真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
日本の支配者である神々、天津。
追いやられ弱体化した天津と、ついに合流する時が来ました。
しかしその前には、マタドールと同等の実力者が待ち受けていました。
それも複数……
第六天魔王他化自在天を退けてからは、在来の悪魔との戦闘を続けながら、魔界の新宿を進んだ。
アナーヒターも頼りになるが、他の眷属や仲魔も充分に活躍してくれる。
人員を入れ替えながら進み、今はタオとヨーコ、ユヅルとともに進んでいた。
イチロウとミヤズは東京で悪魔を倒して回っている。
ツバメさんの動向は分からないが。
今の時点では、共闘をする訳ではないようだ。
ユヅルもアールマティの加護を得たイチロウに触発されたのか、強力な悪魔を悪魔合体で作り上げていた。
戦闘では頼りになる。
黙々と進んでいく。
やがて。広大な廃墟が見てきた。砂漠の要素がとても強く、廃墟に残されている建物はほとんど消し飛んで砂に埋もれていた。
あちこちに緑もあるが。
悪魔も相応の数が群れていた。
ハヤタロウが近い、と告げてくる。
「この辺りを何度も行き来したのだろう。 スクナヒコナの臭いがあちこちに残されておる。 だが、この辺りに放たれた悪魔もまた、何かをずっと探して回っているようだ」
「あれはマガツカか」
「うむ……」
極めて巨大なマガツカだ。今まで見たことがないほどの代物である。
無言で伏せて、様子を見る。
マガツカは意外とおとなしく、周囲の悪魔を手当たり次第に襲って食らっているような様子はない。
だが、あれを潰しておくことは、周辺の安全確保の最低条件となるだろう。
天津の神々は、この辺りで潜伏を余儀なくされている。
見たところ、群れている悪魔は雑多な存在ばかりだが。
恐らくは、この国の神々がよみがえると邪魔だと考えている連中ばかりなのだろう。あまり理性的には見えないし。
また、かなり質も高いようだった。
ユヅルが提案する。
「雑魚は僕たちが対処する。 マガツカを出来るだけ速攻で仕留めてくれるか。 それで龍穴も使えるようになるはずだ」
「そうだな……だが、あの数だ。 行けるか」
「どうにかする」
「やれやれ、面倒ね。 しばらくはゆっくり出来ると思ったのに」
ヨーコがぼやく。
タオが提案していた。
「私の力、どんどん上がっているんだ。 最初に面制圧仕掛けてみようか」
「力が上がっている?」
「うん。 何が起きているかは分からないけれど、或いは……創世が近いから、なのかも知れないね。 私の力、創世に関係するものらしいの。 今まで何度も行われてきた創世の度に、私のような力の持ち主が世界に現れてきたんだって。 ベテル日本支部が本部にある程度逆らえたのも、私がいたからというのがあったらしくてね」
そういえば。
あのアブディエルが、タオの言葉にあっさり退くのを煌も見ている。
だとすると、今の発言には一定の信頼性がある。
しかし、創世の間際に聖女が出る、というのか。
それは一体どういう意味なのか。
それに、アブディエルは明らかに創世を恐れているように見えた。今までの話を聞いて回る限り、創世はあくまでアティルト界に大きな影響を与える出来事であって、別に世界のルールが根本的に変わるようなものでもない。
一神教で聖女というと、だいたい壮絶な末路を遂げて死後列聖されたような存在である。それを思うと、タオはまさか。
いや、それはあまり良いことではないだろう。
タオは人間性が失われてきているようには見えない。
ともかく、タオに頼む。
周囲に群れている決して弱くない悪魔達や、あの巨大なマガツカ。面制圧にてある程度対処できるなら、それにこしたことはないのだ。
タオが祈り始める。
凄まじい光がほとばしると、辺りの悪魔達を文字通り押しつぶしていた。
