真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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※大国主命

国津神の総元締めですが、妻が素戔嗚尊の娘だったり。伊勢神宮系統の神社は初詣などで人気だったりと、今でも人気がある神様ですし、天津ともコネが強い神様ですね。

国津は征服された側ですが、それでも邪教の徒とされたわけでも弾圧された訳でもなく、各地で今では信仰されています。

この国でもっとも多い神社は稲荷。次が八幡。天津の信仰が圧倒的と言う訳でもないのです。

こういうことから考えても、実は国津はそこまで天津を恨んでいないかもしれませんね。





1、大国主命との会合

軽く仮眠を取ってきたイチロウとミヤズと合流。ヨーコも雑魚の掃討なんか面倒だとぼやきながらも。

 

それでも神田明神付近に出向いてきた。

 

あの巫女のデビルサマナーも来た。

 

そういえば名前を聞いていなかったが、妙高寺という変わった名字だった。なんでもそこそこの名門のサマナーであるらしい。

 

八咫烏の生き残りの子孫の一人らしく。

 

そういう観点では、恐らくはツバメさんと同類なのだろう。

 

ただ、ツバメさんが第十九代目葛葉ライドウになった事を、八咫烏の生き残りの老人達は快く思っていないらしく。妙高寺さんを第二十代目にしようと画策しているとか。

 

軽く話したところ、その辺のプレッシャーがきついと言われた。

 

この人は煌達より少し年上だが、はっきり言って強いとはとても思えない。それでプレッシャーを掛けられているのなら。たまったものではないだろうな。

 

ただ、神社の手入れなどは出来るそうだ。

 

越水長官が戻るまでに時間がある。

 

それまでに、少し様子を見ておきたいそうだ。

 

早速魔界に出る。

 

相変わらず凄い気配だ。

 

西の方の空が燃えている。

 

スルトにまた挑んだのか。

 

いや、スルトにあれだけやられているのだ。恐らくは、スルトが力を誇示し。それを歯がみして、ベテル本部の天使達が見ているだけ、なのだろう。

 

こちらとしては知らない。

 

アブディエルもベテルの支部の神々も、それぞれ利害が一致しているだけだし。

 

話を聞く限り、ベテル本部の威信は落ちる一方だ。

 

日本支部はベテル本部に18年前以降ずっと高圧的に接してこられたようだし。それを考えると、ベテル本部が弱体化するのは、越水長官はそうと直に言わないが歓迎する事なのだろう。

 

妙高寺さんが鳥居を見て、目を細める。

 

いくつかの作法があるらしく、それに沿って通るように言われた。

 

煌は言われたとおり通る。

 

鳥居の中はまだ神社が健在。正確には国津の領域のようで、入ると空気が変わった。周囲をさっと神々が囲んでくる。

 

ハヤタロウが先に進み出て、一礼していた。

 

「援軍を連れて参った。 大国主殿、いらっしゃるか」

 

「援軍……」

 

「確かにデビルサマナーだな。 天使でもない」

 

「……分かった」

 

神々が武器を納める。煌も戦闘態勢をとくと、妙高寺さんが言うとおり、雑用が得意な眷属を展開する。

 

その後は、神社の掃除を始める。

 

ハヤタロウは書状をもっていき、それを国津の一柱らしい神が奥の院に持って行った。煌は箒を出すと、境内の掃除を言われるままにする。

 

呼び出したのはシルキーである。

 

妖精の楽園でも見かけたが、煌のところにも悪魔合体で作った。なお、妖精の楽園にいたシルキーはとても落ち着いた性格だったが、煌のところのシルキーは、なんだか明るいドジっ子であり。

 

見ていて不安になってくる。

 

ただし掃除の腕は確かである。

 

オデットもこれくらいしか手伝えないと言って、シルキーの補助を始める。

 

見ていると、掃除の腕前はたいしたものだ。

 

或いはだけれども、こういった雑用ばかりやらされていたのかも知れない。ヴァルキリーの世界も、色々閉鎖的なのかも知れなかった。

 

