真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
スルトに大苦戦し、突破の糸口さえ見えないベテル本部の軍勢。
ベテル本部は既に一枚岩にほど遠い。成果を出せないアブディエルは、明確に焦り。
それどころか離反者まで……
アブディエルの目の前で、何度目かのスルトへの攻撃が失敗する。
文字通り瞬殺だ。スルトが振るった炎の剣、レーヴァティンの破壊力は文字通り桁外れ。核兵器なみだ。それをためもなく連発してくるのだから、たまったものではなかった。
人間どもの軍隊をかり出してはどうか。
そういう提案を事前に席次が下の大天使からされた。
大天使と言ってもアブディエルの下に何名もいる。その中には、かなり動きが怪しい者もいる。
なぜこの者が大天使と呼ばれているのかと言いたくなるほど、力が足りていないものも多かった。
あんなものに、人間の兵器では力不足だ。
核攻撃を打ち込むのはハードルが高すぎる。
長年人間世界の財界と関わってきたアブディエルは、今の時代の人間の兵器の強さを知っているが。
だからこそ、スルトには勝てないことも分かっていた。
戦車隊でも並べて射撃させたところで、ほとんど無意味だろう。
アブディエルは剣を構えて様子を見ながら、部下から報告を聞く。被害は一段と大きくなった。
そもそもだ。
世界中で今、若い世代が教会にいかなくなっている。
一神教の影響力が低下しているのだ。
ニーチェだのが一神教のくびきをはずそうと必死になっていた時期があった。だが、結局そいつらも一神教の思想的なくびきからは逃れられなかったし、発狂して死んで行った。
だが。
時代が経つにつれて、最強の支配ツールとして時の権力者達に愛好されてきた一神教も、その影響力が落ち始めたのだ。
児童に対する性犯罪に手を出す聖職者が告発されるようになり。
その俗悪さから、無神論者を名乗るようになった者も多くなった。
思想的には一神教のくびきからは離れられていない。
だが、それでも。
やはり熱心な信者が減り、力が落ちているのをアブディエルはどうしても感じる。それどころか、天使の総数は減る一方だ。
18年前に四大をはじめとする主要な天使がことごとく落ちた。
連絡もないということは倒されたのだ。
誰に倒されたのか。明けの明星なのか、或いはもっと別の存在なのかまではわからない。ただ、どうも明けの明星が戦ったのは神だけらしいというのは、調査で分かってきている。だとすると、一体何があったのか。それが分からない。
ともかく、今は戦力を再編成して、スルトを倒さなければならない。
ただでさえ緒戦でアザゼルを相手に大苦戦し、更にはモロクに奇襲を許すところだった。
これらを解決した日本支部のナホビノには、天使だけではなく、大天使にまで傾倒する者が現れ始めている。
そもそもだ。
アブディエルも知っているが、天使自体が一神教由来のものではない。ゾロアスター教由来の概念であり。
もしも神が倒れて、そして一神教の信仰が脆弱になったり。
考えたくはないが、創世が行われでもした場合は。
天使という存在は再編成され。
おぞましいことに、皆バアルにまで戻ってしまうかも知れない。
中東の雑多な神々に。
一神教で散々貶めた存在に。
それほど皮肉な話があるだろうか。
伝令が来る。
どうやらゼウスが来たらしい。それどころか、オーディンもだ。他にも、コンスが来ているという。
コンス。ベテルエジプト支部を現在まとめている月の神だ。月の神で男性神格は珍しい。
エジプト支部では、太陽神アメン・ラーの力が著しく低下しており、最高神オシリスも、またその跡を継いだホルスも近年様子がおかしいという。
これもあって、結果として消去法としてコンスが代表をしているようだ。
本来なら取るに足りぬ存在、と言いたいが。
エジプトの神々は、くせ者のセトも含めてコンスの元で良くまとまっているそうで。あまり無碍にもできない。見かけは若々しい男性神格で、王子様と言われそうな顔立ちが整った美男子であるのだが。威厳が足りないのもまた事実。それを整理された頭脳で補っているようだ。