圧力さえ伴っているかのような光だ。悲鳴が響き渡り、文字通り雑魚は消し飛んでしまっていた。
他の悪魔達も、かなり手傷を受けている。マガツカさえ、焼けただれているのが分かった。
眷属を展開。
同時に煌も、仲魔を呼び出していた。
「出でよ、大獄丸!」
「此処に!」
出現したのは、それこそ雲を突くというような表現が正しいような、巨大な人型だった。
大獄丸。
日本三大鬼と言われる存在の筆頭。
あの最初の征夷大将軍である坂上田村麻呂に討伐された伝承が残る、鬼の領域を遙かに踏み越えた存在である。
本来は鬼は地獄の公務員であるのだが、この存在は地上で悪逆の限りを尽くし、世界を魔道に包まんとした超大物であり、妖怪を通り越えて邪神に近い。そういう意味では、鬼というカテゴリに加えて良いかはかなり微妙だろう。
ユヅルが金童子や鬼先輩などを素材に作り上げた切り札だ。更に、河童達も、連戦で鍛え上げられている。
大獄丸が巨大な剣を振るい、悪魔の群れに突貫。
河童達が、ファランクスを作ってそれに従う。更にユヅルが展開した天狗の部隊が、上空から仕掛ける。
他の雑多な妖怪達も、乱戦で激しい戦いを始めていた。
負けてはいられないな。
こうもマガツカに突貫。
酒呑童子が最前列に。後方から、立て続けに那須与一が射撃。次々に巨大マガツカに矢が突き刺さる。
だが、マガツカの力は想像以上だ。
膨れ上がると、巨大な肉の触手が多数生え、それを振り回してくる。立て続けの攻撃で、砂が爆裂し。
建物の残骸が吹っ飛ぶ。
マーメイドが水の壁を展開して緩和してくれる。
ユヅル達が相手してくれている悪魔の群れも、かなり手強い。大獄丸だけでは突破しきれないほど質が高い。
逆に言えば。
それくらい強力な悪魔が集って、この辺りを押さえ込みたがっている、ということでもある。
突貫。
振り下ろされた触手を、酒呑童子が跳躍して金棒で横薙ぎにする。それは対処できるが、立て続けに飛んできた触手に、一斉に締め潰される。アナーヒターがかっと叫んで、触手を全部吹き飛ばしたが、酒呑童子も無事ではない。着地をマーメイドが補助。
「畜生、つええっ!」
「恐らく高位の神格がマガツカになっている。 煌、油断するな」
「分かっています」
アオガミの警告は当然だ。
走りながら、煌は立て続けに雷撃を投射。他にも様々な魔法を試していく。だが、どれも効くが、効き目が薄い。
タフネスに全力を振っているのか。
そうしているうちに展開した触手が花のように開くと、魔法を辺りに制圧射撃してくる。その連射速度は凄まじく、ユヅルが展開していた仲魔達も、周囲にいた悪魔も、まとめてなぎ払っていく。
まずいなこれは。
タオが、光の力で防壁を作るが、それもあまり長くは持たない。マガツカに接近した煌は、下からタケノコが突き出すようにして触手が多数強襲してきたのを必死に回避する。回避しながらも触手を抉るが、はっきりいって重い。
これはまずいな。
マガツカに突貫したのは猪笹王だが、それも触手であっさり叩き潰される。霜の巨人がマガツカに組み付くが、触手に締め上げられて悲鳴を上げる。
その時、上空から躍りかかったのはアルテミスだ。ジャターユの背に乗って、そこから奇襲。
凄まじい拳のラッシュを、マガツカに数百発はたたき込み。そこからマガツカが凍り付いた。
飛び退くと、煌はありったけの眷属を出す。総力戦だ。
塗り壁が体当たりをして、マガツカを押さえ込む。煌は飛び降りてきたアルテミスと入れ替わるようにして、マガツカを駆け上がる。駆け上がりながら、マガツカを切り裂き続ける。
赤いマガツヒをばらまきながらも、マガツカは周囲への制圧射撃をやめない。
だが、その時。
マガツカの触手に一斉に札が張り付き、起爆。
一瞬だけ、動きが止まった。
ヨーコによるものだ。
