真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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ついにスルトとの戦闘開始。

世界に数多ある神話の中でも、圧倒的最強の戦果をたたき出した魔との死闘です。

相手が北欧神話が現役で信仰されていた北欧での顕現であったら、100勝てない戦いです。

ハヌマーンとの戦闘でスルトが手傷を受けた今でも。

全ての戦力を出し切って、やっと勝負が成立するレベルの相手なのです。






灼熱の巨人
序、秋葉原決戦前


秋葉原至近の淡路町では、ベテル本部所属の天使の軍勢が既に整列していた。其処に、越水長官とともに出向く。

 

スルトがこの先にいる。

 

インド支部のハヌマーンとアグニとの戦いでスルトが消耗した。

 

それ以降、チョークネックポイントの此処で炎の壁を展開して、黙り込んでいるらしい。今までのような、積極的に破壊的な火力を振るってくるわけではない。

 

ただ、天使の軍勢も相当にダメージを受けている。

 

ベテル本部が及び腰になっているのは見るだけで明らかだった。

 

今回は総力戦だ。

 

ツバメさんも呼び戻している。

 

ちょっとマタドールにやられた傷が全快していないようだが、それでも一緒に戦ってくれるそうである。

 

スルトはそれをするに値する相手、ということだ。

 

作戦は既に何度か確認して練ってある。

 

それに、スルトは恐らく単騎で待ち構えている訳ではない。

 

スルトにはムスペルヘイムという支配領域があり。

 

其処にはムスペルという炎の巨人が多数存在していて、いずれもがスルトの眷属として絶対忠誠を誓っている。

 

ムスペルは圧倒的な強さを誇り、スルトと一緒にラグナロクでは神々を蹂躙し尽くしてしまう。

 

恐らくだが、北欧神話に登場する種族の中では、最強の存在だろう。

 

スルトが危なくなったら、このムスペルが加勢してくる可能性が極めて高い。油断など、して良いはずもなかった。

 

「越水か。 どうやら来たようだな」

 

「ええ、到着しました。 これから先は任せていただきたく」

 

アブディエルが、何体かの大天使を連れて降りてくる。

 

アブディエルは何度もスルトに仕掛けては、損害を出すだけだった。既に天使達も相当数が焼き払われ、しかもアティルト界からの再度復活もうまくいっていないようである。リソースが足りないのだろう。

 

一神教の信者がどんどん不信心になるか、狂信者になっている今の時代だ。

 

天使達も、懐が厳しいのだろう。

 

先進国の財閥を多数抑えているという話もあるが。

 

今の時代、ちょっとしたことでそういった財閥なんて一瞬で消し飛んでしまうのが現実である。

 

それくらい世界情勢が危ういのだ。

 

「では我らは下がる。 これ以上消耗すると、この先の戦闘で大いに作戦遂行に支障をきたすのでな」

 

アブディエルが飛び去る。

 

やれるものならやってみろ、という雰囲気だった。

 

アブディエルの側にいたメルキセデクだけは心配そうにしていたが。他の大天使達は意図的に表情を消していたように煌には見えた。

 

あれは、恐らくだが。

 

アブディエルは既に、大天使達の心さえつかめていないのかも知れない。

 

黒い天使達の様子もある。

 

既にベテル本部は、内部分裂で滅茶苦茶なのではあるまいか。

 

四文字の神にあらゆる全てを頼り切っていた弊害だ。

 

そう考えると、色々な意味で哀れではあった。

 

越水長官が手を叩く。

 

「既に準備は整えた。 秋葉権現の札は、スルトの炎に対して絶対ではないが、かなりの緩和をしてくれる。 国津の神々と天津の神々が連携してそれを増幅してくれている上に、東京の神社で得られた信仰心がそれを増幅している。 特にここ18年は、初詣などに来る人間の信仰心……素朴な祈りの心が、宙に浮いている状態だったのを、国津も天津も取り込んだのだ」

 

なるほどな。

 

それなら、短期間で回復できたのも分かる。

 

そして、それらの増幅があれば。

 

以前見た、天使の軍勢を紙くずのように引き裂いたスルトの炎を、耐え抜くことも出来るかも知れない。

 

ましてや完全にメタを張っているのだ。

 

それならば、対抗できる可能性はある。

 

何よりスルトは圧倒的に強いが、それは北欧の神々に対して、の話である。

 

日本神話の神々に対して、圧倒的に強いわけではない。

 

「よろしいですか」

 

「何かな」

 

ヨーコが挙手する。

 

そして、相変わらずずけずけと言った。

 

「貴方は相当に強いはずです。 此処では全ての戦力を惜しまないというのなら、出るべきではないのでしょうか」

 

「お、おい……!」

 