イチロウも掃除は案外得意だが、森可成はそういうのは苦手だと言って手伝いを拒否。わーとモーショボーが連携して、落ち葉をかき集めて寄せている。

 

集めた落ち葉は神社の外に運び出し。

 

その後は、煌がまとめて燃やしてしまった。

 

そうして三十分ほど、皆で掃除を続ける。

 

ミヤズが案外掃除が苦手なようで、四苦八苦しているのを巴御前が助けている。巴御前は、どうもミヤズみたいなタイプを放っておけないようだ。

 

ある程度落ち葉が片付いたところで、煌は周辺の悪魔退治に移行する。

 

それを皆に告げた後、神社の外に。

 

確かに雑多な悪魔が神社を狙っている。

 

また、弱い悪魔達の聖域に侵入を試みている者もいるようだ。

 

それらを片っ端から始末していく。

 

ジャターユは既にいつでも出せるようになっており、辺りを巡回しては、飛行している悪魔を片っ端から爪に掛けていった。

 

煌も潜んでいる魔を手刀で貫き、焼き切っていく。

 

悲鳴を上げて逃げ惑う奴もいるが、好き勝手していたのが悪い。

 

順番に片付けていく。

 

黙々と処理を続けていると、越水長官が、護衛を伴って龍穴から姿を見せる。スーツをばっちり着込んでいて、秘書官まで連れていた。

 

恐らくだが、こういう場所の存在を知らされている秘書官なのだろう。護衛も、自衛隊の面子のためにつれているのかも知れなかった。

 

雑多な悪魔を始末し、神社を掃除していることを告げると、越水長官は頷いて。神社に完璧なマナーで足を踏み入れていた。

 

国津の神々が、ぎょっとした様子で越水長官を見る。

 

程なく姿を見せたのは、古風な格好と髪型をしているが、驚くほどの美男子だった。多分間違いなく、大国主命だ。

 

以前煌に加速の魔法を掛けてくれた兎の悪魔が、大国主様だと、黄色い声を上げている。ひょっとして、あれば因幡の白兎か。

 

大国主命に助けられた白兎の昔話は、かなり有名だ。

 

もしそうなら、今でも大国主命を慕っていても不思議ではない。

 

奥の院に案内されて、越水長官と秘書官だけで、大国主命についていく。その間、煌立ちは神社の防衛と、掃除をするように言われる。

 

イチロウがぼやいた。

 

「掃除なんか意味あるのかな」

 

「ありますよ」

 

妙高寺さんが即答。

 

神域を綺麗に保つことは、信仰の一端。

 

それはつまり、神々への力の供給につながるのだという。

 

ましてや神々が直接存在するところでやる掃除だ。どれだけの効果があるかは言うまでもないという。

 

なるほど、それなら掃除は意味があるか。

 

しかも日本の神社は、仏教と習合したり、他の文化圏の神々に寛容だ。時に邪神ですら、神社で祀ってしまう。

 

オセが言っていたことは事実だ。

 

確かに、これほど寛容な多神教は他に存在しない。

 

マーメイドを出すと、吉祥天と連携させて、神社に清浄な水を流す。水は荒々しすぎず、文字通り波紋が広がるようにして、汚れを追い出して外に流れ出ていく。神々がおおと感嘆の声を上げていた。

 

神社が一通り綺麗になると、今度は木々などの手入れを妙高寺さんが始めた。

 

それはもう手伝えない。

 

代わりにこちらに来たのは、背が高く逞しい神格だった。

 

「貴殿、ナホビノか」

 

「そうらしいですね。 夏目煌と言います」

 

「貴殿からオオヤマツミどのの力を感じる。 まさか、従えているのか」

 

「いえ、倒して情報を取り込みましたが具現化はしていません。 以前東京に荒神として現れたところを打ち倒し、その情報を取り込んだためだと思います」

 

そうであったかと、逞しい神格は嘆く。

 

そして、自身をタケミナカタと名乗った。

 

なるほど、この神格が。

 

天津の侵攻に抵抗し、諏訪で敗れて降伏した神。だが諏訪では、今でもタケミナカタを打ち破ったタケミカヅチの信仰の影で、タケミナカタと、更に古い神であるミジャグジを祀っている事実がある。