本当にここぞという時しか働かないが、ここぞという時に動いてくれるのであれば充分である。
そのまま、相手の触手をなぎ払いながら上空に。
其処でジャターユに力を借り。
真下に打ち出して貰う。
全力を手刀に込め、そのまま真下に突き出して、マガツカを脳天から突き抜く。一瞬の隙にそれをやられたマガツカは、凄まじい音を立てながら、縦に切り裂かれていく。
一瞬だけ見えたのは、燃えさかる女性の姿だ。
誰かの名前を呼んでいたが。
それだけだった。
マガツカが消し飛ぶ。
それを見て、悪魔達が逃げ出す。
消費が凄まじい。すぐに皆を戻した。マーメイドが、周囲を探してくるというので頼む。今の戦いでは支援に徹していて、それで消耗が他の眷属よりも小さかったのだ。逆に霜の巨人は、仰向けになって、ふてくされていた。
まだ力が足りない。
そうぼやきたいようだった。
「ユヅル、無事か」
「君こそ余力は大丈夫か。 体のあちこちが……」
「!」
「ユヅルの言うとおりだ。 即座に回復を推奨する」
アオガミに言われたとおり、これはまずい。力を使い果たしかけている。
すぐに龍穴でギュスターヴと接続、案の定ものすごく回復料を要求されたが、支払えないマッカではない。
消耗が酷いユヅルや、タオも回復して貰う。
最初の制圧射撃がなければ、もっと酷い戦況だっただろう。
「なんだったんだ今のマガツカは。 今までとは次元違いだったぞ」
「取り込んでみて分かったが、シータ姫だ」
「知っている神格か」
「インド神話のラーマーヤナにて登場する、ラーマ王子の妻だ。 最初に羅刹王ラーヴァナにさらわれて、その後救出された後も悲劇の死を遂げる」
ちなみにシータ姫を救おうとしてラーヴァナに斬られるのがジャターユである。
ちなみにシータ姫はただひたすらに悲しみ続けていて。眷属になるのを拒否。これは何かあったのかもしれない。
回復に時間が掛かる。
その間に、ハヤタロウとマーメイドが、探索に出てくれている。
しばらく回復に努め、寄ってくる悪魔を大獄丸が全部威圧して追い払う。流石にあの触手による攻撃には参ったらしく、好戦的な酒呑童子も黙り込んでいた。
一方でアルテミスは、ものすごく動きが良かった。
さては今までは手を抜いていたのかも知れないが。
それについて、どうこうというつもりはない。
実のところ、既にアルテミスの力はとっくに上回っている。眷属になった以上、隠していた力についても把握できているのだ。
それもあって、アルテミスは手を抜かなくなったのかも知れない。
まあ、それはそれでどうでもいい。
回復をしている間に、アルテミスが話しかけてくる。
「それで、此処からどうするのだ。 天津神とやらと合流したとして、それもこの程度の悪魔どもに勝てぬ程度の存在なのだろう」
「神は信仰されなければ力を得られない」
「!」
「そういうことだ。 これからベテル日本支部と連携して、逃げ延びていた天津神に東京の神社に移って貰う。 その結果、膨大な信仰心を元に一気に力を取り戻すことが出来るだろうな」
アルテミスが考え込む。
これは失敗だったか、というような顔をしているが。
まさかそれを理解せずについてきていたのか。
最初から公認スパイを公言していたのだ。ある程度ゼウスのところに情報も送っているだろう。
だが、それでこんなことも言われないと分からない。
頭が良いのか悪いのか、煌には分からなくなってきた。やはりただのポンなのだろうか。
いずれにしてもあまりスパイにはむいていないなこの女神。どうせならヘルメスでも回せば良かったのではないかと煌は思ったが。
敵に塩を送っても仕方がないので、今は黙っている。
程なくして、ハヤタロウが戻る。マーメイドが、若干慌てているのが分かった。
「皆どの、回復は済まれたか」
「あるじさま、お急ぎください。 あまり状況は良くありません」
