真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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かくしてヨーコさんはカディシュトゥと縁切りをしました。

原作と決定的な差がまた一つ生じました。

こうして更に大きな動き。大きな違いが。話に生じていきます。





2、混沌との決別

会議室で、ヨーコに何があったのかを話して貰う。

 

別にヨーコは悔い改めた様子などない。自分は被害者だし、やるべき事をしていただけだという表情だった。

 

ユヅルは明らかに穏やかではない。

 

ミヤズもだ。

 

ただ、カディシュトゥが制御外の存在である事を告げると。二人とも、それを責めきれないようだった。

 

リリスが言っていたのだ。

 

そもそも縄印に攻め込んだのは、ラフムの話に乗ったと。

 

実際にはそれだけではなかったのだろう。

 

浄増寺にあのマガツヒ収集トラップを仕掛ける下準備でもあったのだろう。恐らくあの襲撃に乗じて、アグラトとバエルが東京に侵入を済ませていたのだ。

 

ただ、それらについては知らなかったらしい。

 

「いくつかわからないんだけど、ヨーコさん確か魔界で煌と最初に会ったんだよな。 どうして魔界で会ったんだ?」

 

「魔界で解放されて実体化したからよ」

 

「ええ……」

 

「ちなみに聖マリナ女学院の在籍記録はハッキングで偽装したわ。 丁度聖マリナ女学院で自殺に追い込まれて隠蔽された女子生徒がいてね。 その子の代わりよ。 尋峯ヨーコという名前も、容姿もね」

 

悪魔が電子戦に強いことは聞いていたが、それほどか。

 

ただ、そんな醜聞が起きていたのか。

 

ちなみに18年前、ヨーコは其処を古巣にしていたらしく。周囲への偽装はそれほど難しくなかったらしい。

 

更に言えば。

 

18年間封印されていたことで。

 

光の力は、完全に逆転してしまっていたのだとか。

 

そういえばヨーコが、タオの真逆になるような呪いの力を時々使用していたが。あれはそういうことだったのか。

 

だが、ヨーコは考えを変えてくれた。

 

煌の話を聞いて。

 

皆との行動を通して。

 

全部無に帰すよりは、他の方法もあるかもしれない。そう考え直してくれた。

 

それだけで、煌としては充分だ。

 

ユヅルが挙手。

 

あまり表情は明るくはない。

 

「一つだけ聞く。 本当に誰も殺していないな」

 

「ええ。 聖マリナ女学院の連中は正直皆殺しにしてやりたかったけれどね。 足が着くと面倒だから殺してはいない。 ただこの姿を借りた女生徒については、その無念は受け取った。 自殺を使嗾した生徒達と、それを見て見ぬフリをした教師には、それぞれ「重傷」を受けてもらったけれど」

 

「……まあ生徒を自殺させてそれを隠蔽するような連中だ。 報いを受けるのは当然ではあるが」

 

「ま、二度と外は歩けないでしょうね。 その程度で許してやったわよ」

 

ちなみに、ヨーコの両親はどちらも既に死んでいたそうだ。

 

自分の娘を天使達の言うままに差し出し封印した二人は。

 

それからまもなく、不審死を遂げていたそうだ。

 

理由は分からない。

 

或いは痕跡すら消すために、天使達が用済みの二人を消したのかも知れない。だとすると、許しがたい話ではあったが。

 

ミヤズが静かに言う。

 

「ヨーコ先輩が敵になるつもりはない事は分かりました。 ただ、隠し事はもうなしにしていただけませんか」

 

「そのつもりよ。 だけれど愛用の下着の柄とかは教えないわよ」

 

「いえ、下着なんてどうでもいいです」

 

ヨーコらしい毒のこもったジョークに、真顔で首を横に振るミヤズ。

 

この子もこの子で色々と面白いな。それはちょっとだけ、煌も感じたが。ミヤズは頭の回転が速くなっている。

 

ヨーコは信用できないとかなり早い段階から思っていたようだし。

 

煌も、それは気付いていた。

 

咳払い。

 

ツバメさんだった。

 