越水長官がつれていた自衛官が色めきだつが。

 

越水長官は右手を挙げて、彼らを落ち着かせた。

 

ヨーコは平然とその様子を見ている。

 

相変わらず怖いもの知らずである。

 

「私はいくつか仕事がある。 秋葉権現の力の増幅もその一つでな。 一千万都民の信仰と、それを最大限増幅するためには、東京に度々姿を見せている悪魔達に邪魔をさせるわけにはいかない。 最後の壁として、指揮を執らなければならないのだ」

 

「そうですか。 いずれにしても、スルトを倒すだけならどうにかやってみせるわ」

 

「頼もしいことだ。 期待している」

 

煌もちょっと驚いた。

 

ヨーコがここまで強気の発言をするとは思わなかったのだ。

 

ツバメさんはというと、あまり調子は良くなさそうである。ずっとタオに回復の力を掛けて貰っている。

 

マタドール戦で受けた傷は、死そのものだった。

 

普通の人間だったら、即死していてもおかしくなかったのだという。

 

それがツバメさんの圧倒的な生命力で押さえ込み。

 

タオの回復の力で、どうにか押さえ込んでいるが。

 

実際には、ひと月くらいは回復に費やしたいらしい。

 

それも今は出来ない。

 

だから、こうして力を温存して、無理矢理回復して、どうにかするしかないと言うことだ。

 

「分かっていると思うけれど、あたしはあんまり役に立てないから、君たちでどうにかするんだよ」

 

「先生がそこまで言うというのは相当ですね……」

 

「流石にちょっとばかり今は体調が悪くてね」

 

事情は皆知っているから、それについて文句は誰も言わない。

 

ともかく、ツバメさんが秋葉権現の札を手に取ると。凄まじい炎が吹き上がっている場に、真っ先に悠々と進んでいく。

 

煌もそれに続く。

 

炎は確かに熱いが、耐えきれないほどではない。

 

ちなみに皆も、耐熱加工をしている服を着込んできている。

 

宇宙服みたいな奴だともっと確実なのだが、それだと動くのが極めて難しいのも事実である。

 

いずれにしても、すぐに燃えるような服だと話にもならない。

 

他にも耐熱の工夫を色々と凝らしてきている状態だ。

 

炎の壁を抜けると、手傷を受けた巨人の至近に出ていた。

 

流石に少し驚いたようだが、それでもスルトは極めて四角い男……つまりごつい、無骨な武人だ。

 

話によると、ラーマ王子を闇討ちしたということだが。

 

そんなことをする相手には見えなかった。

 

「この炎を抜けて来ただと。 この土地の神々の力を受け、更にはわしの弱体化を見越して進んできたようだな」

 

「ま、それでも限界があるんで、総力で仕留めさせて貰うっすよ?」

 

「そういうことだ。 済まないが、斬らせて貰う」

 

「どうやら出し惜しみしている場合ではなさそうだな。 出でよ、眷属ども」

 

やはりそう来るか。

 

周囲に沸き立つ、溶岩のような巨人達。数は多数。とにかくたくさんいる。そして、周囲がまるで噴火したばかりの山のようになっていく。

 

その中で、佇立するスルトの背丈は、二十mはある。

 

以前の半分に縮んでいるが、それだけ受けたダメージが深刻だった、ということなのだろう。

 

煌はすっと剣を振る。

 

ツバメさんも、頷く。

 

作戦は簡単。

 

煌とツバメさんで総力でスルトを仕留める。できる限り速攻で。

 

その間、皆でムスペルを食い止める。

 

他にも雑多な悪魔が仕掛けてくるかも知れないが、それらもまとめて片付けてしまう。そうすることで、日本支部がベテル本部から受けていた抑圧を、全て跳ね返すことが出来る。

 

実際この東京駅近辺での戦闘で。

 

日本支部が戦況改善にどれだけ貢献したか。

 

計り知れないほどだ。

 

更にスルトを打ち倒せば、それは決定的になる。ベテル本部に一から十まで口を出される事態は、終わる。

 

煌には政治に関与するつもりはないが。

 

頭が愚劣だとは思わないが、最初から間違えてしまっているアブディエルに支配され続けるのは問題だとも断言できる。

 

だからこそ、此処で勝たなければならないのだ。

 

「デビルサマナーだろうが、見ると年若い者が多いな。 焼き払わなければならないのは、胸が痛むことだ」

 

「世界の全てを焼き払う存在が、随分と感傷的だな」

 

「そういうものだ。 わしとてそういう神格として具現化しただけだ。 それにわしの本質は熱への恐れ。 無敵を誇ったノルマンの民が、唯一どうにもできなかった自然の猛威。 それが世界でもっとも優れた戦歴を残した魔王、このスルトだ」

