真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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スルトの強さに圧倒される煌達。

これで手傷を受けた状態であるのだというのだから、万全の状態では勝てません。







1、無敗の王

強い。

 

今まで戦ってきたどの悪魔よりも。

 

ジョカを上回るかも知れない。

 

あのときジョカが、かなり手加減をしていたとしてもだ。

 

ツバメさんと二人がかりでも、スルトの間合いには入れない。煌は激しく切り結びながら、これはまずいと感じていた。

 

アオガミが丁寧に助言してくれる。

 

「相手は無敗のまま北欧の神々を滅ぼす最強の魔だ。 世界の神話でも間違いなく最強の戦歴を誇る魔王の中の魔王。 弱体化していてもなおこれほどの実力だというのは、私としても想定外だ。 想定していたパワーの1.7倍、速度は2.4倍、魔法を使う力も1.6倍以上」

 

「それでも勝たなければなりません」

 

「分かっている。 相手は逃がして等くれないだろう」

 

「なかなかの使い手達だが、二人がかりでその程度か。 わしを楽しませてくれる武人は、いないものだな」

 

うおんと音がして。

 

しなったレーヴァテインが振り下ろされる。高熱過ぎて青くなっている剣を、がっと受け止めたのは。

 

ツバメさんのさすまただった。

 

ぎりぎりと押し込まれる。

 

この熱に耐えているさすまたが凄まじい。

 

その隙に、煌はスルトに仕掛ける。体が不意に軽くなったのは、その時だった。

 

ミヤズの支援魔法。

 

スルトに肉薄して、アキレス腱を抉る。

 

何っと言いながらも、踏みとどまるスルトは、周囲を炎に包んでくる。

 

秋葉権現の加護あって、しかも秋葉原の至近で、なおもこれか。

 

だが。

 

スルトの顔面を、凄まじい速度で、何かが切り裂いていた。

 

「むっ……!」

 

「源義経、見参」

 

「ほう、この国の伝説的武者か」

 

幻魔源義経。

 

いうまでもなく、八艘飛びで知られる、源平時代最強の武者。軍略家としても……あくまで一戦場での戦術家として限定はされるが。恐らく上杉謙信、武田信玄らと並んで日本史上最強の一人だ。

 

那須与一の縁から、悪魔合体で作り上げた。

 

スナイパーとしての那須与一も極めて頼りになったのだが、本人にそうしてほしいと頼まれたのだ。

 

那須与一は所詮伝説が先行している射手であって、本物の伝説的武人の前にはかなわない。

 

だから、この縁をたどって、義経公をよみがえらせてほしいと。

 

煌はその話を受けた。

 

源義経は大男ではなく、かなりの小柄な男性だが。その攻撃の鋭さ、スルトをも怯ませるほどだ。

 

更には、今のでレーヴァテインをはじき返したツバメさんが、双剣に持ち替え。至近に迫る。

 

まずいと判断したか。

 

かっと叫んで、スルトは凄まじい炎を吹き上げ。

 

周りをまとめて薙ぐ。

 

マーメイドとアナーヒターが壁を作るが。自分を自壊させながら、アナーヒターが消し飛ぶ。

 

ぶわっとものすごい水蒸気が吹き付けてくる中。

 

煌は、マーメイドが即座に切り替えた鉄砲水に乗って、突貫する。

 

今の範囲攻撃で、明らかに動きが鈍ったスルトは、一瞬動きが遅れる。

 

その肩に、煌の全力での手刀が突き刺さっていた。

 

「ぬおああああああっ!」

 

スルトが叫ぶ。

 

事前に聞いていたハヌマーンに抉られた傷を、更に傷つけた形になったか。意図したことではないが。それでも拳を固めて吹き飛ばしてくるのは流石だ。霜の巨人が煌を受け止めて、にっと笑って消えていく。

 

灼熱の中、続けて躍り出たツバメさんだが。スルトは鬼相を浮かべながら、足を振り下ろして、接近を阻む。

 

だが、思い切り踏み込んだことで。

 

煌が仕掛ける隙が生まれる。

 

詠唱を開始したマーメイド。

 

任せる。

 

マーメイドは強くなりたいと願い、色々な技術を貪欲に取り込んでいる。それだけではない。

 

分かってきたが、判断力が極めて高いのだ。

 

最初にあった時は、あくまで気弱で儚い娘だった。煌に何もかも捧げる代わりに仲魔を助けてほしいと願っていただけだった。

 

それは煌も分かっていた。

 

だが、今は違う。

 

自発的に貪欲に何もかも取り込みながら、ひたすら強くなることを選んでいる。

 