「座について知っている事はないっすか。 あたしも八咫烏の記録にはアクセスが難しいし、何よりバアル系統の神魔はあたしでも従えるのが難しい。 現状では煌くんの話を聞く限り、座には単独神格しかつけないというのは嘘の可能性が出てきているみたいッスけれども。 それを裏付けられるような知識は?」

 

「ないわ。 残念だけれど。 創世の女神とか言われても、私には単に過剰な力を与えられただけ。 人間から外れかけているタオさんみたいにね」

 

「……」

 

タオがうつむく。

 

そういえば。

 

タオの瞳も、金色に染まり始めているように思う。

 

煌もアオガミと合一してナホビノになって以降、その傾向が顕著だ。タオも、瞳が黄金になるとしたら。

 

それは人間からの脱却を意味するのかも知れない。

 

「もう一つ。 カディシュトゥは恐らくあんたを見限るッスよ。 それに対して、戦う事は出来るッスか?」

 

「ええ。 別に勝手に部下になると言われただけだし。 それにあの連中は、私を神輿として担いでいるだけよ」

 

「じゃ、ブッ殺しても問題はないっすね」

 

「出来るものならお好きに」

 

ふっと笑うと、ツバメさんは周囲を見回す。

 

まだこの人の方が。

 

煌よりも強い。

 

「恐らくヨーコちゃんが裏切ったことは、向こうは知ってるとみて良い。 あたしは東京に残る。 東京にカディシュトゥが侵入しても、あたしがぶっ潰す。 魔界で接敵した場合は、そちらで頼むっすわ」

 

「了解……」

 

さて、此処からだ。

 

越水長官が戻ってくる。天津神、オモイカネを連れていた。

 

「話はまとまったかな」

 

「ええと、越水長官。 天津神……神様だったんですね」

 

「ああ、そうだ。 私は天津神月読尊。 私はそこにいる煌くんの半身と同じ、神造魔神の一柱だ。 この国の神々は、分霊を使って、この国に古くから関与してきた。 軍事にはアオガミ型……素戔嗚尊の分霊体を。 政治には私……月読尊の分霊を。 そして国の中心として、天照大神の分霊を配置してきた。 あくまで危急時にはだがな。 だが、少しばかり前に、天照大神の分霊体を作り出すことが困難になってな」

 

天照大神の分霊を作り出せなくなった理由については、越水長官も知らないらしい。

 

ともかく神造魔神というのは、人々の信仰心を集めて、様々な手段で具現化させるものであったらしく。

 

東京に製造の本部があったが、これは東京受胎で壊滅。

 

一方で出雲にあった支部は無事で、此処で東京受胎後の混乱期に、多数のアオガミ型神造魔神を製造。

 

魔界化した東京に送り込んだのだそうだ。

 

しかし、その結果は全滅。

 

信仰心の充填が進まず、新しいアオガミ型神造魔神の製造は出来ず、困り果てていたところであったようだ。

 

「いずれにしても、これで一気に攻勢に出ることが出来る。 ヨーコくん。 君はもうカディシュトゥに情報を流していないな」

 

「ええ。 遮断したわよ」

 

「……煌くん、判断は君に任せる。 この間、ソドムとゴモラを滅ぼした光の攻撃を受けた地点の突破、出来るだろうか」

 

「準備はしてあります」

 

「よし……。 恐らくその先に、何かしらの超重要拠点がある。 一度、その正体を確かめてほしい」

 

頷く。

 

今、アブディエルは東京駅に掛かりっきりで動けない。

 

だとすると、あの黒い天使達が相手になるだろう。それも、これ以上好き勝手させるつもりはない。

 

あの時の光。

 

コンスの警告がなかったら、どうなっていたか分からない。

 

のこのこと顔を出したら、相応の報いを受けさせてやる。それについては、煌も既に決めていたし。

 

準備も終えていた。

 

「その地点の威力偵察を終えたら、一度戻ってほしい。 今、ベテル本部の東京駅での消耗がしゃれにならなくなっているようだ。 此処で東京駅の方も片付ければ、ベテル本部の威信に致命傷を与えることが出来る上、その後のアドバンテージも握ることが出来る」

 

「アブディエルってあの天使様、相当無理をしているんだな……」

 

「ただし狂信がその背後にある。 それに泣かされてきた人は大勢いる」

 