 

間合いを計る。

 

スルトが手にしている剣が、青く輝いている。

 

熱が高すぎるのだ。

 

まるでバーナーみたいなそれを相手に、これから渡り合わなければならないが。まあやるしかない。

 

懸かれ。

 

そうスルトが叫ぶと、多数のムスペルが戦場になだれ込んでくる。

 

煌とツバメさんは、その場で仕掛ける。

 

煌は全ての眷属を展開。

 

ツバメさんは、両手に巨大なかぎ爪を生じさせると、真っ先に直線的にスルトに突貫していた。

 

 

 

スルトと凄まじい戦いを始める煌先輩とツバメ先生。

 

お兄ちゃんの師匠であるツバメ先生とは、何度も顔を合わせたことがある。実は昔から、お兄ちゃんと同じ仕事が出来るかも知れないと、ツバメ先生にはミヤズは言われていた。

 

ミヤズは、戦闘向けの神格はあまり従えていない。

 

今、巴御前が放った矢が、ムスペルの額を射貫く。

 

額が炸裂するが、それでもムスペルは倒れない。ムスペルに突貫したお兄ちゃんの操る巨大な猪が、とどめを刺す。

 

巴御前に攻撃は任せて、ミヤズはひたすら支援魔法と、回復に徹する。

 

タオさんも光の魔法での面制圧に必死になっている状態だ。

 

はっきりいって、回復に回る余裕なんてないだろう。

 

イチロウ先輩も、今ではすっかり前戦で戦えるようになっている。

 

最初は臆病な人なんだなと思っていたが。

 

今ではすっかり認識を改めていた。

 

今度は。

 

ミヤズが勇気を出す番だ。

 

的確に消耗を見ながら、回復をしていく。支援をしていく。

 

ずっと珍妙な踊りを続けているアマビエは、回復の起点になっている。傷ついた仲魔を、弱い仲魔が引きずってくる。

 

それをミヤズ自身も覚えた回復の魔法で、回復させていく。

 

悪魔から教わった回復の魔法は、ほとんどでたらめな代物だが。それでもなんでもかんでも全開とは行かない。

 

特に素の状態で煩った病気などは、どうにもならないのが現実だ。

 

凄い暑さの中。

 

極限状態の中で、回復と手当を続ける。

 

イチロウ先輩が吹っ飛ばされた。

 

ムスペルはとにかく力が強い悪魔だ。この作戦前に、従えているムスペルを一体、ツバメ先生が呼び出して見せてくれた。

 

はっきり言って身震いするほど恐ろしい存在だった。

 

スルトはそれらを従える王。

 

現実では別に王族は優秀でもなんでもないが、神話では話が違ってくる。

 

吹っ飛ばされたイチロウ先輩がすぐに立ち上がり、前線に戻る。

 

手にした拳銃を乱射しながら、悪魔達に指示を出しているのは立派だ。

 

ミヤズは手傷を受けたお兄ちゃんに、遠隔で回復の力を掛ける。お兄ちゃんがそれで、動きが良くなった。

 

一つ一つ、出来る事を積み上げていく。

 

雨が降り出した。

 

恐らくは、マーメイドさんだ。

 

煌先輩の事がとても好きな人魚さん。

 

声に呪いの力が含まれているとかで、あまり喋ることはしないのだけれども。儚くて素敵な人だ。

 

雨が降り始めたことで、明らかにムスペル達の動きが鈍る。

 

詠唱してどんどん雨脚を強くしているようだ。ただ、この雨だと、戦後の体にくるダメージが少し心配だ。

 

出来るだけ急いで、煌先輩とツバメ先生には決着をつけてほしい。

 

「ミヤズどの!」

 

「!」

 

巴御前が暴れ回っていたのを抜けて、小柄な悪魔が突貫してくる。

 

ミヤズを明らかに狙っていた。

 

支援魔法を使うことに特化した悪魔達ではとめられない。ミヤズは迷わず、渡されているM16ライフルで、接近してきた悪魔を滅多打ちにする。

 

米軍で正式採用されているこのライフルは、安価で出回っているカラシニコフなどに対費用効果では劣るものの、それでも非常に高性能だ。

 

通常弾薬では豆鉄砲にもならないが、これは特殊な対悪魔用の弾薬を使っている。雑魚悪魔なら、対応できる。

 

滅多打ちにされて悪魔が倒れる。

 

たいした悪魔ではなくて助かった。

 

呼吸を整え、マガジンを入れ替える。

 

そして、黙々と回復を続けた。

 

至近を巨大な火球がかすめて、思わず首をすくめる。

 

スルトとツバメさんと煌先輩の死闘が佳境に入っているようだ。煌先輩の眷属が、次々に焼き払われているのが見える。

 