 

いくつか軽く話をする。

 

「オオヤマツミどのは大きな戦力になる。 具現化出来ないだろうか」

 

「……現状の僕の実力であるとギリギリですね。 分かりました。 悪魔合体を試してみます。 ただ今マッカが少し足りていません。 越水長官と相談します」

 

「何でもいい。 神社が荒れるほど、我らは力が足りていない。 しかもこの神田明神以外の神域は、外来種どもに荒らされ尽くしてしまった」

 

なるほど、それは急務だな。

 

越水長官と一緒に来た自衛官は、厳しく佇立して、何も通さないという雰囲気だ。勿論それが出来るかは話が別だが。

 

今は国家元首級の会談が行われている。

 

水を差すわけにはいかない。

 

少し皆に声を変えて、龍穴に。

 

ソピアーのところに顔を出すと、オオヤマツミを再具現化出来るか調べてみる。一応は可能だ。

 

ただ、やはり手持ちとマッカが足りない。

 

ソピアーとしても、力を維持するためにマッカの徴収は必須のようで。悪魔合体に使った悪魔などを再度呼び出す場合は、相応に厳しく取り立ててくる。

 

煌を気に入っているらしいギュスターヴと違って。

 

ソピアーはその辺り容赦がない。

 

ただ、煌の持っているものに、ソピアーは興味を示していた。

 

「む、それはどこで拾った」

 

「ああ、荒神とかしたオオヤマツミを倒した時に、取り込んだ情報ですね」

 

「それはこの国の武神素戔嗚尊のゆかりの品だ。 素戔嗚尊の妻はオオヤマツミの子孫にあたる。 その品だろう。 それを媒介にすれば、オオヤマツミを呼び出すことは可能だろうが、ただし荒神のままであろうな」

 

「……それで構わない。 その後は、どうにかする」

 

今は急務だという話だ。

 

即座に合体の準備を整えて貰い。ピアノをかき鳴らす。

 

しばしして、オオヤマツミが具現化するが。

 

山の神の総元締めであり。

 

交戦した時と同じく、獰猛で強烈な岩の塊のような神格だった。唸るばかりで、コミュニケーションどころではなさそうである。

 

「これは従えるのは一苦労であろうな」

 

「でも具現化出来た。 ありがとう」

 

「……そうか。 武運を祈る」

 

一礼すると、その場を一旦離れる。

 

神田明神に戻ると、かなり掃除が進んでいた。

 

たくさん走り回っているのは魑魅か。

 

妙高寺さんが展開して、辺りの木々に力を与えているらしい。

 

此処は神域だけあって、木々なども保存されているようだ。神社も全てではないが、ある程度保全されている。

 

それを補修できるところは全て補修する。

 

それだけで、かなり神々の力が戻るらしい。

 

タケミナカタに、オオヤマツミの話をすると、おおと感嘆の声を上げていた。

 

そして無茶を言われる。

 

「今の貴殿であれば、相撲を取って勝てるか?」

 

「相撲ですか。 確か古代は神事で行われたそうですね」

 

「そうだ。 俺もタケミカヅチに相撲で敗れて、従わざるを得なかった。 オオヤマツミも、貴殿ほどの神格に相撲で敗れれば、正気を取り戻すだろう」

 

「相撲……」

 

イチロウとミヤズが呆れ気味にこちらを見ているが。

 

神社の一角に、話を聞いていた妙高寺さんが、テキパキと土俵を書き始める。

 

仕方がない、やるか。

 

アオガミにアドバイスを受けながら、オオヤマツミを呼び出す。

 

前よりかなり小さくなっているが、これは荒神化していた時は、見境なく取り込んでいたマガツヒがなくなったからだろう。

 

四股を踏んで、距離を取る。

 

眷属になったからとはいえ、加減するつもりは微塵もなし。

 

そういう気迫が、オオヤマツミからは感じられた。

 

そのまま向かい合うと、全力でぶつかり合う。文字通りの岩山だが、煌も力を上げている。

 

