真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
越水は、天津の神々と話をしていた。この会話には、他の者を立ち入らせる訳にはいかない。
それもあって密室での会話となる。
しばし話をしていて、結論が出ていた。
「座につける存在は、一柱ではない?」
「そうだ。 そもそもバアルが座に着いていたことがおかしいと思わぬか」
「……そうだな。 確かにそれはそうだ」
オモイカネ……日本神話に置いて、いわゆる三貴神よりも更に古い神である知恵の神に言われて越水は唸る。
同じ疑念を夏目煌にも呈されたな。
創世については、実際分かっていない事が多いのだ。
バアル由来の悪魔については、今まで八咫烏のサマナーが何度も従えている。あの第十四代目葛葉ライドウに至っては、カナンのバアルを従えていたこともあったらしいと聞いている。
それならば座に着いていた頃の話を聞いていてもおかしくないのだが。
それらが口をずっとつぐんでいるのだ。
神々にとって重要なことなのではなく。
座についての記憶が欠落するのではないのか。
そうとさえ、越水は考えていた。
「それにだ。 私のような古い古い神は知っている事だが……座に着いた神は八柱だ」
「八柱……」
計算がそれだとあわない。
越水が知っているのは、最初がマルドゥーク、続いてラー、バアル、ユピテル、テングリ、YHVH。つまり合計六柱である。
正確にはそれも違うと言うことか。
「一体座に何が起きているのか」
「私も記憶が一部欠落しているので細かい事は分からないのだがな。 座というものはアティルト界に存在する神々の集約中心点。 其処につく存在は、文明の最大集約点に過ぎないということだ」
「確かにそれはその通りではあるが」
「結局文化的に最強の影響力を持つ存在が座に着く。 だとしたら、バアルが座に着いていたのはおかしいと思わないか。 文化圏ごとに座が存在しているくらいがむしろ普通であろうよ」
それもそうだ。
腕組みして考え込んでしまう。
「マルドゥークが座を作ったものだと考えていました。 マルドゥークが牛の系譜で座を独占するように呪いを仕込んだとも」
「それは違うな。 あんなもの……座に誰もそんなことは出来ない。 あんな程度のものに、というべきか」
「……四文字の神が座について以降の惨状は事実ではありますが、座に実際にはそれほどの価値はない?」
「そうなるな。 だから座に着いていた経験者は、ただ主導権を取り戻したくて座を狙っている。 一部の神々に至っては、座を狙ってさえいない有様だ」
実は、越水はある事を考えていた。
現在支援している夏目煌がうまくいかなかった時のために、もう二人、ナホビノ候補を今育てている。
正確には三人いるのだが。
そのうち一人は、座なんて興味がなさそうだ。
やる気にさせるのには、色々と工夫がいる。
それにだ。
バアルが座に着いていたという事を、もう少し考えるべきだったかも知れない。カナンのバアルなんて、中東ですら主導権を握っていた存在ではない。後の時代のカルタゴを支配していたバアルの信仰の方が余程影響力は強かったし、カナンのバアルとはそもそもとして別存在である。
分からない事が増えてきた。
やっと余裕が出来て聴取が出来るようになったのだが。
まさかオモイカネが、これほど大事なことを秘匿していたとは。
日本神話の知恵の神とは言え、もっと話をしておくべきだったか。だが、そもそもある事件で天照大神がいなくなってから、日本では神が色々と酷い目にあってきた。その余裕もなかなかなかったのだが。
「越水長官」
「何か」
部下が来る。
第十九代目葛葉ライドウ、平塚ツバメが戻ってきた。
病み上がりとは言え、東京に出現した邪神ハスターを一閃。特に消耗もせず戻ったようである。
近年創作された神格とは言え、流石だ。
ついでだから、ツバメにも話を聞いておくか。
まて。
ツバメだったら、バアル系の魔を従えられるはず。
夏目煌だと、ギリギリというところだが。ツバメなら安定して数柱は従えられるとみていい。
別に座に着く存在は。
一柱でなくてもいい。
この可能性は、後に大きな力になる。
そもそもとして、地球の資源の枯渇が見えてきた今、馬鹿馬鹿しい争いでリソースをこれ以上食い潰す意味がないのだ。
今行われている混沌の勢力残党とベテル本部の争いも、強くなりすぎた一神教派閥の力を削り取るには丁度良い。
だがそれも、完全にベテル本部が潰れる必要はない。
一神教については多々思うところがあるが。
それでも、この座の仕組みが本当だとすると。
ツバメを呼び、今の話をオモイカネから共有して貰う。ツバメはしばらく黙って話を聞いていたが。
程なく、提案してきた。
「夏目煌くんの成長速度から言って、カナンのバアルを従えられるのはそう遠くない先ッスよ」
「それは分かっている。 だが、戦略は早めに決めておきたい」
「せっかちッスねえ。 夏目煌君と連携することで、あたしがモロクやベルフェゴールを従えるのは無理じゃないっすけど。 ただ、今までバアル系統の悪魔は、座に着いていた経験者ですら座については多くを語らない。 多分具体的な話は聞けないかと。 もしも可能性があるとしたら……」
ツバメはしばし言葉を区切ってから。
静かに言う。
ゼウス、だと。
確かにゼウスの半身であるローマ神話の最高神ユピテルは、テングリが現れるまで座にいた。
今ゼウスはユピテルを回収しているようだし、ひょっとしたら座について一番詳しく知っているかも知れない。
しかしあの老獪なゼウスに貸しを作れるか。
それも最重要である座の話をさせるような、である。
ともかく、いくつか策を練らなければならない。
希望が見えてきている。
このままだと、最悪ナホビノを殺し合わせなければならなくなっていた。未来を担う人材を、だ。
それは越水としても、望むところではなかった。
(続)
座に着く存在は、一柱でなくてもいい……
この煌の結論もまた、大きく事態を動かすことになります。
そもそもバアルが座に着いていた時点で、単一神格が座に着いているわけではない。それは前々から伏線として撒いていた通りです。
原作と話は乖離していきます。一気に加速する展開をお楽しみください。
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