更に、日本支部の越水も来るそうだ。
舌打ちして、一度戦闘態勢を解除。前線を下げる。
敵軍が勝ち誇って吠えているが、好きにさせる。
そもそも立体的に動けるのだから、いつでも前線は押し上げられる。問題は、スルトがどうにもならないこと。
それを、話し合わなければならない。
日本の電車が砂にまみれている。
その側で、アブディエルが降り立つと、話をしていたゼウスとオーディンがこちらを見る。
オーディンは名高い必中の槍グングニルを手に、もう片手にはこれまた名高いフギンとムニンの鴉をとめている。
片目が存在しないのも伝承通り。
ルーンの力を得る過程において、オーディンは片目を捧げたのだ。
この修行の様子が、タロットカードのハングドマンである。
「おや大天使殿。 無敵の天の使いが、随分と苦戦しているようで」
「貴様等、どうしてヘカトンケイレスやキマイラを前進させぬ」
皮肉をいきなり言い出すゼウスに、アブディエルは声がどうしても苛立つ。ゼウスは余裕綽々の様子で肩をすくめて見せた。
今や、ベテル本部の力はこの程度だ。
それを見切っているかのように。
「はっはっは、面白い事をお言いになられる。 無敵の天使様が負けるのに、卑しい卑しい巨人風情が勝てるとでも? 雑魚は潰しているのですから、前線は是非是非無敵の天使様がたでおすすめなされよ」
「同意」
オーディンが言葉少なく言う。
オーディンはそれほど欧州ではメジャーな神ではないが、日本では話が別だ。北欧神話は日本ではよく知られていて、その分力も得ている。
此処でもしも創世が行われれば、勝機は大いにある。
そう考えているとしたら、はらわたが煮えくりかえりそうだ。
「そう不仲では勝てる戦も勝てますまい」
「お、コンスの小僧か。 相変わらず父上は臥せっている状態か?」
「生憎調子が良くありませんでね。 私のような若輩者が、神々の指揮をさせていただいている状態ですよ」
「謙虚なのは良いことだ。 もっとも貴殿は私と同類に思えるがな」
コンスにオーディンが返すと。
ふっとコンスは笑ってみせる。
日本では確か、狐と狸の化かし合いとでも言ったか。狐はどこの国でも狡猾の権化とされているのだな。
インド支部は。
あまり乗り気ではなかったが、今回はインド支部にも兵を出させた。
あいつらは荒々しく、混沌側についている者も多い。
インド支部の方からは、ヴィシュヌのアバタールの一人であるラーマが姿を見せる。神話ラーマーヤナの主役であり、弓の達人だ。
ただ、とにかく弱いことで知られ、最終的に魔王を討つまで成長するも。それまでは周りから助けられて少しずつ強くなっていく神話では珍しい主役である。
「おそろいで。 炎の巨人に随分手勢を灼かれたようですな」
「どうにもあの火力、しのぎようがない」
「手ならありますが」
「ほう?」
最後の声。
姿を見せたのは越水だ。相変わらず武装した自衛官など連れている。自衛官は、人間より遙かに大きなオーディンやゼウスを見て、露骨に怯んでいた。まあ、そんなことはどうでもいいが。
「この土地で具現化した以上、スルトもこの土地に縛られますのでね。 ただ、倒すには準備が必要ですが」
「面白い。 あの熱量をしのげるというのか」
「……」
オーディンが言うと、越水はふっと笑う。
天使達が困惑しているようだが。
メルキセデクだけが、進言してきた。
「アブディエルどの。 日本支部は先鋒としてめまぐるしい実績をこのたびの戦いで上げております。 ある程度信頼してもよろしいのでは」
「……そうだな。 だが、このままだと戦功を日本支部が独占することになるのではないだろうか」
「それはそれで面白いんじゃねえのかなあ」
しれっと不遜な口を叩くゼウス。
こいつ、神がお隠れになったという情報を、つかんでいる可能性もあるのか。こんな戦いなどどうでもいい。
そういう口ぶりだ。
アブディエルも、ルシファーの言葉を全て信じているわけではないが。
ただ、18年もの間。
天の父たる主も。
四大も七大も。
そろって姿を見せないのは、あまりにも異常。
焦りがないわけではない。それに、日本支部には緒戦だけで、今までの貸しを全て返されるくらいの活躍を持って行かれている。