その姿勢に、煌は敬意を払う。

 

「はあ、はあっ! ムスペルどもは!」

 

スルトの声に、煌も見る。頼みのムスペルが、大獄丸に殴り倒され、そのままよってたかって叩き潰されている。アールマティが放った光をもろにくらい、森可成の一撃で足を切断され、悲鳴を上げながら横転している。

 

次から次にムスペルが来ているが。

 

あちらの戦況は互角だ。

 

スルトが汗を振り飛ばしながら、レーヴァテインに力を収束させていく。だが、その分、周囲への熱量が下がっていく。

 

切り込む。

 

スルトはなんと筋肉で煌の手刀を受け止めた。

 

大きな傷が出来るが、それで致命傷を避けてくる。

 

なるほど、渾身の一刀に賭けてくるつもりか。

 

ツバメさんが投擲したクナイが、スルトの右目を抉る。更に恐らくは巴御前が放った矢が、左目も射貫いていた。呻いたスルトが蹈鞴を踏むが、それでも踏みとどまる。

 

剣に更に更に力が収束していく。

 

まずい。

 

熱に強い悪魔さえ、まとめて消し飛ばした超威力を、此処で至近にぶっ放すつもりだ。

 

やられたら、スルトも無事ではすまない。

 

だがこちらも全滅は確定だ。

 

力が減ってきている。

 

だが、此処で。

 

更に力が湧き上がる。恐らくは、ミヤズによる渾身の支援魔法。ついでに回復魔法も来る。

 

イズンが、汗だくになりながら、必死に回復をしてくれていた。

 

「煌さん、今よ!」

 

「助かる!」

 

飛び退く。源義経と並ぶと、ツバメさんとも息を合わせて、三方向から同時に仕掛けに行く。

 

先にと言わんばかりに、酒呑童子が襲いかかる。

 

当然、捨て石になるのを前提の行動だ。

 

酒呑童子も煌を見ていて思うところがあったのかもしれない。

 

スルトは潰された視力であっても、恐らく気配で探知しているのだろう。凄まじい雄叫びとともに。

 

酒呑童子を、超圧縮レーヴァテインで、左右に一刀両断。

 

更に、こちらも残像を山ほど作りながら仕掛けてきた源義経を、全身から炎を放って吹き飛ばす。

 

しかしこの瞬間、マーメイドが術式を発動。

 

完全に、その熱が遮断された。

 

水が壁になり。しかも上昇気流を作り。スルトの超高熱を相殺。更に上空へと逃したのである。

 

先に仕掛けたのはツバメさんだ。

 

今ので明らかに力が落ちたスルトは、それでも諦めず、的確にツバメさんが振るった何かの聖剣にあわせてくる。

 

ものすごい力の衝突。

 

競り勝ったのはスルトだ。

 

流石と言うほかない。

 

ツバメさんが、激しくずり下がる。だが、スルトも今ので、明確に態勢を崩す。其処に、煌は全ての力を結集させて、手刀から巨大な剣を作り上げ、空に向けていた。

 

勿論スルトもやられっぱなしではない。

 

返す刀で、剣を迎撃に来ようとする。

 

だが。

 

「わっ!」

 

「何っ!」

 

わーによる、まさに完璧なタイミングでの邪魔。

 

この瞬間を、わーが狙っていたのは明らかだった。

 

そのまま、煌は切り込む。

 

無数の斬撃をスルトにたたき込み、巨大な竜巻を作り上げる。

 

荒神螺旋斬。

 

切り刻まれながら、スルトはそれでも、竜巻を灼熱の炎で包み込もうとする。だが、その最後のあがきを、吉祥天とアールマティが連携して、光で消し飛ばしていた。

 

最大火力の大剣の一撃を、たたき込む。

 

竜巻が、あらゆる力を受け止めて、吹き飛ばされる。

 

呻きながら、スルトがその中から姿を見せる。

 

一撃は、スルトの顔面を、綺麗に唐竹にたたき割っていた。両目を失ってなお、これほどの活躍。

 

まさに魔の中の魔。

 

世界の神話でも、最後まで無敗を誇った最強の魔が。

 

極東の地で、敗れた。

 

「ふっ……これもまた天命か。 だが覚えておけ。 わしが北欧神話が信仰され、力があった時期であったら。 貴様など、貴様等など、わしの敵にはなり得なかったことを……!」

 

「それはそうだろうな。 日本で、秋葉権現の加護を受け。 多くの助けを受けてやっと貴方に勝てた。 最後に聞かせてくれ。 インド支部のラーマ王子を倒したのは、貴方ではないのだな」