「分かった、まずは現地にいく。 その途中で、情報を話してくれ。 対応について、移動しながら協議しよう」
回復はとりあえず済んだ。ユヅルの仲魔はまだ完全ではないが、継戦能力はどうにか取り戻した。
問題は此処からだ。
歩きながら話す。
天津神達が潜んでいたらしい聖域が荒らされている。
それもかなり面倒な悪魔が潜んでいる可能性が高いという。
砂漠を行く。
砂がまた増えてきている。
手を振っているのは、あれはスクナヒコナか。かなりダメージを受けているようである。
「来られたか!」
「今到達した。 一体何が起きたのか」
「天津の作り上げた聖域に、何者かが攻め込んできたのだ。 それは一対の邪悪な存在で、瞬く間に聖域を闇に落とした。 神々はちりぢりに逃げたが、殿軍になったオモイカネ殿が……」
「なるほど、理解した。 ハヤタロウ、すまないがイチロウとミヤズを連れてきてほしい。 恐らくは総力戦だ」
頷くと、即座にハヤタロウが戻る。
さて、此処からだ。
一旦距離を取って様子を確認。
確かにとんでもない邪悪な気配だ。新宿区の様々な強大な神魔の力は、東京駅周辺の悪魔をさえしのぐかも知れない。
吉祥天が手をかざして見ているが。
あまり様子は良くないようだ。
「どちらもこの国出身の魔ですね。 つまり下手な海外の大物よりも強いと言うことです。 それも、魔の領域を逸脱して、死の権化に近い」
「つまりあのマタドールのような存在と言うことか」
「はい。 あれに近い力を感じます」
「厄介だな」
そうなると、天津神達の受けたダメージは深刻なはずだ。一刻も早く救援しないとまずいだろう。
近づいてきたのは、イチロウとミヤズだ。
すぐにユヅルが情報を共有。越水長官にも話は通したという。ちなみにツバメさんは遠征中で来られないとここに来る前に既に聞いている。やはりいなかったようだ。時間がない。ツバメさんなしでやるしかない。
マタドールの戦闘力を見た後だと不安だが、仕掛けられる中で最大のこの戦力で行くしかないが、不安だ。
アールマティと吉祥天が、全力で生の力を展開して壁を作る。
それがもっている間に、相手を屠るしかないだろう。
皆と他にもいくつか作戦を決めると、進む。
そして、ある一点から、いきなり空気が変わった。
其処は砂漠ですらなかった。墓場だ。墓場に浮かんでいるのは、黄色い法衣を来た仏僧……の骸骨である。
更に、墓場には似つかわしくない荒れ果てた道路。
そこを驀進してきたのは、炎を纏ったバイクに乗った男だった。ライダースーツを着込んでいるが。
顔はこちらも髑髏である。
「気をつけろ煌。 どちらも魔人にカテゴライズされる悪魔だ。 実力的にも相当なものだと見て良い」
「分かっています」
「儚い。 神々ですら死にはあらがえぬ。 我が説法によって、成仏させてやろうぞ」
「なーにが成仏だクソ爺。 あのお方に指示されてきてみたが、てんで弱くて話にもならねえ。 ちょっとばかりおまえ等、俺たちの暇つぶしに付き合えや。 もしも俺たちに勝てたら、あれを返してやるよ」
骸骨ライダーの方が、ぐっと親指で指した先には。
強烈な黒い瘴気を放つ鎖に拘束された老人の姿があった。
煌はハンドサインを出す。
相手にするのはあのライダーの方。老僧は皆に任せる。
勿論勝った方が、まだ戦闘が続いている方に加勢する。
バイクのエンジンを威圧的にならす髑髏。うぉんうぉんと、音だけは威勢が良い。煌が合図すると同時に、全員が散開する。
ミヤズによる支援魔法により、一気に加速。火炎をまとって突貫してきたライダーが、ウィリーを決めてくる。それを正面から霜の巨人が受けて立つが、文字通り全身が一瞬で火だるまと化した。
「ヒャハハハ! 霜の巨人か! ちょっと俺の炎はその程度じゃ耐えられないだろ! 絶対零度でも出してみな!」
そのまま、凄まじい勢いで、いつの間にか辺り全部が高速道路になったのを、縦横無尽にライダーは走り回ってくる。
