真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
天津の神々を回収して、それぞれを神社に手配する手続きをしているのを見ながら、会議室に向かう。
天津の神々はまだたくさんいるが、主要な神々をよみがえらせれば、そこから派生してどんどん八百万の神々を取り戻せるという。
越水長官が何でそんなことを知っているかは聞かない。
それよりも、大事な話があるという。
皆の前で、説明が行われた。
「まず東京駅周辺だが、大きな動きがあった」
「どのような動きでしょうか」
「インド支部がスルトに仕掛けた」
「え……」
インド支部が単独で。
今回の戦闘では、インド支部はギリシャ支部以上に消極的だったという話をミーティングで聞いている。
ちなみにインドにもデビルサマナーはいるらしいが、18年前の混乱以降やはり相当に数も質も減らしているらしく。
今回の戦いで来日した者もいるが、戦力にはなれていないようだ。
「インド支部の戦力は壊滅。 指揮をしていたラーマが倒れ、更には腹心だったハヌマーンも倒れたそうだ。 その代わり、スルトにかなりの深手を負わせたようだが」
「それだけの戦力があるのなら、他の支部と連携して仕掛ければ良かったでしょうに」
「その点については、前後関係がよく分かっていなくてな」
ヨーコの皮肉に、越水長官が言う。
なんでもインド支部は先にラーマを何らかの形で失い、それをスルトの仕業と判断したハヌマーンが火神アグニとともに仇討ちの名目で仕掛けたようなのだ。
それはまた、妙だな。
スルトは見た感じ、そんな小細工をするような存在には見えなかった。
何よりも、そんな小細工をする必要もないだろう。
「いずれにしてもインド支部は、指揮を執っていたヴィシュヌがこれで大幅に弱体化して、戦力の再編に入ったようだ」
「えっと、ちょっと分からないんですが、ラーマって人がラーマーヤナの主役? なんでしたよね。 それは煌から聞きました。 それで、俺も聞いたことがあるヴィシュヌって神様に、何か関係があるんですか? ごめんなさい、本当に分からなくて」
「良い質問だ。 ヴィシュヌはインド神話のヒンドゥーでもっとも信仰される三柱の神の一柱でな。 主に世界に問題が起きた時、様々な姿で解決する神だ。 今で言うと変身ヒーローのようなものだな。 ヴィシュヌの化身の一つがラーマであり、他にも化身がいくつかあったのだが、18年前から今に至るまで多くが失われた。 特にカルキという戦闘神格と、クリシュナという知恵を司る神格が今までに倒れており、今回のラーマが倒されたことは致命的だったようだな。 ヴィシュヌは表に出るどころではなくなり、支部を率いているのは現時点ではヴァスキという存在だ。 この者はインド神話でも別に有力な神でも魔でもなく、はっきりいってただのお飾りだな」
なるほどと、イチロウが納得していた。
ヴァスキはナーガラージャの一角で、ヒンドゥー教において世界を造り出す際に、紐として利用され、散々振り回されたという可哀想な逸話を持っている。それをやった神々には恐らく怒り心頭恨み骨髄だろうが、それでも従っているのだとすれば哀れな話である。
そして今の話から、シータが悲しんでいた理由が分かった。
ラーマが倒された。
それも相当に悲惨なやられ方をしたのだろう。
元々シータは、ラーマーヤナの物語が終わった後、悲惨な死に方をするのだ。それを加味しても、それでもラーマを愛していたのだとすれば。
その悲しみはよく分かる。
越水長官が、続ける。
「インド支部には悪いが、これは好機だ。 スルトに仕掛ける準備が整った」
「スルトの実力は僕も見ました。 手傷を受けた程度で、倒せる相手とは思えませんが」
「勿論問題ない。 短時間だが、完全にスルトの熱を無力化し、更にはスルト自身を弱体化させる手はずが整った」
ユヅルに、越水長官がいい。
持ってこさせたのは、札だった。
札については、全員分配られる。
秋葉権現と書かれていた。
「確か秋葉原の語源となった炎の神様ですね」
「その通りだ。 しかも都合が良いことにスルトが陣取っているのは秋葉原の至近。 要するに、スルトから地元の神の力を用いて、炎の力の主導権を奪う。 今までは不可能だったが、大国主命が短時間で信仰を得て力を回復させており、更には天津の神々も同じように力を回復している。 明日には行ける。 準備を整えてほしい。 相当に弱体化させる事が出来るが、それでも相手はスルトだ。 こちらでもツバメくんをどうにか呼び戻す。 協力して、確実に仕留めてくれ。 スルトを倒すことが出来れば、ベテル本部の介入を以降完全に黙らせる事が出来るだろう」