 

「そうだ。 わしではない」

 

「そうか、貴方と戦えて光栄だった。 貴方は尊敬すべき武人だ」

 

炸裂するような音とともに、スルトがマガツヒとなって消えていく。最後に、満足したように笑ったようだった。

 

ムスペル達が、恐れて逃げ出す。雑多な悪魔達も、スルトが倒れたのを見て、悲鳴を上げながら、ほとんどが逃げていった。

 

皆は無事か。

 

イチロウは焦げ焦げに服がなっている。耐熱服だったが、それでも厳しかったのだ。ユヅルはもう少し上手に立ち回ったようだが、それでも髪がチリチリになっていた。

 

ヨーコは涼しい顔をしていたが、すすだらけで、服もあちこち焦げ焦げである。タオは座り込んでいたが。こちらを見てにっと笑ってくる。

 

ミヤズは巴御前が最後まで守り抜いたようだ。

 

森可成が、まだこちらを伺っている悪魔に、ダンと音を立てて火縄銃をたたき込む。それで、残っていた悪魔が、逃げ散っていった。

 

ただし煌も限界。

 

ツバメさんは、かなり厳しそうだ。

 

すぐに近くの龍穴から戻る。

 

皆の仲魔も継戦能力などない。煌もほとんどやられてしまった。

 

炎の壁が消えた淡路町を抜けると、アブディエルが、数体の天使を連れて降りてきた。威圧的に見てくる。

 

煌もそれを、静かに見返していた。

 

「驚いたぞ小僧。 まさか本当にスルトを打ち破るとは。 いかなる手を使った」

 

「作戦の概要については聞いていたはず」

 

「……そうだな。 この地の邪神とともに戦ったのだったな」

 

一神教からすれば、他の神は全て悪魔か邪神だ。

 

アブディエルもその考えからは逃れられないか。

 

その邪神の力がなければ此処を突破することは不可能で、ベテル本部は再起不能の損害を受けていただろうに。

 

それでも最初を間違えると。

 

こうなってしまうのだなと、煌は少し哀れになった。

 

「その、アブディエル様」

 

「なんだ」

 

ボロボロのイチロウが、アブディエルに言う。

 

明確な怒りがその目にはあった。

 

「こんな俺でも戦えたのは、この土地の神様達のおかげです。 それでスルトをやっつけたのも、この土地の神様達が手を貸してくれたからです。 アブディエル様が信念がある立派な方だというのは分かっています。 でも、今の言い方は絶対におかしいです」

 

ヨーコが誰よりも驚いたようにイチロウを見ていた。

 

煌も少し驚いた。

 

意志薄弱である事を嘆いていたイチロウが、よりにもよって現在ベテル本部を指揮しているアブディエルに。

 

アブディエルは、激昂するでもない。

 

ただ羽虫を見る程度にしか思わなかったようだ。

 

「そうか。 いずれにしても早く休め。 我々は前線を押し上げる」

 

「……」

 

アブディエルが麾下の天使達を連れて、一糸乱れぬ統率で飛んでいく。

 

今までスルト相手に二の足を踏んでいた他の支部も、やっと前線を進め始めたようである。

 

これは非常にまずいと判断したのだろうか。

 

混沌の悪魔達は明確に混乱し、後退を開始している。恐らくは、ほとんど戦いにさえならずに、一気に前線が瓦解するだろう。

 

ただまだ煌が知るだけでもイシュタル、チェルノボグ、更にはアリオクが控えている。このまま勝てるとは思えないが。

 

龍穴に、順番に入って貰う。

 

ツバメさんが、元気がない。

 

「すまないっすけど、ちょっとばかり休暇を貰う事になりそうっすねえ」

 

「この間のマタドール戦での手傷が癒えきっていないのに、あんな強豪と戦ったんです。 仕方がありません」

 

「……後は頼むっすよ」

 

これは、本格的にまずいみたいだな。

 

恐らくは、相当に今スルトとの戦いで受けたダメージが厳しかったのだ。煌ですら、かなり限界が近かったのである。

 

人間であるツバメさんが、如何に強いといっても、スルト相手に接近戦を挑んだのだとすると。

 

どうしても限界が来るのは、仕方がないのだろう。

 

最後に煌が龍穴を抜ける。研究所では医療班が待機していて。皆を早速診断していた。煌も合一を解除して、アオガミがメンテナンスに向かう。

 

越水長官が休むようにとだけ声を掛けて、煌も今回ばかりは頷くしかなかった。

 