「分かってる。 俺も、自分が出来る範囲で決断することがどれだけ大事かは、今までで思い知らされた。 何か絶対の正義があればいいって思ってたけど。 もうそんなこと、思わない。 いろんな正義を見てきて、どれも正しいとは思えなかった。 でも、色々な考えがあるのが普通なんだよな。 俺みたいに、意志薄弱で、何かにすがらないと生きていけないやつがたくさんいるのは事実だ。 でも、そんな弱い人たちを、無駄にしない世界に……きっと出来る方法が、あるよな。 俺にも出来るよな」

 

創世は。座は。一人だけのものではない可能性が高い。

 

それについても既に告げてある。

 

それを聞いて、ユヅルは憑き物が落ちたような顔をしていた。或いは、煌がまだ知らされていない何かを知っていたのか。

 

考えてみれば、ミヤズがエジプト支部に取引を持ちかけられた時も、いつも以上に様子がおかしかった。

 

まだ隠していることがあるのかもしれない。

 

ともかくだ。既に準備は整っている。これから、仕掛けるだけだ。

 

ヨーコはもう、恐らく嘘をついていない。

 

相変わらずつんとした雰囲気だが、それでも煌を信じてみようと考えてくれたのだ。そうでなければ、あんな話はしない。それに、アマノザコも恐らく嘘は言っていないと言っている。

 

ただ問題はカディシュトゥで、特にリリスとアグラトは相当なくせ者に見えた。

 

膨大なマガツヒを用いてティアマトをよみがえらせるつもりだとしたら。

 

ヨーコがとめても、無駄かも知れない。

 

ともかく、魔界へと急ぐ。

 

あの塩になる光を放ってきた奴は、待ち構えている。

 

それはほぼ確実だ。

 

準備を終え、ざっと対策方法について説明も終えた後、魔界に。

 

フィンにも声を掛けて、合流して貰う。

 

フィンは剣を丁寧に研いでいて、かなり気合いを入れていた。傭兵として最大限の活躍をする。

 

そういう雰囲気だった。

 

なぜモチベがこれほど高いのかは分からないが。

 

それについては、後で本人にでも聞くしかない。

 

丘に向けて煌は歩く。少し遅れて、皆がついてくる。アルテミスが、ひょいと顔を出していた。

 

「煌よ。 しかし大丈夫なのか? 私にはそれで大丈夫なのか不安なのだが」

 

「問題ない」

 

「おや、性懲りもなくまた現れたのか」

 

「しかも蛮族の戦士までつれている。 そんな無能、いてもいなくても同じであるだろうにな」

 

けらけら。

 

そう笑いながら、二体の天使が降りてきた。

 

フィンが剣に手を掛けて、小声で言う。

 

あいつだ、と。

 

なるほど。

 

赤い鎧を着た天使。手に持っているのは、赤黒い炎を纏った剣。

 

あいつが恐らくはカマエル。

 

妖精の楽園を黒い天使達が襲撃した際、フィンを急襲した奴だ。

 

手に持っている剣はなんだ。

 

凄まじい熱を帯びているようだが。

 

もう一体は以前会った。

 

あいつはサリエルだ。

 

なるほど、やはりこいつらは連携していたと言う訳だ。そして、もう一体。

 

黒い翼を持ち、浅黒い肌にローブを着込んだ天使が降りてくる。いかにもにこやかな笑顔を浮かべているそいつは。

 

間違いない。

 

此奴が塩にする光を放った奴だ。

 

「貴方だな。 この間の攻撃を仕掛けてきたのは」

 

「あのときは失礼しました。 この先には天の御遣いにとってもっとも大事なものが存在しているものでしてね」

 

「……」

 

敢えて言ったな。

 

つまり誘導しようとしていると言うことだ。

 

煌は名乗る。皆もそれに続く。

 

黒い天使は、それでマンセマットと名乗り返してきた。

 

マンセマットか。

 

モーセの出エジプトのエピソードに登場する天使だ。マスティマと言われることの方が一般的だろう。

 

悪魔を操作する事が出来るという伝承があり、一神教における最ダークサイドの天使である。

 