塗り壁がとめようとして吹っ飛ばされ。
フルスイングしてたたき落とそうとした酒呑童子の金棒が、すっとライダーをすり抜けていた。
何が起きた。
そう顔に書いた瞬間、酒呑童子が轢かれる。
流石に酒呑童子はその程度ではやられないが、なんだ今のは。
「恐らく実体化と非実体化を切り替えている。 実体化した時でないと攻撃は通らない」
「なるほど、ならば……」
思念を飛ばして合図。
アナーヒターとマーメイドが連携して、凄まじい水の渦を作り出してたたきつけるが、それをすっと素通りしてくる骸骨のライダー。そして、二人の前に出てくるが。
其処を、那須与一が狙撃。
ウィリーしながら回避して、甲高い声を上げる。
「おう、おもれえ攻撃じゃねえか! ハードラックとダンスっちまうところだったぜ!」
「変な英語だな」
「うるせえ! かっこいいんだよ! 漢字にルビ振って、分かるだろ!」
「分からない」
世代が違うのだろうか。
ともかく、ライダーが激しくウィリーしながら襲いかかる。
塗り壁がさっとマーメイドの前に立ち塞がるが、塗り壁を貫通。マーメイドはその時に既に地面の下に。代わりにアナーヒターに襲いかかり。炎の車輪でがりがりと守りを削りに行く。
煌が立て続けに仕掛けるが、非実体化を細かく使って、その全てを回避してくる。更に那須与一の一撃も丁寧に回避。
更にだ。
「暖まってきたなあ! 行くぜえ!」
周囲を、凄まじい炎がなぎ払う。
塗り壁が消し飛ぶ。
これはまずいな。
突貫して、手刀を振り下ろすが、それも非実体化で回避される。しかもこうしている間にも、どんどん死が周囲を侵食しているのだ。
わーも仕掛ける様子がない。
恐らく、仕掛けるタイミングではないと判断しているのだろう。
それに今の凶悪な炎。
もう一回来たら、多分耐えられない。
距離を取りつつ、マフラーから凄まじい炎を噴射してくる髑髏のライダー。甲高く笑いながら、酒呑童子とかろうじて立っていた霜の巨人を無慈悲に焼き払っていた。
そして、煌の正面でぴたりと停まる。
激しくエンジンを吹かしているということは、正面から仕掛けてくると言うことか。厄介な相手だが。
態勢を低くする。
一か八か。
やって見るしかない。
「長期戦になればなるほど俺が有利なんだがな。 そんなんは面白くもねえ。 だから、一気に行くぜ?」
「来い」
「ヒャッハア! 良い返事だぜ!」
突貫してくるライダー。もはやバイクは炎の権化となり、彗星のように火花を散らしながら突貫してくる。しかもちかちかと実体化、非実体化を切り替えながらの突貫である。
遠距離攻撃は仕掛けるだけ無駄だ。
マーメイドが実際、途中の道を液状化したが、それは全く無意味だった。だが。アナーヒターが、残っている力を使って、髑髏のライダーの前に水の壁を作り上げる。髑髏のライダーは、それを平気で突っ切ってきて。煌がずっと同じ構えをしているのを見て、そのまま勝負に来る。
それでいい。
小細工をさせないのが目的だ。
チキンレースを相手は挑んできた。接触の瞬間は、どうしても実体化を維持しなければならない。
だから。轢きに来た瞬間。
煌は動いて、両手の手刀で、バイクを一気に切り裂きに行く。
残念、と言わんばかりにライダーが跳躍しようとするが。その瞬間だった。
「わっ!」
「なっ!」
わーが仕掛ける。
煌の手刀が、バイクを、そして髑髏ライダーを上下両断する。直後、質量を伴って突貫してきたバイクに轢かれて吹っ飛ばされる。あれはどうみても重量500㎏はあるが、吹っ飛びつつ、なんとか受け身を取って衝撃を和らげる。砂地だと言うこともあって、どうにか致命傷は避けたが。
消耗が凄まじい。
呼吸を整えながら、皆を見る。
アールマティが崩れかけている。凄まじい範囲攻撃をタオとアールマティが押さえ込んでいるが、それでも限界が来ている。
