真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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早速大暴れを開始するイシュタル。

原作でも装具を剥がさないととんでもない目にあうボスですが、天使達はそのとんでもない状態のイシュタルとやりあっているので当然ではありますね。

ましてやイシュタルは一神教に恨みマシマシですので……





2、逆撃

東京駅近辺まで前線を押し上げていた天使達は、いきなり現れたそれに、手も足も出せずに塵と化していく。

 

まるで生きた竜巻だ。

 

手をかざしてデメテルは見る。

 

なるほど、出てきたわけだ。

 

天の女主人。イシュタルが。

 

一神教で徹底的に貶められ、結果として女神でありながら混沌勢力に加担している古代バビロニア神話の最重要神格。

 

牛の系譜と蛇の系譜の両方を受け継ぎ、実力は非常に高い。

 

雑魚天使程度では歯が立たないだろう。

 

ましてや今のベテル本部は、ここ最近の活動を見る限り、主力の大天使を失い。あのアブディエルの双肩にあまりにも重い荷物が載せられている状態だ。

 

アブディエルは生真面目で信念がある武人だが。

 

デメテルが見たところ、それ以上でも以下でもなく。

 

ベテル本部がいくつもの派閥に別れ。特に鴉どもの派閥が半ば公然とアブディエルに敵対しているのも、納得できる。

 

側に弟が。

 

ゼウスが現れる。

 

「何を企んでいる姉上。 イシュタルの暴れぶりを座してみているだけ、の訳はあるまい」

 

「ふふふ、邪魔な創世を行おうとしている神々の排除をして回っているだけですわ」

 

「ああ、それで立て続けにバアルが落ちたのか。 カナンのバアルはまだ姿を見せていないようだが」

 

「あれも近々姿を見せますわよ。 というか、あれよりもベルゼバブが懸念ですわね」

 

ベリアルと並ぶ、元バアル最強の魔。

 

以前はルシファーの懐刀だったが、ルシファーが倒れた後は独自の行動をずっと続けている、通称蠅の王。

 

一神教ではもっとも高名な悪魔の一体だ。

 

勿論デメテルの懸念点はそれだけではないのだが。

 

実際、まだ解決しなければならない問題がいくつもある。

 

「ゼウス。 貴方はまた創世を狙っているようですわね」

 

「ああ、この状態ならそれも悪くはないと思ってな。 しかも日本が舞台なら都合が良い。 俺にとっては此処はとても知られている土地だ。 戦力も、今の欧州よりも出せる可能性が高いからな」

 

「それで、ローマの時にユピテルを切り離して座に据えた時と、同じように振る舞うつもりですの?」

 

「……まあそうもいかねえだろうさ。 あのときは失敗だった。 行儀が良い支配に適した信仰に切り替えてはみたものの、人間がああも堕落すると、世界帝国も内部崩壊しちまうのは身にしみたからな。 文字通りの意味で」

 

イシュタルが大暴れしている。

 

スルトほどの破壊力はないが、イシュタルは大地神であると同時に、天の女主人。空中戦も大の得意だ。

 

天使達が次々とたたき落とされていて、前線が大混乱しているようだ。

 

デメテルが視線を向けるが、ゼウスは肩をすくめる。

 

「立て続けに日本支部に良いところ持って行かれて色々焦ってるんだろ。 好きにやらせるさ。 少なくとも俺の戦力を削る理由にはならんね。 スルトの時に、それなりの数の手勢は出してやったんだ。 それを生かし切れず焼き切られたのは天使どもの無能のせいだからな」

 

「それは構いませんけれど、日本支部の戦力、侮れませんわよ。 アルテミスから聞いているのでしょう」

 

「ああ、聞いている。 まだ俺に勝てるほどじゃねえが、成長速度がえげつねえな。 ちいとばかり、動くのも早めないといけねえかもしれん」

 

「ま、頑張りなさい。 私は私で動きますわよ」

 

ゼウスの側を離れる。

 

とりあえず、次だ。

 