故に堕天使扱いされることも多く。

 

はっきりいって、この間の行動といい、全く油断は出来ない相手である。

 

「アブディエルと戦闘をしているのを見た。 貴方方は既にベテル本部を離反しているのではないのか」

 

「いえいえ、あれは方向性の違いからの行き違いですよ。 天にある主への忠誠は、今も変わっていません」

 

「こいつ、大嘘ついてる」

 

「そうだな」

 

アマノザコが、具現化しないまま言う。

 

煌もそれに返していた。

 

というか、アマノザコに言われるまでもなく分かる。

 

そもそも一神教の神に忠義を誓うというのなら。

 

アブディエルと協力して事に当たるべきだ。それがこいつらだけ離反して勝手している時点で。

 

そんなことは、考えてもいないという事がよく分かる。

 

「お、おい……」

 

イチロウが恐怖の声を上げた。

 

見てしまったのだ。

 

あちこちに、崩れ落ちた塩の塊が散らばっている。それは数多くが天使のようだった。

 

この間、センリが言っていた。

 

多数の天使が、慌てて都庁に向かったようだった、と。

 

恐らくはその末路だ。

 

此奴はその天使達を待ち伏せて、あの光で。

 

塩の柱に変えてしまったのだ。

 

塩の柱にされてしまった存在には、天使だけではなく雑多な悪魔も多数いるようだった。見境がないな。そう煌は思う。

 

いつ何を仕掛けてくるか分からない。

 

そう皆には告げてある。何名か、仲魔や眷属を伏せてもある。

 

両手を広げると、マンセマットは言う。

 

「実は頼み事がありましてね」

 

「どういう内容だ」

 

「ふっふっふ。 アブディエルは天の軍勢をすべるにはあまりにも力不足。 そこで、私たち三名が主導権を握ろうと考えています。 そのためにも、この先にある至聖所シャカンを落としてほしいのです」

 

「至聖所?」

 

聞いたことがない単語だな。いや、まて。

 

至聖所と組み合わせるからおかしい。

 

「それはひょっとして、シェキナーの事か?」

 

「おお、博識でいらっしゃいますな」

 

「シェキナー?」

 

「神殿などに神がいる、ということを意味する一神教の用語だ。 至聖所、か。 神がいるもっとも聖なる場所、くらいの意味になるわけか。 東京都庁をそのような場所にしてしまったのか」

 

イチロウが聞いてくれるので、答えておく。

 

あまり良い気分はしない。

 

18年前の出来事以降、この魔界で天使達が活動しているのは周知の事実だが。

 

神がこの地で恐らく敗れた。

 

だから、この地に再臨の場でも作ろうと言う訳か。

 

よそでやれとしか言えない。

 

はっきり言って迷惑だ。一神教文化圏でやるべき事であって、日本に勝手にそんなものを作られても迷惑だ。

 

しかも此奴は大嘘をついている。それについてもほぼ確定だし、誘導しようとしているとみて良いだろう。

 

「そんな話に従う理由はないな」

 

「そうでしょうね。 ベテル本部と真っ向からやり合うことになる」

 

「それもあるが、貴方方のせいで縄印の生徒が一人命を落としている」

 

「たかがガキ一人の命がなんだというのか。 こちらは世界全部が掛かっているのだがな」

 

せせら笑うカマエル。

 

そもそも、こいつらがあの場所をなぜ襲ったかよく分からなかった。

 

だが、少しずつ分かってきた。

 

こいつらは、人質を確保するつもりだったな。

 

とりあえず、今、この場所で。

 

こいつらは、倒す。それは決めた。ただ、わざわざ三体で出てきたと言うことは、つまりそういうことだ。

 

マンセマットは大げさに手を広げながら言う。

 

「それならばこうしましょう。 アブディエルは私たちで討ち取りますよ」

 

「何……」

 

「ベテル日本支部に不当な圧力をかけ続けたあの石頭がいなくなる。 充分に貴方方にとっても利がある話の筈です。 こちらとしても戦闘以外では無能極まりないあれを追い払う好機でもある。 ベテル本部には、既に私たちの同調者が少なからずいる。 アブディエルを排除するなど、奴の精鋭が消耗しきっている今、難しくもないのですよ」

