真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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4、暗躍する鴉と

マンセマットは跪いて命令を聞いていた。命令を下しているのは、ある意味天使であり、ある意味そうではない存在だった。

 

「ナホビノ候補をまとめて塩漬けにする計画は失敗したか」

 

「残念ながら、日本支部の対応が早かったものでして」

 

「まあいい。 次の手だ。 日本支部がナホビノ候補を多数抱えているのは分かっている。 その中に恐らく、アブディエルの半身がいるはずだ」

 

「当たりをつけてはいるのですが、極めて警戒が厳しゅうございます。 自衛策も身につけておりますし、何より……」

 

何より、と聞き返されて。

 

マンセマットは。

 

モーセの出エジプトに登場する天界の最暗部。黒い仕事をするダーティーワーカーである天使は、うつむきを更に深くしていた。

 

マンセマットは元々汚れ仕事の担当で、一神教の信仰の内部では極めて冷淡に扱われ続けていた。

 

いつからだろう。

 

天使に対する信仰が邪魔だと人間が認識し始めたのは。

 

そもそも唯一絶対の神を自称する四文字の神は明確に人格を持っており、寵愛する天使とそうでない天使の間にあからさまな依怙贔屓もあった。

 

それでも、同じような境遇であるサリエルとカマエルとともに、ずっと忠誠を尽くしてきたのは。

 

努力がいつか報われると信じてきたからだ。

 

それすら今は失った。

 

神が破れた時、知恵の欠片を口にした。

 

それによって知ったのだ。

 

用が済んだら、マンセマットは処分するつもりだった。その神の意志を。

 

故に、鞍替えした。

 

神が健在だったら、堕天使になっていただろう。

 

だが、そうはならない。それ自体がベテル本部がかたくなに認めようとしない、神の死を意味していたと言える。

 

今は堕天使には、なろうと意識しなければなれない。

 

そうすれば大天使から一気に力を引き上げることも出来るだろうが。

 

あのとき口にした知恵の果実の味もある。

 

堕天使になどなってたまるか。

 

ともかく、今は新しい主に、報告をしなければならない。

 

「アブディエルの半身は、自信をつけ始めています」

 

「ほう」

 

「意志薄弱、絶対的権威の犬。 絶対正義を奉じ、それ以外を認めない。 そういう存在が望ましかったのですが、急速にそうではなくなりつつあるのです」

 

「ふむ、それは確かに一神教の再興を掲げたがるアブディエルにとっては都合が悪かろうな。 半身としても相性が悪かろう」

 

左様にございますと、頭を深々と下げる。

 

今の主はとても聡明だ。

 

明らかに頭が鈍り始めていた四文字の神と違って、即断即決。

 

本来はそういう存在だったのだ。

 

いつの間にか、魔王の別名みたいにされて。一神教徒からは忌み嫌われる存在になってしまったが。

 

「まあよい。 そもそも創世の女神は覚醒しつつある。 誰かしらが天の玉座にたどり着けばそれでかまわん」

 

「は……」

 

「マントラの理をそなたも知ったのだろう。 まあその一端を、であるが。 ならばそれを滞りなく終わらせるのが其方の目的だ。 勿論、そなたらがある程度報われる世界を望む気持ちも分かるがな」

 

主が消えた。

 

頭を上げると、マンセマットはふうとため息をついていた。

 

凄まじいほどに上がっている力。これは同志であるカマエルとサリエルも同じだ。主の指示通り、いくつかの事をこなしておかなければならない。

 

現在、ベテル本部の戦力は払底しつつある。

 

更に大天使の何体かは、既にマンセマットの側に引き込んだ。

 

四文字の神の束縛が外れた以上、元はバアルだったものは動揺している。四大や七大もそうだが。

 

大天使達も、本来は他から引っ張ってきた信仰の一部に過ぎなかったのだ。

 

それが「唯一絶対」等という嘘八百を外してしまえばどうなるか。

 

ある者はゾロアスターの時代に戻り。

 

ある者はバアルへと帰る。

 

それが自然な定めだと言える。

 

奇しくも世界中で一神教がモラルハザードを起こしている。まあ、無理もない。バカを支配するための思想。バカを支配していれば、バカになる。

 

一神教が世界最高の影響力を持った時、四文字の神は座に上った。

 

15世紀末のことだ。

 

その時、それまで座にいたテングリは既に座に興味を失い、存在していなかったという。

 

座から自ら降りた天の主は珍しくない。その前のユピテルもそうだったし、マルドゥークもそうだったと聞く。

 

或いはだが。

 

天の座というものは、実態としては極めて儚い代物であり。

 

実用性は低いのではないかとすら、マンセマットは疑っていた。

 

「それではカマエル、サリエル、予定通り動くとしましょうか」

 

「ああ。 今まで我らを見下し、顎で使ってきた連中を、逆に使い倒してやる時よ」

 

カマエルが笑う。

 

サリエルは、もっと暗い笑みを浮かべていた。

 

「あのアブディエルの石頭を打ち砕いてやりたいが、それは後にするのだな」

 

「まだベテル本部には利用価値があります。 混沌の悪魔達を片付けるまでは、アブディエルに荷が重い指導者の座を任せておいてやるとしましょう」

 

「その後は……」

 

「ええ、私たちで奪い取るとしましょう。 私が主席になりますが、同志達よ。 貴方方には是非左右を固めていただきたい。 今度は我らが三大天使として、新しい世界の象徴となるのです」

 

手を広げてマンセマットが言うと。

 

カマエルとサリエルが大いに頷いていた。

 

そして、すぐに動く。

 

事前に策は決めてある。

 

今、予想通りベテル本部は大苦戦している。新宿区に展開している至聖所の守りが薄くなるほどに。

 

あそこがアブディエルの墓場になるだろう。

 

本当なら、アブディエルに創世の一翼を担わせてやっても良かったのだが。

 

どうも半身がうまくいきそうにない。

 

ならば、いっそのことマンセマットがナホビノになってもいい。

 

今の主は、誰が座につこうが興味がない様子であるし。

 

マンセマットが創世をしてもなんら文句を言うことはないだろう。

 

どうせ資源を使い果たして人間は今後凄まじい速度で衰退していくのだ。そんな世界では、徹底的な管理と、絶対的な法による統治が好ましい。

 

其処には、お題目など不要。

 

人間を徹底的に見下しているマンセマットのような存在こそ、座に着くのにはふさわしい筈だ。

 

燃えたぎる野心を抱えて、マンセマットは駒を進める。

 

まずは、もう少しばかりベテル本部には苦戦をして貰う必要がある。

 

最初に狙うのは。

 

インド支部だった。

 

 

 

(続)







※マンセマットと愉快な仲魔達

自分の一押しです。特に一神教の内部権力闘争による「天使信仰弾圧」で堕天使にされてしまったサリエルと、ただ他神話で言う戦闘神格扱いなのに悪役扱いされて堕天使呼ばわりされているカマエル。これにマンセマットを加えた三バカトリオは、とても書いていて楽しいです。勿論破滅して行く様子も込みで。

今回の三バカはとても悪い事をいつものようにもくろんでいて、しかもとっても強い人から助力を受けています。

この邪悪な陰謀が、思わぬ結果をもたらすことになります。

ちなみにマンセマットがカマエルとサリエルを大事に思っているのは本当です。他二人も同様。この三人、互いの境遇が似ているので、その中で育んだ絆だけは確かなのです。




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