現時点で、創世を狙っている神格は幾らでもいる。問題は大半がナホビノを確保できていない事。

 

例外であるジョカは調べたところ、そもそも座に興味がないようだ。

 

あれは最古の道教神格の一柱。

 

座がどういうものかは知っているだろうし。

 

だからこそ、なのかも知れない。

 

大半の神格ははっきりいってどうでもいい。

 

無理にナホビノになろうとしても悲惨な末路が待っているだけだし。

 

何より。

 

勘違いしている者が多いが、別にナホビノなど。

 

いや、それはいいか。今の時点では、勘違いしている者が多ければ多いほどいいのだから。

 

手を叩いて、手勢を集める。

 

デメテルもずっとぼんやりしていたわけではない。ギリシャ神話系の神魔を、ある程度従えている。

 

その中には、ゼウスに反発している者も少なくない。

 

「調査報告を」

 

「は。 イシュタルは現在、力の六割を喪失。 更に、いくつかの力の増幅装置を発見しました」

 

「その情報を日本支部に流すように」

 

「御意……」

 

姿を消したのはニンフの一人。ニンフとはギリシャ神話の下級神格であり、妖精のようなものだ。

 

今のニンフはゼウスに愛人にされた挙げ句、散々酷い目に遭い、殺された。ゼウスに見初められたものはだいたいそうなる。そして冥界で嘆いていたところを、デメテルがハデスとの縁から引き取って手駒にした。経緯が経緯だからとにかくゼウスを恨み抜いているので、とにかく仕事をちゃんとする良い手駒だ。

 

他にも何体か、指示を出しておく。

 

今のうちに、デメテル自身を強化する算段をしておきたい。

 

それには、現状の豊穣の力だけでは足りない。

 

最初キマイラを手に掛けることも考えたのだが、あれは身内だ。流石にハイリスク過ぎる。

 

だとすると。

 

今暴れ回っているイシュタルが最適だろう。

 

倒した時に、あの角を奪い取れれば面白い。

 

良いことを思いついた。

 

先の情報と引き換えに、イシュタルの天空神としての力を一部吸収させて貰うとするか。

 

そうすれば、デメテルはゼウスとほぼ同格まで力を上げることが可能になる。

 

戦闘神格、という意味ではない。

 

豊穣神としての加護に加え、天空神の力も得ることで、ゼウスの天空神としての力に拮抗する。既に面倒くさがって表に出てこなくなった大御所であるガイアと同じレベルまで強さを上げられるはずだ。

 

これは野心だけの話ではない。

 

デメテルもまた、自分の子であるペルセポネをくだらない争いで傷つけられた被害者の一人である。

 

オリンポス12神というギリシャ屈指の神格でありながら、悲劇をとめられなかった。だからこそ、今度こそはと。あらゆる手を講じているだけなのだ。

 

いくつかの手を細かく打っておく。

 

日本支部のナホビノは切れ者だが。

 

それでも、だからこそ利害を調整すれば、共闘が可能になる。

 

利用されていることは相手も分かっているようだが。利害が一致していれば、同じように動けるものである。

 

デメテルは。

 

ゼウスに座に着かせるつもりはない。

 

創世なんぞに意味がないことは、デメテルが一番よく知っている。人間はいびつに進歩を続けていて。技術ばかりが奇形的に発展しているが。

 

恐らく次の創世でやらなければならないのは、アティルト界に対する構造的な改革であり。

 

それは人間という生物を、強制的に何かしらの形で変化させなければならない。

 

それは肉体的な話ではなく。

 

精神的な話になる。

 

恐らくナホビノは、それを目的とするはずだ。だとすれば。あの夏目煌というナホビノを、座に着かせるのがもっともデメテルの目的にかなう。

 

策略はいくら巡らせても足りない。

 

手札はなんぼあってもいい。

 

デメテルはずっと苦汁をなめ続けてきた蛇の側だ。だからこそ、今度こそ、まるで違う未来を作り出さなければならないのである。

 

 

 