 

「マンセマット、一つ覚えておくと良いだろう」

 

煌の言葉に、笑顔のまま、小首をかしげるマンセマット。

 

既にハンドサインは出していて。

 

この場の全員から同意はとれていた。

 

こいつらは、三体で出てきて。恐らくあの塩にする光を用いてこの場の者を塩の柱にし。人質にするつもりだったとみて良い。

 

その前は妖精の里で同じ事をしようとして失敗した。

 

「裏切りばかりするような輩は信用されない」

 

「そうでしょうね。 では、こちらも強硬手段を執るとしましょうか」

 

すっとマンセマットが手をイチロウに向ける。そして、例の光を放つ。

 

だが、その瞬間。

 

煌は今まで集めた神魔の情報から作り出した道具を、イチロウの前に展開していた。

 

それは、三種の神器の一角。

 

八咫鏡。

 

あまり大きな鏡ではないが、しかし今は。

 

天津の神々の力を受けて、かなり強大な神具へと変貌している。

 

まがまがしい光が、瞬間的に反射され、それが直撃したのはサリエルだった。えっという顔をしたサリエルが、見る間に全身塩になっていく。

 

その瞬間、マンセマットが初めて表情を歪ませていた。慌てて光もとめる。カマエルが、おのれと喚いて剣を抜くが。

 

その上から、唐竹に切りつけたのはフィンである。

 

「よう、前は不意打ちしてくれたな。 今度はやり返してやるよ」

 

「お、おのれ、蛮族の分際で……っ!」

 

「世界中でおまえ等がやった行為の方が、余程蛮族だと思うがな」

 

必死に一撃を防いだカマエルが、砂漠の中にフィンもろとも突っ込む。

 

塩の柱になって落ちてきたサリエルを。待ち構えていた酒呑童子が、鉄棒でフルスイング。

 

凶悪な力を秘めていただろう魔術の天使であり月の支配者でもあろう天使は。

 

その一撃で、文字通り粉みじんに砕け散っていた。

 

「お、おのれ……!」

 

「イチロウを狙ってくるのは分かっていた。 その光の対策をおまえ自身はしているだろうこともな。 だから、反射して、面倒な魔術使いのサリエルから狙った」

 

「どうやら死にたいようですね。 まあいい。 どのみち貴方方は、シャカンにいかねばならない。 あそこには創世の女神の力が封じられている。 そこにいる二人は、力が急速に戻っているようですが、しかしまだまだ完全覚醒には至っていない! なぜなら、至聖所が健在だからだ!」

 

「それで誘導しているつもりか? 魂胆が見え見えだ」

 

ばっと、煌の眷属天使達が、前後左右からマンセマットに襲いかかる。

 

同時に、皆が展開した仲魔と。煌自身もマンセマットに仕掛ける。

 

だが、大量の黒い天使達が空から逆落としに仕掛けてきて、迎撃をしてくる。マンセマットは跳び下がると、距離を取る。

 

砂漠で、連続して爆発が引き起こされている。

 

カマエルとフィンが死闘を演じているのだ。

 

あの黒い天使達は厄介だ。だが。

 

出現したアリスが、凄まじい死の力を纏いながら、詠唱を開始する。それを見て、天使達が方陣を作って防ごうとするが。

 

アリスは、すっと魔法を展開していた。

 

死そのものが、世界を滅ぼし尽くす天使達に襲いかかる。それはヨーコが更に面制圧の力を仕掛けたことで、増幅され。

 

まがまがしい黒い蛇となって、多数の黒い天使達を飲み込み、瞬間的に霧散させていた。

 

それでも敵の数が多い。

 

ソロネ数体に阻まれて、戦闘しつつ、一旦地上に降りる煌。

 

周囲は大乱戦だ。

 

一人だけ安全圏に逃れたマンセマットは、喚き散らしながら光の柱をまた打ち込もうとしてきたが。

 

その瞬間、その体がくの字に曲がった。

 

真横から蹴りをたたき込んだのは、八雲ショウヘイだった。

 

「見つけたぞ鴉」

 

「なっ! さ、最初のナホビノ……っ!」

 

