真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
魔界、新宿区。
現時点で全てがうまくいっている。ゲラゲラと笑っているカマエルとサリエル。マンセマットも、ワインでも傾けたいところだった。
禁欲。笑わせる。
一神教では知らないことにしているが、かのイエス=キリストは、大酒飲みの上にかなり太っていた。
後の時代では禁欲家で痩せた人間のように描写されているが、かのイエスですら酒はたしなんでいたのである。
それどころか、そもそもとして天に戴いていた四文字の神ですら、本来は配偶神格がいた。
禁欲を掲げる信仰はいくつでもあるが。
それらの全てで何らかの抜け道を用意している。
ストイックさで知られる信仰ですらそうだ。
ましてや、支配用のツールとして整備されていったものはなおさら。その過程を見ているマンセマットには、笑止でしかなかったし。
神の束縛から解き放たれた今となっては、なおさらである。
「これほどうまくいくとはな。 スルトに続いてイシュタルも墜ち、更にはベテル本部の戦力も減る一方だ」
「あのような無能者どもに神の寵愛がむいていたのが腹立たしくてならぬ。 この程度の小細工で踊り狂う阿呆どもだ。 天使は針の上で踊ることが可能かとかアホらしい裁判をしていたカスどもと同レベルの輩であるわ」
カマエルとサリエルが、今までの鬱憤をぶつけるように罵りまくっている。
マンセマットは、彼らに向けて挙手。
とりあえず、次の段階に入る。
「どうやらカディシュトゥが大量のマガツヒを偽りの都から回収したようです。 あれらの目的からして、恐らくは……」
「ああ、蛇の神の祖の復活であるな」
「サマエルはそれを可とするのか? あれは蛇の神の王を名乗っているようだが」
「はっはっは。 蛇の神の王? 我らの信仰はどちらかというとメジャーな信仰に比べると後発も後発、その上楽園の蛇はそもそも……ではないですか。 サマエルなど、蛇の神としては下も下。 一神教が隆盛だから力を得ているだけの、小者に過ぎませんよ」
事実を全て指摘した後。
マンセマットはただ、と続ける。
「蛇の神の祖は何を考えているか分かりません。 今までも分霊体が具現化した例は何度かありますが、それらですら生半可な実力ではありませんでした。 もしも自我を持った状態で具現化した場合は……正直今の我らが主ですら、及ぶかどうか怪しいでしょうね」
「確かにそれはそうだ。 ただ、蛇の神の祖ですら、正確な意味の祖ではあるまい」
「それはそうだな……」
「いえ、今回カディシュトゥがよみがえらせようとしているのは蛇の神の祖で間違いないと思います。 それ以前は、そもそも名前すら残っていませんので」
確かにそうだなと、カマエルとサリエルが納得する。
カマエルが、それで泳がせるのかと聞いてきた。
確かにあの存在が完全復活でもしたら、とんでもないことになる。
マルドゥークがアティルト界から出てくる気がない今、対応できる存在は恐らくいないだろう。
ナホビノだったら或いは。
ただ、実際問題として。
マンセマットに丁度良いナホビノはいない。
しかしながら、だ。
ある事を主に聞かされ、今は知っている。
別に創世を諦める理由にはならない。
「それよりも。 問題はアレですねえ」
「うむ……」
新宿区の奥にある、空間のひずみ。
其処には、上級二位ケルビム、上級三位ソロネを中心とした精鋭天使部隊が配置され、今でもかなりの守りを固めている。
通称至聖所。
其処には、あるとんでもない代物が封印されているのだ。
封印は解除させるつもりではあるが。
カディシュトゥとその目的では一致していても、その先が違う。
しかもマンセマットは、今の主から知恵をある程度分け与えられていて。あらゆる平行世界で、マンセマット達が悲惨な末路を遂げることを知っているのだ。
だったら、この世界では。
絶対にそれはさせてはならない。
此処からは、慎重に動かなければならないだろう。
「至聖所の封印解除には、まだ一手間が必要に思います。 最悪の場合は、我々で手を貸してやりましょう」
「カディシュトゥの女狐どもに塩を送って大丈夫か」
「私も少し心配だが……」
「問題ありませんよ。 あれらは復讐心で目がくらんで、足下が見えていない。 それに殉教者を気取っている。 恐らくは、目的のためには、最悪自分らを贄にするでしょう」
それを聞くと、カマエルとサリエルは爆笑した。
マンセマットも笑った。
だが、分かっている。
心のどこかでは。
ずっと神に対して殉教してきた。
それで一切報われることがなかった。
挙げ句、神はマンセマット等汚れ役の天使を、最終的に使い捨てる気ですらいた。殉教にはなんら意味がなかった。
だからこそ、マンセマットは反転した。
この事実を知った瞬間に、全平行世界のマンセマットに影響を与え。
汚れ役の天使という存在から、もう一段階踏み込んだ存在へと切り替えたのだ。
だが、それでもなお、破滅の運命は間近にある。
それが肌で分かるからこそ、陰謀を念入りに念入りに巡らせるのだ。
一応、同志達にも言っておく。
「カマエル、サリエル。 私も当然いざという時の覚悟は出来ています。 貴方方も、最悪の場合は……」
「ああ、分かっている。 捨て駒にでもなんでもなってやるとも」
「私たちの虐げられし怒り、この世界、一神教徒、全てにぶつけてやろうぞ」
「ええ。 我らが怒りにて、至高天の座を染め上げてやりましょう」
そういうと、皆で笑う。
ただひたすらに嘲笑う。
だが、それは、どこか自棄でもあるのは、マンセマット自身ですら分かっていた。
ここにいるのは、裏切られた者達。
殉教を利用され、忠誠心を利用され。挙げ句捨てられようとしていた者達の集い。
だからこそ、怒りと恨みは深いし。
絶対に許せないと、今は反転しているのだから。
(続)
悪巧みをするマンセマットとカマエルとサリエル。いつもの楽しい三バカトリオです。
こいつらは自分らがどう扱われてきたか、今後どう扱われるかを知ったが故にこんな風になった訳ですね。
とはいってもここまで堕落してしまうと、流石に哀れ極まりないですが。
ちなみにキリスト教の開祖が禁欲には無縁の人物だったのは本当だったりします。痩せた姿のイメージも後世に広まったものです。
本来の彼は普通に酒も飲むし食べるのも好きだった。隣人愛と許しの思想を説いた、ただの気のいいおじさんに過ぎなかったのです。
それを神格化したのは、偶像としてその方が都合が良かったからですね。偶像崇拝を禁止している癖に。
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