ユヅルの手持ちとイチロウの手持ちが必死に仕掛けているが、近づくことさえ出来ない状態だ。
「若造が敗れたか。 まあどうでもいい。 このまま押し切ってくれようぞ」
「まずいな」
煌は立ち上がる。勿論遠距離魔法も連続して使っているが、斥力みたいに放たれているあまりにも高密度の「死」によって消し飛ばされてしまっている状態だ。
これでは確かにそのまま押しつぶされる。
ヨーコもお手上げという状況のようだが。
いや、行けるはずだ。
「ヨーコさん。 呪いの力による面制圧は行けるか」
「出来なくはないけれど、何の意味もないわよ」
「やってくれ」
「はあ、分かったわ」
印を切ったヨーコが、呪いの力による凄まじい面制圧を掛ける。まるでタオと対になるような力だ。
なんだと髑髏の顔をゆがめた老僧だが、その瞬間。
息を合わせて、煌が雷撃を打ち込み。それにユヅルとイチロウがそれぞれの手持ちであわせる。
森可成も、火縄銃での一撃を打ち込んでいた。
だが、それら全てが防がれる。しかし、老僧の至近まで迫っていた。からからと笑う老僧だが。
次の瞬間。
その胸を、光の槍が貫いていた。
「なっ……」
タオと煌のドミニオンが連携して、今のと一瞬遅れて放った攻撃だ。
天使部隊は分が悪いと思って出していなかったから、温存に成功した。そして、あの死の力は、中和するために複雑な処理をしている。
だとすれば。多数の種類の攻撃を同時にたたき込めば、こういう結果になる。
光に内側から焼き尽くされ始める老僧。光の槍を手で抜こうとするが。其処に、浄化の水が襲いかかった。
アナーヒターじゃない。
マーメイドが、全力でそれをやっていた。
吉祥天とアールマティが、最後の力を振り絞って老僧の死の力を押し返す。死の力が、老僧へと逆流していく。
「ば、馬鹿な! わしは即身仏になることで、全ての死を超越した! 今やわしは死そのもの! それが、死にむしばまれようというのか!」
「即身仏か。 即身仏になる修行は恐ろしく大変なものだと聞く。 その過程で、精神を病んでしまったのだな」
「わ、わしは、皆が暮らせるよりよき世界のために、即身仏になった……そ、その筈、だったのに……いつの間にか……わしに即身仏になるよう促した者達を……苦痛の中で……恨み……」
骨が崩れていく。
そして、ばちんと死によって作られた空間が、内側から爆ぜ割れていた。
トリアージを済ませる。
ミヤズが温存していた悪魔を展開して、回復を続けてくれる。アマビエが、珍妙なダンスを続けて回復をしてくれているが、そういう儀式なのだ。回復するのであればどうでもいい。
ギリギリだった。
温存していた回復の道具を使っておく。
解放された老神。日本神話の知恵の神、オモイカネが。座り込んでいる煌に礼を言った。
「そなたはナホビノか。 此処は他から隔離して分からぬようにしていたのに、急に襲撃されてな……助かった」
「他の神々を集めましょう。 近くに安全な龍穴を確保しています」
「そうか。 残念ながら此処は放棄せざるをえないな」
辺りにはコールタールのような呪いが残留している。
吉祥天とアールマティが連携してかき消しているが、それでも此処に居続ける理由はないだろう。
神々が集まってくる。
三本足の鴉。ああ、八咫烏だな。クシナダヒメ。素戔嗚尊の妻だ。見ると、なぜか懐かしく感じる。
確かに綺麗な女性だが。
薄着の豊満な体の女性。アメノウズメだろう。
他には、ぼろぼろになった逞しい体の男性神。タケミカヅチと名乗った。
ともかく、皆に集まってもらい、回復を続ける。力が戻ってきたので、イズンを出して回復を促進。
オデットは普段役に立てないが、こういうところではミヤズの助手としてものすごく頑張っている。
展開していて消耗も少ないので、役に立てる。
「とりあえず終わりました。 一度戻りましょう。 何か忘れ物はありませんか」