もしもナホビノが現れなければ、緒戦で橋頭堡を確保できていたかさえ怪しいのだから。
「いずれにしても、各支部奮闘せよ。 日本支部に考えがあるというのなら、我々は一度兵を下げて再編成に移る。 被害は甚大であるのでな」
「なら俺たちが進む理由もありませんな」
「同意。 ただでさえ北欧支部は、相性が悪いのでね。 兵を安全圏まで退かせて貰う」
「流石にスルトが相手では、オーディンどのも厳しかろう」
ラーマが言うと、オーディンは怒る様子もなかった。
まあ、当たり前だ。
北欧神話の神格全てがスルトには勝てない。
それは分かりきっている事なのだから。北欧の神格という時点で、スルトという絶対破壊者には勝てないのである。
ともかく、突破の糸口が見えた。
一度兵を退いて、再編成に移る。敵もそれを見て、再編成を開始したようだ。ゲリラ戦をしていた混沌の悪魔達も、フィアナ騎士団をはじめとする遊撃戦力の反撃で削られていたし。何より日本から生じた最初のナホビノが暴れているせいで、かなりの被害を出している。故に、あまり敵も強気には出られないのだ。
一度戻る。
今の軽い作戦会議は、支部の反応を見る意味もあった。
アブディエルも分かっている。
既に支部は本部を舐め腐り始めている。
特に昔座に着いていた経験があるギリシャ支部は露骨なほどだ。同じ座に着いていた経験持ちとしてはエジプト支部もあるが、コンスはくせ者で、何を考えているかさっぱり分からない。
現在も魔界の一角に拠点を構えて、其処で動く気配がない。
番犬代わりにセトを放しているが、それくらいだ。
一番協力的なのが驚くべき事に日本支部だが。
あれは明らかに腹に一物抱えている。
越水が相当な切れ者であり、恐らくは人間ではないことはアブディエルも知っているのだが。
全く尻尾もつかめない。
ハニトラも含めたかなりダーティーな手段も使って醜聞を探させているのだが。それらの全てに引っかからない。
とにかくあいつは厄介だ。
下手をすると、最悪の障害になる可能性すらあった。
大天使達を集める。
アブディエルが現在席次では一番上だが、その下がマンセマットだ。奴はもはや野心と分派行動を隠そうともしておらず、サリエル、カマエルとともに独自の動きをしている。何度か交戦にまで発展した。
現在新宿方面にいる天使は、あらかた奴の麾下にある。
一部真面目に職務を実行している天使もいるが、それも魔境の中の魔境である新宿での任務は厳しく。
消耗が凄まじい有様で、補充どころではなかった。
かろうじて忠実と言えるのはメルキセデクくらい。
他の大天使達も、あまりアブディエルには協力的ではないし。
なんなら主の御許を離れようとしている者さえいる。
そういうものを、今まで五人、アブディエルは斬った。
そのたびにベテル本部の戦力は低下する。
天使もベテル本部を離れて野良になったりするケースが相次いでいる。
ベテル本部は、もはや崩壊寸前だった。
「スルトへの攻撃、うまくいきそうにもありませんね」
ぼやいたのは席次が下の方の大天使だ。
忠実だが、実力は座天使ソロネと大して変わらない。
その上無能で、ろくに任務をこなせたこともない。
アブディエルはため息をつくと、方針を指示する。
「日本支部がスルトを突破できる秘策があるそうだ。 しばらくは時間が掛かるそうだがな」
「日本支部が?」
「確かに此処は日本です。 神話的なアドバンテージは彼らにある。 任せるのもまた、一興ではありましょうが」
「しかし大丈夫なのでしょうか」
もしも失敗したら。
実は、日本支部の力を削いで、というような訳にもいかない。
スルトを突破するのは、ゼウスなどが非協力的な今、極めて難しい。あいつは創造神や主神クラスの神ですら危険な相手なのだ。
つまり日本支部が失敗した時、手を叩いて笑って見ているという訳にもいかず。
それこそ全軍をどうにか特攻させて、スルトを討ち取るくらいしか手がない。
しかも敵にはまだイシュタルとチェルノボグとアリオクが控えている。それらがどう動くか、全く分からないのである。
日本支部が成功した場合も厄介だ。
