノザコがそれに関係しているのか。
「天狗は敵対的な悪魔には見えなかったですが」
「そうだな。 天狗は修験者の慢心を示す姿だと言われることもあるが、山の神としても扱われ、決して邪悪な存在ではない。 人をさらうという伝承もあるが、それで人を食らったり殺すわけでもないようだ。 アマノザコがそれに関係しているとなると、神話での伝承だろうか」
「江戸時代に作られた創作神格であるアマノザコですが、確か天狗の祖であるというような設定があったような気がします」
「無関係とは思えない。 次にアマノザコに遭遇した時は、警戒を推奨する」
頷く。
ただ、アオガミが警戒を促してきてはいるが。
アマノザコが、悪意を持って煌に接してきているとはとても思えないのである。それに関しては事実だ。
崖を上がりきる。
ヨーコは以前苦労したからか、札を使って簡単に上がってきた。
巴御前も逞しく崖を登り切ってきて、ミヤズを下ろす。この程度は余裕という雰囲気である。
さすがは日本で最も知られる女傑だ。
イチロウも上がってきた。森可成に励まされながら、砂まみれになりながらも。立派だと思う。
龍穴を発見。
即座に回復を済ませる。そして、見上げた先にあるのは。
間違いない。
崩れ果てていて、側には崖まであるが、神田明神だ。
鳥居も残っている。
現在でも東京に神田明神はある。
煌も事前に見てきたので、これが朽ちていても神田明神である事は間違いないと判断していた。
「ハヤタロウ、此処で間違いないだろうか」
「ああ、此処であるな。 一度戻ろうぞ。 越水長官が直に国津の神々と話したいと言っていた」
「分かった。 皆、龍穴経由で研究所に戻る。 一度休憩を挟んでからだ。 何かトラブルが起きてもおかしくはないからな」
「人遣いがあらいぜ……」
イチロウがぼやくが、ぼやかれるなと森可成がいう。
完全に父親代わりだな。
何人もの子供を育てた人物だ。森長可のような出来損ないもいたが、立派に育った子供もいた。ただまともな子は戦死してしまい、生き残ったのは森長可なみの屑である末っ子だったのだが。
そういう史実は森可成も知っているのだろう。森可成としても、イチロウのようなタイプは見捨てておけないのだと思う。
一度龍穴から戻る。
以前見かけた、巫女のデビルサマナーがいたので、一礼する。激戦の中、しっかり生き延びていたのだ。
すぐに状況を越水長官に話しに行く。
越水長官は、どうも国会に出ているらしく、数時間待たされるようだ。ただし、伝言を預かっていた。
もしも留守にしているようだったら、神田明神の周囲の悪魔を掃討してほしい、ということだった。
勿論休憩を優先して構わないと言うことで、仮眠室などが開けられていた。
イチロウとミヤズにはすぐに仮眠室に出向いて貰う。ヨーコは平然としていて、適当に茶でもしばいてくるそうである。
煌は仲魔達も回復させた後、ソピアーのところに出向く。
鬼後輩を、どうにかしてやりたいと思ったからだ。
雑多な悪魔を多数眷属にしている。その中には、強くなりたいと願う者達も多いのである。
それにだ。
ソピアーが提示してきた幻魔に、強力な存在がいる。
「もう少しそなたが力を高めたら、此処で合体させることが出来るだろう」
「頼もしい話だ。 腕を磨かなければな」
「うむ。 それでその鬼を合体させるのだな」
「……本人の望みだ」
鬼でありながら。
落ちこぼれである事を嘆き。
役に立ちたいと願っていた存在。
一神教では、地獄を管理する悪魔は邪悪の象徴とされたが。仏教での鬼は、実際にはただの公務員だ。
それもあって、鬼は恐れられはしたし、なぜか民話などでは悪役として頻繁に登場するが。神話的には、ただの公務員に過ぎない。
今、鬼が強くなりたいのなら。
それをかなえるだけだった。
合体を経て、強力な悪魔に鬼後輩が生まれ変わる。こうして、煌の手元に、また一人心強い味方が加わった。
ただし戦闘は厳しくなるばかりだ。これでも戦力は、とても足りていないのが現実だった。
ついに神田明神に到着。しかしアマノザコも同時に離脱します。
ともかく、これで大目標をようやく一つ達成。
次は、国津神達を如何にして戦力化するか、ですね。
何しろ混沌勢にもベテル本部にも狙われているのですから。