「……この砂に沈んだ神社が心残りだ。 立派な神社であったのだが」
そうぼやいたのは、名前もよく分からない老神だ。自分でも名前を忘れてしまっているらしい。
或いはこの神社の祭神だったのかも知れない。
悲しい話だった。
ともかく、最低限の力しか戻っていない。龍穴に急ぐ。比較的無事だった大獄丸を護衛に歩く。
大獄丸は不機嫌そうだ。
「俺は天津には虐げられる側の存在だったからな。 あまり良い気分はせぬわ」
「そうだな。 其方は朝廷に反抗した人間が邪神として伝えられた者だ。 だが、今はそれに関係なく、この地を土足で踏みにじるものどもを追い払うのが先ではないのかな」
「ちっ。 知恵の神様の言葉はその通りではあるがよ」
「この国に馴染み、やり方を受け入れる存在を追い払う必要はあるまい。 だがこの国のルールを勝手に外から持ち込んだルールで我が物顔で書き換えようとする輩に迎合する必要などない。 其方が一応は所属している鬼という概念も、元は中華由来のものだ。 だが今は、その概念は馴染んでおるであろう。 馴染もうと言うのであればそれでいいが、明らかに今はそうではない者達を団結して追い出さなければならぬ状況であろう」
ぐうの音もでないらしく。
大獄丸は、以降は何もオモイカネに言い返さなかった。
程なく龍穴に到着。今度は煌が回復しつつ、ジャターユを展開する。さっきの戦闘では、狭い空間であり、役に立てる状況ではなかった。今度は上空から、周囲を見張ってほしい。
すぐにユヅルが先に戻って、越水長官を呼んでくる。
越水長官は人間かかなり怪しいと思っていたのだが。現れると、オモイカネがやはり知っている存在を見たような顔をした。
間違いない。
越水長官は、そうだとは言わないし、詮索しようとも思わないが。
恐らくはこの国の神。天津神の一柱だ。
鵺といわれるほどの政治手腕も、人間とは全く違う時間を生きてきているのであれば納得できる。
皆に席を外してほしいと言われたので、煌は頷くと、何人かで連携して遮音の魔法を使う。
煌は腕組みして座って休む。タオとヨーコは先に戻り、イチロウが側に残ってくれた。ユヅルは先の戦闘での消耗が酷く、仮眠を取りたいそうだ。イチロウはそこまでダメージが大きくなかった事もあって、まだなんとかやれるとか。
「やべえ悪魔だったな。 あんなのに、これからどんどん戦いを挑まなければいけないんだな」
「ああ。 だが、イチロウも戦えていたのだろう。 アールマティを展開できるようになったというのは、かなり凄いデビルサマナーになっていると言うことだと思う」
「ありがとう。 そう言ってくれるだけで嬉しいよ。 あんな凄い女神様が認めてくれているなら、少しは自信を持っても良いのかもな」
イチロウが飲むゼリーを口にしている。
煌はいらないと先に言って、回復の終了を待つ。マッカは消費したが、先の魔人二体が凄まじい量のマッカを落としてくれたので、特には困らない。強いて言うならば、力が上がってきた分、回復まで時間が掛かる事が課題か。
そして、あのライダー。情報を取り込んだ今はヘルズエンジェルという事が分かるが。あの悪魔は命令を受けてきていたようだ。
日本神話系の神々を殺しに。
命令を出した何者かがいる。更に言えば、日本神話系の神々が潜んでいる場所を的確に突き止められる者も。
恐らくは内部に。
煌はイチロウにそれを言わない。今言って、イチロウがそれに耐えられるとは、思えなかった。
※大僧正とヘルズエンジェル
こいつらちょっと素性がよく分からないですよね。ヘルズエンジェルに至ってはナビ悪魔にまでなる始末……
大僧正はアリスと対になる超凶悪スキル回転説法が猛威を振るいまくっていますが、これだけの存在感なのに正体がようわからんです。まあ見た感じ、即身仏なのかなあという気はします。