本当に圧倒的だ。

 

勝てるのだろうか。

 

ふと、見ると。

 

秋葉権現の札が、ちりちりと燃えている。

 

やはり限界が近いんだ。

 

あまり長期戦になると不利だ。

 

支援魔法を使っている悪魔達に、煌先輩とツバメ先生に全力での支援を指示。此処からは切り替えていく。

 

皆は持ちこたえると信じる。

 

体が弱かったミヤズだけれども、今はこれだけだらだら汗を掻いて、それでも立っている。

 

「煌先輩、ツバメ先生! 全力で支援します! 一気に決めてください!」

 

「助かる!」

 

「ま、どうにかしてみるッすわ!」

 

二人がスルトに仕掛ける。

 

スルトはかなり手傷を受け、追い込まれているが。

 

それでもまだ激しい戦いを続けている。

 

ミヤズは、次の瞬間。

 

張り倒されるように吹っ飛ばされていた。

 

砂の上で何度かバウンドする。恐らく魔法攻撃の余波を受けたのだ。

 

どうにか立ち上がろうとするが、まずい。全身が悲鳴を上げている。それだけじゃない。秋葉権現の札が、燃え尽き始めている。

 

それでも、ミヤズは叫ぶ。

 

「支援を続けて!」

 

「……承知!」

 

「分かりました!」

 

悪魔達が、皆支援を続ける。

 

しかしながら、意識が危うくなってくる。

 

その時。

 

不意に熱が緩んだ気がする。

 

誰かが助けてくれたのか。

 

ぐっと顔を上げる。眼鏡が割れてしまっているけれども、それでも見る。

 

まだ煌先輩とツバメ先輩が、スルトと戦っている状態だ。まだミヤズも、負けるわけにはいかない。

 

這い上がるようにして、必死に立ち上がる。

 

そして、飛びかかってきた悪魔を、M16で滅多打ちにして倒す。

 

呼吸を整える。

 

口の中で血の味がするけれども。

 

それでも、まだまだやれる。体も少し軽い。秋葉権現の札が焼け始めているけれども。やれる。

 

「巴御前」

 

「はっ」

 

「煌さんの支援を!」

 

「……承知!」

 

イチロウ先輩もお兄ちゃんも頑張って前線を維持している。ムスペルの大群を相手に一歩も退いていない。

 

雑魚悪魔達も、河童達がファランクスになり、灼熱の中で必死に食い止めているし。

 

大物達はそれぞれの力で、ムスペルに対応できている。

 

タオさんの面制圧と、要領よく動き回るヨーコさんの動きも見事だ。

 

ミヤズだけが。

 

力になれない。

 

それだけは。絶対に避けなければならない。こんな超難敵を相手に、なおさらだ。

 

詠唱を続ける。

 

魔法は悪魔達から教わった。

 

力が流れ込んでくる、という奴だ。

 

イチロウ先輩も、森長可さんから色々な武芸を教わっている。それと同じ原理であるらしい。

 

ミヤズは回復と支援に才能があるようだと聞く。

 

回復の魔法といっても簡単に全快ポンとはいかないが、それでもないよりはマシだ。練り上げた詠唱。

 

完了して、すっと舞う。

 

全域に、回復の力を広げる。一気に意識が持って行かれるが、これで更に皆が有利になるはずだ。

 

体を支えてくれたのはアマビエだ。

 

「ミヤズ、無理をしてはならん、ならんぞ!」

 

「平気。 このくらいだったら、今までに比べたら、なんでもない」

 

顔を上げる。

 

そうだ。デビルサマナーになって、膨大なマガツヒを取り込んで。明確に体は強くなった。

 

もう一発だ。

 

詠唱。皆の動きが明確に良くなっている。

 

スルトは。

 

ツバメさんと煌さんが苛烈にやりあっているが、分かる。炎の力が、明らかに弱くなっている。

 

ダメ押しだ。

 

アマビエに頷くと、詠唱を一緒に開始する。そのまま手を煌先輩に向ける。

 

此処で、決めて貰う。

 

スルトに恨みはないけれど。このまま東京が滅びることは、ミヤズだって絶対に看過できなかった。







※ミヤズが使っているアサルトライフル

真ⅠやⅡやⅣで登場するような弾丸を用いています。弾丸は悪魔に対抗するためにそれぞれの弾丸に祈祷とかをして作り上げたカスタム品です。ちなみに一発当たり十二万三千円します。

通常の弾だと悪魔には戦車砲でも通じないので、必要な措置です。

またこのアサルトライフルはカスタム品で、スナイパーライフルの機能も有しています。

その分重いのですが、マガツヒを取り込んでもりもり健康になっているミヤズであるので使いこなせています。


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