越水長官がそう結論した。
この様子だと、本当に18年間大変だったんだな。
煌としてはそう同情せざるをえない。
越水長官がなんの天津神なのかは分からないが、いずれにしてもそれなら魔法などを平然と使っていたのも説明がつく。
一旦解散となる。
その後、ミヤズに話を振られた。
「すみません、煌先輩」
「何かあったのか」
「はい。 実は以前からちょっと妙な夢を見ていて」
「……どういう内容だろうか」
ユヅルがいないことをわざわざ確認していた。
そうなると、話しにくい夢なのだろう。ユヅルに対しては。
好きな人が出てくる夢なのだという。
幼い頃から、月からやってきて、船に乗せてくれる王子様の夢。何をバカみたいな話かと自分でも思うのだけれども。その王子様が具体的にどういう存在なのかも分かるし、なんならあからさまな明晰夢であり、しかもその夢を見た後は元気になっているのだとか。
今まで難病で二回死の淵をさまよったミヤズだが、その二回ともその夢の中で王子様が励ましてくれたらしい。
それもあって、今でも好きな人はその王子様であるのだそうだ。
なるほど、確かにユヅルには話しにくいだろうなと思う。
ミヤズを溺愛しているユヅルからしたら、その王子様のモデルとやらを音速で殴りに行きかねないからだ。
「ただ、デビルサマナーになって、大量のマガツヒを得るようになってから、体がとても健康になり始めました。 それと同時に、夢の内容も変わってきたんです」
「詳しく頼む」
「はい。 私が神様になって、王子様が退位する夢なんです。 王子様がそれで消えてしまって」
変な夢だが。
あまりにも頻繁に見るので、おかしいと思っていたのだという。
更に王子様というと西洋風かというと、なんとエジプト風だという。エジプトの神で、月の神というと。
コンスか。
煌がコンスかなというと、頷かれた。
「はい。 月の神格で男性神格はあまり多くなくて、日本の月読尊も実際には正体がよく分かっていないので、月の神とは言いがたいんです。 調べてみると、一致するのがコンスくらいしかいなくて」
「それでどうするつもりなんだ」
「いえ、コンスが王子様なのだったら、感謝しています。 今まで不自然に体調が良くなったのは、偶然だとは思えませんから。 ただ、この間調べたんですけれど、エジプト支部を現在統括しているのが……コンスなんです。 これから、最悪の場合エジプト支部と争うことさえあるのではないでしょうか。 その時は……私はあまり力になれないと思います」
なるほど、それは確かに煌にしか言えないかも知れない。
わかったと返すと、ぺこりと一礼してミヤズは寮に戻った。軽くアオガミと話す。
「確かにミヤズの話は出来すぎている。 記憶領域からコンスを検索して分析してみたところ、日本に度々来て、よく分からない行動を取っているようだ。 ただ、まだミヤズに力を分け与えていたのがコンス本人なのかはなんとも分析が出来ない。 何かの罠かもしれない」
「はい。 ただもし善意でミヤズさんを助けていたのだとしたら、悲劇にならないと良いのですが」
「そうだな。 エジプト神話では、セトという爆弾がある。 今はエジプト支部でおとなしくしているようだが、もしも創世が狙えるとなったら、何か良くない動きをするかも知れない」
頷く。
そして、煌も寮に戻ることにした。
寮で顔を洗って、目を見る。
既に瞳は。
完全に黄金に染まっていた。
(続)
※ミヤズからの相談について
原作だとかなり早い段階でされる話ですね。本作ではミヤズを戦闘に噛ませることを決めていたので、煌くんにある程度信頼をミヤズがしてから話をさせました。
原作だとどういう風に敦田兄妹やタオと知り合ったのかがよく分からず、かなり踏み入った話を最初からしているので、本作ではこの辺りのタイミングでいいかな、という感じで、です。
ちなみにミヤズはかなり早い段階で地力でコンスにたどり着いています。
まあ好きな相手なので、調べるのも真面目にやると言うことですね。
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