スルトを打ち倒して、丸一日の休暇を取った後、戦力配分が為される。煌はミヤズとイチロウ、ヨーコとともに東京駅近辺に。

 

たった一日で前線が大混乱したようだ。

 

まあ、それはそうだろうなと思う。

 

越水長官が、説明をしてくれる。

 

「スルトを倒して前線が押し上がったが、東京駅近辺で待ち構えていたイシュタルに天使の部隊が逆撃を受け、壊滅的なダメージを受けているようだ。 今の時点で前線が激しく変動しており、また各支部も前線を進めることにあまり熱心ではない。 ベテル本部の戦力は、更に削られる一方のようだな」

 

「それで、如何すれば良いですか」

 

「ギリシャ支部から情報が来ている」

 

「!」

 

ギリシャ支部か。

 

デメテルもアルテミスも、それぞれが煌に接触してきていて。別の目的で動いている。非常に面倒な話になりそうだ。

 

越水長官が、混沌勢力の内通者と合流して、イシュタルの弱体化を進めてほしいという。イシュタルの弱体化と言われてもと煌は思ったが、映像を見てなるほどと思った。

 

例の、マガツカに似た謎のもの。

 

これがイシュタルを強化している訳か。

 

「イシュタルは本来秩序側の存在だが、とにかく一神教に対しての敵意から、混沌勢力に加担している。 古代バビロニアの神格は封印されたり貶められたりで、強大な力を持ちながら、現在の世界に強い敵意を持っている者が多い。 ラフムのようにな」

 

「分かりました。 それで、僕とタオさんはどうしますか」

 

「ユヅルくんとタオくんは、それぞれ仕事がある。 タオくん、まずはツバメくんの回復を。 強烈な死の呪いの解除が先だ。 君でも大変だと思うが、頼む。 日本支部の最大戦力はいまだ彼女だ」

 

「はい」

 

ユヅルにも指示が出る。

 

東京各地で、やはり悪魔がかなり出ている。それらを駆逐してほしいという話だった。

 

かなり荷が重いのではないのかと煌は思ったが、越水長官が部屋に入るように言うと。ぬっと入ってきたのは。

 

タケミカヅチ神だ。

 

荒々しい赤銅色の肌。まさに武神という佇まいである。

 

「充分に信仰心を取り込んで、かなり力を増した。 東京に入り込む雑魚どもを片付けるのであれば充分だ」

 

「そういうことだ。 ユヅルくんと連携して動いてほしい」

 

「うむ。 今の時代の人間のからくりはとても優秀であるからな。 索敵はそちらで、殲滅は俺とこのユヅル少年でやろう」

 

「よろしくお願いします」

 

ユヅルが頭を下げる。

 

それで一度解散となる。

 

その後、越水長官に耳打ちされた。

 

「ギリシャ支部から追加で取引の話が来てな。 君がイシュタルを倒したら、その角を譲ってほしいのだそうだ」

 

「角……ですか」

 

「古くは牛の神は、象徴として角を持つ事が多かった。 後の時代は廃れていった事ではあるがな」

 

なるほどな。

 

それで分かってきた。

 

恐らくだが、この情報を流してきたのはデメテルだ。デメテルは典型的な豊穣神であり、角なんか必要とするはずがない。

 

角は天空神の象徴であり、牛に限らず様々な家畜の角は、重要な神的シンボルとして扱われた。

 

あのアレキサンダー大王が、有角王などと言われたのもそれが所以である。

 

それをゼウスが追加でほしがるとは思えない。

 

そうなると、デメテルが何かもくろんでいるとみて良い。

 

ただ、この思考はアオガミとだけ共有する。

 

煌の中で公認スパイをしているアルテミスに聞かせると、少しばかりまずいかも知れないと煌は思う。

 

「分かりました。 角を奪いに来るのであれば、それは放置します」

 

「うむ。 ただ、今日だけで前線を押し上げなくても大丈夫だ。 むしろ……」

 

分かっている。

 

ベテル本部の戦力は削っておいた方が良い。

 