神々が固唾を飲んで見守る中、激しく四つに組み合う。

 

オオヤマツミは、凄まじい重さだ。

 

だが、それでも押せないわけではない。

 

力を消耗しながらも、じりじりと押していく。下がるオオヤマツミが踏ん張る。まるで根が生えたようだが。

 

アオガミが、力のかけ方のこつを教えてくれる。

 

それに沿って、下から引っ張り上げるようにして、力を掛ける。オオヤマツミが少しずつ下がっていく。

 

汗一つかかない。

 

力を確実に消費する。

 

これだけ激しくぶつかり合っても、あたりに衝撃波などはほとばしらない。神と半分神でやりあっているから、だろうか。

 

オオヤマツミが押し返そうとしてくるが、不意に力を抜いて、横に一気に反らす。それで、オオヤマツミが体を泳がせそうになったところを横を取り。態勢を建て直す前に土俵際まで押し込む。

 

雄叫びを上げながら、オオヤマツミが踏みとどまる。

 

土俵際で、激しい攻防。

 

腰を低くしたオオヤマツミが、徹底抗戦の構えだが。

 

これはみそぎだ。

 

そう考えて、更に低い態勢から押し込んでいく。

 

イチロウが、悪魔だといって、迎撃に出向く。ミヤズと、呆れて見ていたヨーコもそれに参加。

 

神社の神々は、それを見送るだけ。

 

此処から出ても、役に立てないのだろう。

 

イチロウ達に全て任せる。

 

だが、一瞬気がそれて、地面に押し倒されそうになる。ぐっと踏みこらえると、踏み出して、今度は全身で押し出しに懸かる。

 

オオヤマツミに、少しずつ駆け引きのようなものが生じ始めている。

 

つまり、人格が戻り始めているということだ。

 

後一押し。

 

オオヤマツミが、ぼろぼろと体から岩を落とす。あちらも消耗しているんだ。それが分かる。

 

両手に光が宿る。

 

手刀で悪魔を倒す時の応用だ。

 

そのまま、一気にオオヤマツミを押し出す。

 

土俵を割ったオオヤマツミは、不意に目に光が宿ったようだった。

 

「敗れた……わ、わしは一体何をしていた」

 

「オオヤマツミどの!」

 

「おお、其方はタケミナカタではないか。 無事であったか!」

 

他にも神々に囲まれて、オオヤマツミが歓喜する。

 

契約を解除するべきかなと思いながら、煌は魔石を割り、消耗を少しでも抑える。手をつかんできたのは、わーだ。

 

「結構強いのが来てる。 手伝ってあげよう、煌ちゃん」

 

「分かった。 オオヤマツミ様、タケミナカタ様、手伝ってください」

 

「承知!」

 

「任せろ! これだけの相撲を見せられたのだ。 体が火照って仕方がないわ!」

 

神社を大股で歩いて出る。

 

森可成と巴御前を主軸に守っているイチロウとミヤズを、なんだかよく分からない獣にのった堕天使らしいのが攻め立てている。

 

けらけらと笑うそいつには、品性の欠片もなかった。

 

「弱い弱い! この国の雑魚神どももろとも、おしつぶ……」

 

言い切ることも出来なかった。

 

凄まじい跳躍を見せたオオヤマツミが、堕天使の頭上からボディプレスを見舞ったのである。

 

あ、と顔に書いた堕天使が。

 

神社の外で、赤いシミになるまで2秒。

 

その手下らしい雑多な悪魔が大慌てするが、其処に一転攻勢に出る。躍り込んだタケミナカタが大暴れを開始し。

 

更に煌も、合体させたばかりの新しい悪魔。

 

鬼後輩が強化された存在を、呼び出していた。

 

「出でよ酒呑童子!」

 

「任せろ!」

 

現れたのは、小柄な美少年である。中性的な顔立ちで、男からも女からももてそうだ。てか本当に美少年なのか、煌にも自信が持てない。

 

酒呑童子は言うまでもないが、日本三大鬼と言われる鬼の大顔役で、もっとも知られる鬼の一角だ。

 