 

 

数時間ほど休憩して、その後アマラ輪転炉で回復をする。

 

今日一日は好きにして良いそうだ。天津神は救出に成功し、更にはスルトを倒すという特大の金星を挙げた。

 

アブディエルは必死になって前線を進めているが、やはりあまり協力的ではないギリシャの神々を代表する他支部の動きもあって、前線の完全確保には至っていないようである。

 

このままだと日本支部に対する貸しを全て取り替えされ。

 

逆に取り返しがつかないほど巨大な借りを作ることになる。

 

政治ではなく、政治闘争の話だ。

 

政によって国を治めるのを政治と言うが、それと混同される馬鹿馬鹿しい権力争い。国を富ませるには必須の政治と違って、百害あって一利もないくだらない争い。

 

今回の件も、最初からもたついていないでベテルの足並みがそろっていれば、弱体化していたスルトには恐らく勝つことが出来たはず。

 

それが出来なかったのは、アブディエルの落ち度だ。

 

アブディエルを無能とは言わない。

 

そのつけを払うのが他の存在が中心というのは、煌としてはあまり納得がいかない話だ。ただ、それだけである。

 

しばし読書でもする。

 

黙々と読書をしていると、アオガミが来た。

 

軽く話をする。

 

今読んでいる近代哲学が、結局言い回しをこねくり回しているだけで、屁理屈と言葉遊びに徹しているだけだという話を告げると。

 

アオガミは的確に答える。

 

「敢えて難解にして、理解をしづらくする。 そしてその気になれば、どうとでも解釈できるようにする。 それが古くから、民を支配するためのツールがやってきたことだ。 一神教にしても、他の信仰にしてもそう。 そして場合によっては、それらの信仰母体となるものを隠しさえした。 その哲学書は、それら宗教書の経典と同じ仕組みだな」

 

その通りだ。

 

一神教では、バイブルを触ることが出来たのはごく一部の人間だけ。活版印刷が登場するまでは、それは庶民が触ることなど許されないものだった。

 

他も同じだ。

 

哲学は信仰に代わるのではないか。

 

一時期煌はそれを期待していたこともあるのだが。

 

色々な近代哲学を見る限り。

 

それはとてもではないが、期待できそうにもない。

 

嘆息しながら、結局は出来もしない絵空事を並べているだけの哲学書を閉じる。ニーチェといいサルトルといい、出来もしない絵空事を並べていただけだったのだが。その後の哲学者達も結局は同じ。

 

近代に置いて哲学がすっかりインテリ気取りの玩具と成り果てた構図は。

 

ある意味ローマ時代に、ギリシャ哲学が戯言の塊と成り果てた構図と似ているのかも知れない。

 

気分転換に、色々な歴史解説書を読む。

 

古くは定説だったことがひっくり返る事なんて、珍しくもない。今読んでいるのも、定説がひっくり返った事を大々的に告げているものだが。

 

煌が知る限り、三十年も前に出た説を、自説のように唱えているだけのものだ。

 

誰も知らないと思い込んで、馬鹿馬鹿しい本を書くものだな。

 

ある程度で見切りをつけて次。

 

積んでいる本を、効率的に崩していく。

 

なかなか面白い本もあるが、積んでいる本の全てがそうじゃない。

 

煌も読書家であるから、外れはどうしても引く。

 

ゲーマーがどうしてもどうしようもない駄作に当たるのと同じだ。読書をしていれば、外れには当たるのだ。

 

「科学的ではない話を全て一刀両断する」という体裁で、鼻息荒く書かれている本を読むが。

 

途中で自分たちのプロパガンダを始めたので、その段階で読むのをやめる。

 

アオガミはその様子をじっと見ていた。

 

「情報の取捨選択が早いな。 決断力を磨くのに活用しているのか」

 

「いえ、僕も本はそれなりの量読んできましたから。 読んで益なしと判断した本は、切ることが出来るだけです。 もっとも、後で読むと考えが変わるかもしれませんから、とってはおきますが」

 

「そうだな」

 

「仏教の考え方に、認識はあくまで主観に依存するというものがあります。 いわゆる唯識論ですけれど。 確かに今読んで感じることと、二十年後があったとして。 その時に読んで感じることが、同じとは限りません。 今見ている景色と、二十年後の同じ景色が、同じように見えないのと同じ事です。 同一個体ですらこうです。 仏教を信仰する気はありませんが、この考えは気に入っています。 確かに主観なんてものはその場その場で代わる。 それなのに、主観を絶対正義と論じることのなんと愚かしいことか。 ましてや誰かしらの主観を絶対と信じるなど、愚かしいにもほどがあるでしょう」