この戦いが始まる前は、ベテル本部の戦力は、まだ各支部より明確に上であったらしい。これは越水長官に聞いている。

 

それがスルトの猛烈な抵抗にあい、今はイシュタルに削り取られて、ベテル本部は次々に戦力を失っている。

 

挙げ句前線を押し上げるのに活躍したのは日本支部だ。インド支部がアシストで大きな成果を上げているが、いずれにしてもベテル本部は何もしていないに等しい。

 

それもあって、今のベテル本部は、日本支部に対して強い圧力を掛けられなくなっているという。

 

更にだ。

 

まだやるべき事があるというので、それについても認識はしておく。煌としても大変忙しいが。

 

それでもやらなければならないのだ。

 

「よし、やるぜ!」

 

イチロウがやる気を見せている。ミヤズも既に、背負っているアサルトライフルが完全に堂に入っていた。

 

ヨーコは札をたくさん補充してきたようだ。

 

相変わらず自信満々の立ち姿である。実際問題強いし、とにかく要領が良いのだから、それが決まっている。

 

魔界に入る。

 

指定された座標に向かう。以前見た神父のデビルサマナーが、疲れ果てた様子で戻ってきているのが見えた。

 

こちらの顔を見ると、気まずそうにする。

 

恐らく神父と言うこともあって、こんなところに来るほどだ。しかも老境に入って現役。相当信仰心は強いとみた。

 

それが天使達は悪魔に散々蹴散らされ。

 

彼らがデーモンと馬鹿にしていただろう日本の神格に完璧に先を越され続けている。年老いた心にはつらいだろう。

 

通り過ぎる。

 

声は掛けなかった。

 

相手は肩を落としていて、恐らくは帰るところだ。もう魔界には来ないかも知れないし、その方が幸せだと煌は思った。

 

銀座の辺りを通るが、以前見た黒い巨大なジャックフロストはもういなかった。代わりに、砂地にヒトデみたいな悪魔がいる。

 

声を掛ける。

 

この悪魔が、内通者だ。振り返ったヒトデは宙に浮いていて、大きな一つ目があった。

 

堕天使デカラビア。

 

極めて個性的な姿だが、これは歴とした説明通りの姿である。こういう絵が残されていて、極めて有名。

 

だからこの姿で現出するのがもっともコストパフォーマンス的に優れている。それが悪魔の現実だ。

 

フォルネウスが知り合いだという話なので、事前の話通りイチロウが呼び出す。

 

フォルネウスを見ると、デカラビアはおおと声を上げていた。

 

「その姿は我が友フォルネウスではないか」

 

「そちらこそ久しぶりじゃのう。 混沌の方からは裏切るのか?」

 

「ははは、そうさな。 今の時点ではイシュタルどのが暴れていて有利なように見えるが、ガス欠が明らかだ。 このまま押し込まれればいずれ負ける。 それなら、せめてこのくらいのタイミングで裏切っておいた方がよかろうて。 だいたいルシファー様は勝手になされよとおっしゃったのでな」

 

「詳しく」

 

煌としては興味がある話だ。

 

確かに記憶にあるルシファーが消えるところでは、そのようなことを言っていたようにもとれた。

 

だが、直に言われたのか。

 

デカラビアは頷いていた。

 

「わしはあの日、ルシファー様の直衛にいた。 ルシファー様は東京受胎が発生した直後、多少の手勢を連れて様子を見に来たのだ。 そして東京の砂漠化を見て、此処に四文字の神めが来ると断言為された。 そして、恐らくは大奇跡を持って、これを機に東京を制圧するだろう、と」

 

なんだと。

 

だとすると、四文字の神は最初から東京をだしにして、自分の力を伸ばすだけのつもりだったのか。

 

日本は西欧文化圏の一部に考えられているが、その中では一神教の勢力が及ばない希有な土地だ。

 

しかも日本人は無意識で信仰をしているタイプの民で、もしも一神教を根付かせれば大きな勢力拡大になる。

 

それを考えると、シャカイナグローリーとやらは。人々のためなどではなかったということになる。

 