だが退治される前に源頼光の前に現れた時、「美しい童形」であったという描写がある。

 

恐らく酒呑童子の原型は、都を騒がせた盗賊だったのだろう。

 

その正体は、まだ年若い少年だった可能性もある。だとすると、悪い大人に顔役として担ぎ出されただけなのかも知れなかった。

 

そんな酒呑童子だが、あの妖怪退治で日本一有名な源頼光とやりあった大鬼だ。手に持った金棒は、とんでもなく巨大であり。

 

敵に切り込むと、ばったばったと右左になぎ倒し始める。

 

日本という知られた土地で恐れられた妖怪の一角だ。

 

日本でろくにしられてもいない雑多な堕天使なんて、金棒に擦っただけで消し飛んでしまっていた。

 

撤退しようとする悪魔に、巴御前が立て続けに矢を浴びせかけ。

 

更には那須与一もそれに習う。

 

ばたばたとたたき落とされる悪魔達の前に、戦闘音を聞きつけたらしい天使の軍勢が現れると、後は一方的な戦いになった。

 

気が利いた少数は、その場で土下座を決めて、イチロウとミヤズの手持ちになる事を選んだが。

 

残りは天使に囲まれて滅多刺しにされ、酒呑童子やオオヤマツミの豪腕に吹き飛ばされ。

 

笑止なばかりのもろい壊滅を遂げてしまった。

 

悪魔達を撃退した後、降りてきた天使の部隊長と話をする。

 

鳥居や神社、更に作られた聖域を見て、天使はあまりいい顔をしなかった。ドミニオンとなると、下手な下級の神より強い。権限も大きい。

 

あまり今は、事を荒立てたくはない。

 

「この辺りは日本の在来神格の領地か」

 

「少なくとも貴方方と敵対はしていない。 今は日本の神格と敵対する余裕は貴方方にはないはずだが」

 

「……そうだな。 それに貴殿の活躍で、立て続けに混沌の悪魔の大物が落ちたのも事実だ。 貴殿がいなければスルトへ攻勢を仕掛けることすら出来なかっただろう。 行くぞ、此処のことは今は放置。 捨て置け」

 

「はっ!」

 

隊長の天使が言うと、統率がとれた動きで天使部隊が去って行く。

 

そういえば、煌の従えている天使部隊も、そろそろ一番古参のパワーからヴァーチャーになった天使がドミニオンに転化しそうだ。

 

そのヴァーチャーが悲しげに言う。

 

「どうも身内の頭が固く、手を煩わせて申し訳なく思います」

 

「いや、貴方のせいではない。 ともかく、今は無駄に敵を作らないことだ」

 

「いいのかよ。 なんなら全部ぶっ潰してやったんだが」

 

「同感ね」

 

酒呑童子にヨーコが同意している。

 

天使を今のうちに削っておけば、ベテル本部の戦力や、戦後の影響力を更に低下させられる、というわけか。

 

だが、それはあまりにも軽率でハイリスクローリターンの行動だ。

 

「多少の戦力を削れる可能性はあるが、もしも一人でも逃したら最悪の事態になるし、なんなら今此処を監視している勢力がいてもおかしくない。 軽率な真似は避けるべきだろう」

 

「ちぇー。 喧嘩だったら派手にやりたいんだけどなー」

 

「酒呑童子ちゃん、喧嘩は考えてやらないと痛い目にあうよ」

 

「……そうだな。 分かってる」

 

わーがたしなめると。

 

恐らくは、源頼光に敗れた時の事でも思い出したのだろう。悪童然とした態度を崩さなかった酒呑童子はあっさり退いた。

 

まあ確かに、相手が悪い喧嘩をして敗れたのだ。

 

如何に鬼であろうと懲りるだろう。

 

その元となった存在の影響もあるかもしれない。

 

「見事な武勇だ」

 

神社から出てきたのは、越水長官と大国主命だ。褒めてくれたのは大国主命である。一緒に神社に戻ると、途中でオオヤマツミが嬉しそうに言う。

 

クシナダヒメが嫁いでいなかったらくれてやったのにのう、と。

 