既にナホビノを得て事態の主導権を握りつつある日本支部である。
その力量は、この戦いの緒戦でアザゼルを病み上がりとはいえあっさり下し、モロクを打ち倒した事からも証明されている。
今まで押さえ込むことが出来てきていたのも、日本神話の神々が全滅状態だったから、なのだが。
報告を聞く限り、国津神が日本支部に合流したという。
更に天津神の残党がこれに加わりでもしたら。
はっきりいって、今までのように押さえ込むのは厳しくなる。
だが、混沌の悪魔を倒しきらないと、非常にまずい。
ベテル本部の威信は地に墜ちる。
その結果得をするのは、マンセマットらの分派活動をしている天使達。
何より、野心を隠してもいないギリシャ支部をはじめとする連中だ。
インド支部に至っては、創世には興味がないようだが、もっと危険な何かを始めている可能性が高い。
インド支部のシヴァは極めて強力な神格で、主たる神がお隠れになった今、もっとも警戒しなければならない相手だ。
まさに八方塞がりである。
メルキセデクが言う。
「そろそろ現実的にものを見なければならない時期が来ている、と判断するべきでしょうな」
「どういう意味か」
「我らが主たる神はお倒れになられた。 四大や七大も同じように敗れた。 それを前提に動くべきだと言うことです」
「貴様……」
アブディエルの声が冷えたが。
メルキセデクは退かない。
メルキセデクは力量はたいしたことがないが、しかし頭は切れる。副官にしているのはそれが理由だ。
一神教はバカを支配するのにもっとも都合が良いツールである。
それはアブディエルだって分かっている。
問題は天使達までそれが波及することで。
自分でものを考えられる天使はほとんど存在しないし、考える事自体が罪とされることも多い。
ただ主の言葉だけを信じ、疑うな。
それは一神教全てに共通した教義だ。
である以上、天使もその枷で縛られる。
アブディエルもその枷を受けている自覚はある。だから、こういう発言が出来る奴を、斬るわけにはいかないのだ。
明確に離反するつもりなら、話は別だが。
「四大や七大を復活させるべきだと思います」
「何……」
「確かにミカエル様が復活為されれば、これ以上ないほどに心強いが……」
「具体的にどうするつもりか」
メルキセデクは言う。
現在内偵を進めているが、やはり四大、七大ともに、バアルや更に古代の神に戻ってしまっているという。
倒された時に、そのあり方までも砕かれたのだ。
中東に数多いた神々のうち、一神教ではいくらかの存在を大天使として祭り上げた。ミカエルに至っては、その原型がマルドゥークにあるという話すらある。
それを元に戻すには。
一度倒すしかないというのだ。
「幸い、それぞれ完全にバアルにまで戻ったわけではないようです。 しかしこのまま放置しておくと、それも時間の問題でありましょうな」
「し、しかし如何に弱体化したとは言え、元は四大や七大だぞ……」
「我らにどうにか出来るのか?」
「するしかあるまい……」
日本支部が何か準備をするようだ。
だったら、その間に。
アブディエルは、麾下の精鋭とともに出ると告げる。
他の大天使達は不安そうにするが、流石に留守居を守れない程度では、話にもならないだろう。
「メルキセデク、具体的に皆様方がどこにいるかは見当はつくか」
「現在、ウリエル様を発見しております。 ただし、ウリエル様は特に弱体化が酷い様子で、力の過半をサリエル様に持って行かれてしまったようです」
「やむを得ないだろうな。 本来はサリエルの中の魔術とは関係ない要素を分離したのがウリエル様だ。 よみがえらせても、力は限定的か」
「まだ問題があります」
メルキセデクは言う。
数多のバアルが動き始めている。
既に三体のバアルが確認された。そのうちモロクの討伐は銀座近辺で確認済みだ。
更にベルフェゴール、それにバエル。これらの元バアルは、いずれも日本支部に討伐されたようだ、という。
バアルが倒されたのは良いことだ。ただ問題がある。
ベリアルをはじめとする元バアルは健在な上。
バアル由来の存在で恐らくもっとも厄介なベルゼバブが、どこにいるか分からない。