どこまでもあきれ果てた話だが。ただ、それはあくまでルシファーの話だ。本当かまでは、滅びた四文字の神にでも聞かないと分からないだろう。両者の話を聞き比べて判断するのが一番正解に近づくはずだ。

 

「東京受胎によって消滅した東京は、そのまま位相を隔てた別世界に転移したともルシファー様は仰っておられた。 なんでも時々世界にて起きる現象で、行き詰まった世界が起こす生存本能のようなものであるらしいのだ。 多数の人間を利用して引き起こし、それらの思念を用いて小さな世界を作り出し、別位相に新しい世界を作り出す。 それに四文字の神が乗った。 そしてルシファー様は、其処につけ込んだわけだな」

 

だが、その後に何が起きたのかまではよく分からないと言う。

 

少なくとも、四文字の神が直衛にしていた大天使達と激しい戦いになるようなことはなかったらしい。

 

むしろ、大天使達は苦しみながら、勝手に散っていったように見えたとデカラビアは言った。

 

「大天使達と戦い、更に四文字の神を倒すとなると、如何にシャカイナグローリーの展開後で四文字の神が消耗していたとしても、ルシファー様でも勝利するのは万が一の確率だっただろう。 だが四文字の神は想像以上に何かの理由で消耗したようで、更には大天使達は恐らくアイデンティティクライシスを起こして、アティルト界に消えてしまったようだったな」

 

「よ、よく分からないけれど、とんでもない事が起こったんだな」

 

「うむ……ただ、その後ルシファー様が勝ったのかは、はっきり言って良く分からん。 四文字の神が死んだのは確かだ。 だが、どうも近くで見ていた筈なのに、あれが戦いだったのかはどうにも疑問が残るのだ。 何かが介入したようにも見えなかったしなあ。 ただ、戦いの前に、ルシファー様は仰った。 この後は、それぞれ思うようにせよ。 もしもルシファー様が勝った場合は、既におまえ達は「悪魔」ではないのだから、と」

 

なるほど。

 

ともかく、今の発言は記憶しておいた方が良さそうだ。

 

アオガミが全て記憶してくれていたので、即座に無線を入れて、通信をしておく。越水長官は、すぐに調査すると言ってくれた。

 

それはそうと、味方をしてくれるのなら助かる。

 

ただ、すぐに信頼するわけにもいかないが。

 

案内された先は、銀座のかなり奥まった場所だ。これは非常に分かりづらい。一個目を破壊した後、各地で似たようなものが破壊されたようだが。しかしこれは。倒壊したビルの影に、非常に上手に仕込まれている。

 

デカラビアによると、これがイシュタルの力を増幅しているもので間違いないという。一度破壊しているが、なるほど。やはりこれがそうなのか。しかもデカラビアはその位置を全て把握しているそうである。

 

煌は見張りに立ち、イチロウとミヤズの悪魔に破壊して貰う。

 

それほど時間は掛からない。

 

二人とも手持ちの仲魔はとても強くなっている。ヨーコは考え事をしてはいたが。それでも爆破の札で、破壊に協力はしてくれた。

 

膨大なマガツヒが流れてくるので、イチロウとミヤズに主に吸収して貰う。ミヤズは特に、これで体が丈夫になるのならどんどんやるべきだ。

 

次に行く。

 

今度は秋葉原の辺りだ。

 

砂地に出るが、森可成が警戒を促してくる。複雑に入り組んだ塹壕みたいな砂地を吹き飛ばしながら、それが姿を見せていた。

 

巨大なミミズだ。

 

前に見たモンゴリアンデスワームなんかよりも遙かに巨大である。全長数十mはあるのではないか。

 

ミミズは鳴かない。

 

だが、そいつは確かに全身を震わせて、空に向けて雄叫びを上げていた。これはひょっとしてだが。

 

「ミニョコンかこれは」

 

「ひいっ! なんだよそれ!」

 

「まずいないだろうとされているアマゾンのUMAだ。 50mに達する巨大ミミズだとか」

 