それを聞いて、どうしてか煌は複雑な気分になった。

 

どうやらアオガミも、それに越水長官も、のようである。

 

「どうしたのかしら?」

 

「いや、なんでもない。 それはともかく、会談は終わりましたか」

 

「ああ、外に来ていた害虫の駆除、ご苦労だった。 たいした相手ではなかったようだが、それでも被害をゼロに抑えられたのは大きい。 ミヤズくんも既に支援を中心とした立ち回りは身につけられているな。 イチロウくんも充分に前線で戦える。 うちに抱えているサマナー達の中でももう上位に入るぞ」

 

「えっ! あ、ありがとうございます」

 

イチロウの顔がぱっと明るくなる。

 

それを見て、人の転がし方がうまいなと、ヨーコが顔に書いていた。今の戦いでも、ヨーコは要領よく立ち回っていて、要所で悪魔を爆殺していた。それだけで、まあ充分ではあるが。

 

神社に戻った後、いくつかの話をする。

 

大国主命達は、この「本物の」神田明神を維持。

 

此処には龍穴での直通路がつながった。今、此処に人を手配して、東京に即座に来られるようにするという。

 

そして、東京が揺らいでいる件について。

 

大国主命が、術式を組んで揺らぐ東京の速度を緩和してくれるとの話になったそうだ。

 

伊勢神宮系統で祀られている大国主命は、どちらかといえば封じられている存在ではあるが、それでもこの国では上位に入るほど信仰されている神だ。今はかなり力を失っているが、それも魔界にて押さえ込まれていたから。

 

人間のいる場所に出れば、一気に力を回復できる。

 

そうなれば、タイムリミットを遅らせることが可能になる。

 

それについては、煌は素直にありがたいと思った。

 

実際問題、あの激戦を繰り広げている混沌の悪魔とベテル本部の天使達が、ちょっとやそっとで決着をつけられるとは思えない。

 

やるとしたら煌が最前線に出て、混沌の悪魔の顔役をスルトも含めて全部倒すくらいの事はしなければならないだろうが。

 

そこまで簡単にやられてくれるほど、甘い相手ではあるまい。

 

それにだ。

 

天津神との連携も取りたい。

 

ちなみに、此処とスクナヒコナは直に連携しているようで。

 

天津神とは、更に連携を取りやすくはなる。ただし、それも簡単ではない。まだまだ魔界の新宿の方は、ほとんど地歩を確保できていないからである。

 

握手する大国主命と越水長官。

 

ある意味歴史的な瞬間なのかも知れない。

 

国津の神々は被征服者だ。

 

それがこの国の国家元首と握手し、和解したというのは、色々と大きい。

 

東京に戻ると、すぐにユヅルとタオも招集して、会議となる。

 

やることがいくつかあるからだ。ちなみにツバメさんは来なかった。

 

「ツバメくんが既にいくつかのピラーの破壊に成功している。 浄増寺に集められたマガツヒを、程なく安全に散らすことが出来るはずだ」

 

「しかし、会議でその話をするということは、まだ何かあるんですね」

 

「そうだな。 それについては直前に話す。 まだ不確定要素が多く、調整の途中だ」

 

なるほどな。

 

越水長官はここにいる誰かを警戒しているとみた。

 

そしてその誰かは。

 

煌には、概ね見当はつく。だが、それでも、最後の最後まで、その人を見極めようとも思った。







日本で神同士の勝負をするとあれば、はいおわかりですね。

相撲です。

ほっそい煌くんですが、ナホビノになっていることで、どうにか相撲は取れます。

アオガミによる支援もあって、超弩弓マウンテンなオオヤマツミに勝つことも出来ました。

オオヤマツミが大喜びするほどの相撲は、彼の理性を取り戻させるに充分だったのです。また神事としても意味があり、国津神達が一気に力を回復させました。外に攻め寄せてきていた堕天使(なおオオヤマツミに瞬殺されたのは分霊体のムールムールです)を蹂躙できる程度には。

ちなみにオオヤマツミの孫がいたら嫁にやったのにという言葉は、神話ネタです。もう貰っています(苦笑)




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