 

アティルト界の悪魔達は、天使が特にそうだが。

 

この主観正義、要するに四文字の神の主観を絶対とする思想に足首をつかまれていて、極めて危ういと煌は判断していた。

 

今眷属にいる天使達は、煌のこの考えに衝撃を受けているようで。本来だったら堕天使になっていたかも知れないとぼやいていた。

 

「その若さで、そこまで自分の考えを持てるのは立派だ。 その体でなければ、歴史に名を残す偉人になれたかも知れないな」

 

「……そう言ってくれると嬉しいですが、気難しいだけのよく分からない奴と思われるかもしれませんね」

 

「そうだな。 だが、それでも煌はきちんと自分の考えを持てている。 それは私が保証しよう」

 

「ありがとうございます」

 

それから数時間ほど、集中して読書を進める。最近読めていなかった本をどんどん読み崩していく。

 

当たり3、外れ7というところか。

 

たくさん読めばそれだけ外れも引きやすい。

 

ましてや色々と本を買っていけば、そうなるのも当然である。

 

娯楽本は最近特に当たり外れが大きい。

 

特にコメディ系統はあわなければ全くあわない。それでも煌は黙々と読み進める。面白いのかと聞かれて。面白いと答える時と、つまらないと答える時で。まったく表情が変わらないと、アオガミに言われてそうかとだけ思った。

 

寮にある本は、残りを合一して全部取り込んでしまう。

 

これでいつでも読もうと思った時に読むことが出来る。場所も取らないし、非常に便利である。

 

その後は、アオガミと一緒に体を動かす。

 

自衛官のトレーニングスペースがあるので、それを活用させて貰う。

 

ベンチプレスが簡単に上がるので、自衛官達がどよめいていた。ものすごく重いらしいし、それも分かるのだが。

 

今のこの体は、合一の影響、それにナホビノ化の影響もあり、パワーは人間離れしてきている。

 

あまり自覚はないが。

 

恐らく読書などの速度も上がっているはずだ。

 

もしもナホビノになるとこれだけ性能が上がるのだとすると。

 

人間が全部ナホビノになったら、或いは多少は世の中はマシになるのか。

 

いや、ならないな。

 

人間の性質は代わらない。

 

八雲という悪例が側にあるではないか。

 

八雲は邪悪の権化のようには見えなかったが、それでもやはり特定の何かに足首を明確につかまれている。

 

その時点でああいう風になってしまうのなら。

 

ナホビノ化は、恐らく人間が抱えている根本的な病理の解決には関係しないはずだ。

 

そもそも人間が都市国家を作り始めて一万年程度。

 

クロマニヨン人がだいたい四から五万年くらい前にはいたようなので、人間が次の段階に行くにはそれくらいはかかるとみて良い。

 

例えば十万年も経過して何の進歩もないのであれば、人間という生物は救いようがない欠陥存在と言い切って良いだろうが。

 

人間は仮にも知的生命体を名乗っているのだ。

 

一万年進歩しなかったのは事実として認め。

 

何かしらの現実的な改善案を、種族レベルで実行すべきだろうと煌は思う。

 

体を動かしていても、それほど力が上がる感覚はないな。

 

となりでアオガミが、凄まじいパワーでベンチプレスをしていて、精鋭でしられる第一空挺団の精鋭達が青ざめていた。

 

煌も力が上がってきているが、流石にあれほどじゃない。

 

トレーニングをしていると、軽く小耳に挟む。聴力も上がっているようだ。

 

「例のライドウ、入院したらしい。 スルトとかって超やばい魔王とまともにやりあったんだろ」

 

「流石にもう全盛期は過ぎているだろうによくやるよ。 後継者が育たなかったらしいし、ライドウはこの世代で終わりかも知れないって話があるらしいぜ」

 

「八咫烏自体がキーキー騒ぐ老人しか残っていない状態なんだろ。 いっそ再編成するのもありなのかもな」

 

そうか。

 

ツバメさんが回復できればいいのだが。今は、とてもそんなことをしていられる状態ではないだろう。

 

日本支部は最大戦力を一時的かどうかはともかく、現時点では手札から失ったことになる。

 

これが悪影響にならないとは、煌にはとても思えなかった。







激戦の末にスルトを打ち倒し、しかし同時に限界が来たツバメさんが一時リタイア。

ベテル本部は前線を押し上げることに成功しますが、まだまだ相手にはイシュタルが控えています。

戦場は更に混沌の度合いを増していくことになります。





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