「体の長さだけなら7m近いミミズはいるそうですけれど、あの太さは考えられないですね」

 

ミヤズが冷静に言う。

 

その通りだ。オーストラリアなどにいる巨大種のミミズは全長が数mに達するのだが、しかし細く長いので、ただ長いヒモのような生物である。

 

いずれにしても、眷属を展開して迎え撃ちに懸かる。

 

でかいだけのミミズだったら、負ける要素はない。ただし、あまりにも巨大なので、気をつけなければならないが。

 

酒呑童子と塗り壁が、正面からミミズを受け止める。ずり下がるが、しかしやはりパワーだけだ。

 

いるわけがない。

 

UMAの界隈でも、大型のアナコンダか何かを誤認したと言われている存在で、まず実際に存在し得ない。アナコンダにしても、大きさが盛られに盛られているのが現状なのである。

 

大型生物というのは過大評価されやすく。

 

化石で発見された大型生物のサイズというのは、基本的に後からの調査で遙かに小さいことが判明することが非常に多い。

 

ミニョコンの正体としてはやはり同地域に住んでいるアナコンダが有力だが。それにしても最大で10m行かない程度。現在生存している蛇の中でさえ、もっと大きな種であるアミメニシキヘビがいる。

 

そしているわけがないと誰もが内心思っているUMAが。

 

強いわけもないのだ。

 

そのまま。酒呑童子が押し込み始める。

 

元々ミミズはパワフルな生物ではない。今の質量攻撃でやっと。質量攻撃を受け止められれば、こんなものだ。

 

イチロウがアールマティを呼び出し、光の面制圧で攻撃させる。森可成は冷静に距離を取ったまま、火縄銃で立て続けに撃ちかける。煌も雷撃をたたき込み、ミヤズは支援に徹する。

 

むしろ、周囲からの奇襲を警戒する時だ。

 

イチロウのフォルネウスが冷気の雨を降らせると、ミミズがもがいて暴れる。

 

其処に、酒呑童子が気合いを入れて、ミミズをぶん投げる。地面に激突したミミズは、今度は自重で潰れ、そのまま激しくは動かなくなる。

 

アルテミスが上空から冷気の一撃を入れて、とどめ。まだもがいているミミズを、マーメイドが辺りの地面を液状化させたことで、冷気がそれを凍り付かせて。ミミズが全身を氷で圧迫され、激しく全身が破損。

 

やがて、マガツヒとなって消えていった。

 

マガツヒを吸収してみて分かったが、やはりミニョコンだ。サイズの割にマガツヒの量も少ない。

 

隠れていたデカラビアが出てくる。

 

「また珍妙な悪魔が出てきたものだ」

 

「貴方も充分変わっていると思います」

 

冷静にミヤズが指摘すると、ヨーコがこの子は苦手だなと顔に書いていた。

 

どうも現実主義をぶつけると、苦笑いするタオと違って。ミヤズはとにかく真面目な上に素の頭も良いので、対応が難しいらしい。

 

煌みたいに丁寧に理論立てて反論してくるタイプは面白いようなのだが。ミヤズはずばり本質を突いてくるタイプだ。

 

それもあって、相性が良くないのかも知れなかった。

 

ともかく。先に進む。

 

デカラビアによると、この近辺だけで後四つ、健在なものがあるという。

 

ならば、それら全てを破壊し。

 

イシュタルも討つ。

 

それで良いはずだ。

 

イシュタルも、そろそろ妄執から解き放たれたいだろう。四文字の神が倒れた今、その敵の残党などに肩入れする必要などないと、煌は思う。それには、一度倒してしまうのがいい。

 

そう感じるのだった。







※ミニョコン

UMA(未確認動物)の一種です。未確認動物といっても色々で、昔はゴリラとかもそうでした。

そんなUMAの中でまず絶対存在しないUMAがミニョコンですね。体長50mのミミズて。

現実には6mを越えるミミズは存在しますが、体の直径は2cm程度です。残念ながらミミズは体の構造的に長くはなれても太くはなれないのです。


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