砂漠に突っ込んで、何度かバウンドするマンセマット。その先にはジョカが待ち構えていた。

 

ドゴとか凄い音がして、上空に蹴り上げられるマンセマットに。更に八雲ショウヘイが、大火力の火炎魔法をたたき込んでいた。

 

「どいつもこいつもちょろちょろと……!」

 

カマエルが喚き散らしながら、剣から炎を吹き上げる。

 

だが、フィンと乱戦をしている其処に、加わった義経公。絶倫の剣技二つ分を浴びて、流石にカマエルが顔色を変える。

 

更に、である。

 

その背後から、森可成が、槍を突き込んでいた。

 

ぎゃっと、カマエルが鋭い悲鳴を上げ。

 

更にはその瞬間に、フィンと義経公が、カマエルの両腕をそれぞれたたき落としていた。

 

爆炎から必死に逃れ出たマンセマット。

 

「ひぎゃああああああああっ!」

 

「カマエルっ!」

 

「ば、馬鹿な! こ、こんな下郎どもに、こ、この、ような……!」

 

「部下達の仇は討たせて貰う」

 

次の瞬間、フィンがカマエルの首をたたき落とし。更には義経公が全身をみじん切りにしてしまう。

 

カマエルが消えていく。

 

黒い天使達はまだ大量にいるが、マンセマットが明らかに追い詰められている。凄まじい形相を浮かべたマンセマットは、無差別に光を放ってくるが。その数の分だけ、鏡を展開。

 

鏡については、既に情報を天津の神々から受け取っている。

 

対策で、一度に140まで展開できる。

 

全て反射された光が、黒い天使達を片っ端から塩の柱にしてしまう。その中にはソロネなどの上級天使も混じっていた。

 

「どうやら終わりのようだな」

 

「ふ、ふん。 まだこちらの優位は崩れていない! 引きますよ!」

 

マンセマットが声を掛けて、黒い天使達が、一斉に逃げ始める。タオの面制圧によって、それが更に多数消し飛ぶ。遠距離攻撃手段を持つ仲魔や眷属もそれにならい、黒い天使達を片っ端からたたき落とした。

 

それでも、マンセマットは部下を盾にして逃げ切った。

 

辺りには、塩の柱が転々としている。粉々に砕かれた塩の柱も、即座に消滅はしないようだった。

 

マンセマットの力は、極めて凶悪な呪いだった。それがこの有様からも分かる。

 

だからこそ、破邪の力を持つ鏡は効果てきめんだったのだ。

 

タオが塩になった残骸を、強力な光の力で浄化していく。そうするとマンセマットの呪いは崩れ、塩の柱になっていたサリエルの残骸や、黒い天使達もマガツヒになって消えていった。

 

イチロウは油断なく周囲を睥睨していて。こっちの消耗を狙っていた悪魔に対しても意識を外していない。

 

戦闘を見て雑多な悪魔達が集まってきていたが、それも今の戦闘を見て逃げ散った。

 

記録的な数の黒い天使を倒した。カマエルを倒した後は、フィンも鬱憤を晴らすようにして、多数の黒い天使を斬り伏せていた。

 

皆、力が上がっている。だから出来たことだった。

 

「悔しい話だが、恐らく至聖所というのが都庁にある事自体は事実だろう。 それに接触しなければならないのもまた事実だ」

 

「ああ」

 

ユヅルが冷静に指摘する。

 

煌としてもそれは分かっている。だから、此処から先は、更に慎重に動かなければならない。

 

そして、カマエルが倒れたことで、分かったことがある。

 

「カマエルが手にしていた剣は、本来ミカエルのものだった炎の剣だ」

 

「!」

 

サリエルも、本来よりもぐっと力を上げていたようだ。

 

八雲ショウヘイとジョカはもういない。いずれにしても、一度戻る必要がある。

 

恐るべき罠は抜けた。

 

そして、ここからが。正念場だ。







マンセマットとカマエルとサリエル、敗北……っ!

これでも普段よりかなり強くなっていたのですが、こいつらそもそもそんなに凄い存在ではなく、何より「器ではなかった」。

結果として完全に調子に乗って、そして自滅してしまいました。

こいつらは其処までの存在だったのです。


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