目撃例があることから、ほぼ確定で具現化して、魔界で活動している。それがどういう目的で、なんのために動いているかも分からない。
カナンのバアルも、近々復活する予兆があるという。
もっとも一神教に対して脅威だったバアルだ。
だから、バアルという存在の主のように扱う事もあるが。実際は単に初期の一神教に対する脅威であり。
あまりアブディエルが口にはしたくはないが、信仰などの観点でも一神教にもっとも影響を与えたバアルでもあるから。
天使達に与える影響も、またとてつもなく大きい。
全てが不安要素であり。
アブディエルとしては、頭が痛い問題だった。
「現時点で活動しているバアルをもう少し倒さない限り、枷は外れないでしょう。 四大や七大の方々は戦いに負けたのではなく、或いは主がお隠れになった時、その影響をもっとも強く受けたのかも知れません」
「……そうかも知れないな」
最も主の寵愛を受けていた天使達。
故に、その影響も受けたと言うことか。
そういう観点では。
アブディエルは武闘派ではあったが、寵愛なんて受けていなかったと言うことになるのかも知れない。
嫉妬に近い心が浮かぶが。
それを主への絶対的な忠義が打ち消す。
何があっても、主を復活させなければならない。最悪、他のベテル支部を全て殲滅して、神々をことごとくアティルト界にたたき出し。
人間どもにたいしてエスカレーションを行い。
一神教を世界中でより強権的に強制して信仰させる必要さえあるだろう。
そんなことをアブディエルは考えていた。
「よし、ならば方針を変えよう。 バアル由来の悪魔を少しでも削る。 どれかしら、所在が分かっている存在はいるか」
「現在復活の兆しを見せているのがアドラメレクです。 他にも何体かバアル由来の悪魔はいますが、どれもたいした実力は有していないので、放置して構わないかと」
「分かった。 アドラメレクが出現し次第討つ。 案内せよ」
「は……」
アブディエルは飛び立つ。
アドラメレクは太陽神系統のバアルを貶めた存在であり、そこそこに知られている悪魔である。
勿論バアルとしての存在を取り戻そうとしていて。
その存在は明確に脅威になる。
今のうちに討ち取っておかなければならない相手の一角であるのは明確な事実だ。
育てた麾下の精鋭とともに現地に急ぐ。
その過程で、不意に近づいてきたのは、黒い天使だった。
マンセマットの伝令か。
「伝令。 新宿区にて天津の神の動きあり」
「ちっ。 やはり生き残りがいたか……」
「以上」
機械的な応答だけして、黒い天使は去って行く。
マンセマットも言っていた。
自身も目的は主を復活させることだと。
だがあいつの思想はアブディエルよりも更に苛烈で、人間を完全に奴隷として、神の事しか考えられない木偶にするという代物だった。
アブディエルもそれは長期的には人間のためにはならないし。人間が滅びてしまえば神もいなくなることから、避けるべきだと考えていたが。
マンセマットはそれこそ、人間が生きている間だけ、天下を取れればそれでいいと思っているのかも知れないし。
もっとおぞましい計画を、裏で進めている可能性さえあった。
ともかく現地に急ぐ。
程なく、魔法陣が見えてくる。
周囲には既に雑多な悪魔が湧き始めているが、光の力を部下達が放ち、一斉に蹴散らす。マガツヒを散らし、魔法陣に神の剣を突き立てると、凄まじい絶叫が上がった。
具現化しようとしていたアドラメレクがアティルト界に戻っていく。
だが倒したわけではない。別の場所から具現化してもおかしくない。
次、とメルキセデクに言う。
メルキセデクが挙げた悪魔のところに向かう。
悔しいが、スルトをどうにもできない今。
こういった対処療法しか、アブディエルには出来る事がなかった。
原作だと良いイメージがないかもしれないアブディエルですが、よりどころである神が死に、四大や七大もいなくなり、天使達が右往左往するのをまとめるのは大変だったと思います。
その上支部の神々からは舐められまくっている有様。
それでもあれだけ気丈でいたのだから、むしろ凄かったのだと思いますね。
それも原作ではナホビノ君に負けてぽっきり折れてしまったわけですが。